事業の拡大や効率化、継承の手段として、業務提携、資本提携、経営統合、合併といった選択肢が選ばれることがあります。
今回はそれぞれについて違いも含めてわかりやすく説明します。
他社とともに事業を成長させ、効率化するための選択肢
ニュースなどで業務の提携や統合、合併がセンセーショナルに伝えられることから、何となく事業が自身の手を離れていってしまうようなマイナスイメージを持っている人もいるかもしれません。そういった事例もないわけではありませんが、実は中小企業にとって「業務提携」「資本提携」「経営統合」「合併」は事業を成長させ、効率化するための選択肢でもあります。
これらすべてに共通する点として、二社以上の企業間で起こることです。また、いずれも目的は、それぞれの企業または統合後の持ち株会社や合併後の企業の企業価値を最大化することです。業務提携、資本提携、経営統合、合併によって、自社と他社が持つノウハウを活かす、似たような業務を共通化して効率化するといった効果が期待されます。
2018年版中小企業白書の第2部「深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命」の第6章「M&Aを中心とする事業再編・統合を通じた労働生産性の向上」では、下記のように説明しています。
中小企業の景況は緩やかな改善傾向にあるものの、市場の成熟化や国内人口の減少、グローバル化といった構造的な課題に直面し、従来に比べて経営判断は更に難しくなっているといえる。加えて、中小企業においては人手不足といった経営資源の制約も大きい。こうした制約下で、中小企業が新事業展開や事業規模の拡大を図り、労働生産性を向上させるためには、成長戦略としてM&Aを中心とした事業再編・統合が有効な選択肢と考えられる
高齢化などにより人手不足が深刻化していること、その一つの解決策として企業間連携が選択肢となり得ることがわかります。企業間連携の取り組みとしては、具体的に共同研究・開発、勉強会・研究会の開催、従業員の研修・育成などが挙げられています。「提携」というと社運をかけた一大事のようにも聞こえますが、勉強会の開催など始めやすいものから挑戦してみても良いかもしれません。
業務提携と資本提携
企業間の提携の形として、契約書による業務提携、資本関係をともなう資本提携があります。
業務提携
契約書を交わして企業同士が特定の分野で協力することを意味します。共同研究・開発、勉強会・研究会の開催、従業員の研修・育成などに加えて、共同購入やライセンスの供与なども業務提携にあたります。個々の企業がそれぞれ培った技術や知見を共有することでシナジーを発揮し事業が拡大するかもしれません。また、同業種で別々に似たような研修をするよりも共同で人材育成に取り組んだ方が効率がよいかもしれません。業務提携にあたっては、日々事業を営む上でつきあいのある企業を検討し打診してみるほか、地元の産業振興会や商工会議所といった中小企業をサポートする組織に相手企業がないか相談してみてもよいでしょう。
資本提携
業務提携から一歩進んだ提携の形態と見ることができます。株式会社であれば経営に影響を及ぼさない範囲で株式を持ち合うなどして、業務提携により一層関係を強化します。業務提携で得られるメリットに加え、資本提携は市場からポジティブに受け取られる可能性があり、お互いが安定した株主になるといったメリットもあります。
まずは業務提携から始めて企業風土や事業の相性がよいことがわかると、資本提携に進むケースもあります。
経営統合
経営統合は資本提携から一歩進んで、両社で株式の保有を目的とした持ち株会社を設立し、より関係を強化することを意味します。持ち株会社が統合前の企業の株式の100%を管理することになります。合併とは異なり、協力する企業それぞれが法人として存在しますが、一つの親会社を持ちグループ企業となることで、経営目標を共有しより協力して業務を遂行しやすくなることが期待されます。
合併
合併には新設合併と吸収合併の二種類があります。新設合併とは、統合前の企業を新しい会社に集約する合併です。合併前の企業の法人格は消滅します。吸収合併とは、一方の企業がもう一方の企業の権利や義務を一切承継する合併です。吸収される側の企業の法人格は消滅します。
合併によって企業が吸収され「法人格が消滅する」というと、手をかけて来た企業がなくなってしまう、途絶えてしまうと捉える人もいるかもしれません。ただ、人材の高齢化が進む中で、人手不足から事業の存続が厳しくなってしまうのは避けたいところです。後世に事業内容を継承する手段として合併は一つの選択肢といえるでしょう。
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提携、経営統合、合併にあたって知っておきたいこと
業務提携から資本提携、経営統合、合併などに進む際に考えておきたいことがいくつかあります。
メリットも多い一方で、提携または統合した企業間で必ずしも対等でなくなってしまう、お互いに利益を得られなくなってしまうといったケースも少なくありません。また、国境を跨いだ提携や経営統合、合併の場合、組織間や従業員間の文化の違いが問題になることもあります。
提携、経営統合、合併では、機械的に事業や経営を統合すればよいというものではありません。それぞれの企業風土に慣れ親しんだ経営陣、従業員といった人材も組織改編に深く関わってきます。特に吸収合併のようなケースでは、吸収する側の企業の文化が押し付けられると、吸収される側の企業の人材は窮屈な思いをすることになるでしょう。これでは合併の効果を発揮するどころか、働く人のモチベーションを下げ、合併が逆効果となりかねません。
業務や資本の提携、経営統合、合併にあたっては法律や会計、税務の専門家はもちろん、組織や人事の専門家の意見も取り入れ、企業文化の親和性なども十分考慮する必要があります。また、提携、経営統合、合併のプロセスが終了したら終わりではなく、そのあとのマネジメントにも気を配るのを忘れないようにしましょう。前評判では高い評価を得ていた経営統合や合併でも、その後のケアが万全でなく結果失敗に終わってしまうケースもあります。
企業が事業を成長させ、効率化するための選択肢としての業務提携、資本提携、経営統合、合併について説明しました。業務提携の中には勉強会の開催などすぐにでも実行できるものがあります。また、後継者不足に悩む中小企業の場合、事業を存続させることにもつながるかもしれません。事業を成長させたり、効率化したりする際の選択肢として業務提携をはじめ、場合によっては資本提携、経営統合、合併も検討してみてください。
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執筆は2019年2月28日時点の情報を参照しています。
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