今日から実践、能力を引き出すコーチングとは

コーチングは、コーチとクライアントの二者がコミュニケーションを通じて、クライアントのモチベーションを向上させたり、自発的な行動を促したりする人材開発スキルです。従業員のやる気やモチベーションを高め、主体的に結果を出せる人材を育成しようと、近年では、マネジメント手法の一つとして多くの企業に取り入れられています。

今回は、コーチングとは何か、ビジネスに生かせるコーチングスキル、コーチングスキルを生かせる場面について解説します。

コーチングとは何か

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語源と背景

「コーチ(Coach)」とは、英語で「馬車」を意味します。ハンガリーの「Kocs (コウチ)」という村で作られた屋根付き馬車(コチ・セケール)がヨーロッパに広まったことで、馬車が英語で「Coach」と呼ばれるようになり、「大切な人を、今その人がいるところから、その人が望むところまで送り届ける」という意味で使われるようになりました。派生して「コーチング」が「その人の目標達成を支援すること」を意味するようになったと考えられています。

その後、1840年代の英国で大学受験の指導をする個人教師が「コーチ」と呼ばれるようになりました。また、1880年代にボート競技の指導者に対する呼称として「コーチ」が使われるようになり、スポーツにおいて選手が高い結果を出せるよう指導する人をコーチと呼ぶようになりました。

1950年代に「マネジメントにはコーチングが重要なスキルである」と米国のマネジメント分野で紹介されたことから、企業や従業員が成功またはゴールに向かうのを支援するスキルとしてビジネスの分野でも認知されるようになりました。

参考:日本におけるコーチングとエクゼクティブ・コーチングの現状(慶応義塾大学、古畑 仁一 )

コーチングの基本概念

目標が達成できないのは、クライアント自身に問題があるのではないか。このような問いに対し、コーチングでは、クライアント自身が自分の能力に気づいていないから、自分の意欲を高める方法を知らないから、知識や技術が足りないからという捉え方をします。

コーチングは対話を重ねることで、クライアントがすでにもっている能力や意欲、知識や経験などを引き出し、問題を解決できるよう自発的に行動を起こすことを促します。

コーチングの3原則

コーチングの3原則は、「インタラクティブ」「テーラーメイド」「オンゴーイング」です。

インタラクティブ(interactive)
日本語で「双方向であること」を意味します。コーチングは、コーチとクライアント双方のコミュニケーションによって成立するため、一方だけが話す、一方だけがひたすら聴くといった会話では効果が望めません。

テーラーメイド(tailor made)
「個別対応」という意味の通り、クライアント一人ひとりに合わせたコミュニケーションを行います。価値観や行動パターン、考え方や行動の取り方、成長の速さは人それぞれ異なるため、個々のクライアントに合わせた関わり方が求められます。

オンゴーイング(on going)
「現在進行形」または「継続」を意味します。クライアントの気づきを促し、自発的な行動に反映されるまでには時間がかかるため、コーチングは一回で終わりません。コーチの役割は継続的な関わりによって達成されます。

ビジネスに生かせるコーチングのスキル

ビジネスに活かせる代表的なコーチングのスキルを三つ紹介します。

1,傾聴
傾聴とは、徹底的に相手の話を聴くことです。コーチングの基盤は、コーチ(経営者や管理職)とクライアント(部下や従業員)との信頼関係です。傾聴することで、クライアントが自分は尊重されていると感じ、コーチを信頼して安心して話せる環境を作ります。

コーチは、傾聴する際に以下のポイントを意識することが大切です。

・クライアントが主役であることを忘れない
・クライアントが話すのを遮らない
・クライアントの意見を否定しない
・クライアントに自分の考えを押しつけない
・相づちを打ってクライアントの話を聴いていることを示す

2,質問
コーチングにおける質問とは、クライアントの気づきのために行う質問です。コーチからの質問によって、クライアントが考えを整理し、具体的なものにし、新しい視点に気づくことを目的としています。そのため、コーチには「Yes」または「No」で答えるのでなく、クライアントが自分自身で自由に考えて答えるオープンクエスチョンを使うことが求められます。効果的な質問をすれば、クライアントが目標達成までの手順についてしっかりと認識できるようになり、具体的な行動を起こすことができるようになります。

3,承認
コーチングにおける承認は、英語で「acknowledgement」です。これは、相手を褒めることだけでなく、相手の存在を認める、肯定する、感謝するといった意味も含みます。

「自分は認められている」とクライアントに思ってもらうことで、クライアントのやる気や自発性を向上させることができます。具体的には、挨拶をする、名前を呼ぶ、目を見て話す、感謝を言葉で伝える、時間を守る、仕事を任せる、小さな変化についても肯定的にコメントするなど、クライアントへ敬意をもち、クライアントの変化や成長について言語化したり、態度や行動で触れたりすることを指します。

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ビジネスの場でコーチングスキルを生かす

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傾聴、質問、承認というコーチングスキルは、ビジネスのどのような場面で生かせるでしょうか。

フィードバック
ビジネスにおけるフィードバックは、評価やアドバイスを行う機会という認識が多いかもしれません。しかし、コーチングにおけるフィードバックは、クライアントが目標に正しく向かっているかどうか、方向性はあっているかどうかなど、ただ事実を伝えることでクライアント自身に気づきを与える機会を意味します。

傾聴と承認のスキルで培った信頼関係があれば、たとえクライアントにとって耳が痛いフィードバックがあったとしても、クライアントは自分の目標達成に必要なポジティブな助言として受け止めることができます。

1on1ミーティング
1対1の個人面談を指します。業務の中で気になったことや解決方法などはもちろん、個人的な希望や目標、これからチャレンジしたいこと、体調やプライベートについても話す場です。

ここで生かせるのは傾聴、そして質問のスキルです。問題の原因を自分自身で探ってもらったり、目標達成や挑戦の実現するにあたって何をすれば良いかを本人に気づかせたりすることができます。

メンタリング
メンタリングは、人生という広い範囲において、経験豊かな「メンター」との対話、メンターからの助言や指導によって、経験が浅い「メンティー」の能力を開発することを目的としています。コーチがクライアントから「引き出す」コーチングと比べると、メンタリングはメンターがメンティーに「与える」要素が強いといえるでしょう。

コーチングスキルをもつメンターであれば、承認のスキルを使ってメンティーとの信頼関係を築き、傾聴や質問のスキルでメンティーの目標や人生における希望を聞いて明確にし、その上でメンターとして手本を示したり知識や技術を伝えたりしてメンティーを導くことができます。

目標を達成するまでクライアントを励まし、支援するコーチング。手始めに、挨拶をする、名前を呼ぶなど身近なところから取り入れていくことをおすすめします。

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執筆は2019年3月14日時点の情報を参照しています。
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