ネットショップで食品販売をする上で知っておきたいこと

ネットショップの開業を考えている人の中には、「自慢のジャムを広くお客様に味わっていただきたい」「おすすめのスパイスを仕入れてお客様にお届けしたい」と食品の販売を考えている人もいることでしょう。食品はお客様の口に入ることから健康にも密接に関わるため、守らなければいけない法律や条例、取得すべき資格が少なくありません。本記事では、食品販売を取り扱うネットショップを開業するにあたって知っておきたい知識や法律、注意点について説明します。

目次



食品をネットショップで販売するには

食品の取り扱いについては、1947年に公布された「食品衛生法」の中で定められ、食品衛生法の目的は第一条で以下のように説明されています。

この法律は、食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ることを目的とする。

引用:食品衛生法 第一条(e-Gov)

消費者の健康を害することなく、安全に食品を流通させるための法律ととらえるとよいでしょう。

ネットショップで食品を販売するにあたっては、食品衛生責任者の資格(取り扱う商品によっては食品衛生管理者の資格)を取得し、営業許可を申請します。そのほかにも遵守しなければならない法律や自治体ごとの条例があります。

はじめてネットショップで食品を販売するという人は、資格や法律にとまどうかもしれません。ネットショップで食品を取り扱いと思い立ったら、まずはネットショップで取り扱いたい商品、どのように食品を仕入れるのか、製造するのであればどこでどのように製造する予定なのか、計画を書き出して、所轄の保健所に相談に行くとよいでしょう。特に製造施設や設備を整える場合は事前の相談を忘れないでください。

ここでは一般的に必要な資格や許可について説明します。

食品衛生責任者、食品衛生管理者の資格

飲食店を営んでいる場合、すでに食品衛生責任者がいるはずです。ただし、食品衛生責任者は営業許可を申請する施設ごとに選任しなければならず、ネットショップで販売する食品を店舗とは別の場所で製造する場合には、食品衛生責任者を別途選任することになります。

ネットショップではじめて食品を取り扱う場合には、食品衛生責任者の資格を取得します。食品衛生責任者になるためには、地域の食品衛生協会の養成講習を受講します。調理師や栄養士などの免許を持っている人は講習を受講せずに食品衛生責任者になれるので、関連する資格を持っている人は一度地域の食品衛生協会に問い合わせてみるとよいでしょう。

東京都食品衛生協会のウェブサイトの食品衛生責任者養成講座の日程と空席状況を見てみると、2021年8月時点では翌月まではほぼ満席です。地域による差もあるかもしれませんが、食品を扱うネットショップの開業を考えている場合、講座には早めに申し込んだ方がよいといえそうです。東京都では受講費用は教材費込みで12,000円です。

参考:食品衛生責任者養成講座 日程と会場(一般社団法人東京都食品衛生協会)

また、食肉製品など特定の食品の製造や加工を行う場合には食品衛生管理者が必要です。食品衛生管理者の資格を持つ人は、食品衛生責任者として業務にあたれるため、食品衛生管理者がいれば、食品衛生責任者は不要です。講習会の受講要件を満たす人が講習を受講して資格を取得できます。資格の取得には30万円前後かかり、食品衛生責任者と比べてハードルは高くなります。食品衛生管理者について詳しくは厚生労働省のウェブサイトに説明があります。

参考:食品衛生管理者(厚生労働省)

営業許可の申請

必要な資格を取得したら、管轄の保健所で営業許可を申請します。すでに飲食店を経営している場合でも、食品を製造・販売する場合には新たに営業許可が必要なので、注意が必要です。製造はせず外部から仕入れた商品を販売する場合、営業許可が必要ないこともあります。管轄の保健所にネットショップの事業を伝え、必要な営業許可を教えてもらうとよいでしょう。

また、ネットショップで酒類を扱いたい場合は、酒税法に基づき通販販売酒類小売業免許が必要になります。通販販売酒類小売業免許は保健所ではなく、所轄の税務署で申請します。

そのほかの法律や条例

食品衛生責任者の資格と営業許可の申請と合わせて、事業ごと、地域ごとに知っておきたい法律や条例もあります。

  • 食品表示法
  • 米トレーサビリティ法
  • 不当景品類及び不当表示防止法
  • 計量法
  • 健康増進法
  • 東京都消費生活条例

食品を製造する場合は、食品表示法にしたがって、食品に関する情報をラベルに表示する義務があります。誤った表示や表示漏れがあった場合は、懲役や多額の罰金を科されることもあります。保健所に相談の上、適切な食品表示ラベルを作成し商品に添付してください。

取り扱う食品によっては、独自の法律が定められていることもあります。たとえば、米や米の加工品に問題があったときに流通ルートを迅速に明らかにするための法律として「米トレーサビリティ法」があります。新しい規制が導入されたり、法律が改訂されたりするため、常に最新情報をキャッチし、疑問があれば保健所に問い合わせましょう。

このほかにも商品の内容や品質表示について定めた不当景品類及び不当表示防止法や、軽量基準や適切な計量について定めた計量法、特定保健用食品を扱う場合には健康増進法にも注意が必要です。

自治体ごとの条例もあり、たとえば東京都消費者生活条例では、調理冷凍食品、かまぼこ類、はちみつ類、カット野菜およびカットフルーツについて特定の事項の表示が義務付けられています。

ここまで見てきたように、個人ですべての法律や条例を網羅するのは簡単ではありません。食品をネットショップで販売したいと思い立ったら、まずは最寄りの保健所に相談するのがいいでしょう。

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食品を仕入れてネットショップで販売する方法

まずは、販売を検討している商品をサンプルとして試しに少量仕入れてみましょう。販売計画を書き出して、不明な点がある場合は管轄の保健所にネットショップでの販売が可能か、可能であればどのような資格や許可が必要なのか相談に行きます。

保健所の回答に従って、商品を管理する設備や商品管理の手順を整えましょう。並行してネットショップの準備も進めます。インターネットショッピングモールやネットショップ作成サービス、はては自分でネットショップを一から作る方法もありますが、本業に専念しスモールスタートしたい場合は、ネットショップ作成サービスを利用するとよいでしょう。ネットショップを始めたばかりの売り上げが安定しない時期にも固定費をおさえられ、さらにデザイン性のあるネットショップを手軽に作れます。無料のネットショップの使い勝手や作り方については、「無料で開設できるネットショップはどこまで便利に使える?」の記事を参考にしてください。

ネットショップは、保健所への確認や法手続きが済むまでは非公開にしておきます。すべての手続きが終わったら、今一度在庫とネットショップの商品、梱包材など最終確認し、ネットショップをオープンします。ネットショップをオープンしたら、ソーシャルメディアを使った集客にも積極的に取り組みましょう。

食品を作ってネットショップで販売する方法

食品を自分で製造する場合、食品を仕入れて販売するよりも、資格の取得や許可の申請、保健所への確認といったステップが多くなります。

販売計画を持って管轄の保健所にネットショップでの販売が可能か、可能であればどのような資格や許可、設備、食品ラベルが必要なのか相談に行きます。製造を行う施設に関しては、実際に工事を始める前に図面を持って保健所に相談に行くことをおすすめします。

営業許可を申請するにあたっては、製造施設の確認検査、水質検査成績書、食品衛生責任者の資格証明などさまざまな検査・書類が必要になります。資格の取得や検査、書類の準備には考えていたよりも時間がかかることは少なくありません。綿密に計画を立てて、準備を進めましょう。

事務手続きと並行してネットショップの準備も進めます。ネットショップの準備の進め方は「食品を仕入れてネットショップで販売する方法」と同じです。前項を参照してください。

ネットショップで食品販売をする場合の注意点

営業許可がおり、ネットショップが完成したら、いざネットショップビジネスのはじまりです。ここではネットショップで食品販売をする場合の注意点を具体的に見ていきましょう。

衛生管理

食品はお客様の口に入り、最悪の場合は健康被害も引き起こしかねません。衛生管理には十分に気を配りましょう。自分では十分に衛生管理ができているつもりでも、実際には改善の余地があるかもしれません。インターネット上ではさまざまなチェックリストが公開されています。東京都福祉保健局のウェブページからは食品衛生管理ファイル(衛生管理計画、記録表)をダウンロードできます。

ラベルの表示

食品を製造する場合は、食品表示法にしたがって、食品に関する情報をラベルに表示する義務があります。ビジネスをはじめた当初は、保健所にまめに相談していても、慣れてくると新製品を作ったときなどにラベルの確認がおろそかになるかもしれません。誤った表示や表示漏れがあった場合は、懲役や多額の罰金を科されることもあります。お客様からの信頼も失いかねません。定期的に食品表示ラベルを見直し、疑問があったら迷わず保健所に相談しましょう。

条例の確認

本記事でも東京都を例に条例を紹介しましたが、国で定められた法律のほかに、地域独自の条例で食品製造や食品販売の規制が設けられている可能性があります。地域の保健所は地域の事情にも精通しています。不安なことや疑問があったら迷わず保健所に問い合わせましょう。

基本的なネット販売の注意点をチェック

食品を販売するネットショップもネットショップの一つです。インターネットで商品を販売するときの基本的な注意点も確認しておきましょう。ネットショップは、実店舗と違いお客様の顔が見えず、商品はその場でお渡しするのではなく配送します。このため、実店舗に増してより丁寧な対応が必要になります。また、24時間365日注文を受けつけているネットショップには迅速な対応を求めるお客様も少なくありません。「ネットショップ運営でトラブルを回避するクレーム対策とは?」の記事も参考に、ネット販売の注意点をチェックしてください。

ネットショップ開業までのチェックリスト

本記事でお伝えした内容をまとめたチェックリストを作りました。開業準備中にどこまで準備が進んでいるか、開業直前に手続きの漏れがないかチェックするときに役立ててください。

  • 取扱商品の検討、サンプルの仕入れまたは試作
  • ネットショップの計画とサンプルを持って管轄の保健所へ
  • 必要な資格を取得(食品衛生責任者または食品衛生管理者)
  • 設備の準備(衛生基準に合致するように施工、水質検査など)
  • 商品を製造するのであれば食品表示ラベルの作成
  • 管轄の保健所で営業許可を申請
  • 開業届や青色申告承認申請
  • ネットショップの作成
  • 商品の製造または仕入れ
  • 梱包材の準備
  • 衛生管理チェックリストの作成

本記事ではネットショップで食品販売をする上で知っておきたいことを説明しました。さまざまな法律や条例、手続きが出てきて、すでに頭がいっぱいという人もいるかもしれません。特に食品を自分で製造する場合には、しなければならないことは少なくありません。ただ、自信を持ってお客様に安心して食べていただける商品を販売するにはどれも必要なステップです。保健所の助けも借りながら、ていねいに手続きを進めていけば必ずネットショップの開業にたどりつけるはずです。本記事を参考にぜひネットショップの開業準備を進めてください。

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執筆は2021年8月25日時点の情報を参照しています。
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