注目を​集め始めてからでは​遅い!​今すぐできる​地方自治体の​インバウンド対策法

2018年には​訪日観光客が​初めて​3,000万人を​突破し、​渋谷の​スクランブル交差点や​上野の​アメヤ横丁など​都心の​人気スポットに​日々​多くの​訪日観光客が​足を​運んでいます。​訪日観光客の​増加は​首都圏や​近畿圏で​目立ちますが、​観光庁の​発表に​よれば、​実は​2014年時点では​2人に​1人​(※)が​二大都市圏を​除いた​地方を​訪れている​そうです。

訪日観光客数の​さらなる​増加が​見込める​東京大会も、​もう​間近。​訪日観光客の​地方分​散化が​進むなか、​「インバウンド対策を​しなければ。​でも​どこから​始めよう」と​考える​地方自治体も​少なくないのではないでしょうか。

この​記事では、​訪日観光客の​地方訪問の​状況や、​地方自治体の​インバウンド対策の​現状を​掘り起こしながら、​訪日観光客を​呼び寄せる​ための​インバウンド対策や、​地域活性化に​つながるアイデアを​提案します。

※2014年時点の​調査結果。​「平成26年訪日外国人観光客の​地方訪問状況​(観光庁)」より

訪日観光客の​地方訪問の​動向

前述のように、​2015年に​観光庁が​訪日観光客の​地方訪問状況を​まと​めた​資料に​よれば、​2人に​1人は​大都市圏と​組み合わせて、​あるいは​地方のみに​足を​運んでいる、と​いう​結果が​出ています。

なかでも、​高い​地方訪問率を​誇るのは​中国​(67%※)と​オーストラリア​(62%※)。​次いで​香港、​韓国、​台湾、​欧米と​いう​結果が​出ており、​どの​国も​5割を​超える​地方訪問率に​達しています。

※2大都市圏と​地方訪問を​組み合わせた​訪日観光客の​比率と、​地方のみを​訪れた​訪日観光客の​比率を​合計した​比率です

参考:平成26年訪日外国人観光客の​地方訪問状況​(観光庁)

同調査に​よると、​地方のみを​訪問する​各国の​訪日観光客から​人気が​高いのは、​北海道。​2大都市圏と​組み合わせて​地方を​訪問する​訪日観光客には、​首都圏から​あまり遠くない​中部地方が​人気を​占めているようです。​地方訪問率が​高い​国別の​詳しい​訪問先は、​下記の​表から​ご覧ください。

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地方を​訪れる​目的と​しては、​ショッピングが​最も​人気で、​次いで​自然・景観地観光、​繁華街の​街歩き、​温泉入浴、​などが​トップを​占めています。​その​ほかにも​日本の​酒を​飲む​こと、​日本の​歴史・伝統文化体験、​四季の​体感、​日本の​現代文化体験、​など​日本の​文化に​触れる​ことを​目的と​している​ことも​同調査から​わかります。

2014年時点では​上記の​エリアが​注目を​集めていましたが、​今は​訪日観光客が​あまり​多く​訪れない​場所でも、​ソーシャルメディアに​投稿された​画像が​話題を​呼び、​たちまち人気スポットに​昇華する​ことも​十分​考えられます。​たとえば​茨城では、​Facebookに​投稿された​ひたち海浜公園に​ある​ネモフィラの​花畑の​写真が​火付けとなりインバウンド客が​増加したようです。​ちなみに​ひたち海浜公園の​外国人団体利用者数​(20名以上)は、​2014年度に​1,300人だった​ところ、​2018年には​28,847人まで​拡大しています。

参考:
​「ネモフィラ​見たい」 ひたち海浜公園、​外国人観光客急増​(2017年4月30日、​茨城新聞)
平成 29 年度​ 年間入園者数報告​(国営ひたち海浜公園)

いつ、​何を​きっかけに​関心が​高まるかは​予測しきれないため、​いざ訪日観光客が​殺到した​ときに​心を​掴み、​リピーターに​つな​げていく​ためにも、​早め早めに​対策を​練って​おきたい​ところです。

低予算で​行なえる!​インバウンド対策チェックリスト

インバウンドの​ニュースサイト​「訪日ラボ」が​実施した​インバウンド対策の​意識調査からは、​地方の​インバウンド対策実施率は​8割と​いう​結果が​出ています。​しかしながら、​懸念点を​掘り下げてみると、​多くの​地方​自治体は​あまり​大きな​予算が​割けないようで、​予算に​関する​質問では​「予算が​ない」と​いう​回答が​45.13%を​占めています。

参考:【インバウンド対策意識調査】地方の​インバウンド対策実施率は​80%以上。​しかし、​30%が​インバウンド誘致に​消極的。​(2018年6月14日、​PR TIMES)

ここでは​その結果を​踏まえて、​多大な​費用を​割かずに​いち早く​取り入れられる​インバウンド対策を​三つ紹介します。

インバウンドセミナーを​開催する

たとえば​地域の​小売店や​飲食店の​事業主が​接客や​サービス提供を​する​うえで、​知りたい​情報を​まと​めた​セミナーを​開催してみては​いかがでしょうか。​内容と​しては、​下記のような​ものが​挙げられます。

  • 近年増加傾向に​ある​ムスリムや​ベジタリアン対応に​関する​セミナー
  • LGBTQ+を​はじめと​する​多様な​観光客への​対応方法
  • 近年の​キャッシュレス動向
  • 外国人材を​雇用する​うえでの​ポイント
  • 免税に​関する​セミナー
  • 多言語対応の​ガイドライン
    など

インバウンド対策に​おいて​押さえておくべき情報を​短時間に​凝縮した​セミナーを​提供する​ことで、​自ら​調べる​時間が​設けられない、​インバウンド対策の​情報を​求めている、と​いう​スモールビジネスの​支えに​なれるかもしれません。​地方自治体が​主体と​なり、​観光の​トレンドを​学ぶ場を​設ける​ことで、​地域全体の​意識を​高めていく​こともできるでしょう。

キャッシュレスの​インフラを​提供する

日本政府は​2025年までに​キャッシュレス決済比率を​40%まであげる​ことを​掲げています。​一方で、​一般社団法人キャッシュレス推進協議会が​2020年に​発表している​「キャッシュレス・ロードマップ」に​よれば、​イギリスや​オーストラリアなど、​世界ではすでに​5割を​超える​キャッシュレス比率を​達している​ところも​あり、​クレジットカード大国と​しても​知られる​韓国では、​2017年時点で​9割の​キャッシュレス比率を​記録しています。​このような​観光客を​迎え入れる​うえでも、​キャッシュレス対応は​重要と​いえるでしょう。

参考:キャッシュレス・ロードマップ 2020 要約版​(一般社団法人キャッシュレス推進協議会)

たとえば​冬の​風物詩である​北海道の​雪まつりの​会場では、​中華圏の​観光客への​決済環境を​整える​うえで​2019年に​WeChat Payが​導入されました。​まずは​このように​地域の​祭りなどを​キャッシュレスに​する​ことで、​消費を​促してみるのも​地域活性化に​つなげる​手段でしょう。

参考:【LINE Pay と​ WeChat Pay 雪まつりで​同時導入】 ​(リージョナルマーケティング)

キャッシュレスに​対応する​方法の​一つと​して​挙げられるのは、​決済端末の​導入です。​最近では​タブレットや​スマートフォンに​つな​げるだけで、​クレジットカードや​QRコード​電子マネーでの​決済を​受け付けられる​「モバイル決済端末」が​多く​登場しており、​従来の​決済端末に​おいて​懸念されていた​導入費用や​固定費などが​安く​抑えられる​点が​大きな​特長です。​たとえば​Squareで​あれば、​月額固定費用や​初期費用、​POSレジの​利用料金は​タダ。​必要に​なるのは​決済端末​(Square リーダー)の​購入に​かかる​7,980円​(税込)と​決済時の​手数料のみです。

祭りを​はじめと​する​催事は​もちろんの​こと、​観光案内所での​キャッシュレス決済の​導入も、​訪日観光客に​とっては​親切でしょう。​観光案内所で​売り上げアップを​狙う​方法は、​収益・地域活性化に​つなげる​アイデア集で​詳しく​紹介します。

通訳サービスを​整える

観光庁が​2018年に​実施した​多言語対応に​関する​アンケートでは、​訪日観光客が​旅行中に​困った​ことと​して​「施設等の​スタッフと​コミュニケーションが​とれない」が​上位に​ランクインしています。

参考:​「訪日外国人旅行者の​受入環境整備に​おける​ 国内の​多言語対応に​関する​アンケート」​結果​(観光庁)

「外国人の​従業員を​雇用したいけれど、​働き手が​見つからない」​「多言語化に​あまり​費用が​割けない」​このような​場合は、​クラウドソーシングの​力を​借りてみては​いかがでしょうか。​クラウドソーシングで​あれば、​通常より​安価な​価格帯で、​動画チャットを​介して​在宅ワーカーに​通訳業務を​お願いする​ことができます。

実際に​兵庫県の​城崎温泉エリアでは、​動画チャット通訳サービスを​利用した​実証実験が​2016年に​行われていたそうです。​予算が​少ないけれど、​増加する​訪日観光客と​丁寧に​意思疎通したいと​いう​事業者の​悩みを​解消する​うえでも、​このような​ツールを​地域で​取り入れてみると​いいでしょう。

参考:クラウドソーシングを​活用した​動画チャット通訳サービス​「クラウド通訳」を​城崎温泉14店舗で​実証実験を​開始​(2016年4月1日、​ULURU)

収益・地域活性化に​つなげる​アイデア集

ここでは​訪日観光客の​滞在を​快適に​しつつ、​地域を​活性化する​ために​できる​ことを​3点紹介します。

1. 観光案内所を​充実させる

現地の​情報を​訪日観光客に​届ける​役割を​担う、​観光案内所。​地図や​ガイドの​無料配布や、​道案内などの​サービスは​一般的ですが、​地域活性化には​サービスの​多様化が​効果的かもしれません。​方法と​しては、​以下が​考えられます。

・チケット販売機能を​設ける
地域の​観光施設や​アクティビティ、​文化鑑賞の​チケットを​観光案内所で​用意し、​地域の​回遊を​促してみては​いかがでしょうか。​最近では、​インターネットを​通じて​簡単に​情報収集が​できるようになりましたが、​地域の​イベントの​開催日時や​場所、​チケットの​購入場所、​などの​情報は​まだ​不足しているようです。​情報の​提供に​合わせて​チケットも​購入できる​流れを​整えておく​ことで、​訪日観光客も​予定を​立てやすくなるかもしれません。​また、​交通事業者と​手を​組みバスや​タクシーを​活用した​着地型の​ツアーを​企画し、​ツアーチケットを​観光案内所で​販売する、と​いう​施策も​考えられるでしょう。

・地域の​資源を​生かした​サービスを​提供
山梨県の​笛吹市石和温泉駅観光案内所では、​市内に​ある​12カ所の​ワイナリーで​醸造している​日本ワインを​有料で​試飲できる​ワインサーバーを​設置している​そうです。​気に​入った​ワインは​お土産と​して​購入できたり、​試飲から​ワイナリー訪問に​つなげられたりする​仕組みが​整っています。

参考:
​大人気!​ワインサーバ​(石和温泉観光協会)

このように​新たな​視点を​用いた​市内周遊を​提案するとともに、​観光案内所で​収益を​得られる​施策を​取り入れてみては​いかがでしょうか。

・体験型の​コンテンツを​提供
茶道や​書道、​生け花など、​日本文化が​体験できる​コンテンツを​観光施設で​設けてしまう、と​いうのも​一つの​手でしょう。​奈良県に​位置する​猿沢インーNara Visitor Center & Innーでは、​毎週​一回茶道体験が​行われている​他、​ミニ文化体験が​毎日​開催されている​そうです。

参考:日本文化体験 猿沢イン-Nara Visitor Center & Inn-​(奈良県)​(近畿農政局)

メリット
・観光案内所で収益を生み出せる
・地域の特産物をプロモーションできる

2. タクシー事業者と​連携する

大都市圏と​異なり電車や​バスの​本数が​少ない​地方圏では、​観光の​手段と​して​周遊タクシーを​用意してみるのも​いいかもしれません。​たとえば​鳥取県の​鳥取市国際観光客サポートセンターでは、​おもてなしの​心や​観光地の​歴史や​文化を​学んだ​「鳥取観光マイスター」に​運転手を​限定した​外国人観光客周遊タクシーの​手配を​しており、​県と​市が​補助を​提供する​ことで、​通常よりも​安価な​運賃で​サービスを​提供できているようです。

参考:鳥取観光マイスターが​ご案内!​周遊タクシー3,000円パックプランの​ススメ​(鳥取市公式ウェブサイト)

メリット
・アクセスがよくないエリアや観光アトラクションにも
訪日観光客の訪問を促せる

3. インバウンド動画を​制作する

認知度を​高める​ためには​インバウンド動画を​制作する、と​いう​手も​あります。​過去には​元日本代表の​女性シンクロチームが​さま​ざまな​温泉で​シンクロする、と​いう​大分県の​PR動画が​話題に​なり、​230万回ほどの​再生回数を​記録しています​(※2019年10月時点)。​ソーシャルメディアなどでの​広告を​活用し世界中の​人々から​話題を​集める​ためには、​冒頭から​視聴者を​釘付けに​するような​仕掛けづくりが​肝となるでしょう。

岐阜市では​観光施設や​宿泊施設に​対して​海外プロモーションを​支援する​補助金制度を​設けています。​他にも​同様の​補助金を​用意している​自治体が​あるので、​活用できる​ものが​ないかどうか​調べてみる​ことを​おすすめします。

参考:岐阜市海外プロモーション等支援事業補助金の​ご案内に​ついて

メリット
・地域の認知度を高めることができる

2020年には​東京大会の​開催も​決定しており、​訪日観光客数の​さらなる​増加に​加えて、​地方訪問率の​増加が​見込まれます。​インバウンド対策と​して、​まずは​低予算で​できる​施策から​始めてみては​いかがでしょうか。​地域の​あらゆる​事業者と​手を​組む、​サービスを​多様化させる、​などの​アプローチで​認知度の​向上を​図るとともに、​収益を​生み出す方法を​見い出してみましょう。

◀︎◀︎◀︎宿泊施設が​できる​インバウンド対策

(1)小売店が​できる​インバウンド対策
(2)宿泊施設が​できる​インバウンド対策
(4)地方自治体が​できる​インバウンド対策

執筆は​2019年11月1日​時点の​情報を​参照しています。​2022年9月15日に​記事の​一部情報を​更新しました。
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