※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
企業が社会的な信用の獲得や健全な経営を行うために必要なのが、監査です。なかでも、上場企業など一定の企業には監査が義務付けられています。今回は、事業者が知っておきたい監査法人の基礎知識について、詳しく解説します。
📝この記事のポイント
- 監査法人は公認会計士が組織する法人で、財務書類の監査や証明を担う専門機関
- 大会社や上場企業は法律により監査が義務付けられている
- 監査は企業の財務情報の信頼性を確保するために必要
- 監査法人は財務支援・コンサルティング・IPO支援などの非監査業務も提供する
- 監査法人選びは自社の規模に合う法人を比較して選ぶことが重要である
目次
- 監査を行う「監査法人」とは何か?
・監査が義務付けられている会社とは - なぜ監査を受けなければならないのか
・監査を受けない場合のリスクとは - 監査法人が行う業務
・監査証明業務
・非監査証明業務 - 監査法人の選び方
・大手の代表である「4大監査法人」とは

監査を行う「監査法人」とは何か?
監査法人は、公認会計士によって組織された法人です。主な役割は、企業の会計処理や決算内容が適切かどうかを、第三者の立場から客観的にチェックすることです。公認会計士法では、以下のとおり定義されています。
この法律において「監査法人」とは、次条第一項の業務を組織的に行うことを目的として、この法律に基づき設立された法人をいう。
– 公認会計士法、第1条の31
ここでいう「次条第一項の業務」とは、「他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすること」(公認会計士法第2条)です。
他の業務としては、「他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の調製をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応ずること」(公認会計士法第2条)もあります。
監査が義務付けられている会社とは
監査は、法律で受けることが定められた「法定監査」と、自社の判断で受けられる「任意監査」があります2。
法定監査の対象となっているのは、主に以下の企業です。
- 大会社(資本金が5億円以上、または負債の部が200億円以上)
- 有価証券報告書を提出する上場企業
大会社の監査は、会社法第328条によって定められています。監査においては、各計算書類や付属明細書を調べられます。
一方、上場企業の監査は、金融商品取引法第193条において義務づけられています。こちらの監査では、財務諸表や内部統制報告書をチェックします。
日本公認会計士協会の2024年度の自主規制レポート3では、会社法監査と金融商品取引法監査の監査対象数を発表しています。
| 監査区分 | 監査対象数 |
|---|---|
| 金融商品取引法監査 | 4,223 |
| 会社法監査 | 6,118 |
なぜ監査を受けなければならないのか
企業が監査を受ける理由は、「財務書類の内容は適切だ」と保証してもらうためです。
投資家や債権者にとって、企業のお金の出し入れに関わる情報は、資金を提供するかどうか判断するための大切な情報です。
そのため、企業には、業務の実態を適切に公開する責任があります。しかし、企業にすべて任せておくと、実態よりも業績をよく見せようとして不正が行われる可能性があります。このような企業の不正を避けるためにも、第三者による監査が必要なのです。
監査を受けない場合のリスクとは
一番のリスクは、企業への社会的信用が失われることです。法的に監査を義務づけられているのに、それを行わないのは法律違反です。
どんなに業績がよくても、違法行為をしている企業だと認識されれば、顧客離れや投資家離れが起こるかもしれません。また、監査を受けたとしても、監査に必要な会計資料やデータを用意しなければ、監査法人から「意見不表明」という報告書を提出される可能性があります。これは、「十分な監査が実施できないため、意見が出せない」ということです。この場合、決算内容に対する信用が確保できないため、最悪のケースでは上場廃止につながります。
前出の自主規制レポート3によれば、2024年度に意見不表明となった企業は3社のみでした。それだけ異例のことであり、企業としての信用が揺らぐ事態です。
| 年度 | 意見不表明 | 限定付意見 |
|---|---|---|
| 2022年度 | 1 | 10 |
| 2023年度 | 4 | 9 |
| 2024年度 | 3 | 6 |

監査法人が行う業務
監査法人が行う業務の内容は、以下の2つです。
- 監査証明業務
- 非監査証明業務(コンサルティングなど)
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
監査証明業務
監査法人にとってのメイン業務であり、いわゆる法定監査や任意監査のことです。企業などの決算書や必要書類をチェックし、意見を付して、内容の適正さを保証します。
非監査証明業務
監査法人は、監査以外の業務も行います。たとえば、以下の例があります。
- 財務書類の修正、作成のサポート
- 財務についてのアドバイスやコンサルティング
- 証券取引所への上場サポート(新規株式公開支援)
このように、監査法人はただの決算チェック機関というわけではなく、企業の支援なども行う組織となっています。
監査法人の選び方
実際に監査法人と契約しようとするとき、考えたいポイントは以下のとおりです。
- 監査のクオリティー
- 監査報酬
- 公認会計士との相性
監査には、監査担当者が出した結果を、さらに第三者が審査する制度があります。これにより、どんな監査でも、一定の質は保証されていると考えられます。ただし、専門知識を持った公認会計士がいるか、フォローやアドバイス対応はどうかなどは、法人によって異なります。サービス内容については、ヒアリングなどでよく確認しましょう。
監査報酬は、作業工程が多かったり、大手の法人だったりするほど高くなります。また、グローバル企業に対応できる監査法人は報酬も高い傾向がありますが、もし自社が国内でしか事業をしていない場合は、監査がサービス過剰となることも考えられます。自社の事業規模によっては、コストを抑えるために、中小の監査法人を選ぶという選択肢もあります。
公認会計士によって、得意分野や専門分野はさまざまです。自社と同じような事業をしている企業の監査実績があるか、専門知識やノウハウを持っている公認会計士がいるか、といった点を確認しましょう。
自社に合う法人を選ぶには、比較が大切です。複数の法人から見積もりをとったり、コンペを行ったりして、相性のよい監査法人を見つけましょう。取引している銀行や証券会社から、監査法人の情報をもらうのもおすすめです。
大手の代表である「4大監査法人」とは
大手の監査法人について、簡単に紹介します。
日本には、「4大監査法人」と呼ばれる監査法人があります。
- 有限責任あずさ監査法人
- EY新日本有限責任監査法人
- 有限責任監査法人トーマツ
- PwC Japan有限責任監査法人
4大監査法人は、世界的に事業を展開している会計事務所4社と、それぞれ提携を結んでいるのが特徴です。なお、この国際的な会計事務所はビッグフォー(Big 4 accounting firms)と呼ばれており、以下の4事務所から成っています。
- PricewaterhouseCoopers(プライスウォーターハウスクーパース)
- KPMG
- Deloitte Touche Tohmatsu(デロイト・トウシュ・トーマツ)
- Ernst & Young(アーンスト・アンド・ヤング)
日本では、この4大監査法人が広いシェアを持っており、グローバル展開する企業や大規模企業と契約していることが多いです。自社が中小企業の場合、大手を選んでもよいですが、報酬が高くて難しいことがあるかもしれません。中堅の監査法人などもあるため、予算を考えながら選びましょう。
監査法人は、公認会計士によって作られた組織です。監査に対して抵抗がある人も少なくありませんが、社会的信用を確保し、資金集めや上場に備えるために、監査法人は大切な役割を果たしていると理解しましょう。
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執筆は2019年10月2日時点の情報を参照しています。2025年12月17日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。


