キャンプ場の開業に必要な資格・許可、初期費用、運営のコツを解説

加熱するキャンプブームの中、キャンプ場の稼働率は上昇中です。これからキャンプ場の開業を考える人に向け、開業の初期費用とランニングコスト、必要な許認可や届出、経営コンセプトの考え方などをまとめました。キャンプ場の魅力アップと業務効率化に役立つシステムの導入についても解説します。

目次


キャンプ場の現状

忙しい日常を離れ、自然の近くで寝泊まりするキャンプの人気は近年高まるばかりです。アウトドアを題材にしたアニメや漫画、動画コンテンツなどを通じてその魅力が拡散し、キャンプに興味を持つ人が増えたことがブームに拍車をかけています。加えて、コロナ禍でも人が密集せずにできるレジャーとしてキャンプの人気がより高まったことで、キャンプ場の需要も拡大中といえます。

スポーツ庁が2021年に発表したスポーツ施設の調査結果によると、日本全国にキャンプ場は民間と公共合わせて1,500カ所以上あります。単純計算で各都道府県に平均30カ所のキャンプ場があることになりますが、実は全国のキャンプ場の総数は減少しています。減少の背景には施設の老朽化や運営者の引退などがあると考えられます。

こうした状況の中、キャンプの回数・泊数が増えていることでキャンプ場の稼働率が上昇中という報告もあります。キャンプブームの加熱とキャンプ場の減少という相反するトレンドは、キャンプ場の開業を考える人にとって追い風となりそうです。

参考:
体育・スポーツ施設現況調査結果の概要(スポーツ庁)
「年間平均キャンプ泊数が過去最高に」オートキャンプ白書2023発刊のお知らせ(2023年7月13日、一般社団法人日本オートキャンプ協会)

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キャンプ場の種類

キャンプ場の総数は減少していますが、キャンプブームに伴う「キャンプの多様化」はキャンプ場の運営形態の多様化にもつながっています。

たとえば、「グラマラス(豪華な)」と「キャンピング」を合わせた「グランピング」は、大自然の中でホテルと変わらぬ贅沢を味わえる新しいキャンプの形態として人気です。

また、一人で行う「ソロキャンプ」も初心者から熟練者まで多くの人を惹きつけています。時間や人間関係に縛られず、焚き火や料理などに没頭しながらゆったりと時間を過ごせることが人気の秘訣です。

キャンプ場の総数が減少する中でも、キャンプの多様化はキャンプ場の開業・運営方針を考えるうえで大きなヒントとなりそうです。

キャンプ場の種類

キャンプ場とひと口に言っても、シンプルな場所から豪華な設備までさまざまな種類があります。

  • キャンプ場:キャンプサイトと駐車場が離れたタイプのキャンプ場で、車の危険がないのがメリット。
  • オートキャンプ場:キャンプサイト内に車を乗り入れて停められるキャンプ場で、荷物運搬の手間がない。
  • コテージ、ロッジ、バンガロー:簡易宿泊用の施設。テント不要で楽しめ、ファミリー層にも便利。
  • グランピング:常設のテントと寝具・家具などがある施設。価格は高めだが、おしゃれさや贅沢さが人気。

キャンプサイトのタイプ

キャンプ場内の、利用者がテントを張って泊まるエリアはキャンプサイトと呼ばれ、タイプによって使い方、設備、価格などが異なります。

  • フリーサイト:サイト内のどこにでもテントを設営可能。多人数、グループでの利用にも便利。
  • 区画サイト:料金を払って借りた区画にテントを設営。他の利用者と距離が確保され、境界がロープなどで仕切られていることも。
  • ガレージサイト:サイト内に設置されたガレージ外にテントを設営。専用トイレや冷蔵庫などが設置されたサイトもある。

キャンプ場経営にかかる費用

キャンプ場をビジネスとして運営する場合、開業と運営にかかる費用をあらかじめ理解しておきましょう。

開業費用

キャンプ場の開業費用は「土地の状態」や「キャンプ場の種類」によって大きく異なります。

たとえば、山林や農地である土地を購入してキャンプ場を開業するには、土地の購入コスト、伐採、整地、転用などの整備コスト、管理棟やトイレ、シャワー、炊事場などの建設コストが必要です。この場合、土地の広さや立地にもよりますが、500万から3,000万円程度の予算を考えておくと良いでしょう。コテージやバンガロー、グランピング施設などを建設する場合は、その棟数分の建設コストも必要です。

一方、ゼロから開業するのではなく、既存のキャンプ場ビジネスを引き継いで開業するケースもあります。この場合は、土地・物件の購入に加え、ビジネスの権利購入や設備修繕のコストを考えます。既存のキャンプ場の状態によってかかる費用は異なるものの、ゼロからの開業よりは低コストで始められるのがメリットです。

また、設備の建設・修繕は業者にすべて依頼するのではなく、一部をDIYで行えばコストダウンも可能です。

ランニングコスト

キャンプ場を開業後、日々の運営に必ずかかるコストには以下のようなものがあります。金額はキャンプ場の規模や稼働率によって異なります。

  • 水道光熱費
  • 通信費(インターネット、電話など)
  • 維持・修繕費
  • 広告宣伝費
  • 保険料

稼働率や利用見込みが低い時期には、水道光熱費や広告宣伝費が抑えられる可能性があります。

上に挙げたコストの他に、キャンプ場の運営スタイル次第でかかる次のようなコストもあります。

  • 人件費(管理、受付、清掃など)
  • 委託費用(運営などの業務を委託する場合)
  • 車両・燃料費
  • システム管理費(ウェブサイト、予約、会計、顧客情報管理など)

人件費や委託費用は決して小さくないため、キャンプ場の規模によってはオーナー自身が手掛ける業務量次第でコストを抑えられます。車両は自家用車と兼用にする、システムは基本料金無料や低価格のサービスを導入するなど、開業後のランニングコストを下げる工夫をしてみましょう。

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キャンプ場経営の収入

キャンプ場の開業後に発生する売り上げには、以下のようなものがあります。

  • サイト利用料
  • 入場料
  • 駐車場の利用料
  • 備品のレンタル料
  • 飲食物の販売料(※許認可がある場合)
  • 温泉の利用料(※設備がある場合)
  • アクティビティ料金(川下り、野鳥観察ツアー、クラフト体験など)

キャンプ場の収入として大きいのは、サイト利用料です。テントを張るだけのサイトの場合は1泊あたり1人数千円ほどですが、グランピングなどの宿泊設備を持つキャンプ場なら、1泊あたり1人数万円の収入になることも珍しくありません。

なお、冬期はキャンプ場の閑散期です。収入の少ない時期にもかかるランニングコストを含めて、開業の見通しを立てておくと安心といえます。

キャンプ場の開業に必要な許可申請

キャンプ場の営業形態によって、新たなキャンプ場の開業には許認可や届出が求められます。どんな設備・サービスのあるキャンプ場を開業したいかを考えたうえで、適した許認可や届出の手続きを行いましょう。必要な許認可を取得せずに開業した場合、法律で罰せられることがあります。

宿泊できる設備を設置する場合

宿泊施設としてのキャンプ場ビジネスには、旅館業営業許可の取得が必須です。キャンプ場を開業する際、宿泊施設に当てはまるかどうか考えてみましょう。

  • コテージ、グランピングなど常設の宿泊施設あり:旅館業営業許可が必要
  • テント設営が必要で常設の宿泊施設なし:旅館業営業許可が不要

ポイントは、「宿泊施設を提供しているかどうか」です。常設の宿泊施設がないタイプ、つまり利用者自身がテントを設営して泊まるタイプのキャンプ場は、旅館業営業許可を取得する必要はありません。

旅館業営業許可の必要なビジネスを開業する場合、キャンプ場がある都道府県の保健所に申請します。

入浴できる施設を設置する場合

お風呂や温泉、サウナなどの設備は、キャンプ場の魅力を高めてくれます。ただし、これらを設置して利用者に提供するためには次の許可を取得する必要があります。

  • 公衆浴場営業許可
  • 温泉利用許可(※温泉を利用する場合)

耐熱テントを使った「テントサウナ」をキャンプ場で提供する場合も、公衆浴場営業許可の対象です。ただし、テントサウナの利用が禁止されている地域もあるため、事前に確認しましょう。

公衆浴場営業許可と温泉利用許可はいずれも、キャンプ場がある都道府県の保健所に申請します。

参考:テントサウナの営業について(東京都保健医療局)

食材・料理を提供する場合

バーベキュー用の肉や野菜を提供するオートキャンプ場や、朝食を提供するグランピング施設など、食材や料理を魅力として打ち出すことも可能です。その場合、開業までに次の許可申請と届出を行います。

  • 飲食店営業許可:食品衛生責任者の設置、および水質検査(※上水道以外の水を利用の場合)を実施したうえで保健所に申請。
  • 食肉販売業許可:バーベキュー用の生肉を提供する場合に必要。水質検査を実施したうえで保健所に申請。
  • 防火対象物使用開始届:調理用の火器(ガス・練炭のコンロやグリル、液体燃料式の発電機など)を提供・利用することを管轄の消防署に届け出る。

アルコールをビンや缶のまま提供する場合

キャンプ場でのお酒の提供は利用者のメリットになり、経営側にとっても収入につながります。提供方式により、次の免許や届け出が求められます。

  • 酒類販売業免許:アルコールをビンや缶のまま提供する場合に必要。管轄の税務署に申請。
  • 深夜酒類提供飲食店営業届:深夜0時以降にアルコールを販売する場合に必要。管轄の警察署に届け出る。

お酒をグラスや紙コップに注いで提供する場合は、酒類販売業免許は不要です。ただし、飲食店営業許可が必要となります。

森林伐採・土地開発を行う場合

キャンプ場を開業する土地が更地ではなく森林という場合、キャンプサイトやコテージなどを作るために伐採や土地造成を行うことになります。自分の所有地であっても伐採は許可や届け出なく進めることができず、面積に応じて以下の手続きを行います。

  • 林地開発許可:1ヘクタールを超える土地を開発する場合に、都道府県知事の許可が必要。事前協議のうえ申請。
  • 伐採及び伐採後の造林の届出:1ヘクタール以下の土地の伐採の場合、市区町村に届け出る。
  • 小規模林地開発行為の届出:1ヘクタール以下の土地の林地以外への転用造成などを行う場合、市区町村に届け出る。伐採を伴う場合は「伐採及び伐採後の造林の届出」も必要。

これらの手続きは完了までに90日程度かかる例もあるため、キャンプ場の開業スケジュールに合わせて早めに動き出しましょう。

農地をキャンプ場として使用する場合

所有する農地をキャンプ場に変えて開業したい場合、「地目」と呼ばれる土地の用途を変更する届け出や許可が必要です。まずは法務局で地目を確認のうえ、次の手続きを行います。

  • 農地転用届:市街化区域の場合、市区町村の農業委員会に届け出る。
  • 農地転用許可:市街化調整区域にある土地の場合、または都市計画区域外の土地の場合、都道府県知事または農林水産大臣に許可を申請。

農地の転用は必ずしも認められるとは限りません。事前にしっかり下調べをしてから転用手続きに臨みましょう。

参考:農地転用許可制度について(農林水産省)

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キャンプ場経営の成功のためにできること

キャンプ場の開業計画を立てる前に考えておきたいのが、「どうしたらキャンプ場として成功するか?」ということです。ただ開業して広告を打っても、利用者が来て賑わう保証はありません。次の4点のポイントを開業前に必ず検討しておきましょう。

コンセプトを明確化

キャンプ場が全国的に減少傾向にあるとはいっても、地域によっては競合となるキャンプ場や他の宿泊施設も存在します。その中で選ばれるキャンプ場になるのは、「このキャンプ場に泊まりたい」と感じてもらえるような明確なコンセプトを持つことです。

景観や立地、温泉や周辺のアクティビティ、アクセスの良さなど、元からある環境を生かしたコンセプトを設ける方法の他、以下の例のようにコンセプトを先に明確化したうえで綿密な開業計画を立てるのもおすすめです。

  • 「自然の中で過ごす贅沢な時間」をコンセプトに、グランピング設備を建設
  • 「気軽に手ぶらでキャンプ」をコンセプトに、備品レンタルや食材提供
  • 「バリアフリーなキャンプ」をコンセプトに、ハンディキャップがある人も楽しめる設備を設計

コンセプトの設定は、キャンプ場の価値を決めることにもつながります。もちろん、広告やマーケティング活動を通じてコンセプトを伝える努力も欠かせません。

顧客の利便性向上

キャンプ場を利用する客層やターゲットに合わせたサービス・設備を用意することで、利便性の向上を図ることも重要です。特に、キャンプ初心者でも安心して使えるサービスや設備があることが分かると、予約の後押しになり、客層の広がりも期待できます。

宿泊や飲食ばかりに目が向きがちですが、実際にキャンプ場を訪れると携帯電話の電波が弱かったり、追加サービスや飲食物の購入時に現金しか利用できなかったりという不便もあります。最近はキャンプ場にWiFiやキャッシュレス決済を導入する例も出てきています。

キャッシュレス決済への対応は、クレジットカード交通系ICカードQRコードなど複数の決済に1台で対応できる「Square」のキャッシュレス決済端末が便利です。一度導入すれば月額利用料などは発生せず、会計ごとの決済手数料(3.25%〜)だけで利用可能です。

インバウンド需要を意識

キャンプ場を開業するうえで見逃せないのが、インバウンド需要です。日本の自然を味わいたいと考える外国人旅行客は多いものの、すべてのキャンプ場が外国語に対応しているわけではなく、需要を取りこぼしている状態といえます。

ウェブサイトや問い合わせEメールの多言語対応、英語でのSNSマーケティング、キャンプ場内の多言語表示など、できるところから始めてみてはいかがでしょうか。

売上管理を効率化

キャンプ場の運営でも、業務の効率化が成功を左右します。特に、キャンプサイト利用料から物品の販売料まで、多品目にわたる売り上げの管理については専用システムの導入を開業までに済ませておくことがおすすめです。

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執筆は2023年8月28日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash