福利厚生を充実させて、事業拡大による従業員の採用をスムーズにしたいと考えている事業主も多いでしょう。
人手不足の昨今、給与に次いで福利厚生の充実を重視し会社を選ぶ人も増えており、従業員のモチベーション向上につなげるためには、福利厚生の設計を考える必要があります。
この記事では、福利厚生費とは、法定と法定外との違い、福利厚生費として計上ができる費用の具体例、福利厚生費の計算方法と気をつけるべきポイントを解説します。
福利厚生とは?
福利厚生とは、給与のほかに会社が従業員に対して支給するサービスや制度を指し、次の二つに分けられます。
- 法定福利
- 法定外福利
法定福利
法律で定められた、会社が従業員に提供すべき最低限の福利厚生が、法定福利です。その内訳は、労働保険や社会保険、その他法定福利となります。
- 雇用保険
- 労災保険
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 子ども・子育て拠出金
- 休業補償
子ども・子育て拠出金:国の子育て支援に使われるお金で、事業主は厚生年金保険とともに納める必要があります。事業主や従業員に子どもがいなくとも、従業員全員の標準報酬月額に拠出金率(2019年4月時点で0.34%)を乗算した金額を納めます。
休業補償:労災保険は休業4日目からの支給となるため、休業1日目から3日目の補償は会社側が平均賃金の60%を支払うと労働基準法で定められているものです。
法定福利に対して事業主が負担した費用は、「法定福利費」として計上可能です。
法定外福利
上記の法定福利のほかに、会社が従業員に任意で支給するサービスや制度が法定外福利です。社宅などの一般的な福利厚生にかかる費用は「法定外福利費(福利厚生費)」で計上可能です。
福利厚生費としての計上が可能な費用の具体例
法定外福利にかかる費用分を福利厚生費として計上が可能であれば、「損金」として処理できるため法人税を節約できます。
会社は自由に法定外福利を設定できますが、かかった費用分を福利厚生費として計上するには、次の条件すべてを満たすことが必要です。
- 全従業員・役員が対象
- 常識的な金額
- 現金を支給しない
たとえば、一部の役員のみ宿泊できるリゾート保養地などは対象外です。
では、下記にかかる費用に関して、福利厚生費として計上するために必要な条件を挙げていきます。
健康診断
次の条件をすべて満たせば、福利厚生費としての計上が可能です。
- 全従業員・役員が対象で、受診した全員の費用を会社が負担
- 常識的な金額
- 診療機関に会社が直接支払う
社員旅行
- 全従業員・役員が対象
- 常識的な金額
- 5割以上が参加(職場が分かれている場合は職場別に5割以上)
- 4泊5日以内(海外旅行は外国における滞在日数をカウント)
- 自己都合による不参加者には現金を支給しない
歓送迎会などの社内行事
- 全従業員・役員が対象
- 常識的な金額
- 会社が一律に費用を負担
従業員に社内行事費を現金にて支給すると、給与あるいは接待交際費として計上されます。
慶弔見舞
結婚・出産祝いや、葬式への香典、入院などへの見舞金、その他祝い品や花輪などにかかった費用は、福利厚生費としての計上が可能です。社外の人が対象のケースでは、接待交際費として計上されます。
社宅
会社が賃貸物件を借り上げ、もしくは物件を買い上げて、従業員・役員に社宅として貸している場合、対象が従業員か役員かで福利厚生費として計上が可能となる条件が異なります。
従業員:
- 賃貸料相当額の5割以上を従業員が家賃として支払う場合、差額(賃貸料相当額 − 従業員が支払う家賃)を福利厚生費としての計上が可能
- 従業員が支払う金額が賃貸料相当額の5割未満の場合は、従業員への給与とみなされる
役員:
- 役員が賃貸料相当額を支払う場合、会社の負担分を福利厚生費としての計上が可能
- 賃貸料相当額の計算方法は社宅の床面積によって変わります。また、床面積が240平米以上、もしくはプールなどの豪華な設備がある「豪華社宅」は実際の賃料が賃貸料相当額になります。
通勤
通勤費は福利厚生費としての計上が可能ですが、次の限度額を上回ると課税対象となります。
課税対象となる限度額
- 交通機関利用時:15万円/月
- 車や自転車利用で片道2km未満:全額
- 同片道2kmから10km:4,200円/月
- 同片道10kmから15km:7,100円/月
- 同片道15kmから25km:12,900円/月
- 同片道25kmから35km:18,700円/月
- 同片道35kmから45km:24,400円/月
- 同片道45kmから55km:28,000円/月
- 同片道55km以上:31,600円/月
外部からの福利厚生サービス
全従業員・役員を対象とするなら、福利厚生費としての計上が可能です。自社で福利厚生を用意するのが負担が大きいパターンでは、外部へのアウトソーシングを検討するのも有効です。
福利厚生費の計算方法と気をつけるべきポイント
気になる福利厚生費の相場ですが、日本経済団体連合会によると次のような数字が出ています。
- 法定福利費:1人あたり月額88,188円
- 法定外福利費:1人あたり月額25,369円
参照:2018 年度福利厚生費調査結果の概要(2019年11月19日、一般社団法人日本経済団体連合会)
法定福利費の計算方法
法定外福利費は、会社によって法定外福利の設定が異なるため個別の算定が必要ですが、法定福利費においては、企業負担分が定められているため試算が可能です。
法定福利費は、従業員それぞれの標準報酬月額を計算し、それに各法定福利の企業負担分の割合を乗算します。
たとえば、神奈川県の一般事業における、介護保険該当者に対する企業負担分の料率は次のようになります。
雇用保険料:0.6%(一般事業)
労災保険:0.3%(その他の各種事業)
健康保険料:11.64%(介護保険該当者)
厚生年金保険料:18.3%
子ども・子育て拠出金:0.34%(一律)
法定福利費の計算において要となる企業負担分の料率は、企業の所在地や事業の種別によって異なり、毎年改定されます。
上記は2020年2月時点での料率ですが、年度ごとに関連省庁・団体のウェブサイトを確認し、自社の状況に合った料率で算定することが必要です。
また、健康保険・厚生年金保険は、企業と個人の負担分が合算されているので、実際の計算では、標準報酬月額に料率を乗算したあと、2で割った金額が企業負担分となる点にも注意しましょう。
福利厚生は、法定福利と法定外福利とに分けられます。法定外福利を福利厚生費(法定外福利費)として計上して節税するには、全従業員が対象・常識的な金額などの、一定の条件を満たす必要があります。
優秀な人材の確保や定着のためには、条件に従ってうまく節税しながら、福利厚生を設計しましょう。
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執筆は2020年3月5日時点の情報を参照しています。
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