労働基準法改正のポイントや変更内容について分かりやすく解説

労働基準法とは、賃金や労働時間など働く人たちの労働条件の最低基準を定めた法律で、1947年の制定以降、適宜改正されています。2023年4月1日には改正労働基準法が施行され、時間外労働の割増賃金率が変更となります。2023年3月31日まで、中小企業では1日8時間、週40時間を超える時間外労働の割増賃金率は25%ですが、施行日以降は月に60時間を超えた分は50%へと引き上げられます。また、デジタルマネーでの給与支払いも可能となります。さらに2024年には、建設業に従事する人の時間外労働の上限も他業種と同じ月45時間、年間360時間となります。この記事では、経営者や人事に関わる役職に就く人に向け、労働基準法改正のポイントや、改正後の労働基準法に対応するための対策を紹介します。

参考:労働時間法制の主な改正経緯について(厚生労働省)

目次



労働基準法とは

労働基準法とは、1947年に定められた日本の労働基準に関する法律です。企業に勤める人の賃金の支払い、労働時間、休憩時間、休日など、労働条件に関する最低基準を定めています。働き方改革や女性の社会進出など、時代の変化や労働環境の変化に対応して改正が行われており、最近では2019年に改正労働基準法が施行され、それに伴い、2020年と2021年に労働関係法の改正が行われました。さらに、2023年4月1日にも改正労働基準法が施行されます。それぞれの年の改正のポイントを紹介します。

参考:労働基準に関する法制度(厚生労働省)

2023年以前の改正内容

時間外労働の上限

2019年4月1日より順次施行された労働基準法では、時間外労働(残業)の上限が月45時間、年間360時間となり、特別な事情がない限りこれを超えることができなくなりました。守られない場合は、雇用主に6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。特別な事情があって労使が合意した場合に限り、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満であれば可能となります。この場合も、上限規制に違反すると、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

年次有給休暇の取得推進

2019年施行の改正労働基準法では、雇入れの日から6カ月間継続勤務かつ全労働日の8割以上出勤している従業員は、原則として10日の年次有給休暇を取得できるようになりました。雇用主は、年間10日以上の年次有給休暇が付与されている労働者に対して、最低5日の年次有給休暇を取得させなくてはなりません。また、パートタイムなど所定労働日数が少ない従業員は、年次有給休暇の日数が所定の労働日数に応じて付与されます。雇用主がこれを守らない場合は、30万円以下の罰金が科せられます。

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フレックスタイム制の活用

フレックスタイム制では、従業員が労働時間を調整できる期間を清算期間といいます。2019年の改正労働基準法施行までは、労働者は1カ月の中で労働時間の調整を⾏うことになっていましたが、2019年以降は、この期間が1カ月から3カ月まで延長されました。たとえば、従業員が繁忙期の12月に規定の労働時間より20時間多く働いたとします。2019年の改正以前であれば、調整期間が1カ月であるため、雇用主は従業員に20時間分の割増賃金を払う必要がありました。しかし、改正後は、20時間の超過労働分を3カ月の中で調整すればよく、従業員が「2月の閑散期に規定時間より20時間少なく働く」ということが可能になりました。

参考:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き(厚生労働省)

高度プロフェッショナル制度の創設

高度で専門的な知識や技術を有していて、仕事の範囲が明確、さらに1年間当たりの賃金の額が少なくとも1,075万円以上である従業員を対象に、労働基準法で定められた労働時間、休憩、割増賃金などの規定を適用しない制度です。対象となる労働者は、通常の時間外労働規定を適用しない代わりに年間104日以上の休日の確保や健康診断、医師による面談指導などの健康確保措置を取る必要があります。

関係法令の改正

労働基準法の改正に伴い、関連する法令も改定されました。その中でも特筆すべき項目を紹介します。

勤務間インターバル制度の促進

労働時間等設定改善法が改正され、勤務間インターバル制度を導入することが、事業主の努
力義務となりました。これは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保することを目的としています。

労働時間の状況把握の義務化

労働安全衛生法が改正され、従業員の労働時間を把握することが雇用主に義務付けられました。従業員の長時間労働を防ぎ、時間外労働を管理し、給与を正しく計算するために、雇用主は勤怠時間や時間外労働の申請・記録など、労働時間の状況を客観的な方法によって把握しなくてはなりません。

参考:働き方改革関連法のあらまし(改正労働基準法編、厚生労働省)

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2023年以前の労働に関連する法律の改正内容

パートタイム・有期雇用労働法

2020年4月にパートタイム・有期雇用労働法が施行され、大企業における正社員と非正規社員の間における基本給や賞与など、不合理な待遇差が禁止されました。2021年からは、中小企業もその対象となっています。また、パートタイム・有期雇用労働法では、非正規社員は待遇差があった場合に会社にその説明を求めることができます。さらに、労使間での紛争があった場合に、都道府県労働局で無料・非公開の紛争解決手続きができるようになりました。

参考:パートタイム・有期雇用労働法が施行されます(厚生労働省)

育児・介護休業法

2021年4月から育児・介護休業法が施行され、「子の看護・介護休暇の時間単位の取得」が可能になりました。

改正以前は、子どもの看護や介護を理由とする休暇は以下のようなものでした。

・半日単位で取得できる
・1日の所定労働時間が4時間以下の従業員は取得できない

しかし、改正以降は以下のようになりました。

・時間単位で取得できる
・1日の労働時間に関わらず、誰でも休暇を取得できる

参考:⼦の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります︕(厚生労働省)

2023年以降に施行される改正労働基準法

2023年、2024年のそれぞれ4月1日に、改正労働基準法が施行されます。どのようなことが変わるのでしょうか。

時間外労働の割増賃金率が50%に

1日8時間、週40時間を超える労働時間は、時間外労働とみなされます。従業員が時間外労働を行った場合は、時間外労働に対する割増賃金を支払うことが雇用主に義務付けられています。2023年3月31日までは、月に60時間を超える残業の割増賃金率は大企業で50%、中小企業は25%でした。しかし、2023年4月1日からは、中小企業においても割増賃金率が50%に変更されます。労働時間が月60時間以下の場合は、大企業、中小企業ともに割増賃金率は25%で据え置きです。

具体的な金額だとどのくらい変わるのでしょうか。たとえば、月給が32万円で月160時間(週40時間×4週)働く場合、時間単価は2,000円です。中小企業の従業員が、特別な事情のもと労使合意の上で月に80時間の残業をするとなると、2023年3月31日までは

80時間×2,000円(時間単価)×1.25(割増賃金分25%)=200,000円

ですが、4月1日以降は、

60時間×2,000円×1.25(割増賃金分25%)+20時間×2,000円×1.5(割増賃金分50%)=210,000円

となります。

参考:月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます(厚生労働省)

デジタルマネーでの賃金の支払い

2023年4月1日からは、デジタルマネーによる賃金の支払いも可能になります。これまで原則として、「現金の手渡し」「金融機関の口座への振り込み」であった給与の支払いが、従業員と合意のもとPayPayやd払い、楽天Edyなど、銀行以外の送金サービスができる登録事業者が提供するデジタルマネーでも可能となります。2023年1月31日時点で日本国内の登録事業者は83社あります。

参考:
労働基準法施行規則の一部を改正する省令案の概要(2022年10月26日、厚生労働省)
資金移動業者登録一覧(2023年1月31日、金融庁)

建築業の上限規制の猶予期間終了

長時間労働が多くすぐに働き方の変更ができないという理由から、2019年の改正労働基準法の施行以降、建築業では時間外労働の上限規制の措置猶予が設けられていましたが、2024年4月からは、他の業種と同様に時間外労働のルールが適用されます。これにより、時間外労働の上限は月45時間、年間360時間となり、特別な事情がない限りこれを超えることができなくなりました。雇用主は、2024年の施行を前に早急な労働時間の見直しが必要になります。

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労働基準法順守のために役立つツール

労働基準法に違反すると雇用主には罰則が科されます。そうした事態を防ぐためには、しっかりと従業員の管理を行うことが必要です。しかし、紙のタイムカードで打刻し、担当者が表計算ソフトなどで集計するとなると、手間も時間もかかります。上限を超えないように従業員の労働時間を逐次確認できたり、休日出勤や休日取得など従業員の勤怠状況を把握できたりするシステムを導入すれば、こうした勤怠管理業務を効率化することができます。特に中小企業の「時間外労働の割増賃金」への対応、猶予措置が取られている建設業の「時間外労働の上限規定」の対策のためにも、勤怠管理システムの導入を検討してはいかがでしょうか。

また、労働環境や職場環境の改善に取り組むことも大切です。テレワークの導入や、有給の取りやすい職場づくり、業務の効率化など、労働者のワークライフバランスの向上についても検討するとよいでしょう。

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執筆は2023年2月27日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash