病院を開業するためのヒント

勤務医か開業医か、医師としてのキャリア選択は大きく二つに分かれます。病院に勤務するのと、病院を経営するのとではさまざまな違いがあるため、開業は人生の大きな決断といえるでしょう。

勤務医と開業医の違いの一つに、「開業医は、医師であり経営者でもある」という点があります。開業医は患者の診療を行いつつ、並行して病院の経営も行う必要があります。勤務医と比べて業務が増えるかもしれませんが、自分の理想とする医療を追求でき、軌道に乗れば収入増加も見込めます。

今回は、開業医のメリットやデメリット、開業の手続き、集客のヒントなどについて解説していきます。

開業医のメリット

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勤務時間を自分の裁量で決められる

勤務医であれば、サラリーマンと同様に勤務時間が定められています。しかし、開業医であれば休診日や診療時間を自由に決めることができます。学会への参加やプライベートの時間の確保も自分の裁量次第です。

理想とする医療を追求できる

勤務医であれば、ある程度病院の方針に従って診療を行うことになります。「もっと患者にとって身近に感じてもらえる医師になりたい」「新しい診療方法を試してみたい」と考えていても実行に移すのは難しいかもしれません。

しかし、開業医であれば、自分の責任において理想とする医療を追求できます。

地域医療に貢献できる

病床数が100を超える中病院や大病院では先端医療や高度医療を受けられるメリットがある一方、待ち時間が長いことが課題になっています。医師としても多くの患者を短時間で診察しなければならないため、一人ひとりの患者を診る時間が制限されます。待ち時間の短縮を図るために電子カルテや予約システムを導入するのは規模が大きな病院であればあるほど、簡単にはできません。

しかし開業医ならば院長として、待ち時間を短縮するために積極的にIT技術を活用することも経営判断として下すことができます。カルテの記入や予約の電話対応などに取られていた時間が減る分、一人ひとりの患者にゆっくり向き合うことができます。超高齢社会で地域医療の需要が増してきている中、一人ひとりの患者に向き合う開業医は地域住民にとって大切な存在であり、地域医療に貢献していることを実感できるでしょう。

収入の増加が期待できる

勤務医は給与所得者のため、収入が決められています。頑張って診療をこなし、論文を執筆し、後輩医師の指導をしても大幅な給与アップは期待できないかもしれません。激務の中で、プライベートとの両立に悩む人や体調を崩す人もいるのではないでしょうか。開業医の場合、診療科によっても異なりますが、患者数が増えれば収入の増加が期待できます。

平成21年に厚生労働省が行った調査によると、勤務医の平均年収は1,479万円、開業医の平均年収は2,530万円で、開業医のほうが約1.7倍多くなっています。

参考:「勤務医の給料」と「開業医の収支差額」について(厚生労働省)

定年がない

勤務医には定年がありますが、開業医には定年がありません。自分が働きたい年齢まで体力が許すかぎり、働き続けることができます。

開業医のデメリット

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代診を頼めない

勤務医なら自分の体調がすぐれないときに代わりの医師に代診を頼むことができますが、開業医は代わりの医師を急に見つけることは難しいでしょう。患者のためにも、しっかりと健康管理を行う必要があります。

雇用主としての責任

開業医は会社の経営者と同様、雇用した従業員に対して責任があります。どのような医師や看護師を雇い、どう教育していくかはすべて院長の責任です。病院全体を見渡す経営者としての視点が必要です。

開業の資金や運営の資金が必要

病院を開業するには、物件の取得費用や診療機材や、什器などの購入費、人件費、広告宣伝費、運転資金など多額の資金が必要です。自己資金や金融機関からの融資などさまざまな方法で資金を調達する必要があります。「銀行融資のための事業計画書作成のヒント」の記事もぜひ参考にしてみてください。

治療に対する責任

開業した後は、院長として診療に対する責任を背負うことになります。自身の医療行為はもちろんですが、雇用した医師や看護師の診療行為についても責任を負う立場になります。

開業の流れ

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経営理念の決定

一般企業と同様に、経営理念は組織や事業の方向性を指し示す羅針盤のようなものです。医師や看護師の採用や、診療方針にも関わるので、慎重に決めたいところです。

開業地の選択

開業する場所の選定も重要になってきます。同じ診療科が乱立している場所で開業すると、患者の取り合いになってしまい収益にも影響します。しかし、競合が少ないからといって、不便な場所で開業すると患者が集まりにくいでしょう。開業したい地域の人口や交通機関、競合のクリニックなどを加味した上で、適切な場所を選定することが大切です。

申請手続き

病院を開業するには、保健所に届出や申請書を提出しなければなりません。開業の形態が個人で開設する診療所か医療法人かによって手続きは異なるため、管轄の保健所の情報を確認してみてください。

参考:病院の許可・届出手続きの流れ(東京都福祉保健局)

スタッフの採用

看護師や医療事務員などスタッフを何名雇用するのか人員計画を立てます。知人や友人に声をかけたり、インターネットや求人誌に広告を出したりするのも一つの方法です。「初めての採用面接、良い人材を見抜くには」の記事もぜひ参考にしてみてください。

集客のヒント

病院を開業しても患者が来なければ収入を得ることができず、運営を続けていくことができません。開業したばかりの個人病院は、知名度が低く患者が来てくれないといったことも起こり得ます。ここでは、集客のヒントを紹介します。

ホームページやソーシャルメディアを活用する

地域住民をターゲットにする場合、新聞などの折り込みチラシも有効ですが、病院のホームページを設けたり、ソーシャルメディアを活用したりすることも有効です。スマートフォンが普及した現在は、病院の情報や評判をインターネットで検索する人が多いのではないでしょうか。

ホームページによって病院の印象は大きく変わるので、予算に余裕があるならば、専門の業者に作成してもらうことを考えてもよいでしょう。経営理念、診療科目、診療時間、病院の特徴などをホームページに掲載します。また、スタッフや院内の写真を掲載することで、患者に安心して来てもらうことができます。

クレジットカード決済を導入する

患者の利便性を高める方法の一つとして、クレジットカード決済を導入する方法があります。クレジットカードで支払うことができれば、現金の持ち合わせがなくても安心して診療を受けることができ、高額な現金を持ち歩かずに済みます。患者の利便性や満足度を高めることは、病院を経営し続けるためにとても大切なことです。

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執筆は2018年4月13日時点の情報を参照しています。2019年4月5日、2020年7月1日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash