ネットショップの領収書発行の注意点 | 代引きやオンライン決済

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

ネットショップの運営で、気をつけたいのが領収書の取り扱いです。オンライン決済のほかコンビニ支払い、代引き(代金引換)、銀行振込など複数の支払い方法を用意している場合は、ネットショップが領収書を発行する義務を負わないケースがあります。この点を理解せずに領収書を安易に発行すると、領収書の二重発行と見なされ税務上の問題になりかねません。

この記事ではネットショップの運営者向けに、領収書を発行する方法、代引きとオンライン決済のルールの違い、再発行の注意点などについてわかりやすく解説します。記事の後半ではインボイス制度への対応方法などもFAQ(よくある質問)にまとめています。

📝この記事のポイント

  • ネットショップにおける領収書発行義務は支払い方法によって異なる
  • クレジットカード・代引き・コンビニ決済の場合、ショップ発行は任意かつ二重発行に注意が必要
  • 領収書には収入印紙が必要な場合があり、現金取引で5万円以上の場合のみ貼付義務がある
  • 領収書の電子発行は印紙不要・効率的な管理が可能だが、再発行時は二重発行と誤解されない工夫が必要
  • インボイス制度対応のため、ネットショップは必要な記載項目を満たす領収書を発行する義務があり、Squareの利用で効率化できる
目次


ネットショップの領収書に関する基本情報

領収書とは、金銭を受け取ったことを証明するために発行する書類の一つです。税務上、「金銭の受領事実を証明する書類」として認められるのは領収書に限らず、ほかにも受取書、レシート、「相済」「了」などと書かれたお買上表や納品書があります。ネットショップの場合、こうした書類の発行元や形態は決済方法によって異なります。

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領収書は求められたら発行する義務がある

原則として、領収書はお客さまの求めに応じて発行する義務があります。

民法第486条では「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる」と定められており、支払者(弁済をする者)は受取証書(領収書)の交付を請求できます。領収書を発行するタイミングは「金銭を受け取ると同時」が原則であり、発行者は代金を受け取った事業者です。

弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。
弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。
民法第486条

ネットショップの場合、お客さまと直接代金をやり取りするケースの代表例は銀行振込です。またQRコードによる支払いも、ショップとQRコード決済事業者との契約内容によっては決済完了時点でショップが代金を受領したと見なされる場合があります。これらの場合、ショップは求めに応じて領収書を発行しなければなりません。

一方、クレジットカード決済の場合はカード会社、代引きの場合は配送業者、コンビニ決済の場合はコンビニエンスストアが代金を受け取るため、ショップ自体に領収書の発行義務はありません。お客さまの要望に応じてサービスとして領収書を発行することは可能ですが、その場合は二重発行と見なされないよう注意が必要です。二重発行についてはのちほど解説します。

領収書代わりに使える書類

ネットショップとお客さまが直接現金をやり取りしない場合、以下が支払いがあったことを証明する書類に当たります。

支払い方法 書類
クレジットカード 💳 カード会社が発行する利用明細
代引き 📦 配送業者が渡す送り状兼領収書
コンビニ決済🏪 コンビニエンスストアが発行するレシート
銀行振込🏦 振込明細書や振込記録のある通帳

ネットショップ上にこうした情報を掲載し「当店では領収書の発行をしていません」と案内する事業者も多いようです。

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ネットショップでの収入印紙の貼付義務

領収書は印紙税の対象となる場合があります。具体的には、5万円以上の現金取引に対して発行した領収書は課税文書となり、収入印紙の貼付が求められます

金銭または有価証券の受取書や領収書は、印紙税額一覧表の第17号文書「金銭または有価証券の受取書」に該当し、印紙税が課税されます。
No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書、国税庁

ネットショップで領収書に収入印紙の貼付義務が発生するのは、主に銀行振込で支払いが完了したケースです。またQRコード決済の場合も、ショップとQRコード決済事業者との契約内容や決済方式によってはショップに印紙貼付義務が発生します。ただし、PDFやメールなどデータで送付する場合は「文書」にあたらないため、5万円以上の取引でも収入印紙は不要です。

クレジットカード決済や代引き、コンビニ払いではお客さまとショップの間に現金取引が発生しません。この場合、ショップがサービスで領収書を発行しても課税文書には該当しないため、印紙を貼る必要はありません。

ただし、領収書の但し書きに「クレジットカード払いにて」など支払い方法を明記しない場合は通常の現金取引とみなされ、収入印紙の貼付対象となるため注意しましょう。

クレジット販売の場合には、信用取引により商品を引き渡すものであり、その際の領収書であっても金銭又は有価証券の受領事実がありませんから、表題が「領収書」となっていても、第17号の1文書には該当しません。
クレジット販売の場合の領収書、国税庁

ネットショップの領収書発行方法【オンライン決済や代引き】

ここからは、よくある支払い方法であるオンライン決済と代引きについて、領収書の発行方法を見ていきましょう。

【支払い方法別】オンライン決済・代引きなどでの違い

クレジットカードやQRコードを用いたオンライン決済では、基本的にはネットショップに領収書の発行義務はありません。お客さまから求められた場合はその旨を説明しましょう。それでも領収書を求められた場合は、クレジットカード決済とQRコード決済で対応が分かれます。

まずクレジットカード決済の場合は、サービスの一環として領収書を発行することがあるでしょう。その際は必ず、但し書きに「クレジットカード払いにて」と記載し、現金取引ではない旨を明らかにしましょう。これにより領収書の二重発行のリスクを避けられるだけでなく、収入印紙の貼付義務がないことも明確になります。

QRコード決済で、ショップが代金を受領したと見なされる契約や決済方式の場合は、お客さまからの要望に応じて領収書を発行しなければなりません。その際、但し書きに「〇〇Pay払いにて」などと記入しておきましょう。

代引きの場合は、配送業者が発行する送り状の伝票が領収書の代わりになります。この場合、ネットショップでも領収書を発行してしまうと、お客さまの手元に2枚の領収書が存在することになりトラブルの原因になります。ショップ名の入った領収書を求められた場合は、お客さまの手元にある配送業者の送り状をショップに送付してもらい、それと引き換えにショップ作成の領収書を発行するなど、二重発行を防ぐ工夫が必要です。

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ネットショップの領収書を求められた場合の正しい記載情報は?

領収書の書き方に明確な決まりはありませんが、基本的には以下の6点を記載します。

項目 記載内容・注意点
🧾 宛名 不特定多数を対象にする小売業や飲食業の場合は省略可
💰 合計金額 税込で記載。金額は3桁ごとに「,」で区切る。
改ざん防止のため、金額の先頭に「¥」や「金」、末尾に「-」「※」「也」を追加
📝 但し書き 取引内容と支払い方法を記載。
改ざん防止のため最後に「として」を追加
📅 取引年月日 代金を受け取った日を記載
🏢 発行者 発行者名を明記
📍 所在地 発行者の住所と電話番号を記載

インボイス制度に対応した領収書の記載項目は記事の後半で解説します。

領収書の電子発行がおすすめの理由

領収書は、PDFなどを使った電子交付がおすすめです。オリジナルの領収書データを作成できる他、領収書が簡単に発行できるクラウドサービスを利用することもできます。

ネットショップのオペレーションでは、領収書をPDFで発行し、メールで送付するという業務フローにすると、郵送の手間や収入印紙の準備が不要になります。

国税庁の見解としても、「請求書や領収書をファクシミリや電子メールにより貸付人に対して提出する場合には、実際に文書が交付されませんから、課税物件は存在しないこととなり、印紙税の課税原因は発生しません」とされています。

ネットショップの領収書は再発行できる?二重発行に注意

領収書発行において必ず理解しておきたいのが再発行や二重発行に関するルールです。

ネットショップでの領収書再発行は可能?

領収書の再発行は可能ですが、十分な注意が必要です。というのも、ネットショップに限らず、領収書の二重発行はトラブルをまねく可能性があるからです。

領収書は多くの場合、経費精算などに使われますが、同じ領収書が二つ存在すると経費の水増しに悪用されるおそれがあります。これは水増しを行った側の問題で、発行者に責任はないと思いがちですが、実際は二重発行を行った事業者も「不正に加担した」とみなされ責任を問われる可能性があります。

領収書の再発行を求められた場合は、安易に同じものを発行することは避けましょう。

二重発行と誤解されないための工夫

やむを得ない事情により領収書の再発行を求められた場合は、依頼を受けた日、再発行が必要な理由などを必ず記録しましょう。お客さまの手元に以前発行した領収書が残っている場合は回収と引き換えに新しいものを発行します。紛失などで回収が難しい場合は、その理由も記録しておくと安心です。

再発行した領収書には必ず「○○の理由により再発行」と明記します。また「領収書」ではなく「領収証明書」「支払証明書」といった名前にするのも誤解を避けるうえで有効です。

すでにほかの事業者によってレシートや送り状などの書類が発行されている場合に領収書を求められた際も、二重発行と誤解されないための工夫が必要です。

支払い方法 発行時の注意点
オンライン決済👨‍💻 但し書きに「クレジットカード払いにて」「〇〇Pay払いにて」と記載
代引き📦️ 配送業者が発行した送り状を回収し、それと引き換えに領収書を発行
銀行振込🏦 但し書きに「〇月〇日に銀行振込にて受領」と記載

無料で簡単にネットショップを作成!Squareを使うメリット

これからネットショップを作成する事業者は、領収書の発行や管理をスムーズにできるサービスを選ぶとよいでしょう。たとえば決済代行会社のSquareが提供するSquare オンラインビジネスなら、無料でネットショップを作成できるだけでなく、在庫や顧客情報の管理もスマートに行えます。

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Squareを使うメリットはその簡単さ。豊富なテーマが揃っているため業種に最適なショップをすぐに作れるだけでなく、掲載商品数に制限がなく、SNSとの連携も可能など、オンライン販売に必要なすべてを手間なく設定できます。また、在庫や注文の状況もすべて1カ所で把握できるため、お客さまからの問い合わせが入った場合もすぐに状況をさかのぼって確認することが可能です。

基本的な機能は無料で利用でき、初期費用や月額利用料はかかりません。発生するのはお客さまが支払いを行うたびにかかる3.6%の決済手数料のみ。売り上げは最短翌日に入金されるため、資金繰りも安心です。

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よくある質問(FAQ)

最後に、ネットショップの領収書発行に関するよくある質問を三つまとめました。

ネットショップの領収書は保管義務がある?

ネットショップの領収書を確定申告などに使う場合、保存する義務があります。期間は個人事業主・法人問わず原則7年間ですが、白色申告の個人事業主は5年間です。

区分 保存期間
法人 🏢 7年間 📅
個人事業主(青色申告)🧾 7年間 📅
個人事業主(白色申告)📄 5年間 📅

なお、領収書をPDFやメールで受け取った場合は、電子帳簿保存法に定められた要件を満たした状態で電子データのまま保存しなければなりません。プリントアウトした状態での紙保存は認められていないため注意しましょう。

電子領収書でも収入印紙は必要?

PDFファイルやメールによる領収書は印紙税法上の課税文書に当たらないため、5万円以上の取引であっても収入印紙は必要ありません。ただし、ネットショップ側が電子領収書を印刷して発行する場合は収入印紙が必要です。

電子領収書に印鑑は必要?

実は、領収書への押印は法律で定められているわけではありません。そのため電子領収書にも印鑑は不要です。

ネットショップの領収書をインボイス制度に対応させるには?

適格請求書発行事業者の場合は、取引先に対して所定の項目が含まれたインボイス(適格請求書)を発行しなければなりません。形式は請求書に限らず、要件を満たしていれば領収書や納品書などもインボイスとして認められます。また手書きのものも有効です。

領収書をインボイスとして用いる場合は、次の項目の記載が必要です。

  • 発行事業者の​氏名または​名称
  • 取引年月日、​内訳、​金額
  • 税率ごとに​区分して​合計した​対価の​額​(税込または​税抜)
  • 軽減税率の​対象品目である​旨の​記載
  • 請求書受領者の​氏名または​名称
  • 登録番号
  • 適用税率
  • 税率ごとに​区分した​消費税額

ただし、小売業や飲食業など「不特定多数の者に販売等を行う取引」については、上記をすべて満たすインボイスをすべてのお客さまに発行することは現実的ではありません。そのため、こうした事業者には簡易インボイス(適格簡易請求書)が認められています。ネットショップでは多くの場合こちらに該当するでしょう。

簡易インボイスでは受領者名を省略できるほか、税率ごとに区分した消費税額または適用税率の一方を記載するだけで足ります。

  • 発行事業者の​氏名または​名称
  • 取引年月日、​内訳、​金額
  • 税率ごとに​区分して​合計した​対価の​額​(税抜または​税込)
  • 軽減税率の​対象品目である​旨の​記載
  • ​登録番号
  • 税率ごとに​区分した​消費税額または​適用税率

なお、オンライン決済の利用明細書、代引きの送り状、銀行振込の振込明細書などは支払いがあったことを証明する書類になりますが、インボイスには該当しません。そのため、インボイスを希望するお客さまにはネットショップが直接発行する必要があります。発行したインボイスは原則としてその写しを申告期限から7年間保存しなければなりません。

上で紹介したSquare オンラインビジネスで作成したネットショップでは、決済後インボイス制度に対応した電子レシートが自動で送付されます。インボイス対応が増えそうな場合はこうしたサービスを利用すると、管理の手間を大幅に削減できるでしょう。

まとめ

ネットショップでの買い物は広く浸透している一方で、領収書の仕組みを正しく理解しているお客さまは多くとはいえません。今回紹介した内容をショップのよくある質問(FAQ)や購入者への案内メールに盛り込んでおけば、領収書に関する問い合わせ対応の手間を減らせるだけでなく、トラブル防止やお客さまからの信頼向上にもつながるでしょう。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2021年5月24日時点の情報を参照しています。2025年10月31日に記事の一部を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash