自社の商品やサービスの価値を客観的に計るためには、市場そのものに加えて市場の中でのポジショニングも明確にするSTP分析が役立ちます。マーケティング戦略の立案にSTP分析を活用すると、競合との差別化ポイントも明確になり、ターゲットの購買意欲により刺さるマーケティングが可能になります。
今回は、STP分析の基本的な考え方や実践方法、メリットやデメリット、販促活動への生かし方などを解説します。
STP分析とは
STP分析は、自社の商品やサービスのマーケティングのために、S(セグメンテーション)、T(ターゲティング)、P(ポジショニング)を明確にするフレームワークです。STP分析は新商品の開発や、既存商品の戦略変更などに役立ちます。
まずはSTPの三つのステップが具体的に意味するところを理解し、実践に踏み出しましょう。
ステップ1: S(セグメンテーション)=市場の細分化
自社の商品やサービスが優れたものであっても、それが市場でどのような立ち位置にあるかを知らなくては、マーケティング戦略の立案は難しいでしょう。そのためにSTP分析の第一のステップとして、市場そのものを知る必要があります。
市場と一言で表すと範囲が広すぎて全体像が見えにくいため、自社の商品やサービスの対象となり得る市場を明確にセグメント化(分類)します。子ども向けの商品であれば、対象となる月齢・年齢層やライフスタイルなどの属性ごとに細分化することで、実際にどのような潜在的なターゲットグループがあるかがわかり、セグメントごとの違いも見えやすくなります。
ステップ2: T(ターゲティング)=対象顧客グループの決定
第二のステップとなるターゲティングは、第一のステップでセグメント化した各グループから、実際に自社のターゲットとなるグループを選び出す作業です。全てのグループをさまざまな角度から研究した上で、ターゲットとして決定するグループは一つとは限りません。
たとえばウェブカメラ付きの見守りシステムであれば、乳幼児がいる多忙な親世代グループだけが購買ターゲットになるのでなく、一人暮らしの高齢者がいる家族のグループも対象となる可能性があります。これは、商品の性質が「離れている状態でも万が一に備えて家族の安全を見守ることができ、インターネットがあれば導入しやすい」ことに起因します。乳幼児と高齢者という一見異なる属性のグループにも、「見守りが必要」という共通の属性があることにより、同一商品のターゲットになり得るという例です。商品イメージだけで判断せず、具体的な特性によってグループの取捨選択は慎重に行うことで、ターゲットの取りこぼしを未然に防ぐことが可能になります。
ステップ3: P(ポジショニング)=立ち位置の明確化
第二のステップの「見守りが必要なターゲットグループ」を例にすると、同グループに狙いを定めた商品は既に複数あるでしょう。その中で、自社商品がどのような立ち位置になるかを明らかにするのがSTP分析の第三のステップです。
たとえば自社以外に3社の競合企業が同じコンセプトの商品を販売しているとします。A社の商品は価格の安さ、B社の商品は簡単な操作性、C社の商品はカメラの精度をセールスポイントにしていることが分析できた場合、自社商品の方向性について次のような選択肢が見えてきます。
・他社にない全く別のセールスポイントを持つ商品にする
・他社いずれかのセールスポイントのうち、どれかを更に強化した商品にする
・他社全てのセールスポイントを兼ね備えた商品にする
実際に商品が家電売り場に並んだときの様子をイメージし、小売店の販売スタッフが自社商品の特性をどのように説明するかを想像するとわかりやすくなります。もし自社と他3社の計4商品が同じ商品棚に並んだ場合、販売スタッフは各社商品の特性をお客様に説明します。その際、突出したセールスポイントがない商品であれば、お客様の心を惹きつけることができず、購入してもらえる確率は非常に低くなります。逆に、他社のどれもが対応していないニーズを探し対応することができれば、競合を一歩リードできることになります。
市場の穴となるホワイトスポットを探し、たとえばデザイン性に優れインテリアに溶け込む見守りシステムにするなど、違った角度からも魅力のある商品にすることで、デザインへの意識の高い顧客層の関心を集め、仮に「価格が高くても買いたい」という心理に訴えかけられる可能性も出てきます。見守りシステム商品の市場の中で「デザイン性も重視したハイエンドな商品」という立ち位置をしっかり獲得すれば、ターゲットグループの中でも販売促進の対象となる特定の顧客層が浮かび上がってきます。
STP分析をマーケティング戦略に生かす
STP分析を実施することで、ワンアンドオンリーの立ち位置を見出すことができれば、マーケティングは非常に実施しやすくなります。前述の例では、商品開発の段階で、高いデザイン性を担保するためにインテリアデザイナーやコーディネーターのアドバイスや監修を受ける、デザイン性をアピールするネーミングやロゴ、キャッチコピーやパッケージのほか、ターゲット向けの宣伝用のイメージ素材作りなどの筋道が自然と立ってきます。
既存商品であっても、自社商品の特性を洗い出し相対化することで、ターゲットに応じて販売場所や宣伝方法を見直す、パッケージやウェブサイトの商品ページを刷新する、機能に合うデザインにモデルチェンジするなど、さまざまなマーケティング戦略を立案することが可能になります。STP分析により、商品そのものとマーケティング手法の不一致が販売数の伸び悩みにつながっていたことを発見できるかもしれません。
STP分析の効果的な実践ポイント
STP分析は、一つの商品やサービスにつき何度も活用できるフレームワークです。自社商品そのものや売り方に変化はなくても、競合の成長や撤退、新たな競合の登場など、市場の変化に伴いポジショニングを捉え直す必要があります。場合によっては自社商品の購買層が徐々に変化するといったことも起こり得るため、特にロングスパンで販売する商品や、発売直後と一定時間経過後で売れ行きに顕著な違いが出ているケースなどでは、市場の動きをイメージしてSTP分析を再度実行してみましょう。
特に、海外を含む競合他社の商品の動き、代替商品の登場、人口動態、世相、法的規制、ソーシャルメディア上での口コミ情報の広がりなどは、常に注視する必要があります。
自社ビジネスを差別化する第一歩
既に市場に出ている商品やサービスを対象にSTP分析を実施する場合、その前提として自社の商品やサービスについての客観的な事実を把握することが求められます。現状としてどのような顧客層に売れているのか、売れる時間帯や曜日に規則性はあるか、他の商品と一緒に売れているのかといった情報は、会計時に取得できるPOSデータを活用することができます。Square データのような情報管理システムを導入すると、メンバーカードの登録情報などと併せて、マーケティングに必要不可欠な基礎データを容易に取得し集計できます。
自社商品やサービスの数字で表される側面を正確に把握することで、より精度の高いSTP分析の結果を得ることが可能になります。市場を知り、ターゲットを知り、立ち位置を知る、というマーケティングの基礎が詰まったSTP分析をぜひ活用してみてください。
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執筆は2019年3月31日時点の情報を参照しています。
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