パラレルワークとは?​一つの​ビジネスに​縛られない​新時代の​働き方と​メリット

一つの​会社、​一つの​職種で​定年退職まで​仕事を​続ける​既存の​労働形態とは​異なる​「パラレルワーク」と​いう​働き方が​今、​注目を​集めています。​ビジネスに​限定せず​複数の​取り組みを​同時進行する​パラレルワークには、​どのような​メリットが​あるのでしょうか。​副業・複業・兼業との​違いや、​事例を​通して、​パラレルワークの​現在と​未来を​考えます。

パラレルワークとは

パラレルワークとは、​2種類以上の​仕事を​同時に​手がける​働き方、​特に​本業を​複数持つ​場合を​指します。​パラレル​(parallel)は​「平行の、​並列の」を​意味しています。​一方、​ワーク​(work)は​日本語で​「仕事」と​訳されがちですが、​実際には​「研究、​作業、​勉強」など​複数の​意味を​持ち、​必ずしも​営利目的の​ビジネスばかりを​指すわけでは​ありません。

そこから​わかる​通り、​パラレルワークは​ビジネスだけでなく​ボランティア活動や​非営利団体​(NPO)​活動などの​社会貢献、​学術的な​研究・調査活動、​アーティストの​創作活動と​いったさまざまな​アクティビティーを​複数平行して​継続する​ものです。​もちろん、​本業と​して​ビジネスを​複数持つことも​パラレルワークと​いえます。

パラレルワークの​例

大学教授と​して​研究や​教育に​励みながら、​著述家と​して​書籍も​発行すると​いう​パラレルワークが​あります。​他にも、​会社員と​飲食店経営者と​いう​2足の​わらじ、​会社員、​主婦、​漫画家と​いう​3足の​わらじを​履くと​いった​パラレルワークの​在り方も​存在します。

株式投資や​外国為替保証金取引​(FX)などを​手がける​個人投資も、​他の​本業と​両立しやすい​パラレルワークです。

インターネットの​利用拡大に​より、​最近では​アフィリエイター、​ブログ運営者、​ユーチューバー、​ソーシャルメディアで​活躍する​インフルエンサーなど、​マーケティングや​プロモーション関連の​仕事を​パラレルワークの​2足目のわらじと​する​人も​目立ってきています。

パラレルワークと​「副業・複業・兼業」の​違いとは

パラレルワークと​似た概念と​して、​以下のような​仕事の​形態が​あります。

副業……​本業を​「メイン」と​して、​「サブ」の​仕事も​持つ状態
複業……​複数の​本業を​持って​働く​状態
兼業……​本業と​別の​事業も​持って​働く​状態​(例:兼業農家)

実際の​ところ、​副業・複業・兼業には​厳密な​定義が​あるわけではなく、​複業や​兼業は​パラレルワークの​状態に​近いと​いって​差し支えないでしょう。

従来、​日本の​企業社会では​副業や​兼業を​禁止する​傾向が​あり、​厚生労働省が​提案する​「モデル就業規則」にも​ 「許可なく​他の​会社等の​業務に​従事しない​こと」 と​副業を​禁止する​規定が​ありました。

参考:副業・兼業​(厚生労働省)

しかし​2018年に​上記の​規定が​削除され、​「労働者は、​勤務時間外に​おいて、​他の​会社等の​業務に​従事する​ことができる」と​いう​規定が​新設されました。​このように、​昨今では​政府主導の​「働き方改革」の​一環と​して​パラレルワークを​含む​多様な​働き方が​推奨されるようになってきました。

参考:モデル就業規則 第14章 副業・兼業​(厚生労働省)​

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パラレルワークの​起源と​現状を​理解する

パラレルワークは​そもそも、​「パラレルキャリア」と​いう​考え方が​前提と​なっています。​パラレルキャリアとは、​世界的に​有名な​「マネジメントの​父」​こと経営学者の​ピーター・ドラッカーが​生み出した​概念で、​本業だけに​こだわらず、​他の​仕事や​ボランティア活動、​研究活動など、​複数の​キャリアを​同時進行で​築いていく​生き方を​指します。​ドラッカーは​著書​「明日を​支配する​もの―21世紀の​マネジメント革命」​(1999年、​ダイアモンド社)の​中で​パラレルキャリアに​ついて​言及し、​収入や​人生設計を​一つの​組織に​依存せず、​複数の​キャリアに​より​自立した​人間を​目指す​ことが、​21世紀の​社会に​求められると​しています。

ドラッカーの​予言にも​似た​パラレルキャリアの​考え方は、​今、​日本の​みならず世界中で​現実の​ものとなってきています。​その背景には、​以下のような​世相の​変化が​あります。

  • 価値観の​多様化や​長寿化に​より​「仕事中心」だけが​メインストリームの​人生観ではなくなってきた
  • 経済が​成熟し、​終身雇用など​旧来の​制度が​機能しにくくなってきた​変化の​スピードが​速い​社会で、​企業の​未来や​労働者の​働き方の​将来像が​見えにくくなった
  • 情報化社会の​発展に​より、​リモートワークなど​働き方の​多様性が​生まれた​ソーシャルメディアの​発展で、​さまざまな​個人コンテンツの​収益化の​道が​できた

このような​社会の​変化の​中で、​パラレルキャリアは​徐々に​現実の​ものとなり、​パラレルワークを​する​人が​増えつつ​あるようです。​働き方改革に​よる​「副業解禁」は​まだ​全ての​企業で​実現しているわけでは​ありませんが、​時代の​要請に​応じて​パラレルワークと​いう​生き方は​さらに​広がっていくと​予想されます。

参考:男性に​とっての​男女共同参画コラム​「パラレルキャリア」の​すすめ​(男女共同参画局)

パラレルワークの​メリット

パラレルワークには、​労働者と​しての​個人にも、​個人を​雇用する​企業にも​メリットが​あります。

個人への​メリット

  • 収入が​アップする
  • 経験・知識を​蓄積しやすい
  • やりがいを​得やすい
  • 一方の​仕事で​得た​学びを​他方に​生かせる​相互作用が​ある
  • 転職リスクなく​キャリアや​人脈を​形成できる

企業側への​メリット

  • 多方面から​知見が​もたらされる
  • 労働者の​人脈が​広がり、​仕事に​生かされる
  • 転職に​よる​優秀な​人材の​流出を​防げる
  • 労働者の​自律性を​育む​ことができる

パラレルワークに​より、​一つの​職場では​発揮しきれない​自分の​能力や​可能性に​挑戦できたり、​豊かな​人間関係や​知識を​得たりする​ことで​多様な​価値観に​触れ、​キャリアだけでなく​人生そのものの​視野が​広がることも​大きな​メリットです。

パラレルワークに​よりもたらされる​個人の​知識や​経験の​幅の​広がりは、​時代の​変化に​即応しやすい​企業の​組織体制を​作る​ことにも​プラスに​なります。​逆に、​パラレルワークを​認めない​企業は​こうした​メリットを​享受する​ことが​難しく、​人材不足の​時代を​生き抜く​ことが​困難になる​可能性も​あります。

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パラレルワークの​注意点

一方、​パラレルワークを​選択する​個人に​とって、​以下のような​注意すべきポイントも​あります。

労働時間の​長時間化
複数の​本業に​全力を​注ぐために、​健康を​害さないよう​注意が​必要です。

雇用保険など​福利厚生の​低減
パラレルワークの​ために​複数の​企業で​パートタイム労働を​する​場合は​注意が​必要です。​たとえば​A社で​週3日、​B社で​2日​働き、​いずれの​職場でも​勤務時間が​週20時間を​下回る​場合、​雇用保険加入の​対象から​外れてしまいます。​また、​年次有給休暇は​週の​勤務日数が​少なければ​少ない​ほど、​付与日数が​減る​ことも​留意して​おきましょう。

参考:
雇用保険の​加入手続は​きちんと​なされていますか!​(厚生労働省)
有給休暇ハンドブック​(厚生労働省)

就業規定への​違反
A社の​勤務で​得た​顧客情報を​B社の​業務に​使えば、​守秘義務違反などに​該当します。​関連業界で​パラレルワークを​する​場合は​特に​留意しましょう。

参考:11-1 ​「守秘義務」に​関する​具体的な​裁判例の​骨子と​基本的な​方向性​(厚生労働省)

こうした​注意点を​踏まえ、​被雇用者の​場合は、​企業との​間に​合意を​形成した上で​パラレルワークを​実践する​ことが​理想的です。

また、​パラレルキャリアの​提唱者である​ドラッガーは​「時間の​マネジメント」を​その課題と​して​挙げています。​パラレルワークと​いう​働き方には、​一つの​仕事に​専念する​ケースと​異なり、​複数の​ワーク間の​バランス、​あるいは​ワーク・ライフ・バランスを​自分で​調整すると​いう​タスクが​課されます。​ただ​複数の​仕事を​詰め込むのではなく、​いかに​パラレルワークを​健全に​継続するかに​重点を​置けば、​労働や​人材の​価値の​見直しや、​パラレルワーク向けの​新たな​サポートサービスの​登場などにも​つながっていく​可能性が​あります。

雇用保険などに​代表される​労働者の​支援制度は、​従来型の​フルタイムワーカーを​基準に​制度​設計が​されています。​パラレルワークへの​公的サポートの​体制は​まだ十分とは​いえませんが、​世界中で​進むパラレルワークの​深化に​伴い、​理解や​制度も​徐々に​深まっていくと​予想されます。

ビジネスにも​人生にも​新たな​価値を​提供する​パラレルワークに​ついて、​ぜひ一度​考えてみては​いかがでしょうか。

執筆は​2019年12月11日​時点の​情報を​参照しています。​2023年4月28日に​記事の​一部情報を​更新しました。​当ウェブサイトから​リンクした​外部の​ウェブサイトの​内容に​ついては、​Squareは​責任を​負いません。​Photography provided by, Unsplash