同じ商品を、ネットショッピングで購入する際と、実店舗で購入する際に消費者にとって気になるのが、送料です。近年では、大手配送会社による配送料金の値上げにより、大手企業が相次いで送料値上げに踏み切っています。一方で、送料無料で成功している企業も存在します。
参考:
お歳暮の配送料、値上げ相次ぐ 百貨店など物流コスト増、企業努力だけでは吸収できず(SankeiBiz、2018年11月21日)
ヨドバシ・ドット・コムが送料無料を貫いても大成功している理由(ダイヤモンド・オンライン 2018年8月1日)
オンラインストアのオーナーの中には送料を無料にすべきかどうか検討をしている人もいるかもしれません。今回は、送料の種類、送料無料を導入するメリットについて解説します。
ネットショッピングを利用する理由
2015年の情報通信白書によると、ネットショッピングの利用率は全年代平均で7割を超えています。
参考:平成27年版情報通信白書 インターネットショッピングの利用状況(総務省)
7割を超える人がネットショッピングを利用する理由は何でしょうか。前述の調査によれば、「実店舗に出向かなくても買物ができるから」「24時間いつでも買物ができるから」「実店舗よりも安く買えるから」「自宅に持ち帰るのが大変な重いものが手軽に買えるから」といった理由が上位を占めています。他には、同一商品または類似商品の価格を比較できる、購入した人の口コミや評価を見られるといった理由もあるでしょう。実店舗よりお得に、時間や場所を問わず買い物ができ、買ったものは家まで届けてもらえるという利便性が、ネットショッピングの強みといえます。
送料の設定
オンラインストアの送料設定にはいくつかの種類があり、ショップ側が送料の一部またはその全額を負担することがあります。
全国一律料金
全国どこに配送しても同じ金額の送料を適用します。離島など一部の地域を対象外にすることもあります。
購入金額に応じた送料無料
一定以上の金額を購入したお客様に送料を無料にします。
配送エリア別送料
配送エリアを分けて、エリアごとに送料を設定します。
配送手段別送料
宅配便やメール便など、配送手段によって異なる送料を設定します。
全品送料無料
購入金額に関わらず、全国一律送料無料、もしくは一部の地域を除いて送料無料という場合です。
送料に対する消費者の心理
ネットショッピングでは、購買者が商品を選択しカートに入れたにもかかわらず、買い物を中断してしまうことを「かご落ち」と呼びます。2018年1月に株式会社ジャストシステムが行った調査では、「かご落ち」の経験者は回答者の7割を超え、中でも「カートに入れても購入しないことが多い」と答えた回答者の約36%が、購入しない理由を「送料や手数料が高かったため」と答えています。
参考:ECのカゴ落ち、理由は「送料・手数料の高さ」/10代のQR決済利用率は約3割【ジャストシステム調査】(2019年2月14日、MarkeZine)
送料や手数料は、できるだけ安く購入したいという消費者の気持ちに大きく影響することがわかります。
送料無料のメリット
消費者の購買心理を左右する送料。無料にした場合、以下のようなメリットが考えられます。
購買者にとってのメリット
計算が簡単
合計の支払い金額が購入金額と同じなので、合計金額がわかりやすくなります。
決済までのフローが明確
注文から決済までのフローが明確です。送料が別途かかる場合は、配送料金一覧や配送条件が記載されているページなどを開いたり、商品をカートに入れてから送料の額を確認したりなど、ひと手間増えます。支払いまでの手間が増えれば、購買意欲が低下してしまう可能性があります。送料無料なら、最小限のステップで商品の選択からお会計まで進めてもらうことができます。
販売者にとってのメリット
競合他社との差別化
仕入先との契約で商品の価格を下げられない場合などに、送料無料を設定することで競合との差別化を図ることができます。
まとめ買いの促進
「5,000円以上送料無料」など、一定額以上を購入したお客様に対して送料無料にすることで、「送料無料になるなら二つ買っておこう」「5,000円以上にするためにこれも買おう」という心理が働き、複数個の購入やまとめ買いが増え、客単価アップが期待できます。
新規獲得
新規の顧客を獲得したい場合は、「お一人様一回限り送料無料」「初回注文のみ送料無料」といった方法を使うのも効果的です。送料の負担をなくすことで、新しい商品を購入するときの「失敗したらどうしよう」という購買者の迷いや不安を軽減することが期待できます。
リピーターの獲得
定期購入のお客様限定で送料無料を導入するなど、リピーターを増やす手段としても使えます。
送料無料導入のヒント
送料無料を導入する際のヒントを紹介します。
少額商品コーナーを設ける
一定額以上で送料無料にするなら、注文金額にあと少し足りないという時に買い足しができるよう、少額の商品を設けましょう。500円、1,000円など金額別で商品を探せるようにすると、購買者にとって親切です。
期間限定キャンペーン
「感謝祭」「創業祭」「クリスマスセール」など、期間限定で送料無料キャンペーンを導入してみるのも良いでしょう。送料無料の導入を迷っている場合、期間を限定して売り上げ高の変化をみることで、今後の送料設定をどうするか考える際の判断材料にすることもできます。
送料無料は広告費と考える
ショップ側が負担する送料を広告宣伝費として考えることもできます。ネットショッピングでは、口コミやレビューなど購買者の反応が売り上げにリアルに反映されます。「送料無料でお得に買えた」という口コミが増えれば、今後の売り上げにも大きく影響します。
送料無料は、オンラインストアの差別化や、購買者心理を左右するポイントです。利益とのバランスを考えつつ、購買者の利便性と満足度を高めるために、導入を考えてみてはどうでしょうか。
執筆は2019年2月22日時点の情報を参照しています。2019年4月23日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash