棚卸資産とは?種類・評価方法・在庫との違いをやさしく解説

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

棚卸資産とは、企業が販売する目的で一時的に保有しているものを指します。商品や原材料、仕掛品などが該当し、事業活動における重要な資産です。本記事では、棚卸資産の基本的な定義から在庫との違い、評価方法、確定申告や決算時の注意点、さらには効率的な在庫管理に役立つSquareのサービスまでわかりやすく解説します。

📝この記事のポイント

  • 棚卸資産は一時保有の資産で、会計上は流動資産に分類される
  • 棚卸資産の評価には原価法や低価法があり、業種に適した方法を選ぶことが重要
  • 評価方法の選定や変更には税務署への届出が必要で、継続的な適用が求められる
  • Squareの在庫管理機能を使えば、リアルタイムで在庫を可視化・分析し業務の最適化が可能
目次


棚卸資産とは?

棚卸資産とは、販売や製品の生産のために一時的に保有している資産のことです。具体的な物品は、業種によって異なります。

  • 小売業:商品、製品
  • 製造業:原材料、仕掛品
  • 飲食業:食品、消耗品
  • 美容業:消耗品、専売品

たとえば、カフェを経営している場合、コーヒー豆やミルク、調味料、紙ナプキンなどは棚卸資産です。一方、お客さまからのオーダーで作った「カフェラテ」は、その場ですぐに収益化されるため、在庫ではありません。棚卸資産は、貸借対照表上では1年以内に現金化できる「流動資産」に分類されます。

在庫との違い

棚卸資産は、一般的に在庫と表現されることがありますが、厳密には使われる場面が異なります。

項目 在庫 棚卸資産
使用される場面 実務・業務管理(在庫管理・物流など) 会計処理・財務報告(決算・申告など)
表示される場所 在庫表・業務管理システム 貸借対照表(資産の部)
管理の目的 発注・販売・生産の調整 財務状況の正確な把握
課税所得の計算

棚卸資産の種類

棚卸資産は、法人税法第10条において以下のように分類されています。具体例となる物品は、業種や事業内容によりさまざまです。

分類 概要 具体例(カフェの場合)
商品または製品(副産物・作業くず含む) 販売や提供を目的とした完成品や仕入商品 ・商品または製品:店頭で提供するコーヒーやサンドイッチ
・副産物:エスプレッソ抽出後のコーヒーかす
・作業くず:焼き菓子の切れ端
半製品 完成直前で一時保管されている製造品 冷蔵保存している仕込済みのサラダ、飾付ける前のケーキ
仕掛品(半成工事含む) 製造・工事の途中段階にある未完成品 オーダー後に調理中のオムレツ、ミルクフォーム作成中のラテ
主要原材料 製品の主成分となる材料 コーヒー豆、小麦粉、卵、牛乳、バター、野菜
補助原材料 製品にはならないが、製造・提供に必要な材料 塩、こしょう、砂糖、デコレーション用チョコレート
消耗品で貯蔵中のもの 業務に使う消耗品で一時的に保管しているもの レジロール紙、清掃用洗剤、ぞうきん、使い捨て手袋
前各号に掲げる資産に準ずるもの 上記に準ずるが、分類しにくい棚卸資産 試飲用ミニカップ、販促用サンプルドリンク、限定キャンペーン用のノベルティ

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棚卸資産の評価方法

在庫がある場合、​取得原価が​そのまま​棚卸資産の額になるわけでは​ありません。評価方法には、原価法と低価法があり、原価法にはさらに6種類に分けられます。​棚卸資産の評価方法によって​利益との​誤差が​大きくなってしまう​可能性が​あるため、各々の違いを確認しておきましょう。

  • 原価法(最終仕入原価法、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、売価還元法)
  • 低価法

最終仕入原価法

期末時点で最も近い日の仕入れ単価を使って在庫を評価する方法です。税務署に届け出をしない場合、自動的にこの方法を適用して評価されます。

  • 向いている業種:仕入価格の変動が少ない業種
  • 注意点:仕入価格が頻繁に変動する飲食店などでは、実際にかかった仕入原価とのズレが大きくなる

個別法

各商品の実際の取得価格をもとに評価する方法です。

  • 向いている業種:宝石、不動産、アート、ビンテージ品など1点ごとに仕入価格が異なる商品を扱う事業
  • 注意点:数や​種類が​多い​場合は管理が細かくなるため、在庫数が多い業種には不向き

先入先出法

現実の​ものの​流れとは​別に、​「先に仕入れたものから先に販売された」と​考える​方法です。​在庫は​期末に​最も​近い​ものが​残っていると​仮定して、​取得価格で​評価します。

  • 向いている業種:カフェやレストランなど、食品・飲料など賞味期限のある商品を扱う業種
  • 注意点:​実際の棚卸資産の流れに近いものの、実際の商品の出入りと一致しない場合があるため、管理と記録に一貫性が求められる

総平均法

前期からの繰越在庫と当期の仕入れ額全体を合計し、総量で割って平均単価を算出する方法です。

  • 向いている業種:小売業、飲食業など月次や年次決算で棚卸する業種
  • 注意点:期間終了後でないと計算できないため、リアルタイムでの管理にはやや不向き

移動平均法

仕入れのたびに平均単価を更新して、その都度反映する方法です。価格変動に応じて取得原価が即時反映されるため、日々の在庫変動をリアルタイムで追いたい場合に適しています。特に在庫管理ツールやPOSレジと連携している店舗では、自動更新ができることから管理効率が高まります。

  • 向いている業種:在庫管理をリアルタイムで行いたい店舗
  • 注意点:仕入れの都度記録・計算が必要になる

売価還元法

商品をグループに分け、グループごとに販売価格に原価率を掛けて原価を算出する方法です。商品を大量に扱う業種で便利です。

  • 向いている業種:小売業やドラッグストアなど、商品数が多い業種
  • 注意点:実際の仕入原価との誤差が生じることがあり、原価率の設定精度が重要

低価法

取得原価と期末時点における時価(売却可能価額など)を比較して、どちらか低いほうで評価する方法です。長期間売れ残った商品がある場合は、評価損として処理するため、在庫価値が下がった場合の損失を早期に会計に反映できるメリットがあります。

  • 向いている業種:アパレルや家電など、陳列期間が長く値下がりリスクのある商品を扱う業種
  • 注意点:継続的に時価を確認する必要があり、判断ミスによる損失計上リスクがある

確定申告や決算時の注意点

ここでは、確定申告・決算時にミスを防ぐために役立つポイントについて解説します。

棚卸資産の評価方法の決定と届出

棚卸資産の評価方法は、企業の会計処理に大きく影響します。税務上は「最終仕入原価法」が原則適用されますが、先入先出法や総平均法など、他の方法を選びたい場合には、事業年度開始の日の前日までに「棚卸資産の評価方法の届出書」を所轄税務署に提出しなければなりません。

評価方法によって棚卸資産の評価額が変わるため、事業に合った評価方法の選択が重要です。なお、評価方法は一度届け出ると原則として継続適用が求められ、変更時には再度届出が必要です。

定期的な棚卸し

期末在庫を正確に把握するには、定期的な棚卸作業が不可欠です。棚卸しの頻度は業種や取扱う物品によりますが、決算前などに、現物と帳簿在庫を照らし合わせて数量や状態を確認します。たとえば、カフェなら賞味期限や消費期限の近い食材がないかどうかや、開封済みの原材料がどれだけ残っているかなども確認しておきましょう。

在庫は企業の資産であり、棚卸資産が多すぎると企業の収益を圧迫してしまいます。過剰在庫や滞留在庫が減れば、キャッシュフローの改善につながるほか、発注ミスの防止や作業効率の向上、保管コストの削減が図れます。また、品質低下や劣化リスクを抑えられれば、顧客満足度の維持にも寄与します。

棚卸表の保存

棚卸しの実施後は、棚卸表の作成・保存が必要です。棚卸表は決算関係書類にあたるため、法定保存期間(法人税法では7年間)を守って管理しましょう。棚卸表には、品目、数量、単価、金額のほか、実施日や担当者名などを明記しておくと信頼性が高まります。

なお、紙での保管が原則ですが、一定の要件を満たせば、電子媒体やスキャンでの保管も認められています。クラウドサービスなどでデータ保存することも可能です。

在庫管理の徹底

正確な棚卸しを実施するには、在庫の数え方や記録方法などを事前に明文化し、社内でルールを統一しておくことが重要です。たとえば「開封済みの商品の扱い」や「カウント時の単位」など、細かな取り決めが不十分だと、現場ごとに判断が分かれてしまい数え直しや入力ミスの原因となります。

これを防ぐには、棚卸しマニュアルの作成と従業員への共有が有効です。また、作業の属人化を避けるために、バーコードやQRコードを活用した在庫管理システムの導入も検討しましょう。システム化によってヒューマンエラーを防止でき、在庫データの一元管理による経営判断の迅速化にもつながります。

Squareで適切な在庫管理を

棚卸資産の正確な把握と管理は、事業の健全な運営に欠かせません。Squareの在庫管理機能は、日々の在庫状況をリアルタイムで可視化できるクラウドベースのシステムです。

無料ですぐに始められ、どこからでも管理できる

Squareの在庫管理機能は、アカウントを作成すれば無料ですぐに利用できます。​Square POSレジアプリなどと連携しているため、商品の販売・返品時に在庫数が自動で反映されます。

初期費用や特別な機器は不要で、インターネット環境さえあればパソコンやスマートフォンからクラウド上に管理されている情報にいつでもアクセスできます。外出先や他拠点からの確認・操作もできるため、拠点やスタッフ間での情報共有もスムーズです。

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複数店舗の商品を一括で管理できる

複数の拠点を運営している場合でも、Squareでは一つの管理画面から在庫を一括で管理できます。店舗を登録しておくと、店舗ごとの在庫状況を即時に把握できるため、在庫の偏在や過剰・欠品などのリスクが減らせます。

また、在庫が​少なくなった場合はメールで通知が届くため、発注や補充のタイミングを見誤るリスクが軽減されます。もし、ある店舗で材料が不足した場合、他店舗の在庫を確認して素早く在庫調整を行えば、販売機会の損失を防いで業務の効率化につなげられます。

在庫消化率レポートで早めの対応が可能

Square POSレジの有料プランでは、売上データと連動した在庫消化率レポートが確認できます。人気商品があれば再入荷を考慮したり、売れ行きが悪い商品や在庫回転率の低い商品を早期に見つけられれば、適切な販促や価格調整の判断材料に生かしたりできます。また、販売数と在庫数の比較や在庫切れの予測もできるため、より戦略的な商品展開や仕入れ判断が可能になります。

無料ですぐに利用可能なPOSレジならSquare

商品在庫や顧客管理から、店舗別売上集計、オンライン販売機能まで。小売店舗に必要な機能を満載したPOSレジシステムが、無料で利用可能です。

まとめ

棚卸資産は事業の運営と財務管理に欠かせない要素です。評価方法の選択や帳票管理、在庫管理体制を整えることが、正しい税務申告と経営改善につながります。さらに、Squareの在庫管理機能を活用すれば、リアルタイムで在庫状況を把握し、多店舗間の調整や販売データとの連携による戦略的な判断も行えます。棚卸資産の適切な管理は、収益性の向上とキャッシュフローの健全化に直結するため、ぜひ自社に合った方法を見直してみましょう。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2019年10月4日時点の情報を参照しています。2025年6月20日に記事の一部を更新しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。