24時間営業のコンビニエンストアや深夜まで営業している飲食店など、私たちの身の回りでは、様々なものやサービスが長時間に渡って提供され続けています。そのため、各事業主は朝から夜まで常に製造やサービス提供に従事する従業員を配置しなければなりません。
病院や消防署には、事件や事故が起きた時にいつでも対応できるような体制が必要ですし、ホテルやマンションなどでの受付や警備といった施設管理業務も24時間体制で行われています。工場で機械を動かし続ける製造業も同じく、常時製造体制が敷かれています。
このように、長時間に渡ってものやサービスを提供し続ける業態において、同じ従業員が営業時間の始めから終わりまで継続して勤務したり、全ての作業に立ち会ったりすることは体力的に不可能です。労働基準法などをはじめとした法律でも厳しく規制されています。
そこで多くの事業が導入しているのが、シフト制です。シフト制とは、毎週または毎月ごとに従業員の勤務日と勤務時間を決めて業務を回す方法で、人手(従業員)が切れることのないように従業員の勤務時間をずらして(シフトして)勤務体制を作る制度を指します。
目次
シフト作成の基本的な流れ
シフト作成を業務として従業員に任せる経営者もいるようですが、一般的には店長や管理職など管理責任の立場にある人または経営者自身が作成します。
売上分析に基いて必要な人手を算出する
シフト作成には、まず何よりも事業の運営状況を把握しておく必要があります。
小売店や飲食店であれば、客入りの動向を把握し、通常より人手を多く必要とする曜日や時間帯を予測できるようにします。もちろん、無駄な人件費を削減するためにも、通常より少ない人手でもお店を回せる曜日や時間帯を把握することも重要です。
ここで注意したいのは、例えば毎日店頭に出ているのでお客様の多い日とそうでない日が把握できていると思っていても、売上分析をきちんと行う必要があるということです。売り上げと客入りは結びついていますし、在庫状況などは実際に数字を見ない限り肌で感じることは難しいでしょう。感覚だけに任せることなく、売り上げといった定量的な数字と向き合い、必要な人手と時間の組み合わせを算出しましょう。
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参考:売上分析について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
シフト制の利点は、朝、昼、夕方、夜間などと一日を細分化した勤務時間に複数の従業員を割り当てられることです。しっかり売上分析を行えば、どの時間帯に特に人手が必要かなどの情報が見えてくるでしょう。
製造業の場合、受注数が変動する時期などの市場のトレンドを把握した上で、生産を過不足なく行うために必要な人手と時間の組み合わせを算出します。
各従業員の希望・都合を収集する
次に、勤務または休みの希望日などを従業員一人ひとりに確認します。
常にシフトが固定されている場合は、先の予定が比較的立てやすいですが、学生アルバイトやパートタイム労働者の場合は学校や家庭など他の都合との兼ね合いで勤務可能な日時を固定することはかんたんではありません。
直前になって予定が急遽変更すること可能性もありますが、テスト期間や行事など、前もって把握できる予定についてはなるべく早い段階で申告してもらうようにしましょう。
シフト表に人手を当てはめる
従業員一人ひとりの勤務可能な日時が分かったら、日や時間帯ごとに必要な人手を算出したシフト表に各従業員を当てはめていきます。
例えば、24時間の運営を三人体制で回す必要がある場合、従業員一人当たりの勤務時間を8時間とし、三人を一組として三組作り、各組を早番、遅番、夜勤というふうに配置するシフトを作ります。しかし、実際には引き継ぎなどもあるので、厳密には、前後30分から1時間程度の交代時間を被らせる必要があります。
シフト作成の注意ポイント
前項のように書くと、シフト作りはシンプルに聞こえるかもしれません。しかし、現実では多くの経営者がシフト作りに莫大な時間を費やしています。何故でしょうか。
シフト作成が間に合わない?
先の予定を決めようとしていても、「まだシフトが出ていないから分からない」と困っている従業員の話を耳にしたことがあるかもしれません。自分のシフトが決まっていなければ空き時間や休みの日程が把握できないので、数週間先の予定を立てるにしても決定できず従業員のプライベートな予定にも影響を及ぼす可能性があります。
シフト作成に時間をかけた結果、事前に余裕をもって発表されるべきものが直前になって従業員に知らされるなどという事態にならないように、毎回の発表期限などを設けておくことが好ましいです。
勤務希望日などをシフト作成者に前もって提出する場合でも、あまりにもシフトの決定に時間がかかってしまうと、都合が変わってしまうこともあります。また、シフトを発表した後にも変更や調整が必要になることもあり得ます。
早期にシフトを固定できると、経営者にとっては人手の確保という意味でメリットとなります。また、従業員にとっても個人の予定を立てやすくなります。従業員の個人的な都合などを尊重するという目的でも、余裕をもったシフト作成・発表を心がけましょう。
同じレベル以上のサービスを保つための組み合わせ
シフト作成が時間を浪費する傾向にある理由の一つに、「人手の組み合わせ」が挙げられます。人手の数だけが必要であれば、空いている従業員を必要なだけ配置すればいいのですが、そうも行きません。
人手とは、数だけの問題ではなく、配置される時間帯における事業の運営が通常通りに行われるために必要な能力も指します。従業員の中には、新人からベテランまで能力や経験値にばらつきがあることは当然のことです。新人ばかりを同じシフトに配置すると、その時間帯に提供されるサービスのレベルが落ちてしまうことは想像に難くないでしょう。
飲食店を例にとった場合、ランチタイムなどの忙しい時間帯に、ベテラン従業員3人と新人2人を配置するのと、ベテラン従業員1人と新人4人を配置するのとでは、前者と後者との間ではパフォーマンスに明らかな違いが見られるのではないでしょうか。
シフト制導入の目的は、ものやサービスが継続的に生産・提供されることにあります。当然、ものやサービスの品質の最低限レベルは常に同じである必要があります。従事する人員の入れ替えがあっても、これらは保たれなければなりません。従業員一人ひとりの能力や経験を加味したバランス良い配置をしましょう。
稼働は満遍なく
能力が高く経験豊富なベテラン従業員は、スムーズで生産的な運営のためにもなるべく多く働いてもらいたいと思うかもしれません。しかし、各従業員がどれくらいの勤務を希望しているかは個人によって異なってくるはずです。従業員の稼働はできるだけ均一になるようにシフトを作成することが好ましいです。
従業員を雇い入れる時点で、本人が希望する稼働量や時間帯などを聞いているのにも関わらず、希望を無視して運営効率だけを考えた無理な稼働を強いると、能力がある従業員でも気持ち良く働くことができなくなってしまいます。
また、労働基準法やパートタイム労働法などの法律は、労働者の立場を守るためにしばしば改正されていますので、中身をしっかりと理解して法律に即した稼働の分配をする必要があります。
繁忙期など、どうしてもベテラン従業員に通常より多く勤務してもらいたい場合は、本人の了承を得た上でシフトを作成し、その代わりに、ピークが過ぎた後はシフトを減らすなどして稼働のバランスを保ちます。
ベテラン従業員であれば安心して仕事を任せられるということが本当でも、繁忙期のたびに通常よりも多い稼働のシフトを組み続けていると、いつまでも新人が育たないという問題も出てきます。時には思い切って繁忙期に新人従業員に出勤させるなどして従業員全体のパフォーマンスレベルの向上を目指しましょう。
ベテラン従業員や長時間勤務してきた従業員が辞めてしまう可能性も否めません。このような事態にも対応できるように、運営に支障が出ない程度で普段からの従業員教育には意識的に取り組むようにしましょう。
シフト管理の鍵は良好な人間関係
従業員がシフト内容に納得して気持ちよく働くことが何よりの理想です。経営者にとっても、数週間先までの人手が約束されていることは安心要素となるでしょう。
しかし、やむを得ない事情や事態というのは誰にでも起こり得ることです。体調不良や事故などは前もって予測することができません。一人欠員が出たところで事業を通常通り回すことができれば問題ありませんが、どうしても欠員の穴埋めが必要な場合は、他の従業員に代わりに入ってもらうしかありません。
すでに決まっている予定を変えてまでも出勤してもらうことは大変なことです。経営者の立場を利用して出勤を強いるなどということがないよう、きちんと事情を説明して交渉しましょう。依頼の仕方一つでも、引き受ける側のモチベーションに大きく影響します。義務であるかのように押し付けたり、断りづらい言い方をすると、従業員の不満は次第に募っていくでしょう。
日頃から、従業員とは良好な人間関係を構築し、できるだけ各人の希望に沿ったシフトを作成することを心がけていれば、このような緊急事態になっても欠員の穴埋めがしやすくなるかもしれません。
シフト管理とは、従業員が決められたシフト通りに勤務しているかどうかを管理するだけでなく、全ての従業員が納得して働けるようなシフトを作成するところから始まります。作成する者の独断ではなく業務に関わる全ての従業員の意見を聞き、お互いの合意が取れる折り合いどころを見つけることが重要です。
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執筆は2017年3月28日時点の情報を参照しています。
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