VUCAとは?概念や具体的な事例、VUCA時代に打ち勝つ方法とは

ここ数年、AIの発達やソーシャルメディア上での炎上、台風による大規模停電など、ビジネスにおいて先行きが予測しづらい要因が急増しています。こうした状況は「VUCA」と呼ばれており、ニュースなどで聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

この記事では、VUCAの概念、VUCAという言葉が使われるようになった経緯、具体的な事例、VUCA時代に打ち勝つ方法を解説します。

目次



VUCAとは

VUCAとは、社会において未来の予測が難しくなっている状況を表している言葉です。予測が難しくなった理由として時代の側面を四つ挙げ、それぞれの頭文字をつなげています。

・V−Volatility:変動性
・U−Uncertainty:不確実性
・C−Complexity:複雑性
・A−Ambiguity:曖昧性

VUCAとは、元々は1990年代に米軍で使われるようになった軍事用語です。冷戦の終結とともに核兵器メインの軍事戦略が前提だった時代も終わり、戦局の見通しが不透明になった状態を指す言葉でした。

2010年代に入り、VUCAはビジネスでも使われ始めます。アメリカ同時多発テロや東日本大震災、英国によるEUからの脱退やトランプ大統領の就任など、予想不可能または想定外な出来事が次々と起こる時代の流れを「VUCA時代」などと呼ぶようになります。

2014年のASTD(米国人材開発機構)国際大会では、複数のセッションでVUCAの概念が紹介されたことで注目を浴びました。

参考:2014年ASTD国際大会レポートより 世界の人材開発の潮流を読み解く(リクルートマネジメントソリューションズ)

中でも、ASTDのプレジデント・CEOであるビンガム氏は講演で、VUCAという言葉が指し示す不透明な状況では、企業は「チェンジ」(変革)を、単なるイベントとして取り組むのではなく、必要なプロセスとして組み込む必要があると提案しました。チェンジには、専門家による学習と開発を取り入れるべきであるとも述べています。

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具体的なVUCAの事例

具体的に、VUCAを構成する四つの要素はどのような状態を指しているのでしょうか。

V−Volatility:変動性の事例
変動性の事例の一つに、技術革新が挙げられます。

わかりやすい例としては、スマートフォンの普及が挙げられます。総務省が2019年5月に発表した通信動向調査によれば、2018年時点でスマートフォンを保有している世帯の割合は8割近くにのぼっており、フィーチャーフォンなどと合わせると携帯電話の保有率は100%に近づいています。

参考:平成30年通信利用動向調査の結果(総務省)

これに伴い、スマートフォン本体に加え、InstagramやTik Tokなどのソーシャルメディア、ソーシャルゲームなどのアプリケーションやサービス、イヤホンやスピーカーなどの周辺機器など新たな市場が生まれます。その反面、フィーチャーフォン時代に爆発的に流行した「着うた」サービスの終了や、国産ソーシャルメディアとして隆盛を誇ったミクシィの利用者減少など、終了・停滞する市場や企業も現れます。

技術革新のスピードが上がるにつれ、社会は豊かになりますが、優れたビジネスモデルや市場が成熟化・陳腐化するサイクルも速くなっていきます。そのため、一度成功した企業も優位性を保ち続けることが難しくなってきます。

U−Uncertainty:不確実性の事例
不確実性の事例の一つとして、人口動態や自然災害などが挙げられます。

世界全体では人口増加が懸念されていますが、日本においては少子高齢化と人口減少、それに伴う過疎化が問題視されています。

また、東日本大震災を筆頭として、台風や大雨による災害、夏の酷暑などの異常気象による被害が相次いでいます。不確実な要因が多数あるため、ビジネスにおいて将来を予測して計画を立てるのが難しくなってきている状況です。

C−Complexity:複雑性の事例
複雑性の事例の一つとして、複数のリスクが絡み合って総合的に状況を見るのが難しい点が挙げられます。

たとえば、BRICsやNEXT11などと呼ばれる新興国の市場に参入しようとしても、単純な右肩上がりの成長とは限りません。アメリカの影響力低下や中東周辺の政情不安、日本単体でみても中国や韓国など近隣国との関係悪化などのリスクが存在します。

A−Ambiguity:曖昧性の事例
曖昧性の事例の一つとして、価値観の多様化が挙げられます。

人々がテレビや新聞から情報を入手していた時代では、マスメディアの先導やCMなどで流行を作り出すことが可能でした。

しかし現在では、インターネットやソーシャルメディアを利用する人が増え、マスメディアに頼らずとも個人が情報を発信できるため、消費者の価値観は急速に変化していきます。そのため、過去の事例を参考にしたビジネスの手法が通じにくくなっています。

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VUCA時代に打ち勝つ方法

変化の大きなVUCA時代においても活躍できる方法の一つとして、次の考え方を紹介します。

古い考え方に固執せず、予測できない事態を受け入れる
VUCA時代では、ビジネスの変動が大きく、予測できない不確実な事態が次々と起こります。消費者の価値観も変化しているため、過去の成功方法をそのまま踏襲できません。

そのため、古い考え方や成功事例に固執せず、予測できない事態が起きても柔軟に受け入れる姿勢が大切です。

決断を早くし臨機応変に行動する
上記のような状況では、決断を迷っているうちに情勢が刻一刻と変化していくため、できるだけ早い決断と臨機応変な行動が求められます。

従来の会議のあり方や決裁ルートなどでは決断を早くできないようであれば、仕組みそのものを見直すことも必要です。

変化をプロセスとして受けとめて、学び続ける
2018年に経済産業省と中小企業庁が合同で発表した「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」報告書を紹介します。

報告書では、個々人が問題意識をもち、仕事や学習を通して自発的にキャリアを構築する姿勢が、VUCA時代においては重要としています。「何を学ぶか」「どのように学ぶか」「どのように活躍するか」といった三つの視点から、VUCA時代における自らの立ち位置を客観視し、自らのキャリアに対してオーナーシップを持つことが必要と述べています。

参考:「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(人材力研究会)報告書 (経済産業省 中小企業庁)

先述したATSD国際大会では、チェンジはイベントではなくプロセスであり、チェンジには学習と開発が必要という提案がなされました。

変化を単なる出来事ではなく、目的のためのプロセスと受けとめましょう。自らや企業の活躍という目的に必要なプロセスとして変化を受けとめ、学び続ける姿勢が大切です。

想定外の事態が次々と起こり、未来の予測が難しくなっている状況がVUCAです。ビジネスモデルの陳腐化が早く、過去の成功事例が通用しないVUCA時代では、柔軟な考え方や臨機応変な行動、学習の継続が必要です。大変な時代ですが、変化を目的のためのプロセスとして、自らの成長を楽しむのがポイントです。

執筆は2019年10月3日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash