パソコンやスマートフォンの普及に伴い、インターネットを活用した金融サービスが数多く生まれています。ソーシャルレンディングは、インターネットを通じて個人から融資を募ることができる新しい形態の資金調達方法です。
銀行から借り入れできなかった中小事業者でも、迅速に資金を集めるチャンスがあるということもあり、近年利用者が急増しています。
本記事では、ソーシャルレンディングの概要とサービスを選ぶポイント、運用会社3社について詳しく紹介します。資金調達の選択肢として、ぜひ参考にしてみてください。
ソーシャルレンディングとは?
ソーシャルレンディングとは、英単語のSocial(社会の)とLending(融資)を組み合わせた造語で、お金を借りたい事業者とお金を運用して増やしたい投資家を、インターネットを通じて結びつける金融仲介サービスのことです。P2P Lendingとも呼ばれています。
サービスを運営するソーシャルレンディング仲介者が両者の間に立ち、以下のような流れでお金を融通します。
- 資金を借りたい企業がソーシャルレンディング仲介者に相談し、借り入れの条件を決める
- ソーシャルレンディング仲介者はファンドを組成し、インターネット上で投資を募集する
- 投資家はインターネット上でファンドを選び、出資する
- ソーシャルレンディング仲介者は投資家から集めた資金を借り手企業に貸し付ける
- 借り手企業はソーシャルレンディング仲介者に返済を行う
- ソーシャルレンディング仲介者は、返済された元利金から投資家へ分配を行う
ソーシャルレンディングは、2005年頃からイギリス・米国で普及し始めました。それ以降、ヨーロッパやアジアといった世界中で多くのサービスが誕生し、成長し続けています。日本におけるソーシャルレンディングは、2008年にmaneo社がサービスを提供したのが最初です。借り手企業から見たソーシャルレンディングのメリットは、従来型の融資に比べて資金調達するまでのスピードが早いことです。
銀行に融資を申し込む場合、まず決算書や資金繰り表など財務関連の資料をたくさん準備して提出し、審査を受けなければなりません。審査は厳格で時間がかかり、少額の融資でも入金されるまで1カ月程度かかることが多いようです。
ソーシャルレンディングでも審査はあり、財務状況などを見て返済可能性は十分精査されますが、その内容は銀行ほど厳格でなく、比較的柔軟です。
一方で、ソーシャルレンディングを利用するうえでの注意点もあります。
一般的に、ソーシャルレンディングで資金調達する際の金利は銀行から借り入れる場合よりかなり高く設定されており、5から10%程度の金利が多いようです。調達コストが高くなることは覚悟したほうが良いでしょう。
ソーシャルレンディングの選び方
ソーシャルレンディングへの投資に関して、金融庁では以下のような注意喚起をしています。
・ソーシャルレンディングの仲介者は第二種金融商品取引業の登録を受ける必要があります。登録を受けていない業者の募集等は、詐欺的な商法である可能性が高いため、一切関わらないようにしてください。
・登録業者であっても、金融庁や財務局が、その業者の信用力等を保証するものではありません。業者の情報をできる限り確認し、その業者の信用力を慎重に見極めるとともに、取引内容を十分に理解したうえで、投資を行うかどうかの判断をすることが重要です。
・ソーシャルレンディングへの投資にあたっては、投資者への情報開示が十分に図られているかどうか、また、高い利回りである場合、商品によっては、貸付先の返済遅延やデフォルトなどのリスクが高いことを十分に認識した上で、適切な投資判断をお願いします。
・高い利回りなど限られた情報のみで投資判断を行うことなく、業者が提供する様々な情報を確認してください。利回りだけを強調し、リスクに関する情報が明示されていない業者との取引は注意が必要です。
引用元:ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください(金融庁)
借り入れする際も同様に、慎重に複数のサービスを比較して選ぶことをおすすめします。比較の際に着目すべきポイントは、以下のようなものがあります。
信頼できる運営会社であること
まずは、サービス運営会社の信頼性について確認しましょう。第二種金融商品取引業の登録をしている会社であることを前提に、運営会社が上場している、もしくは上場企業の関連会社である、またサービスの運営実績が長いかどうか、金融庁による行政処分を受けたことがあるかなども、比較評価する際のポイントです。
金利を確認する
前述した通り、ソーシャルレンディングの金利は総じて高くなりがちです。業者が金利の設定範囲を公表している場合は必ず確認しましょう。
貸付条件
ソーシャルレンディング仲介業者が貸付条件を公表している場合は、自分の望む条件で借り入れできるか必ずチェックしておくようにしましょう。返済方法、返済期間、保証人・担保の設定など、注意すべき点は銀行の融資と同じです。
ソーシャルレンディング代表的な3社
日本で実績のあるソーシャルレンディング仲介業者を紹介します。
※ここでの紹介は信用力を保証するものではありません。各仲介業者を十分に検討したうえでご利用ください。
1.maneo
maneoは、日本で初めてソーシャルレンディングサービスを提供したパイオニア的な存在の会社です。2019年12月現在で成約金額は1,600億円を超えており、さまざまな業種の企業がmaneoのサービスを通じて資金を調達しています。また会員数も8万人を超えています。
会社概要
運営会社 : maneoマーケット株式会社
設立日 : 2007年8月30日
資本金 : 308,518,500円
実績(2019年12月末時点)
成立ローン金額 : 1,644億万円
会員数 : 87,815人
貸付条件
貸付の種類 : 証書貸付
貸付利率 : 実質年率15.00%以内
貸付金額 : 5万円から
返済方式 : 一括返済、元利均等返済、元金均等返済
返済期間 : 1カ月から60カ月
返済回数 : 1回から60回
担保・保証人: 連帯保証人・担保を求められる場合あり
手数料 : 申し込み時の事務手数料、成約手数料ゼロ
2.SBIソーシャルレンディング
SBIソーシャルレンディングはSBIグループに属する会社が提供するサービスで、maneoに次いで業界第2位の規模を誇っています。SBIグループはインターネット専業銀行の住信SBIネット銀行などで知られる大手金融グループであり、その信用力などを背景にしてSBIソーシャルレンディングは着実に貸出額を増やしているようです。
会社概要
運営会社 : SBIソーシャルレンディング株式会社
設立日 : 2008年1月24日
資本金 : 10,000,000円
実績(2019年12月時点)
貸付総額(累計) : 931億8,625万円(オーダーメイド型ローンファンド)
会員数 : 42,181人
貸付条件
オーダメイド型で、利用者と協議して決める。
3.クラウドバンク
クラウドバンクは日本クラウド証券株式会社というクラウドファンディング専業証券会社が提供するサービスで、子会社のクラウドバンク・フィナンシャルサービスを通じて貸付を行なっています。上場企業、中小企業の資金調達の他にも、個人事業主でも借り入れ申込できるのが特徴です。
さまざまなファンドを取り扱っていますが投資先は厳選しており、融資元本回収率は100%を誇っています。借り入れには原則担保が必要ですが、担保の取り扱い種類は豊富で、中小事業者でも準備しやすくなっています。
会社概要
運営会社 : 日本クラウド証券株式会社
資本金 : 100,000,000円
実績(2019年12月時点)
累計応募金額 : 776億円
融資元本回収率 : 100%
貸付条件
貸付の種類 : 証書貸付
貸付利率 : 実質年率4%から20%以内 (融資取扱手数料2%から6%を含む)
貸付金額 : 最大10億円
返済方式 : 一括返済、元利均等返済、元金均等返済、自由返済
返済期間 : 7日から60カ月
返済回数 : 1回から60回
保証人 : 必要
担保 : 不動産、有価証券、預金担保、売掛債権
ソーシャルレンディングサービスは近年急速に普及が進み、銀行からなかなか融資を受けられない小規模の事業者でも資金調達できるチャンスが増えてきています。ただし調達コストは高くなりがちなので、返済の資金計画には注意して利用を検討するのが良いでしょう。
執筆は2020年1月2日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash