ウェザーマーチャンダイジングは、天気や気候による顧客動向の変化を事前に読み、売上向上につなげる販売促進計画の手法です。
暑い日と寒い日、晴れの日と曇りの日では、実店舗でもオンラインショップでもお客様の選択に違いが出るため、ウェザーマーチャンダイジングは天気の影響を上手に活用します。食品、日用品、アパレル、家電製品など、さまざまな業界の仕入れや販売促進にすぐに取り入れることができるウェザーマーチャンダイジングについて、具体的な活用方法を説明します。
ウェザーマーチャンダイジングとは
夏の暑い日には冷たいアイスクリームが食べたくなったり、突然降り出した雨で傘が必要になったりと、気象は日々の消費行動に影響を及ぼしています。小売店や飲食点などで毎日の売り上げを管理している人であれば、天気と売り上げの関係は肌感覚として感じていることかもしれません。
実はこうした消費行動は気象庁などによって調査され、たとえば以下のような傾向が統計データとして明らかにされています。
・7月の平均気温が2度上がると、エアコン販売台数が1.5倍に増加する
・1日の平均気温が23度を上回る時期から、熱中症対策用経口補水液の販売数は平均気温の変動と連動する
・気温が20度以下になると女性用ロングブーツの販売数が急増する
参考:
気候リスク管理技術に関する調査、家電流通分野(気象庁)
気候リスク管理技術に関する調査、清涼飲料分野(気象庁)
気候リスク管理技術に関する調査、アパレル分野(気象庁)
ウェザーマーチャンダイジングは、統計データを基にして2週間、1カ月などの単位で気象予測と連動させた販売促進の計画を立てることを指します。「来週から気温が18度以下の日が増えるから暖房器具の在庫を充実させておこう」といったように、いざ温度や天気が変わってからでは間に合わない仕入れやディスプレーなどの準備を計画的にマネジメントすることで、高まる需要に的確に応え、販売数を伸ばして売り上げをアップさせる方法です。
暑さや寒さといった自然環境の変化に対して、快適に過ごしたいという消費者の欲求を満たすことで、お客様にも店舗側にもメリットをもたらすのがウェザーマーチャンダイジングの特徴です。
気温や天候による売れ行きの変化
ウェザーマーチャンダイジングでは気温、湿度、降水量の予測を軸に、有効な販売戦略を立てていきます。特に要となるのが気温で、気温の上昇傾向や下降傾向を基準に売れる商品が変わることもあります。また、雨風によっても売れる商品が変わり、それぞれ以下のように呼ばれています。
・昇温商品(気温に伴う体感温度の上昇で販売数が増加する商品)
例:生食や焼く料理に適した食材、麺類、麺つゆ、Tシャツ、帽子、水着、殺虫剤、制汗剤
・降温商品(気温に伴う体感温度の下降で販売数が増加する商品)
例:煮る、蒸す、揚げる料理に適した食材、カイロ、灯油、マスク、入浴剤、厚手の衣類、毛布
・晴天型商品(降水が観測されない日に販売数が増加する商品)
例:行楽用品、キャンプ用品、ガーデニング用品、カーウォッシュ用品、洗濯用品
・雨天型商品(雨が降っている日に販売数が伸びやすい商品)
例:雨傘、長靴、シャンプー、歯磨き粉、食器用洗剤
・異常気象型商品(台風や雪などの際に販売数が伸びる商品)
例:非常食、ミネラルウォーター、乾電池、軍手、ロウソク、紙皿、冬用タイヤ、スコップ
このほかにも、気象に左右されず通年売れる商品や季節に逆行した気候の日(真冬の小春日和など)に売れる商品などもあります。
業種・商品ごとのウェザーマーチャンダイジング
具体的に各業界で、どのような商品やサービスにおいてウェザーマーチャンダイジングが利用可能か確認してみましょう。以下では、いくつか代表的な商品を例に、気温と販売数の相関データから読み取れるポイントをまとめました。気象庁のウェブサイトにさらに詳細なデータや地域ごとの特性データもありますので、参考にしてみてください。
食品・日用品
スーパーマーケットやドラッグストアなどの小売店では、消費者が何を食べたいか、生活に何が必要かという需要に応えることが重要です。以下のような食品・日用品の販売傾向は、飲食店や雑貨店などでも参考にできるデータといえるでしょう。
・気温が25度を超えるとファミリーアイスの販売数が急増
・虫刺され薬、殺虫剤は18度を上回ると販売数が急増
・かぜ薬、ハンドクリームは25度を下回ると販売数が増加
参考:
気候リスク管理技術に関する調査、スーパーマーケット及びコンビニエンスストア分野(気象庁)
気候リスク管理技術に関する調査、ドラッグストア産業分野(気象庁)
アパレル(衣料品)
暑い夏や寒い冬を快適に過ごすために、ファッションは気候と強い相関関係を持つ分野です。仕入れだけでなく、気象予測に応じて商品の配置を入れ替えるなどして、上手にウェザーマーチャンダイジングを行いましょう。
・秋冬用の肌着は気温が20度を下回る時と15度を下回る時に販売数が大きく伸びる
・ニット帽子は秋口から、15度以下になると販売数が急増する
・サンダルは春先から、15度を境に販売数が増加する
・レディースニットの販売数が伸びるのは27度以下から。
・コート類の販売数が伸びるのは19度以下から。
参考:気候リスク管理技術に関する調査、アパレル分野(気象庁)
家電製品
家電製品の中でも特に気象の影響が顕著なのが冷暖房器具で、寒くなり始め、暑くなり始めの時期に販売数が伸びやすくなります。例年の気温変化も確認した上でタイムリーな仕入れやセールを行い、機会ロスをできるだけ減らしましょう。
・石油ファンヒーター、石油ストーブは10〜12月、気温の低下に反比例して販売数が増加。しかし1〜2月はさらに気温が低いにもかかわらず販売数は12月より少なくなる
・エアコンの販売数は、全国的に気温と相関関係がある。しかし夏場は6〜7月に比べて8月は相関関係が弱まる傾向がある
参考:気候リスク管理技術に関する調査、家電流通分野(気象庁)
ウェザーマーチャンダイジングを成功させるには、まず発注担当者が商品自体の特性と季節・気候の関わりを把握しておくことが重要です。担当者が複数いる場合はしっかり情報を共有することで、お客様の「欲しい」という要望にしっかり応えるビジネスが可能になります。
その上で、会員向けの販促メールでの商品のおすすめ、新商品の販売開始、セール品の選定、おすすめ商品のディスプレー変更など、ウェザーマーチャンダイジングを上手に活用してタイムリーな販促行動で商機をしっかりつかんでいきましょう。
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執筆は2018年10月4日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash, PAKUTASO