タレントプールとは?優秀な人材を逃さず採用する方法や注意点を紹介

優れた人材を確保するための競争が年々、激化しています。人材を​求めている​タイミングに、​いつも​最適な​人材からの​応募が​あるとは​限りません。採用活動は単なる募集の場ではなく、戦略的に進めるべき重要なものとなっています。こうした中、タレントプール(人材プール)は、企業が中長期的に優秀な人材を確保できる手法として注目されています。タレントプールの導入により、急な採用ニーズにも対応でき、入社後のミスマッチを減らすことができます。この記事では、タレントプールの重要性や活用方法について詳しく探ります。

目次


タレントプール(人材プール)とは?

タレントプール(人材プール)は人材銀行と訳されることもあり、自社で将来的に採用する可能性のある人材のデータベースを意味します。業務量の増加や従業員の退職や休職などにより、急遽、新たな人材を雇用するのはどんなビジネスの現場にもあることです。また、採用のタイミングが決まっている企業も同様、人材の確保は事業規模を問わずすべての経営者にとって頭の痛い問題です。

タレントプールは、自社にとって経験や実績などの条件の面でポテンシャルを秘めた「逃したくない人材」とコンタクトを取り続け、常につながりを作っておく(=データベース化しておく)、そして双方にとって良いタイミングが訪れたときに採用する手法です。

たとえば、IT分野での高度な技術を持つエンジニアの情報を事前にデータベース化しておけば、プロジェクト立ち上げ時の人材選定がスピーディーになります。企業の事業戦略や成長戦略に合わせてタレントプールの運用を継続することで、採用効率と人材の定着率が上がり、会社の成長を後押しします。

タレントプールの目的

タレントプールの目的は、優秀な人材のデータを管理し、適切なタイミングで採用につなげることです。具体的には、事業拡大や新しいプロジェクトに備え、あらかじめ多様なスキルを持つ人材を把握しておきます。

  • 労働人口の減少
  • キャリアアップのために転職を重ねる人の増加
  • 従業員や求職者の価値観や働き方の多様化
  • 職務に求められる知識やスキルの変化

これらの背景から、人材の流出や後継人材の不足、新規採用が難しい事態が起こりやすくなってます。そのため、まだ採用していない人材をこれから採用する可能性のある人材として蓄積しておくことで、自社に適した優れた人材を確保するための基盤として利用します。

タレントプール(Talent Pool)の必要性を指摘したのは、米国の経営コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーです。同社は2001年に刊行した人材獲得・育成の調査報告書『The War for Talent』の中で、やがて人材獲得・育成の競争社会がやって来ることを予想し、リーダー候補など優れた人材の獲得と育成が企業の成長の鍵を握っていると警告しました。つまり、最適な人材確保ができない企業は成長が難しいということでもあり、人材の争奪戦に負けた企業はビジネスそのものでも勝てないことを意味しています。

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タレントプールの​メリット

タレントプールを運用するメリットは、適切な人材をスピーディーに採用できる点に尽きるでしょう。具体的には以下のようなメリットがあります。

採用活動の効率が上がる

タレントプールを活用すれば、募集広告や人材紹介会社を介さずに候補者とやり取りし、迅速な意思確認ができます。たとえば、専門要件を充たす人材が急きょ必要になった時も、必要なスキルを持つ人材だけを厳選して呼びかけられるため、効率が高まります。

採用コストを削減できる

タレントプールを整備しておけば、新たに求人広告を出さなくても、登録済みの候補者へ直接声をかけられます。人材紹介・募集広告などにかかる費用が不要になり、さらに採用手続きの簡略化によって人事担当者の負担も抑えられます。

採用のミスマッチを防げる

タレントプールでは、候補者の職歴や得意分野だけでなく、仕事に対する価値観やキャリア目標などもデータとして整理できます。そうした情報を踏まえて条件や社風との適合を検証すれば、採用後に発生しやすいミスマッチを減らせます。

機会損失を​解消できる

1人の求人枠に対し、3人の求職者から応募があったとします。3人とも必要な要件を満たしているけれど、枠は1人分だけのため2人を不採用にしなければならない、というのは決して珍しいことではありません。人材採用は一期一会であり、欲しい人材が目の前にいてもタイミングが合わず逃してしまうことがあります。

タレントプールを導入することで、今すぐに採用できない人材を今後の採用候補として残しておくことができます。優秀な人材への再アプローチが可能になることで、ミスマッチや機会損失を減らせるでしょう。

タレントプールの​実践方法

タレントプールを実際に取り入れる方法を見ていきましょう。

タレントプール対象者を特定する

タレントプール対象者を特定するには、将来ビジョンや事業計画からどの部門でどのようなスキルが必要になるかを洗い出します。

たとえば、新規事業を展開するなら専門分野の経験者、海外展開を目指すなら語学力に長けた人材が選考対象になりえます。過去の応募者データや社内で活躍する人材の特徴も参考にし、人事担当者だけでなく現場の意見も取り入れながら的確に対象者を絞り込みます。

データベースを構築する

データベースを構築する際は、候補者の基本情報や職務経歴、スキルだけでなく、連絡履歴や面接の所感なども一元管理できるようにします。

こうした情報を日付や評価とともに整理・検索できる状態にしておくことで、必要に応じた抽出が容易になります。合わせて、個人情報を厳重に保護する仕組みも整えておきましょう。

候補者とつながりを保つ

ただ候補者の情報を蓄積するだけでなく、企業と候補者がお互いに理解を深められる関係づくりも欠かせません。定期的に近況を確認し、ちょっとした連絡や業界情報の共有を行うことで、自社への興味を持ち続けてもらいやすくなります。こうしたつながりから信頼関係が生まれ、いざ採用のタイミングが訪れた時にスムーズな声掛けが可能になります。

時期を見て採用の勧誘をする

採用の成功率を高めるには、候補者がどのようなタイミングで転職に動くのかを把握しておく必要があります。

たとえば、転職ニーズが高まりやすい年度末や大きなプロジェクト終了後などにアプローチすると、内定の可能性が高まります。タレントプールで収集したデータをもとに、候補者の希望やライフステージを考慮することが大切です。場当たり的ではなく、双方がお互いに利点を感じられる時期を探ることで、スムーズな採用につながるでしょう。

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タレントプール実践での​注意点

タレントプールを導入する際の注意点としては、まずデータ管理体制の整備が挙げられます。さらに、登録された人材に長期間連絡をしないまま放置すると、情報が古くなったり企業イメージが下がったりする懸念もあります。適切な頻度でコミュニケーションを図り、候補者の近況や意欲を確認し続けることが重要です。こうした点をケアして初めて、タレントプールの効果が最大化されます。

個人情報の取り扱いに気をつける

外部への情報漏洩を防ぐセキュリティー対策はもちろん、社内でもデータアクセス権限を厳格に設定します。許可のない閲覧や不正利用を防ぐルールを作り、定期的にログを確認することも有効です。候補者には、データの利用目的や保管期間を説明して安心感を得てもらうことが大切です。万が一情報が流出すると企業の信用を大きく損ない、新たなスカウトや採用の成功率にも影響が及びます。

定期的にコンタクトをとる

意識しなくてはならないのは、プールした人材候補をそのままにしないということです。求職者側からすると、会社側から連絡がなければ忘れられたと判断し、その会社に対する興味も失われることになります。

「最近いかがですか?」「弊社のイベントに参加しませんか?」など、不定期でもこまめにコンタクトを取り、プールした人材の近況や求職状況をチェックすると同時に情報をアップデートしましょう。コミュニケーションを重ねることで、相手にとって会社が徐々に身近な存在になるという効果もあります。

また、自社だけでなく競合他社も人手不足に悩めば同じ手段を使うことが考えられます。自社の人材を引き抜かれないよう、従業員にとっても魅力的な会社であり続ける必要があります。

社内の動向に意識を向けておく

社内の動向に意識を向けておくことで、どの部署が人材不足になりそうか、どんなスキルセットが必要になるかを早期に把握できます。

事業戦略や組織改編が計画されているなら、それに合致する人材をタレントプールからピックアップしやすくなります。さらに、既存社員の異動や退職時期を予測し、空席ができる前に候補者を探せるのも大きな利点です。そうした先手のアクションを積み重ねると、急激な人事の変化にも柔軟に対処できる体制が整います。企業の中長期計画に合わせて適切にタレントプールを活用すると、最適なタイミングで採用を実行できます。

まとめ

タレントプールは、単なる人材データベースではなく、企業と求職者の間に強固な関係を築き、最適なタイミングで採用活動を行うための戦略的な手段です。効率的な採用活動を実現し、採用コストやミスマッチを軽減することができるといったメリットがあります。ただし、その効果を最大化するためには、定期的なコミュニケーションやデータ管理体制の整備が不可欠です。適切に活用することで、企業は未来の人材確保において大きなアドバンテージを持つことができるでしょう。


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執筆は2018年2月1日時点の情報を参照しています。2025年4月30日に​記事の​一部情報を​更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash