フリーランスと契約を結ぶときに知っておきたいポイント

高い専門性をもつ優秀な人材を、プロジェクトや業務に応じて活用したいと考えている経営者は多いかもしれません。経済産業省の調査では、フリーランスを「活用している」企業は約2割弱でしたが、3割強の企業が「今後の活用を検討している」と回答しています。働き方の多様化やインターネットの普及などもあり、フリーランスという働き方を選ぶ人は増えています。また、少子高齢化による人材不足を補いたい、社内にはいない専門性の高い人材をスポット活用したいと考える企業も増えていくと予想されます。

参考:
「雇用関係によらない働き方」をめぐる企業の取組みについて(経済産業省)
企業におけるフリーランス活用事例集(経済産業省)

今回は、フリーランスと契約する際の種類、それぞれの契約形態のメリットとデメリット、契約時に注意すべきポイントを解説します。

フリーランスとの契約の種類

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フリーランスに業務を委託し、報酬を支払う場合、業務委託契約と呼ばれる契約を結びます。業務委託契約は、「請負契約」と「委任契約(準委任契約)」の大きく二つに分けることができます。それぞれの特徴は以下の通りです。

請負契約
請負は民法第632条で以下のように定められています。

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

請負契約では、依頼を受けた人(請負人)は仕事の結果として成果物を完成させる義務があります。報酬は成果物の完成をもって支払われます。依頼されたウェブサイト制作やアプリ開発を終わらせて納品する、原稿を完成させて納品するなどの行為が該当します。

フリーランス(請負人)が成果物に対して瑕疵(かし)担保責任(民法第634条)を負います。納品物に欠陥やミスがあったり、一定の質を満たしていなかったりする場合は、クライアント(注文者)は修正ややり直し、場合によっては損害賠償や契約の解除を求めることができます。

委任契約
委任は、民法第643条で以下のように定められています。

委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

「法律行為」とある通り、弁護士への委任や不動産売買に関する委任などが該当します。法律行為以外の事務を委託する場合は、「準委任契約」を結びます。

委任契約(準委任契約)では、フリーランスには成果物を完成させる義務はなく、あらかじめ定められた作業内容を遂行することが求められます。

つまり、フリーランスによる役務の提供によって報酬が発生します。納品物が想定どおりに完成しなくても、定められた作業内容自体が適切に実施されれば、フリーランスはクライアントに対価を請求できます(民法第648条2項)。フリーランスには成果物の完成義務はないものの、依頼された作業について手抜きやミスをしないというプロフェッショナルとしての「善良な管理者の注意義務」が課されるのが特徴です。

契約形態ごとのメリット・デメリット

それぞれの契約形態におけるクライアントにとってのメリットとデメリットについてまとめます。

請負契約におけるメリットとデメリット

メリット
・成果物を完成させる責任があるため、途中で一方的に中途契約解除ができない
・瑕疵担保責任を問うことができる
・予算や内容が明確に決まっている業務の依頼に向いている

デメリット
・フリーランスに途中経過の報告義務はない
・内容が曖昧で変更が生じやすい業務の依頼には向いていない

委任契約(準委任契約)におけるメリットとデメリット

メリット
・いつでも契約解除ができる
委任契約では、クライアントとフリーランス双方が「いつでも、無条件で」契約解除することが可能です(民法第651条第1項)。ただし、相手に損害をあたえた場合は損害を賠償しなければなりません。
・業務内容があらかじめ明確に決まっていない業務の依頼に向いている

デメリット
・成果物がないため、仕事の質などがクライアントの意向に沿っていなくても報酬を請求される
・瑕疵担保責任を問えない

契約書作成の流れ

請負契約と委任契約(準委任契約)は口頭で成立しますが、業務内容や報酬の支払い、納期などについての誤解やトラブルを防ぐためにも、専門家に相談しながら、事前に契約書を交わしましょう。契約書作成の流れは以下の通りです。

1, 契約内容について話し合い、契約書原案を作成する
以下のような項目について、契約で定める必要があります。

・具体的な業務内容
・報酬や税金、経費について(支払い時期、消費税の扱いなど)
・契約期間、更新や終了時期について
・場所や時間の拘束について
・禁止事項や制約事項(守秘義務や著作権など)
・違約金、損害賠償について
・発注方法について

フリーランスとは、上記の項目について事前に十分に話し合っておきましょう。双方が合意した内容を盛り込み、契約書の原案を作成します。

2, 契約内容を確認する
作成した草案を双方で確認します。微調整などがあれば、この段階で修正します。また、クライアントは社内の承認手続きを踏んで決裁を仰ぎます。

3, 契約を締結する
契約書は2通作成し、2通とも双方が署名捺印をし、それぞれが1通ずつ保管します。請負契約は課税文書に該当するため、契約金額などによって契約締結の際に収入印紙が必要になることがあります。詳しくは、以下のウェブサイトを参照してください。

参考:
第2号文書 請負に関する契約書(国税庁)
印紙税額 平成30年5月現在(国税庁)

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契約の際に注意すべき点

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トラブルを避けるため、フリーランスとの契約の際にクライアントが注意しておきたい点がいくつかあります。

依頼目的について
業務をフリーランスに依頼する目的を明確にし、目的にあった契約を選びましょう。成果物の完成が目的であれば請負契約、成果物がない事務処理が目的であれば準委任契約となります。

業務委託料について
業務委託料の金額、支払期日、支払方法などを明確に規定しましょう。旅費や通信費など業務を行うにあたって生じた費用についても、フリーランスが報酬とは別に請求できるのかどうかを明確にしておく必要があります。

成果物の納品が予定されている場合は、納品方法や場所などについても明記します。クライアントによる検収完了後に業務委託料が支払われる契約であれば、どういった場合に検収完了となるのかを明らかにしておきましょう。

知的財産権について
イラストやデザイン、楽曲など、委託した業務で発生した知的財産権は、契約書に何も規定がなければクライアントに移転しないのが原則です。そのため、クライアントが知的財産権を確保したい場合はその旨を明確に契約書で定めておかなければなりません。また、著作者人格権は移転されないため、クライアントは著作者人格権を行使しない旨を定めておく必要があります。あわせて、二次利用や編集の可否なども明確にする必要があります。著作権制度の概要については以下のウェブサイトを参考にしてください。

参考:著作権制度の概要(文化庁)

フリーランスの労働者性について
個人事業主であるフリーランスには労働基準法や労働組合法などの労働法制が適用されません。しかしながら、請負契約または準委任契約を締結していたとしても、フリーランスの働き方の実態に労働者性があると判断された場合は、労働法による規制の対象になることがあります。たとえば、クライアントが業務の細かい指示をフリーランスに出したり、勤務時間や勤務場所を拘束したりする、などが該当します。労働者性があると判断された場合、クライアントは、残業代支払いや最低賃金、法定労働時間などの面でフリーランスを労働者として取り扱う必要が生じます。

フリーランス活用のためには、相互の信頼関係があることが基本です。適切な契約を結び、高い専門性をもったフリーランスを業務に生かしてみてはいかがでしょうか。

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執筆は2019年2月27日時点の情報を参照しています。
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