IMCはマーケティングにおいて、複数のコミュニケーション・チャネルを統合的に管理するために重要な戦略です。お客様とのコミュニケーション・チャネルを複数持つことは必要ですが、それぞれがバラバラのメッセージを発信してしまうと企業やブランドのイメージを統一できません。
今回は、これからのマーケティングには必須といえるIMCとは具体的に何か、IMCをマーケティングに取り入れるために必要なことなどを解説します。
目次
IMCとは
マーケティング戦略の一つであるIMC(Integrated Marketing Communication)は、日本語で統合型マーケティング・コミュニケーションと呼ばれます。コミュニケーション・チャネル、すなわちお客様とつながる窓口となる以下のようなチャネルを、統合的に管理する戦略です。
- 実店舗
- ウェブサイト
- ソーシャルメディア
- パンフレット
- チラシ、ポスター
- 新聞、雑誌広告
- オンライン広告
- 訪問セールス
- カスタマーサービスなどの電話窓口
各チャネル間において、企業やブランドのイメージを統合することで、ターゲットにより認知されやすくなったり、価値の最大化が可能になったりするというのがIMCの意義です。
IMCが確立されていないと、お客様に企業価値を的確に伝えることが難しくなります。これは大規模かつ多数のコミュニケーション・チャネルを保持する企業だけでなく、限定的なチャネルしか持たない企業や店舗も同様です。
IMCの戦略構築が重要である理由
IMCが重要視されている背景には、マーケティングや販売のチャネルの多様化、複雑化があります。インターネットが普及する以前は、企業とお客様をつなぐ窓口は店舗、電話、紙媒体など非常に限られたものでした。チャネルが増えれば増えるほど、IMCの管理も複雑化し、統合型でないチャネルを持てばマーケティングの目標を達成しにくくなります。
たとえば、ハイエンドなアパレルの高級感あふれるポスターやインスタグラム投稿を見て憧れを抱いた人が、ウェブサイトを訪れて見た製品を欲しいと考え、実店舗に足を運んだとします。しかし店舗の販売スタッフがブランドイメージに合わない言葉遣いをしていたら、あるいは店舗の掃除が行き届いていないとしたら、アパレルメーカーの高級なイメージは損なわれてしまいます。それだけでなく、失望感を抱いたお客様がソーシャルメディアや身近な人への口コミで店舗の様子を伝えれば、ネガティブなイメージはさらに広まることになり、商品価値を下げることにつながってしまうのです。
このように、IMCが達成されていないことで企業側が意図した通りのイメージや価値をお客様に届けることができないというミスコミュニケーションが発生します。しかしこれを逆に考えると、IMCさえ確立できてしまえば、チャネルの数だけ多くのターゲットにリーチすることができ、正確なイメージを伝えることができます。つまり、IMCのアプローチが成功することは、企業やブランドをしっかり理解する人が増えるということです。
IMCの戦略構築をおろそかにしないことは、良い商品の良いポイントが、それを知りたいと思っている人に届き、欲しい人が欲しいものを見つけやすくなるという、まさにマーケティングの基本的なアプローチといえるでしょう。
IMCを確立する戦略の実践方法
IMCを確立するためには、個々のチャネルで発信している情報を統合的に管理し、戦略的に統一感を持たせる必要があります。それは決して、全く同一の情報を別のチャネルで発信するということではなく、それぞれのチャネルに適した情報を通して一貫したメッセージを伝えていくということです。
つまり、基軸となる企業理念やブランドイメージがはっきりしていないことには、PR・広報、セールス、カスタマーサービスなど各コミュニケーション・チャネルを担うスタッフは何を発信すべきかわからず、統一感のある情報をお客様に伝えていくことは困難です。そのため、まずは企業やブランドがお客様に何を伝えたいか、そのメッセージ(コンセプト)を誰もが理解できる形に明確化することから、IMCの戦略構築はスタートします。
- お客様に伝えたいメッセージを明確化
- 社内の全員がメッセージを正確に把握するために周知を徹底
- メッセージに合う情報の内容、発信スタイル、チャネルを検討
- 各チャネルから発信
- 各チャネルからの発信内容にブレがあれば修正
こうしたプロセスを経て、IMCが確立されていきます。伝えたいメッセージを伝達するための情報の形には、商品コンセプト、デザイン、商品名、イメージキャラクター、キャッチコピー、宣伝文、キャンペーンなどがあります。いかにメッセージが伝わるようにするか、関わる人数が多いほど、綿密な擦り合わせと情報共有が必要です。
IMCのゴールは、お客様が企業・ブランドのイメージを正確に理解できるようにすることです。たとえばある飲食店が発信したいメッセージが「丁寧に料理されたおいしい食事でビジネスマンに健康と笑顔を届けたい」というものであれば、その意図を体現するメニュー作りやキャンペーンの立案などが必要となります。その上で、自社のコミュニケーション・チャネルから、メッセージを伝えたいターゲットの趣向を理解した発信スタイルで、相手の心に刺さる情報を発信します。
IMCにおけるソーシャルメディアの役割
IMCを考える上で一つ意識しておきたいのが、ソーシャルメディアによるコミュニケーションの方法です。一例として、食品やオフィス用品などの大手メーカーが時として、堅実かつ誠実な企業イメージとはギャップのある非常にフレンドリーなソーシャルメディアアカウントを運営していることがあります。キャラクターが投稿している設定であったり、アカウントの「中の人」と称する管理者が会社の内情を呟いたりするなど、企業イメージとのギャップが話題になることも珍しくありません。一見してIMCの失敗と取られかねませんが、フレンドリーなアカウントが奏功してファンを増やすことに成功しているケースが散見します。
しかし、当該のアカウントが発信する情報そのものは、決して企業やブランドのイメージを損なうものではないことに目を向ける必要があります。発信スタイルこそフレンドリーな姿であるものの、そこで生まれるコミュニケーションは商品の特性や、商品を作る人間の存在を身近に感じさせながら、企業価値を向上させ、ブランドを浸透させることを目的としています。つまり発信スタイルはチャネルに応じて柔軟に変えながら、筋の通ったコミュニケーションをすることで成功している例といえます。その前提となる「伝えたいイメージ」が明確化され社内で共有されているからこそ、こうした一風変わったコミュニケーションを成功させることができているといえます。
たった一つの投稿で炎上することもあれば大いに拡散されることもあるソーシャルメディアは、IMCのチャネルの中でもはや欠かせないものです。各ソーシャルメディアの性格を分析し、上手に活用することで、IMCの戦略を確かなものにしていきましょう。
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執筆は2019年5月21日時点の情報を参照しています。2023年6月27日に記事の一部を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash