法人解散の基礎知識

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

事業の業績悪化や後継者不足などの問題から、法人の解散を考える事業者は少なくありません。この記事では、法人が解散するときの手順や気をつけたいことについて解説します。

📝この記事のポイント

  • 解散は法律の定める事由に基づき決定し、その後の清算完了をもって法人格が消滅する
  • 解散後は清算人選任、官報公告・債権者催告、債権債務整理、清算結了登記が必須
  • 解散の所要期間は概ね3〜6カ月を見込むのが現実的
  • 従業員の解雇は「整理解雇の4要件」と労基法20条の予告・手当が要点
  • 法人の形態により決議機関や残余財産の帰属が異なり、社団・財団には帰属先制限や特有の解散事由がある

目次



法人解散の流れ

これ以上ビジネスを続けることができなくなったとき、行われるのが「法人の解散」です。帝国データバンクの調査1によれば、2024年の休業、廃業と解散を合わせた数は6万9019件で、2016年以降で最多を記録しています。休廃業・解散時の経営者の平均年齢が71.3歳と、高齢化が大きく影響している様子が伺えます。

以下が法人解散の大まかな流れになります。

1. 解散事由の発生
2. 株主総会による特別決議、または株主全員の同意による書面・電子決議(株式会社の場合)
3. 解散および清算に関わる手続き
4. 清算結了
5. 法人格の消滅

また、法人の解散にあたっては、各種公的機関への届出が必要です。

  • 法務関係:法務局あてに解散登記および清算人の選任登記
  • 税務関係:税務署、都道府県税事務所、市町村税務課への届出
  • 社会保険・労働保険関係:年金事務所およびハローワークへの届出

解散後は、官報公告および債権者への催告(通常2カ月以上)が必要です。すべての手続きが完了し、清算結了登記が完了するまでには概ね3〜6カ月程度かかるのが一般的です。なお、登記や公告はオンライン申請や電子公告制度を利用して行うこともできます。

解散理由は法律で定められている

会社の解散には、法律で定められた事由が必要です。株式会社の場合、会社法第471条により、定款に基づく事由や株主総会の決議などが「解散の事由」として定められています。

(解散の事由)
第四百七十一条 株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 株主総会の決議
四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定による解散を命ずる裁判
– 会社法第471条2

「第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定」とは、裁判所による解散命令または株主からの解散請求を指します。

「第824条第1項」は裁判所による解散命令を定め、「第833条第1項」は株主による解散請求に関する規定です。

これらの事由に該当した場合、所定の手続きを行うことで法人を解散することができます。ただし、解散した時点では法人格は消滅せず、財産の整理や債務の弁済を行う清算手続を経て「清算結了」に至ることで、最終的に法人格が消滅します。

なお、12年以上登記が行われていない株式会社などは、法務局により「みなし解散」の公告・通知が行われ、解散したものとみなされる場合もあります。

以下が、法務局による休眠会社・休眠一般法人の整理作業で、解散とみなされた株式会社および一般法人の数です3

回数 年次(和暦) 年次(西暦) 解散したものとみなされた株式会社数 解散したものとみなされた一般社団法人および一般財団法人数
第12回 令和2年 2020年 31,516 1,487
第13回 令和3年 2021年 29,605 1,662
第14回 令和4年 2022年 28,615 1,798
第15回 令和5年 2023年 27,887 1,787
第16回 令和6年 2024年 26,885 1,994

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清算と解雇について

清算手続きに合わせて、従業員へのケアも含めた解雇手続きについて解説します。

清算

清算とは、企業に残っているお金などの財産について、整理を行うことです。法人を解散させた時点では、法人格はまだ存続しています。清算まで終わって、ようやく法的に企業を終わらせることができます。

清算とは、企業に残っている財産や債務を整理し、事業を法的に終了させるための手続きです。法人を解散した時点でも法人格は存続しており、清算結了をもって初めて消滅します。清算人は、解散登記後に選任され(通常は代表取締役が就任)、法務局で清算人選任登記を行います。その後、次のような清算事務を行います4

  • 現務の結了:解散時に終わっていなかった業務を完了させる
  • 債権の取り立て:まだ支払われていなかったお金を回収する
  • 債務の弁済:借りたお金を返す
  • 残余財産の分配:債務弁済が終わったあとも残った財産を、権利を持つ人々に分配する

また、清算人は速やかに官報で債権者に対して債権申出の公告を行い、少なくとも2カ月以上の申出期間を設ける必要があります(会社法第499条)。この期間が経過したのちに、決算報告を作成し、株主総会の承認を経て清算結了登記を行うことで、法人格が正式に消滅します。

解雇

会社の解散にあたっては、従業員の解雇も行われることになります。法人格が消滅するのは清算が完了したあとですが、実際は、清算結了を待たずに従業員解雇が行われるのが一般的です。解雇にあたっては、過去の判例に基づき、「整理解雇の4要件」を満たす必要があります5

  • 人員整理の必要性 (必要性があること)
  • 解雇回避努力義務の履行 (解雇にならないよう、あらゆる努力をしたこと)
  • 被解雇者選定の合理性(選定基準に合理性があること)
  • 解雇手続の妥当性(労働組合としっかり協議したこと)

また、労働基準法第20条に基づき、30日前の解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要です。

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
– 労働基準法第20条

解雇後は、離職票の交付(ハローワーク)や社会保険資格喪失届の提出など、行政手続きも必要です。従業員に十分な説明を行い、誠実に対応することが求められます。

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株式会社・合同会社・社団法人など各種法人の違いについて

次に、法人の形態ごとに、解散の事由の違いなどについて解説します。

株式会社の解散

株式会社の解散事由については、前述のとおりです。株式会社の場合、解散の決議や清算手続きに関しては、すべて株主総会での決議が必要です。

清算人は、解散登記および清算人選任登記を行ったのち、官報で債権者に対して債権申出を公告します(期間は少なくとも2カ月)。また、知れている債権者には個別に通知を行う必要があります。残余財産は株主に分配されますが、その一部は税務上「みなし配当」として扱われることがあります。

解散登記および清算結了に関する登記申請書については、法務局のホームページからダウンロードできます。

合同会社の解散

合同会社の解散は、株式会社の手続きとほぼ同様に行われますが、株主総会の代わりに「総社員の同意」によって決定されます。合同会社の法定解散事由は、会社法第641条に定められています。

持分会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 総社員の同意
四 社員が欠けたこと。
五 合併(合併により当該持分会社が消滅する場合に限る。)
六 破産手続開始の決定
七 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第二項の規定による解散を命ずる裁判
会社法
– 会社法第641条6

解散後は清算人を選任し、法務局に解散登記と清算人選任登記を行います。清算人は官報公告を出し、2カ月以上の期間を設けて債権者に申出を求め、知れている債権者には個別に通知します。

債務弁済と残余財産の分配が完了したのち、社員の承認を得て清算結了登記を行えば、法人格が消滅します。残余財産の分配は、原則として出資比率または定款の定めに従って行われます。

合同会社の解散登記および清算結了に関する登記申請書については、法務局のホームページからダウンロードできます。

一般社団法人の解散

一般社団法人の場合も、法令で定められた解散の事由が発生したときに解散し、清算結了をもって法人格が消滅します。

一般社団法人は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 社員総会の決議
四 社員が欠けたこと。
五 合併(合併により当該一般社団法人が消滅する場合に限る。)
六 破産手続開始の決定
七 第二百六十一条第一項又は第二百六十八条の規定による解散を命ずる裁判
– 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第148条7

「第二百六十一条第一項又は第二百六十八条の規定」とは、解散命令もしくは解散の訴えのことです。注意点として、一般社団法人の場合、残余財産の取り扱いが、株式会社や合同会社と少し異なります。

残余財産の帰属は、定款で定めるところによる。
2 前項の規定により残余財産の帰属が定まらないときは、その帰属は、清算法人の社員総会又は評議員会の決議によって定める。
3 前二項の規定により帰属が定まらない残余財産は、国庫に帰属する。
– 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第239条7

残余財産は、株式会社では株主へ、合同会社では出資額に応じて社員へ分配されることになりますが、社団法人の場合は、国へ分配される可能性があります。

一般社団法人・財団法人の解散登記および清算結了に関する登記申請書については、法務局のホームページからダウンロードできます。

一般財団法人の解散

一般財団法人の場合も、法人格消滅までの流れは他の法人とあまり変わりません。

一般財団法人は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 基本財産の滅失その他の事由による一般財団法人の目的である事業の成功の不能
四 合併(合併により当該一般財団法人が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 第二百六十一条第一項又は第二百六十八条の規定による解散を命ずる裁判
– 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第202条7

「基本財産の滅失」とは、定款で事業の基礎として位置づけられた基金や不動産などの資産を失い、法人の目的を遂行できなくなった状態を指します。

また、事業年度および翌事業年度において、純資産額がいずれも300万円未満となった場合には、解散することが法律で定められています(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則第78条第1項)。

まとめ

事業悪化などでビジネスを続けることが難しい場合、廃業・解散も選択肢に入るでしょう。どんな形態の法人であったとしても、法人格をなくそうとする場合は「解散の事由の発生」のほか、「清算結了」が必要となります。また、解散にあたっては、従業員に対して誠実なケアを行うことも重要です。また、詳しい手続きは専門家に相談することをおすすめします。

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執筆は2020年12月18日時点の情報を参照しています。2025年12月17日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。