サーキュラーエコノミーとは?無駄を収益に変えるビジネスモデル

大量生産と大量消費社会の仕組みにより、有限な資源がめまぐるしいスピードで失われています。そんななか、近年注目を集めているのがサーキュラーエコノミー(循環型経済)です。簡潔にいうと、従来の大量生産・大量廃棄型の「リニア・エコノミー」から抜け出し、既存の資源を最適化することで、収益を生むビジネスモデルを指します。たとえば、昨今利用者が増えつつあるカーシェアリングなどはその一例として挙げられます。

サーキュラーエコノミーはこのようなシェアリングビジネスに限らず、さまざまな角度からアプローチができます。今回は基本となるサーキュラーエコノミーの五つのビジネスモデルやそもそもの定義に触れながら、国内外での事例を通して、ビジネスへの落とし込み方を説明します。

サーキュラーエコノミーとは

18世紀半ばから19世紀にかけて起きた産業革命以降、世界で浸透した「大量生産・大量廃棄型」のビジネスモデル。このモデルは結果として、資源の枯渇や環境汚染の深刻化といった問題をもたらしています。

そんななか環境への負担を最小限に抑えると同時に、経済効果を生み出す方法として発案されたのがサーキュラーエコノミーです。昨今、国内でもビジネスオーナーの関心を引いているSDGsのアプローチ方法として親しみを抱く人もいるのではないでしょうか。

「サーキュラーエコノミー」という言葉が普及し始めるきっかけとなったのは、2015年に、欧州委員会が採択した「サーキュラーエコノミー・パッケージ(サーキュラーエコノミーの実現に向けた政策)」でしょう。この政策はサーキュラーエコノミーを実現するための行動計画であり、気候変動や環境問題への対処に加えて、雇用や新たなビジネスの創出が掲げられています。具体的に欧州委員会はサーキュラーエコノミー(CE)政策をもとに、2030年まで200万人を新たに雇用し、6,000億ユーロ(約79兆円)の経済効果を生み出すことを予想しています。

参考:
サーキュラー・エコノミー時代の ビジネス戦略(株式会社東レ経営研究所)
欧州発の資源循環政策 「3R」から経済戦略に(2017年11月27日、日本経済新聞
資本主義史上最大の革命「サーキュラー・エコノミー」は日本企業のビジネスをどう変えるのか アクセンチュア戦略コンサルティング本部マネジング・ディレクター 朝海伸子氏に聞く(2016年3月31日、日経BIZ GATE)

以前までは環境の取り組みとして「3R(Reduce(抑制), Reuse(再利用), Recyle(再生利用))」がよく知られていましたが、有限な資源が日に日に消費されていくなか、今後は生産から消費の過程を考え抜いたサーキュラーエコノミーの概念が、ビジネスを経営するうえで必要不可欠になることが予測されます。

欧州ではオランダが2050年までにサーキュラーエコノミーを完全実現しようとNGOと協定を締結していたり、アジアでは中国が2016年の「第13次5カ年計画」でサーキュラーエコノミーをメインテーマとして掲げていたり、各国では着々とサーキュラーエコノミーへの取り組みが進められています。

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サーキュラーエコノミーのビジネスモデル

サーキュラーエコノミーをビジネスに取り入れるうえで軸となるビジネスモデルを、コンサルティング大手のアクセンチュアは五つ挙げています。

1. 再生型サプライ
▶︎繰り返し再生し続ける、100%再生可能な原材料や生分解性のある原材料を導入する

2. 回収とリサイクル
▶︎企業は寿命を迎えた製品を回収し、価値のある素材や部品、エネルギーを取り出して再利用する、あるいは製造工程から生じる廃棄物や副産物を再利用する

3. 製品寿命の延長
▶︎廃棄された製品の多くはまだ使用することが可能です。製品寿命の延長ではこれらの製品を回収し、修理やアップグレード、再製造、再販することによって製品を保守・改善することで新たな価値を付与する

4. シェアリング・プラットフォーム
▶︎使用していない製品の貸し借り、共有、交換によって、消費者・企業・起業家に対して新たな事業機会を提供する

5. サービスとしての製品
▶︎消費者はモノを必要な時にだけ借りて使い、利用した分だけのサービス料金を支払うビジネスを提供する

引用:エグゼクティブ・サマリー  無駄を富に変える(アクセンチュア)

ここからは上記のビジネスモデルを国内外の事例と照らし合わせていきましょう。

壊れたスマートフォンは自分で直す。「Fairphone(フェアフォン)

「DIYスマートフォン」を提供するオランダの「Fairphone」は、(1)再生型サプライ、(2)回収とリサイクル、(3)製品寿命の延長の三つのビジネスモデルを組み合わせたスタートアップ会社です。従来であれば、スマートフォンが機能しなくなれば修理に出す、あるいは新しいスマートフォンを買い換えるのが一般的でしたが、「Fairphone」であればカメラやディスプレイなど必要な部分を購入し、ドライバーひとつで簡単に分解、修理ができます。

Fairphoneはこのように製品の寿命を延ばし、製造過程で排出される二酸化炭素を減らすことを目指しています。

参考:Examining the Fairphone’s environmental impact(2015年1月22日、Fairphone)

必要なものはレンタルする。「Yerdle(ヤードル)

米サンフランシスコ発の「Yerdle」は、不用品を提供することで必要なものを入手できるシェアリングプラットフォームです。アウトドアブランドの大手であるパタゴニアが投資をしており、合同イベントを開催するほか、シェアリングプラットフォームに中古製品や余剰在庫の提供も行なっています。

自社のスローガンである「Sharing is the New Shopping(シェアは買い物の新たな形)」を根付かせることで、消費者の購入量を25%減らすことを目指すYerdleは、(3)製品寿命の延長、(4)シェアリング・プラットフォーム、(5)サービスとしての製品、 の三つのビジネスモデルを掛け合わせているといえるでしょう。

年間6,000万ドルのコストを削減。ベトナムでの排熱技術

ベトナムではセメントの生産過程で発生する排熱を回収し、工場の発電タービンの蒸気生成に使用できる排熱回収技術を導入しています。そうすることで、年間6,000万ドルのコストが削減できたうえ、エネルギーの消費を30%以上に抑えることに成功しているそうです。

参考:サーキュラー・エコノミーでコストを削減し、競争力の強化を(2018年8月16日、News Liner)

紙おむつをリサイクルして、埋立場の満杯を阻止。「ユニ・チャーム」

国内でも(1)再生型サプライ(2)回収とリサイクル を取り入れた紙おむつのリサイクルの実験が、鹿児島県の志布志市で行われています。ここでは高齢化社会による紙おむつの廃棄量の増加が課題として挙げられています。

紙おむつは新聞やコピー用紙などとは違いほとんどが焼却されます。しかしながら、志布志市は焼却施設を持たないため、ほぼ全て埋立て処分されており、埋立場が満杯になることが懸念されていました。そこでユニ・チャームが開発したのが、リサイクルしたパルプやポリマーで紙おむつを作るリサイクル技術です。2020年中の製品化が予定されています。

参考:世界初「使用済み紙おむつ再資源化技術」 鹿児島県志布志市と実証試験開始(2016年12月6日、ユニ・チャーム)

このようにビジネスはさまざまな切り口からサーキュラーエコノミーに貢献ができますが、共通項としてあるのは「資源をなるべく使わない」「廃棄物を出さない」の二つを前提に生産過程に取り組むこと、そして廃棄物が出た場合にはリサイクルやシェアを戦略に取り入れていくことだといえるでしょう。

これらの事例から、企業へのメリットとして、(1)これまで無価値とされていたものに価値を見い出すことで企業の収益増大が図れる、(2)これまでにない新たなビジネスを創出できる、(3)コストが削減できる、などが挙げられるでしょう。

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サーキュラーエコノミーへの取り組み方

既存のビジネスがたとえエコを軸としていなくても、生産から廃棄までのアプローチを変えることでサーキュラーエコノミーに貢献ができます。まずは自社のビジネスモデルに対して以下を問いかけることで、第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

  • 生産過程での資源やエネルギー、製品の寿命に無駄はないか?
  • 資源のリサイクルに取り組むことでビジネスモデルを変革し、利益を生む、またはコストを削減する余地はないか?
  • 現在無価値としているものから、利益を生む方法はないか?
  • 今ある商品やサービスの一部をシェアすることで、生まれるビジネスモデルはないか?

アクセンチュアの報告では、従来の大量生産・大量消費型のビジネスをこのまま継続すると、2030年には世界で約80億トン分の天然資源が不足してしまうことが発表されています。人間が地球に与える負荷が増大していくなか、企業にはますます環境戦略が必要とされることが予想されます。

自社の今後の成長を考えるうえでも、無駄を利益に変えるサーキュラーエコノミーのビジネスモデルを基に、持続可能な社会づくりに貢献してみてはいかがでしょうか。

執筆は2019年9月26日時点の情報を参照しています。
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