新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、対面での買い物を控える人が増えています。そんな中、オンライン市場に活路を見出したいと考える事業者も多いでしょう。実店舗の販売であれば商圏内に住む人や旅行客のみがターゲットですが、オンラインに市場を求めれば、日本全国に顧客がいる状態になります。
今は簡単にネットショップを開業できるサービスやツールが充実しているので、ウェブに関する専門知識が少なくても出店は可能です。ただ、利用するサービスによって費用や集客力に違いが出てくるので、せっかくのオンライン展開を好スタートするためにも、利用するサービスはしっかり見極めたいところです。たとえば、無料でネットショップを展開できるサービスを選んだ場合、集客はある程度自分でやる必要があります。知名度ゼロの状況からのスタートでは、実際の売り上げが発生するまでは想像以上の苦労を味わうかもしれません。
この記事では、これからネットショップを通じてオンライン販売に挑戦したい事業者や個人に向けて、ネットショップ出店にかかる費用とおすすめのサービスについて解説します。
目次
ネットショップの出店に必要な費用とサービス
まずは、ネットショップを出店したいと思った時に、どのようなサービスを利用できるかについて簡単に説明します。
大きく分けると、
- モール型
- ASPカート型
- ソフトウェアインストール型
の3種類が存在します。
モール型ECサイトの費用と特徴
モール型とは、楽天市場やYahoo!ショッピングのように、インターネット上にある大規模なショッピングモールの中に出店する形式です。デパートや郊外のショッピングモールに出店するテナントのようなイメージで、モールの会員やリピーターを集客できる一方、初期費用や売り上げに応じた費用(販売手数料)が発生します。
集客力は高いが、費用も多くかかるというのがモール型の特徴です。
ASPカート型の費用と特徴
ネットショップを作るためのサービスを利用する出店方法です。ウェブサイト作成やショッピングカート機能がセットになっています。モール型に比べて自由度が高く、好きなテンプレートを選択し、好きなようにお店を作ることができます。
発生する費用は、サービスの利用料とクレジットカード決済などの決済手数料です。サービス利用料が無料のASPもあります。費用が安い一方で、集客はいちから自社で行う必要があるため、戦略的なアクセスアップ対策やSNS活用を行う必要があります。
ソフトウェアインストール型の費用と特徴
インストール型とは、ネットショップに必要な機能が入ったソフトを自社サーバーにインストールし、完全オリジナルのネットショップを構築する方法です。自由度はさらに高く、オリジナリティのある店舗運営はできますが、その分構築や運用に高度な技術を要します。
自社内で完結するので、販売手数料は発生しません。決済システムに決済代行会社を利用する場合は、サービスごとの決済手数料が発生します。
ECサイトの構築に関する経験・知識がある程度必要な方法なので、初心者の方にはハードルの高い方法です。
モール型のネットショップで必要な費用
モール型のネットショップは、これからネットショップを展開していきたいという人がまず検討する方法でしょう。店舗情報や商品情報を入力するだけで出店が完了する手軽さがあり、集客面でも強みがあります。モール型のネットショップで具体的なサービスと費用を紹介します。
Amazon
多くの人に利用されているモールです。「出店」ではなく「出品」という扱いで、お店をひらくというより商品を出すという使い方になります。お店のブランディングは難しいですが、手軽に販売をスタートできるのが特徴です。他のモールと違って、Amazonも販売元として商品を出品しています。また、同じ商品を取り扱っている店舗が多い場合も、差別化が難しくなります。
- 初期費用:無料
- 月額費用:
- 大口出品プランの場合、4,900円/月
- 小口出品プランの場合、無料
- 基本成約料:
- 大口出品プランの場合、なし
- 小口出品プランの場合、1商品当り100円
- 販売手数料:8%から45%(商品カテゴリによって変わります)
楽天市場
1億人を超える総会員数を誇り、国内に大きなマーケットを持っている楽天市場。モール内広告を使って集客ができ、各店舗にコンサルタントがつくので、わからないところのフォローも受けられ、売り方の相談もできます。色のある店舗展開ができるので、商材や商品のブランディングを進めたいという事業者に向いています。店舗名を覚えてもらうことで、リピーターを作りやすいですが、複数の店舗が販売している同じ商品に関しては、価格競争が激しくなりがちです。
規模に応じて複数のプランが用意されています。目標月商が140万以上の場合は、ランニングコストが割安な「スタンダードプラン」が推奨されています。初心者は固定費が割安な「がんばれ!プラン」、大規模に運営したい場合は「メガショッププラン」がおすすめです。
- 初期費用:60,000円
- 月額費用:
- がんばれ!プラン:月19,500円(年間一括払い)
- スタンダードプラン:月50,000円(半年ごと、2回割払い)
- メガショッププラン:月100,000円(半年ごと、2回割払い)
- システム利用料:
- がんばれ!プラン:3.5%から7.0%/月間売上高
- スタンダードプラン:2.0~4.5%/月間売上高
- メガショッププラン:2.0~4.5%/月間売上高
- 安全性・利便性向上のシステム利用料:月間売上高の0.1%
- 楽天ポイント:購入代金の1%
- R-Messe:月額3,000円から
- 楽天スーパーアフィリエイト:アフィリエイトを経由した売上の2.6%から
- 楽天ペイ利用料:決済高の2.5%から3.5%
Yahoo!ショッピング
初期費用、固定費、売上ロイヤリティが無料で出店できるモールです。公式サイトの宣伝文句通り「誰でも、無料で、簡単にネットショップを開ける」が最大の魅力です。発生する費用は、商品が売れたときの決済手数料やポイント費用です。
参入障壁が低いので、ライバル企業が多いというデメリットがあります。競合が多い分、自店舗を見つけてもらい、購入してもらうには工夫が必要です。
- 初期費用:無料
- 月額費用:無料
- 販売手数料(売上ロイヤルティ):無料
- ストアポイント原資負担:1% (15%まで任意で追加可能)
- キャンペーン原資:1.5%
- アフィリエイトパートナー報酬:1% (50%まで追加可能)
- アフィリエイト手数料:パートナー報酬の30%
- 決済手数料:決済方法に応じて発生
有料ASPカートに必要な費用
ASPカート型は、自由度の高いネットショップの運営ができるサービスです。ブランディングに力を入れたい場合や、実店舗の顧客をネットショップに誘導したい場合、すでにモール型ネットショップで成功している場合などに向いている方法です。
ショップサーブ
会社設立が1999年で、EC業界の中でも長い提供歴を誇るサービスです。ECカート機能だけでなく、メルマガやクーポン、SNSの連携、シークレットセールなど、販促に使える機能が充実しています。
- 初期費用(開通料):30,000円(税抜)
- 月額利用料:(2023年12月1日以降の申し込みの場合)
- プラン4S:23,000円(税抜)
- プラン4G:63,000円(税抜)
- プラン4P:143,000円(税抜) - 決済手数料:3.5%から4.3%(カードブランドによる)
- 注文処理手数料:受注1件に対して34円
makeshop
9年連続流通総額第1位の人気サービスです。他ASPより割高ですが、多機能でオリジナル店舗が作り込めます。アフィリエイト連携やSEO対策など、集客力アップのための機能もあります。また、makeshopが仲介する形で、Yahoo!ショッピングや価格ドットコムに出品できる機能もあり、露出アップが見込めます。
- 初期費用:
- プレミアムプラン:11,000円(税込)
- makeshopエンタープライズ:110,000円(税込)から - 月額費用:
- プレミアムプラン:12,000円(税込)
- makeshopエンタープライズ:60,500円から(税込)から - 決済月額費用:
- プレミアムショッププラン:1,100円(税込)
- makeshopエンタープライズ:0円 - 決済手数料:
- プレミアムショッププラン:3.19%から
- makeshopエンタープライズ:3.14%から
カラーミーショップ
テンプレートが豊富で、初心者でも自分好みのネットショップを開設できる使いやすさが特徴の一つです。名入れギフトに対応、無制限の商品登録数、フリーページの作成、SNSとの連携、会員機能など、集客や売上アップのための機能も充実しています。
目的と規模に応じた4プランがあります。
- 初期費用:無料(フリープラン)、3,300円(レギュラー、ラージプラン)、22,000円(プレミアムプラン)
- 月額費用:
- フリー:0円
- レギュラー:4,950円
- ラージ:9,595円
- プレミアム:39,600円 - 決済手数料:
- フリー:6.6%+30円
- レギュラー・ラージ・プレミアム:クレジットカードは4%から
Shopify
カナダ生まれで、世界的にシェアの大きいネットショップ作成サービスです。導入コストも比較的低く、豊富なアプリを使うことでオリジナリティあるネットショップを作れます。商品登録数は無制限です。ただ、全てに日本語対応しているわけではないので、カスタマイズに力を入れようと思うとスキルが必要です。
- 初期費用:無料
- 月額費用:
- ベーシック:25$
- スタンダード:69$
- プレミアム:299$ - 決済手数料:2.9%から3.9%(プラン、クレジットカードブランドにより異なる)
無料ASP型のネットショップで必要な費用
ネットショップを構築するサービスの中には、利用料が基本的に無料のサービスもあります。ネットショップの運用にかかるコストを抑えたい人、小規模なサイトから始めたい人はこれらの活用をおすすめします。初期費用や月額固定費が発生しないので、リスクを抑えてネットショップをスタートできます。ただ、売り上げに応じて手数料が発生する場合もあるので、そのコストをどう考えるかは事業規模などから冷静に判断する必要があります。
Square
クレジットカードや電子マネー決済を提供する決済代行サービスSquareでは、2020年10月から無料で使えるネットショップ機能「Square オンラインビジネス」を提供しています。ネットショップだけでなく、寄付の受付や飲食店の事前注文での利用も想定されています。また、注文・在庫数・売上・顧客などの情報が実店舗と連携し、一括で管理運営できます。
基本的には、決済手数料以外無料で使えます。商品レビューやかご落ちメールの送信、広告非表示、カスタムドメインの利用などの機能を利用した場合は、その機能に合わせてプランを選びましょう。
- 初期費用:無料
- 月額費用:
- フリープラン:無料
- プラスプラン:3,375円(年払い)
- プレミアムプラン:9,180円(年払い) - 決済手数料:
- 無料プラン・プラスプラン:3.6%
- プレミアムプラン:3.3%
BASE
初期費用が無料で展開できるネットショップサービスです。豊富なデザインテンプレートから好みのものを選び、カスタマイズすることですぐに店舗作成ができます。モール機能など集客面でのフォローもあります。また、製造支援サービスとの連携が豊富で、受注販売などのフローを取り入れることもできます。
月額料金が無料のスタンダードプランは決済手数料に加えて、サービス利用料もかかります。
- 初期費用:無料
- 月額費用:
- スタンダードプラン:無料
- グロースプラン:16,580円(年払い) - 決済手数料:
- スタンダードプラン:3.6%+¥40(Amazon PayとPayPalは1%を上乗せ)
- グロースプラン:2.9%(Amazon PayとPayPalは1%を上乗せ) - サービス利用料:3%(スタンダードプランのみ)
STORES
決済手数料を抑えてネットショップを運営できるのがメリットです。無料プランもありますが、無料だとロゴ非表示とアクセス解析、独自ドメインが使えないというデメリットがあります。また、初心者でも簡単にネットショップが作れるのも特徴です。HTMLなどの編集がない分、シンプルな作業でネットショップが構築できます。裏を返すと、カスタマイズの自由度が低いということになるので、注意しましょう。
- 初期費用:無料
- 月額費用:
- フリープラン:無料
- スタンダードブラン:2,980円(税込)
- 決済手数料:
- フリープラン:5%
- スタンダードブラン:3.6%
新型コロナウイルス感染症の影響により、オンラインビジネスへの注目度はますます高まっています。ネットショップを作るのは専門的で難しそうと思われがちですが、テンプレートを編集するだけですぐにネットショップが完成するサービスが多く登場しており、技術的なハードルは低くなっています。
どのサービスを利用するかはネットショップの規模や戦略によっても変わってきます。今回は費用面を中心に比較していますが、さまざまなサービスを比較して自社にぴったりのものを選んでください。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2021年8月9日時点の情報を参照しています。2024年3月26日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash