共同経営とは?個人事業主でもできる?メリットやトラブル回避術を紹介

企業の経営スタイルの一つに共同経営があります。事業を進めていくにあたって、1人に比べて効率化などが望める半面、複数人ゆえのリスクもあり、準備が不十分なまま進めると当初のプランが実現できなくなる可能性もあります。

今回は共同経営の代表的なパターンから役割分担の方法、メリット・デメリット、必要な準備や手続きまで紹介します。

目次


共同経営とは

共同経営についての明確な定義はありませんが、一般的には「一つの事業を2人以上の人間が対等の立場で経営していくこと」と捉えられています。複数の人間が経営をリードすることによって相乗効果を発揮し、1人では為し得ないことが望める点が大きな魅力です。

共同経営の代表的なパターン

共同経営とひと口に言っても、取り組み方はさまざまです。代表的なパターンを三つ紹介します。

法人企業を共同で設立する

株式会社をはじめ、法人格を持つ会社を立ち上げるパターンです。複数の経営者が出資する場合と、1人が単独で出資して事業を設立し、経営を複数人で行う場合があります。

複数人が出資する場合、出資の比率はそれぞれ自由に選ぶことになります。ただし意思決定権は出資率が過半数以上だと握りやすくなり、過半数未満だと握りにくくなります。

法人登記をすると個人事業と比べて以下のようなメリットがあります。

  • 社会的な信頼性が高まる
  • 融資が受けやすくなる
  • 節税がしやすくなる

多くの利益を見込んでいる場合は、法人格のある会社を設立したほうがメリットが多いかもしれません。ただし、法人をはじめるにはそれなりのコストがかかることは念頭に置いておきましょう。会社の設立にはおおよそ30万円前後、資本金は信用を得るためにも300万円以上が理想的だといわれています。

LLP(有限責任事業組合)やNPO法人(特定非営利活動法人)を設立する

代表者と経営者が対等な関係性であることを望む場合は、LLP(有限責任事業組合)やNPO(特定非営利活動法人)の設立を検討するといいかもしれません。LLPやNPOは資金よりも人の能力や技術、専門性に重きを置いた組織であるのため、株式会社などとは異なり、出資の割合で議決権が決まることはなく、1人ひとりが票を持ち、多数決で意思決定を行うことが一般的です。加えて資本金がゼロでも設立可能なため、会社と比べてコストがかからず、短期間で設立できる傾向にあります。

個人事業主として共同経営する

個人事業主として共同経営をする方法もあります。大きくは以下の2パターンです。

  • 全員が個人事業主として共同経営する
  • 代表者のみが個人事業主になり、そのほかは下請け、あるいは従業員になる

全員が個人事業主として共同経営する

全員で一つの組織を運営するのではなく、個々が自身の事業を持ちながら互いに力を貸し合い、共同で経営を進めていきます。この方法だと全員が代表になるため、対等な関係が築きやすいでしょう。

ただし、一つの案件に全員が参加するとなると少し厄介です。一般的な組織であれば売り上げは法人口座など、1カ所に振り込まれるでしょう。ところが全員が個人事業の場合は、全員の間で均等に分けた売り上げを、個々の口座に入金してもらう必要があります。契約も参画する個人事業と個々に結ばなければいけません。そのため、取引先にとっては負担が大きくなるでしょう。売り上げは均等に分けることになるため、誰かが大きな成果をあげたり、経費を多くかけたりした場合に、どう対応するかは事前に考えておかなければいけないでしょう。

代表者のみが個人事業主になる

上記の煩雑さをなくすには、1人だけが個人事業主として代表になる、という手もあります。意思決定権は代表が握り、ほかの共同経営者は従業員や下請けとして事業に参画します。売り上げは個人事業主が1人で管理するため、報酬や業務量の配分もしやすいでしょう。ただし1人が代表でそのほかの共同経営者は従業員となると、共同経営者間で上下関係ができてしまうことは否めません。

共同経営の役割分担について

共同経営者の役割はどのように決めていくべきでしょうか。二つの角度から見ていきましょう。

業務

担当業務という視点から役割や責任の範囲を定める方法が挙げられます。共同経営で気をつけたいのは、1人ひとりがあらゆる業務を満遍なくこなすことで責任の所在が曖昧になってしまうことです。小さい組織ほど難しいかもしれませんが、業務の範囲を区切り、日常的な意思決定は業務担当者に託すという取り組み方があります。

出資率

株式会社を設立する場合は、それぞれの出資率を参考にすることもできるでしょう。株式会社だと共同経営者の関係性は出資の割合によって決まるからです。詳しく見ていきましょう。

(1)それぞれの出資率が均等、あるいは50.1%以下の場合

株式会社において単独で意思決定を行うには、過半数以上、あるいは3分の2以上の出資率を占めている、という決まりがあります。一方でそれぞれの共同経営者の出資率が均等、あるいは50.1%以下だと基本的には全員が決定権を持ち、過半数以上の意向が尊重される形になります。よって後者を採用すると、共同経営者間での対等な関係性が保ちやすいといわれています。平等に意思が尊重される点では、前述のNPO法人(特定非営利活動法人)や、法人格のないLLP(有限責任事業組合)も同じでしょう。

こういった場合は、業務量や責任の範囲、報酬においても平等性を保ちやすいかもしれません。

(2)1人の出資率が50.1%以上の場合

株式会社では、共同経営者のうち1人の出資率が過半数以上を占める場合、上下関係のある共同経営が成り立ちやすいものです。具体的にいうと過半数以上の割合で出資した人が意思決定権を握りやすいことが、上下関係を作り出しているといえます。

この場合、出資率の一番多い代表取締役を社長とし、出資率が少ない人を副社長や、会長などとして、業務や責任の範囲を決めていくことができるかもしれません(※)。

※代表取締役は複数人置くことができます。

なお、出資率によっては、決議に単独で否決することもできます。株式会社では以下のような仕組みになります。

出資率の割合 単独の決定権 単独での否決 ほかの株主と共同して、過半数、または3分の2を超える意思を表明できれば、決定権を持つことができる
3分の1(33.4%)以上、過半数(50.1%)以下 ×
3分の1(33.4%)未満 × ×

過半数以上出資している人の意見が尊重されやすい仕組みではありますが、ほかの株主の意思によっては決議が通らない可能性もあると覚えておくといいでしょう。

(3)1人だけが出資者になり、共同経営をする

上記は事業に参画する共同経営者が全員ある程度出資していることを仮定した場合でした。しかし共同経営者が全員出資しないといけない、という決まりはありません。よって1人の共同経営者が出資をし、ほかの共同経営者は出資をせず、経営にだけ取り組むという役割分担もよくあります。特にビジネスをはじめる際にノウハウのある人物を共同経営者として招き入れたいということもあるでしょう。この場合、最終決定権は出資者のみに託されます。

共同経営のメリット

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続いて、共同経営のメリットを見ていきましょう。

業務の合理化

まず挙げられるのが業務の合理化です。役割分担をすることによって、それぞれの苦手な分野は相手に任せ、お互いの得意分野を生かした積極的な経営が可能になります。体力的にも、精神的にも余裕が生まれるとともに、万一どちらかが病気などで仕事ができなくなることがあっても、経営者として当座の対応はこなせるため、業務を停止させることなく運営が進められる点も魅力の一つといえます。

資金面の負担減

資金を出し合って起業できるので、1人あたりの出資負担を軽減したり、借り入れを抑えたりすることが可能です。そのため、大きな資金をベースにスタートするのにも適しています。

経営責任の分担

経営上の責任を分け合う形がとれるため、それぞれの心的負担が軽くなります。辛いことを軽減し、嬉しいことを分かち合えるのが共同経営の心的メリットといえるでしょう。

コネクションの広がり

人脈が経営者の分だけあるので、事業を拡大していくために必要なコネクションも相応に広がります。特に起業時には、人脈の多さが受注量に影響することが多いので、共同経営のパートナーにはなるべく自分と異なる分野のコネクションを持つ相手を選ぶというのも戦略の一つになるでしょう。

相談相手の存在

重要な経営判断が求められる場面に遭遇した際に、対等な立場で相談できる相手が身近にいるというのも大きなメリットです。共同経営者の存在があることで、経営者の多くが感じる孤独感に悩む機会も減ることが期待できます。

多角的な視点からの判断

たった1人で全ての経営判断を下していくとなると、客観的に物事を見ることが難しくなったり、冷静に物事を見ることができなかったりすることもあるでしょう。共同経営のパートナーがいると意見交換ができるようになり、自分にはなかった視点で物事をとらえられることもあるかもしれません。場合によってはよりよい判断を下せたり、効率よく戦略を実践できたりすることもあるでしょう。

共同経営のデメリット

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共同経営にはデメリットも内在します。主に、以下のようなものが挙げられます。

経営スピードの低下

経営者が複数いることによって意見をまとめるのに時間を要する場面が多くなると、意思決定までに時間が長くかかるかもしれません。特にスピード感で勝負しているような組織では、マイナス要因となるので、スピーディーな意識決定ができる体制づくりが求められます。

パートナーとの関係構築

経営を円滑に進めるために、経営パートナーとは良い関係を保ち続ける必要があります。そのためには相手への気遣いが不可欠となりますが、時としてその気遣いがストレスを生むことも考えられます。経営している企業の存在意義や将来のビジョン、価値観などをしっかりと共有し、気の置けないパートナーシップづくりを目指しましょう。

プライベートな関係への影響

共同経営者との関係を仕事だけと割り切っていれば大きな問題はありませんが、友人や親族など公私にわたって付き合いがある場合、ビジネス上の関係悪化がプライベートにも及ぶケースがみられます。ビジネスとプライベートの線引きをはっきりさせておくことが対策の一つでしょう。

責任の所在が曖昧になる可能性

複数人で経営をする際には業務の範囲を明確にしておかないと、責任の所在も曖昧になりやすくなります。最悪の場合を想定した話にはなりますが、たとえば事業が失敗したとき、1人ひとりの責任範囲があやふやだと借入金の返済額を誰がどれくらい負うかなどが決めにくくなる可能性もあります。責任範囲はあらかじめ明確に決めておくことが大切でしょう。

方向性の違い

ビジネスを進めていくうえで方向性の違いが生まれることは決して稀ではありません。このときに意思決定権を対等に握っていると、物事が決めにくくなり、片方の意見が取り入れられるともう片方の不満が募るなど、お互いの関係にますます亀裂が生じてしまう恐れがあります。このためにも出資率は均等にせず、最終決定を下すのは1人にしておいたほうが何かとスムーズかもしれません。

金銭トラブルの発展

共同経営で不満を生み出しやすいのは、利益の配分です。出資率なども配慮しながら、それぞれの納得のいく形で設定していくことが必要になるでしょう。

また、人間関係が悪化し、誰かが共同経営の解消を望んだ場合はどうでしょう。事業権利の配分などによっては、共同経営を解消することで事業が破綻してしまうこともありえます。このような事態を招かないためにも事前に共同経営契約書などを交わしておくのが望ましいでしょう。

共同経営を行う前の準備や必要な手続き

共同経営を成功させるためには、事前の準備を綿密に行っておく必要があります。重要なのは、責任範囲の明確化と出資比率、報酬の取り決めなどが挙げられます。

責任範囲の明確化

経営責任について、誰がどの範囲を受け持つかを事前に明確に決めておくことが大切です。さらに、責任範囲が曖昧な事象が発生した際には代表取締役が担当するなど、責任のなすり付け合いにならないように、あらかじめ取り決めを行っておきましょう。

出資比率

共同経営の役割分担について」でも触れたように、株式会社の場合は、出資比率によって決定権が決まります。取締役の人事や役員の報酬など普通決議は過半数(50.1%以上)の株を持つことで、定款の変更や事業の譲渡、合併などの特別決議は2/3以上(66.7%以上)の株を持つことで、決定権が得られます。起業の際には共同経営者とよく話し合い、実際の経営責任に応じた出資比率にして、トラブルを回避できるようにしておきましょう。

報酬の取り決め

事業が軌道に乗るまではあまり問題にならないことが多いですが、ある程度利益が出るようになってくると報酬に関するトラブルが出てくる可能性があります。経営への貢献度合いを厳密に測るのは難しいことですが、あらかじめ報酬の算定方法に関してお互いに納得がいくように取り決めておくことが重要です。

共同経営契約書の作成

共同経営を進めていくうえでは、大なり小なり経営者同士のトラブルは発生し得るものとして、あらかじめ対策を用意しておくことが危機回避につながります。たとえば、起業時に共同経営契約書を作成し、取り決めた内容を文面で残しておくことが肝心です。また可能な限り、問題が発生した際の解決手段も決めておき、共同経営契約書に明記しておくようにしましょう。

中小機構では共同経営者が2人だった場合の作成例を公開しているので、参考にしてみてもいいかもしれません。基本的には以下の内容を含めるといいでしょう。

  • 経営者の氏名
  • 事業の目的や内容
  • 事務所の所在地
  • 契約期間
  • 業務の範囲と分担の方法
  • 利益・損失配分
  • 契約解除の条件
  • 契約解除時の精算に関する取り決め
  • 反社会的勢力の排除
    など

契約書を作成する方法はさまざまですが、決済代行会社のSquareなら、無料、かつ簡単に契約書を作成することができます。必要なのは、Squareの無料アカウントだけ。既存のテンプレートを編集して使うこともできれば、独自の契約書をいちから作成することもできます。電子署名で締結する契約書は、アカウント内で保管、または出力して印刷することも可能です。

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調整役の雇用

さらにトラブルを未然に防ぐ方策としては、調整役として社外取締役やコンサルタントなどの仲介者に関わってもらうことも効果的な方法です。経営のスタイルに合わせて取り入れてみてはいかがでしょうか。

一般的に共同経営のトラブルは、経営の不調時に発生することが多く、好調時に発生することは少ないようです。良い結果を重ね続けることが、お互いの信頼を高めていくことにもつながるので、業績の向上がさらに強固な関係を作りだすという良いスパイラルを生み出せるよう意識し、健全な経営を進めましょう。

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パートナー選びが重要

共同経営成功への鍵は、自分にとって良きパートナーを選べたかどうかにあります。友人としてはとても信用できる相手でも、経営のパートナーとして適しているかどうかは、なかなか見抜けないものです。特に初めての起業で不安がある場合には、あえて過去に起業経験のあるパートナーを選んでリスクを軽減するという考え方もあります。

1人で経営を進めていくにはどうしても限界がありますが、共同経営という形態を上手に利用すれば、実際の経営者の人数以上の成果を出すことも期待できます。最適なパートナーをしっかり選び、共同経営の成功を目指しましょう。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2018年6月6日時点の情報を参照しています。2023年7月12日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash