インバウンドとは?インバウンド集客の方法をわかりやすく紹介

新型コロナウイルス感染症の影響により長いこと行われていた水際対策が、2023年5月に終了しました。それに伴い、入国者数は順調に回復し、2024年7月の訪日外国人観光客数は329万人と単月で過去最高を記録しています。

訪日観光客が戻ってくることは、これまで以上の多くのお客さまに商品を届けられるチャンスです。訪日観光客を指す言葉である「インバウンド」に向けた集客対策も欠かせません。

この記事ではいま一度インバウンドの定義をおさらいしながら、これまでのインバウンド観光の背景、そしてインバウンド集客について説明していきます。

目次



インバウンドとは

インバウンド(inbound)とは、「入ってくる」「到着する」などを意味する英単語で、ここ数年では訪日観光客・訪日観光を指す言葉として使われるようになっています。この記事でも訪日観光客に触れる際にはインバウンドという言葉を使います。

インバウンドという言葉は単体で使われることもありますが、以下のように組み合わせて使われることもよくあります。

  • インバウンド消費: インバウンドが日本国内で消費活動を行うこと

  • インバウンド市場: インバウンドを主な顧客とする消費マーケット

  • インバウンド需要: インバウンドの旅行需要

  • インバウンド対策: インバウンドを増やすために行う対策

また、インバウンドの対義語には「外国行きの」「出ていく」などと訳されるoutbound(アウトバウンド)という単語があり、インバウンドの逆を意味する「日本人の海外旅行」を指すときに使われます。

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インバウンド観光が増加した背景

新型コロナウイルス感染症が流行しはじめる前までは順調に増加傾向にあった訪日観光客数。2019年には、訪日観光客数が3,188万人と、過去最多を記録しました。訪日観光客数が着々と伸びはじめた2013年と比べると約3倍の数です。訪日観光数が増加した理由として、ビジット・ジャパン事業は語るに欠かせないでしょう。

ビジット・ジャパン事業

ビジット・ジャパン事業は2003年に国土交通省を中心に動き出したプロモーション事業で、当時の目標は年間で3,000万人1のインバウンドが訪れることでした。今となれば信じがたいかもしれませんが、2003年の訪日客数はたったの500万人程度2で、東京都の当時の人口であった約1,199万人3の半数にも及ばないほどでした。

そこで当時の内閣総理大臣小泉純一郎がまず掲げたのは、2010年までに年間の訪日客数を1,000万人まで増やすことでした。2008年にはリーマンショックで世界的な不況に陥り、2011年には東日本大震災が起きるなど、客足が途絶えてしまうような出来事が続いたことにより惜しくも2010年には目標数を達成できませんでしたが、2013年には約1,036万人2の訪日観光客数を記録しました。

以降は円安の流れも手伝って、それまで以上のペースで訪日客数が増え続け、2018年には当初目標としていた3,000万人2を突破しました。

東京都立大学で観光政策・計画学を研究している清水哲夫教授は、円安のほかにも以下の点が2013年以降のインバウンド増加に貢献してきた4と話します。

  • 中国や東南アジアなど周辺諸国の経済成長
  • 台湾からの日本への関心が高まったこと
  • 韓国の地方からも直行便が出るようになりアクセスがしやすくなったこと
    など

ただその勢いを遮るかのようにはじまったのが、新型コロナウイルス感染症の流行でした。感染症拡大を防ぐために厳しい水際対策が行われていた日々は、記憶にまだ新しいかもしれません。2021年の訪日客数は24万人と、統計開始以来最小を記録しました5

ただ、そんな著しく落ち込んでいたインバウンド市場も2022年10月の入国者数の上限撤廃、2023年5月の水際対策終了に伴って、順調に回復しています。2023年の訪日客数はコロナ禍前の8割6に達し、2024年に関しては過去最高を記録するのではないかという予測7まで出ています。

インバウンド集客には早い段階で取り掛かろう

現時点でお店を訪れるインバウンドは1週間に10人にも満たない……などの場合は、すぐに対策を打つ必要性はあまり感じないかもしれません。しかしその数が増えていく従って、準備不足こそが機会損失の要因になっていると気付く日が訪れることも考えられます。インバウンドを売り上げにつなげたいという気持ちが少しでもあるのなら、いつでも訪日観光客を迎え入れられる体制を早い段階で整えておくことが大切です。

特にインバウンド集客に必要な準備は一晩では終えにくいものです。考えられるタスクをいくつか以下に挙げます。

  • 多言語対応のシステムの導入
  • キャッシュレス決済システムの導入
  • 多言語による表記
  • Wi-Fi環境の整備

特に最初の3項目は用意しておかないと機会損失につながることが考えられるため、早いうちに自店舗に合った導入方法を調べておくといいでしょう。

》導入方法について詳しくはインバウンド集客方法の章をチェック

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インバウンド集客のメリット・デメリット

ここではインバウンド集客のメリットとデメリットをいま一度おさらいしましょう。

インバウンド集客のメリット

売上拡大が期待できる

インバウンド集客の最も大きなメリットとして挙げられるのは、売り上げの拡大でしょう。日本人に限らず訪日観光客にも客層を広げると、商品を届けられる人の数も自然と増えます。近年では円安の流れもあり、高額品などを取り扱う百貨店においては客単価が増加したことも確認できているようです。2024年7月の一人当たりの購入単価は11万円8。2019年同月の1.7倍ほどだそうです。

このような流れも手伝って、インバウンドによる客単価アップも期待ができるかもしれません。

また、飲食店の4分の1以上が「外国人観光客の来店によりお店の客単価が『上がった』と感じている」「どちらかといえば単価が上がったと感じている」と回答していたという調査結果も発表されています9

インバウンドによる売上拡大・客単価アップは、インバウンドの心をつかむような店構えや商品ラインアップがあってこそ実現できるものです。訪日客の興味を掻き立てるうえでも、旅の記録になるような商品を開発してみる、海外客が喜びそうな料理メニューを開発してみるなども考えてみてもいいかもしれません。

口コミでさらなる人気が集まることも

YouTube・Instagram・TikTokなど、「映え」を探り、発信することは現代の若者においては特徴的だといえるかもしれません。この傾向は店舗経営者にとってはプラスに働くことがあります。たとえば店構えや商品のラインアップが訪日観光客の心に刺さり、何かしらの形で拡散されれば、彼らのフォロワーにも情報が届けられ、そこからさらにファンがつく可能性があります。訪日客に刺さりそうな商品に関しては、カメラのイラストを添え「SNS OK!」などと記したポップを飾るなどし、撮影を促す工夫を図るといいでしょう。普段届かない層に商品を知ってもらう絶好のチャンスになるかもしれません。

インバウンド集客のデメリット

言語の壁がトラブルを招くことも

訪日観光客が店舗に訪れるということは、少なからず英語などで対応する機会が増えるということです。その際にうまくコミュニケーションがとれないと、逆に相手を苛立たせてしまい、最悪の場合、売り上げを逃してしまう可能性もあります。突然の対応にも困らないよう頼れる翻訳アプリをスマートフォンにダウンロードしておくなど、余裕を持って対応できるツールを携えておくといいでしょう。

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既存のイメージを損なってしまう可能性も

インバウンド集客に力を入れているうちに、インバウンド寄りの店構えになってしまい従来の雰囲気や魅力が薄れてしまった……ということもなきにしもあらずです。従来の魅力を維持することは、これまでの客層をキープするうえでは大事なことかもしれません。インバウンドに喜ばれる店づくりを行う際には従来の形とのバランスを考慮しながら取り組むといいでしょう。

インバウンド集客の方法5選

ここではインバウンド集客を行ううえで取り組むべき具体的な施策を紹介します。

(1)メニューや商品名を多言語で表記する

インバウンド集客の第一歩として欠かせないのは多言語対応でしょう。飲食店であれば多言語のメニューを用意する、小売店であれば商品名に英語表記をくわえるなどして、日本語が話せない人でも迷いのない店づくりに努めましょう。

(2) キャッシュレス決済に対応する

キャッシュレス決済に対応しておくことも、インバウンド層から喜ばれる対策だといえます。キャッシュレス決済に慣れている人からすると、キャッシュレスで支払えないことは不便なだけでなく、商品の購入を諦めざるを得ない原因にもなりえます。

台湾・香港・タイ・マレーシア・インドネシア・ベトナム・インドのアジア7カ国から来日した観光客を対象とした調査10では、日本で不満だと感じたこととしてどの国も「カード決済を使えないこと」を挙げていたようです。

補足までに、訪日客の割合を最も多く占めていた中国のキャッシュレス決済比率は8割で、現金を使う機会はほとんどないようです。韓国は9割で、米国に関しても5割以上です11。日本はといえばキャッシュレス比率は増えたものの、未だ4割弱(2023年時点)にとどまっています。

キャッシュレス決済に対応していないせいで自慢の商品を届けられないとしたら、それはあまりにももったいないことです。何の問題もなく訪日客に商品を購入してもらえるよう、クレジットカード決済タッチ決済、スマートフォン決済、QRコード決済などのキャッシュレス決済にはいち早く対応しておくことをおすすめします。

(3)SNSを活用する

ハッシュタグなどをうまく駆使することで幅広い層にリーチできるInstagramは、いまや店舗運営にはなくてはならないツールだといえるでしょう。店舗を訪れてくれた訪日観光客を写した写真を投稿してみたり、英語で投稿文を作成してみたりして、訪日観光客が訪れやすい雰囲気づくりをInstagramでも意識しておくといいでしょう。観光客のフォロワーにも店舗の情報を拡散してもらえるよう「Instagramに店舗の写真を投稿すると5%オフ!」などの特典をつけてみてもいいかもしれません。

また、最近では「TikTok売れ」という言葉が誕生するほど、ショート動画を投稿・共有できるTikTokも利用者が増えているSNSの一つです。TikTokは10代や20代の若年層のユーザーが多いといわれています。こうした層をターゲットにしているお店では、TikTokも活用してみてはいかがでしょうか。

(4)口コミやレビューを利用する

多くの利用者数を誇る人気地図アプリ、Google マップ。Statistaの調べによれば、アメリカでは地図アプリのうち、2023年に2,100万ダウンロードで堂々と一位12を獲得していました。Google マップを通じて誰にでも発見してもらえるようGoogle ビジネスプロフィールを作成したうえで、自店舗がGoogle マップに表示されるよう設定しておきましょう。訪日観光客が頼りにするレビューはGoogleが自動翻訳してくれます。レビューにはこまめに返信することで店舗の好感度アップを狙いましょう。

また、Googleマップ以外にもトリップアドバイザーや大衆点評など、さまざまな口コミ・レビューサイトがあります。すべての口コミに返信することは難しいかもしれませんが、訪日客の本音を探るヒントとして参考にしてみることはできます。

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(5)インフルエンサーに宣伝してもらう

予算が確保できるのであれば、インフルエンサーの手を借りて店舗を宣伝してもらうのも一つの手です。近年では日本の観光スポットを動画や写真などで魅力的に紹介してくれるインフルエンサーが数多く誕生しています。誰もが王道スポットを紹介しているとは限らず、ほかとかぶらないためにもあまり多くの人から知られていないスポットの発掘に精を出すインフルエンサーも中にはいます。お目当てのインフルエンサーがどのような層にリーチできているのかを下調べし、果たしてどのような客層に店舗を知ってもらいたいかなどを明確にしたうえでインフルエンサーの選定・依頼に踏み切りましょう。

インバウンド対策にはSquare

キャッシュレス決済を導入するとなると「ややこしそう」「導入費用が高そう」「資金繰り大変そう」などと不安に感じる点が次々に思い浮かぶかもしれません。Squareはそんな懸念点をいっきに取り除きます。さらに、店舗に限らずオンライン販売もはじめたいという人にもおすすめの機能を用意しています。

1台でクレジットカードと中国のQRコード決済に対応できる

クレジットカード用にQRコード用と、複数の端末が隣り合わせに並んでいるレジを見かけたことがあるかもしれません。Squareなら1台で、VisaやMastercard、JCBなどの主要なクレジットカードに、交通系電子マネー、PayPayや楽天ペイ、さらには中国のWeChat PayとAlipay+にも対応できます。対応している決済方法は以下のとおりです。

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Alipay+(アリペイプラス)はアントグループが提供するQRコード決済ですが、中国のAlipayに加えて、香港のAlipay HK、韓国のKakaoPayやNaverPay、タイのTrueMoneyなど、アジア各国の決済方法を受け付けられるのが特徴です。Alipay+が対応している決済方法は以下のとおりです。

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最短即日から使用できる

Squareを導入するには無料アカウントを作成し、希望の端末を注文するだけ。審査は早ければ数時間で終わるので、端末が手元に届き次第、簡単なセットアップをしたらすぐに使いはじめることができます。

導入費用は端末代金のみ

導入費用のほかに初期費用などが心配かもしれませんが、Squareの導入費用は端末代金のみ。Squareでは4種類の決済端末を提供していますが、おすすめはスタッフ用の大きなタッチスクリーンとお客さま用決済画面を搭載したSquare レジスターです。お客さま用決済画面にお会計金額や決済方法の選択肢が表示されるので、決済時の操作をお客さまにまかせることができます。もちろん、決済画面の表示を英語にすることも可能です。

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お会計をすべてSquareで

決済受付、商品登録、価格設定、業務管理など、1台ですべてに対応できる「Square レジスター」。POSレジ搭載で、箱から出してすぐに使えます。お客さま用とスタッフ用の2画面が、スピーディーなお会計を実現します。

レシートの表記を英語にできる

無料で使えるSquare POSレジからレシートを出力する際、店舗名や商品名をあらかじめ英語で入力し、言語設定をEnglishにするとレシートの表記を英語にできます。

詳しい使い方については以下のリンクをご参照ください。

入金サイクルは最短翌営業日

キャッシュレス決済と聞くと入金が遅く、資金不足に陥ってしまうのではないかと不安を覚える人も多いかもしれません。Squareなら指定の金融機関(※)を利用すれば、最短翌営業日に売上額が入金されます。指定の金融機関ではない口座を登録した場合は毎週水曜日締め、同じ週の金曜日に入金されるので手元に資金がない日数をなるべく短くすることができます。

※三井住友銀行、みずほ銀行の口座

オンライン販売も可能

「オンラインショップはあるの?帰国してもチェックしたい」訪日客にこのようなうれしい言葉をもらうこともあるかもしれません。Squareではオンラインショップをはじめられる「Square オンラインビジネス」というサービスがあります。オンラインショップと実店舗の在庫の連携もできるので、片方の在庫が減れば、もう片方にも更新された在庫数が反映されます。

Instagramなどを通じて「この商品は海外からでも買えるの?」と聞かれた場合にはSquare リンク決済が便利です。販売したい商品を登録するだけで、簡易な購入用ページが作成できる機能です。お客さまにはページの作成と同時に発行されるリンクを送れば、そこからクレジットカード決済をしてもらうことができます。
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Square オンラインビジネスとSquare リンク決済はいずれも初期費用・導入費用はなし。利用料は、決済ごとにかかる手数料のみです。詳しい使い方については以下のリンクをご参照考ください(※)。

※ご利用にはSquareの無料アカウントが必要となります。

この記事では日本がインバウンド増加に向けて取り組んできたことや、具体的なインバウンド対策について触れてきました。自慢の商品を世界に届けるチャンスだと思い、インバウンド集客に取り組んでみてはいかがでしょうか。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2022年12月28日時点の情報を参照しています。2024年9月25日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash