※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
ビジネスの現場では、契約書や請求書などへの署名・押印が日常的に行われています。しかし、近年は電子契約やデジタル署名が普及し、印鑑の役割や必要性を見直す動きが進んでいます。
本記事では、署名や印鑑の基本的な意味と法的根拠、実際に起こりうるトラブル、そして電子化時代におけるリスク回避と効率化のポイントを解説します。
📝この記事のポイント
- 署名・押印は「本人確認」と「意思表示」を証明する重要な行為
- 実印や銀行印の紛失・偽造による不正取引など、印鑑トラブルはリスクになり得る
- 印鑑の種類と役割(実印・銀行印・認印)を正しく理解し、適切に管理することが重要
- 電子契約やクラウド請求書の導入により、脱ハンコ化が進み業務効率と安全性が向上
- Squareを活用すれば、印鑑不要の請求・支払い管理を無料でスムーズに行える
目次
- なぜ署名し、印鑑を押すのか?
- 署名・印鑑によるトラブル
- 署名・印鑑の基礎知識
・署名
・実印
・銀行印
・認印 - 署名・印鑑のトラブルを回避するポイント
・安易に印鑑・署名を用いない
・実印と印鑑(登録)証明書をセットで用いる
・会社の実印と銀行印を別々に管理する
・実印に偽造の防止策を講じる
・銀行印は厳重に管理する - もし実印や銀行印を紛失したら
・実印を紛失したら
・銀行印を紛失したら - 脱ハンコの流れ
・押印が不要な文書の見直しから始める
・Squareで実現するスマートな請求業務 - まとめ
なぜ署名し、印鑑を押すのか?
契約書や株主総会議事録、請求書、領収書、日頃からさまざまな書類に署名(サイン)または押印をしている経営者が多いのではないでしょうか。署名や押印は、「この内容に合意する」と意思表示をし、その内容に責任を負うことを意味する行為です。
民事訴訟法第228条では、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と定められており、署名や押印が本人の意思によるものであるとみなされます。
近年では、書面の代わりに電子データで契約を締結するケースが増え、「電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)」により、電子署名にも手書きの署名や押印と同等の法的効力が認められています。たとえば、電子契約サービスなどを利用すれば、署名や押印と同様に「本人の意思表示」を残すことが可能です。
このように、署名・印鑑の役割は「本人確認」と「意思の証明」にあります。紙の書類だけでなく電子データでも、経営者には正しい理解と管理が求められます。
ちなみに、弁護士ドットコム株式会社が自社サービス導入企業209社を対象に2024年6月に実施した調査1によると、過去1年で8割超が社外手続きで印鑑を利用しており、印鑑をやめられない理由として6割以上が「顧客や取引先の意向で電子化が難しいから」としています。
署名・印鑑によるトラブル
印鑑や署名は本人の意思を示す重要な行為ですが、その性質上、不正利用や偽造により大きな損害を招くおそれがあります。ここでは、実際に起こり得る代表的なトラブルを紹介します。
例1. 銀行口座からお金を勝手に引き出される
銀行印の紛失または偽造により、銀行の窓口で手続きをして不正にお金が引き出される可能性があります。たとえば、従業員が個人の借金返済に充てるなど私的に流用するため、会社の銀行口座からお金を引き出すことも考えられます。
例2. 知らない間に会社の不動産が他人に売却される
会社の実印の紛失または偽造により、経営者の意思に反して不動産が不正売却される可能性があります。売買契約を交わすだけでなく、法務局で名義変更が行われることも考えられます。
実際、不動産会社の経営者になりすまして、14億円以上をだまし取ったある地面師事件では、経営者の個人情報をもとに偽物の運転免許証を作成したうえで、それを使って印鑑登録を変更するという手口が使われています2。
署名・印鑑の基礎知識
署名や印鑑は意思表示をする手段であり、その方法はさまざまです。
署名
契約書などに自分の名前をサインする行為が「署名」です。
仮に印鑑を押さなくても、署名が本人の意思によるものであれば、有効な意思表示とみなされます。そのため、署名した以上は「印鑑を押していないから責任はない」と主張することは難しいと考えられます。署名をすれば、必ず筆跡が残ります。筆跡鑑定によって本人であることが特定できれば、意思表示をしたことが証明されます。
実印
実印は、個人または法人が自治体や法務局に登録した印鑑のことです。個人と法人で登録先が異なり、それぞれ1つしか登録できません。
- 個人:印鑑登録証明書(市区町村役場に登録)
- 法人:印鑑証明書(法務局に登録)
実印が必要な書類は主に以下のものです。
- 不動産の取引
- 法人の登記
- 金融機関からの融資
- 代表取締役に就任する際、法務局に提出する「就任承諾書」
銀行印
実印と銀行印を併用する会社もありますが、両者の役割は異なります。銀行印は金融機関とお金をやり取りするための印鑑です。
たとえば、経営者の意思に反して、従業員が銀行口座から普通預金を引き出したとします。法律上、預金者を除いた他人の引き出しは無効ですが、銀行印と金融機関への届出印の見分けがつかなければ、お金を引き出せてしまう可能性があります。
認印
認印(みとめいん)は、公的機関や金融機関に届けていない印鑑のことを指します。三文判(さんもんばん)とも呼ばれます。
通常、既製品の比較的手に入りやすい値段で購入した印鑑を認印として使用している会社が多いのではないでしょうか。印鑑登録がされていない認印は荷物の受け取り時など重要度の低いことに使用するのは問題ないですが、実印が必要な重要書類の押印に用いるのは避けるべきでしょう。
署名・印鑑のトラブルを回避するポイント

署名や押印に関するトラブルは、時に会社の信用や存続に関わる重大な問題へと発展します。そこで、署名・印鑑に関わるトラブル回避のポイントを解説します。
安易に印鑑・署名を用いない
「内容を確認せずに署名した」「印鑑を貸した」といった行為は、のちに契約の無効を主張する際に極めて不利になります。
押印の場合、印鑑(登録)証明書と実印をつき合わせて本人確認する必要があります。署名の場合は筆跡が本人の意思表示を証明するものになります。実印を押し、署名をした書類に対して、その無効性を主張するのは簡単ではないことが考えられます。内容を確認せずに安易に押印、署名をしないことをおすすめします。
実印と印鑑(登録)証明書をセットで用いる
認印による記名押印は本人確認ができません。そのリスクを回避する方法が実印と印鑑(登録)証明書をセットにして、客観的に本人確認ができるようにするのがポイントです。
会社の実印と銀行印を別々に管理する
会社の実印や銀行印を安易に使えないようにしている会社が多いのではないでしょうか。両者は別々に管理することをオススメします。
たとえば、経理担当の従業員に銀行印を用いてお金を引き出す裁量を与えているとします。そのとき、会社の実印と共に使用している場合、同時に不動産の所有権を移転させるなど会社の重要事項を経営者の意思に反して実施する権限を与えてしまっている可能性があります。
実印に偽造の防止策を講じる
実印や銀行印の偽造は、印影をスキャナーで読み取ったデータをもとに作成されることがあります。そのため、書類に実印を押すときは、署名や記名した文字の上に印影を重ねることがポイントとなります。
また、契約書や議事録など書類のひな型を作成する段階で、「甲野太郎 印」など記名押印の欄に「印」という文字をあらかじめ盛り込む方法もあります。
銀行印は厳重に管理する
銀行印は文字の上にかぶせて押さないことが多いため、偽造防止は実印より難しくなります。そのため、口座別に銀行印を使い分ける、金庫で管理するなど厳重に管理する必要があります。
もし実印や銀行印を紛失したら

実印や銀行印の紛失は不正取引に使用されるリスクがあります。当然、紛失した場合には素早く対処することが必要です。そこで、対処方法を紹介します。
実印を紛失したら
実印の紛失とは、印鑑本体だけでなく印鑑証明書も失った状態を指します。対処方法は個人と法人で異なります。
1. 個人
お住まいの市区町村に出向いて、紛失の手続きをしましょう。登録を廃止した後、新しい印鑑の登録を行います。
2. 法人
法務局に出向いて改印手続きをしましょう。印鑑登録した会社の実印を電話で無効にすることはできません。
銀行印を紛失したら
銀行印を紛失した場合は、すぐに金融機関の「喪失受付センター」などに電話しましょう。多くの銀行では、電話連絡の時点で印鑑での取引を一時停止する措置を取ってくれます。その後、支店窓口などで新しい銀行印を登録する手続きをします。
脱ハンコの流れ
コロナ禍を契機に進んだリモートワークとペーパーレス化の波は継続しており、さまざまな企業が「脱ハンコ(印鑑廃止)」に取り組んでいます。政府・自治体でも多くの行政手続きで押印が不要となりました3。
デジタル庁が出した報告書によれば、電子契約の普及・利活用による年間コスト削減効果は 約1.7兆円、リスク軽減効果は約328億円と試算されています4。
印鑑を使う場面そのものを減らすことは、リスク対策の最もシンプルな方法でもあります。
押印が不要な文書の見直しから始める
たとえば請求書です。従来、請求書に印鑑を押すことが慣例になっていましたが、法的には印鑑の押印は義務ではありません。紙の請求書に押印する代わりに、オンライン上で作成・送信できるクラウド請求書を利用すれば、ペーパーレス化を進めながら事務効率を大きく改善できます。
Squareで実現するスマートな請求業務
Squareでは、無料アカウントを作成するだけで何通でも請求書を無料で作成・送信できます。
オンラインで請求書を発行すれば、受け取ったお客さまはリンクを開いてすぐに内容を確認し、クレジットカードで支払いを完了できます(※)。支払い状況は管理画面からリアルタイムで確認できるため、入金確認の手間も減らせます。

※お客さまが請求書に記載されたリンクにアクセスし、請求額をクレジットカードで支払った場合には決済手数料が発生します。
請求書の作成から送信まで簡単スピード対応
Square 請求書は決済機能付きのクラウド請求書サービスです。無料ではじめられ、自動送信や定期送信など便利な機能も盛りだくさん。フリーランス、個人事業主、業務請負やサービス請負業の請求業務を簡単に効率化できます。
まとめ
署名や印鑑は、本人の意思を示す重要な行為であり、長くビジネスの信頼を支えてきました。一方で、偽造や紛失によるトラブル、紙の運用コストなど、多くの課題も明らかになっています。
電子署名法の整備や電子契約サービスの普及によって、署名・押印の在り方は大きく変化しています。今後は、紙と電子を適切に使い分けながら、安全性・効率性・法的有効性を両立する運用が求められます。
Squareのようなクラウドサービスを活用すれば、印鑑を使わないスムーズな業務フローを実現し、リスク低減と業務効率化を同時に進めることができます。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2018年4月5日時点の情報を参照しています。2025年12月17日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。

