業務を自動化する、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)とは

少子高齢化で生産労働人口が減少する中、業務を自動化する取り組み「ロボティック・プロセス・オートメーション」(RPA)が注目を集めています。今回は、人手不足解消や業務効率アップを目指して、RPAの導入を検討しているビジネスオーナーに向けてRPAについて説明します。

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RPAとは

RPAとはRobotics Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の頭文字をとった単語で、ロボットにより業務プロセスを自動化する取り組みを意味します。「ロボティック」という単語から大型のロボットをイメージする人もいるかもしれませんが、必ずしもそうではなく、プログラムにデータ入力などのパソコン操作を記憶させて自動化するような比較的規模の小さなものもRPAに含まれます。下記の一般社団法人日本RPA協会のウェブサイトの説明からもわかるように、RPAの範囲はとても広いものです。

これまで人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習等を含む認知技術を活用した業務を代行・代替する取り組み

出展:一般社団法人 日本RPA協会

RPAは、少子高齢化が進み、人手不足が深刻化する中で日本政府も注目している技術です。RPAは大企業のためのものだけでなく、中小企業でも導入できる技術で、2019年版の中小企業白書にもRPAに関する記述があります。

参考:2019年版 中小企業白書 第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命 第2章 先進的なIT利活用(中小企業庁)

中小企業白書によると、AI、IoT、ビッグデータに続いてRPAは認知度が高く、間接部門の生産性を向上させる技術として注目されているようです。AI、IoT、ビッグデータ、RPAの少なくとも一つを活用している企業はそうでない企業に比べて、売り上げや利益の伸び、生産性が向上している割合が高いというデータも示されています。

中小企業でRPAを導入し効率化を図れる業務として事務作業があります。定型的な情報の取得やその入力、情報の突き合わせや検証、レポートの作成などがこれにあたります。総務省が発行のICTに関するメールマガジンでは、RPAが適用可能な作業についてより詳しく説明しています。

参考:M-ICT ナウ vol.21 2018 年5月第2号 RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)(総務省)

現在従業員が目視や手作業で行っている業務の中で、自動化できそうなものがあることに気づいた人もいるのではないでしょうか。

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RPA導入で期待できる効果と導入のポイント

「生産性の向上」というと漠然としていますが、一言でいうと、機械に任せられる作業は機械に任せて足りない人手を重要な業務に当てて業務を効率化しようというものです。

プログラムやロボットに人の仕事が取って代わられてしまうという悲観的な見方もありますが、人間とAIをはじめとするプログラムやロボットでは得意な作業が異なります。

たとえばデータ入力やデータの突き合わせといった作業はプログラムが得意とするものです。人間にとって単調な作業を続けるのは辛く、長時間続けるとミスが発生する確率が高くなります。一方で、機械は同じ作業を長時間続けても苦にすることはなく、プログラムさえきちんと組まれていれば人と比べてミスも少ないでしょう。さらに昨今ではビッグデータが蓄積されマシンパワーが向上したことから人工知能の利用も活発になり、大企業ではより高度な判断を下せるプログラムやロボットが導入されるようになっています。

現在中小企業で導入が検討されているRPAは、処理の内容が明確で繰り返し大量に発生する作業に向いています。RPAの導入にあたっては業務内容を整理し、どこにRPAを適用可能か、どこに適用すると最も効果が上がるか検討することから始めましょう。また、特にRPAで置き換えを検討する業務を担当する従業員とのコミュニケーションも忘れないようにしましょう。自動化した作業の監視やその他の業務を含めどのような代替業務があるかといった事柄の丁寧な説明が必要です。

プログラムやロボットを恐れてもその進歩は止まりません。それならば活用できるところにRPAを導入して、足りない人手を人にしかできない業務に当てるのが賢明です。実際導入してみると、単純作業の煩わしさから解放され、ミスの心配も減り、よりクリエイティブな作業に時間を活用できることから業務が充実し、売り上げや利益、生産性の向上につながると考えられます。

中小機構のウェブサイト「J-Net21」には導入支援や助成プログラム、各地でのRPAに関するセミナーの情報が掲載されています。東京商工会議所のようにRPAの講座を提供している商工会議所もあります。より自身の事業に沿って具体的にRPAの導入を検討したい場合はこれらの機会を生かし、疑問や懸念事項について専門家やすでに導入に成功した経営者に質問してみるのも一つの手です。

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おすすめのRPAツール3選

複雑な業務を扱えるRPAから一つの業務に特化したRPA、パソコンの中で完結するものからロボットを扱えるものまで、さまざまなRPAツールが提供されています。ここでは比較的導入のハードルが低く、小さい範囲から使い始められるRPAツールを三つ紹介します。

Robo-Pat(ロボパット)

株式会社FCEプロセス&テクノロジーが提供するRPAツールです。プログラミングの知識がなくても従業員が自分で業務を自動化できることを強みにしています。すべてのブラウザやソフトウェアに対応しているため、現在の環境を変えずにRPAを導入できるのも魅力です。無料で1カ月間試用できます。

WinActor(ウィンアクター)

NTTグループで研究・開発され、利用されているRPAツールです。Windows上での操作を記憶し、業務を自動化します。プログラミングの知識は必要ありません。環境は限られてしまいますが、NTTブランドと安心のサポートで国内シェアNo. 1です。導入企業は比較的大きな企業が多くみられますが、WinActorのウェブサイトでは中小企業での事例も紹介しています。手頃なトライアルも提供しているとのこと。WinActorが気になった方はウェブサイトから問い合わせてみてください。

SikuliX(シクリ)

アメリカのマサチューセッツ工科大学のオープンソース研究プロジェクトとして2009年に開発が始まったオープンソースのRPAツールです。Windows、Mac、Linuxに対応しています。Robo-PatやWinActorのように充実した日本語でのサポートはありませんが、通常最低年間数十万円の出費を覚悟する必要のあるRPAツールを無料で利用できます。2019年8月現在ソフトウェアのアップデートも活発で、ITやプログラミングに詳しい従業員がいる、英語が得意で積極的にオープンソースのRPAツールの導入に取り組んでみたいという場合には導入を検討してみる価値がありそうです。

また、RPAツールの多くは提供企業に問い合わせたり、セミナーに参加したりしてトライアルが可能になりますが、SikuliXはすぐにダウンロードして使うことができます。RPAツールとはどのようなものかとりあえず見てみたいという人はインストールして使ってみるとよいでしょう。

執筆は2019年8月22日時点の情報を参照しています。
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