在庫回転率とは?在庫回転率を上げて経営効率をアップさせる方法5選

在庫管理は、需要と供給のバランスを調整する役割を担っています。小売業の場合、在庫が常にあれば品切れが起こらないため、お客さまへのサービスレベルは向上します。製造業の場合は、注文に対して原材料や部品の在庫が適切にあれば納期に間に合わせることができ、お客さまに満足してもらえます。

一方で、在庫を多く持つということは資金繰りの観点からすると、必ずしも安全策とはいえない場合があります。そこで、適切な在庫管理を行うための指標となる在庫回転率が重要になります。

目次


在庫回転率とは

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在庫回転率とは、在庫が何回入れ替わったかを一定の期間内で測るものです。在庫品が小売業の商品であれば売り上げになるまでのスピードを測る指標となり、製造業であれば商品化にかかる原料・資材の適切な管理状況を測る指標となります。

在庫回転率の計算式

在庫回転率は、以下の計算式から算出することができます。

在庫回転率=一定期間の売り上げ原価÷一定期間の平均在庫金額

平均在庫金額は、対象期間の始点と終点の在庫金額を足して2で割って求めます。

たとえば、Aという商品が月間で原価500万円分売れており、月初に行った棚卸しでは在庫が100万円分あって、月末にも100万円分の在庫金額を確認したとします。このときの平均在庫金額は、(100万円+100万円)÷2=100万円です。したがって、Aという商品の1カ月における在庫回転率は、500万÷100万=5と算出できます。つまり、1カ月の間にAという商品が5回入れ替わったことになるわけです。

もちろん、対象とする商品の種類や期間によって在庫回転率は様々に変動します。

業種によっても適正な在庫回転率は変わってきます。

たとえば、生鮮食品を扱う小売店や飲食店などでは仕入れたものをその日のうちに売り上げることが理想とされ、ほぼ毎日在庫が入れ替わり、在庫回転率の高い業種です。

一方で、オーダーメイドの衣料店など、通常は在庫を持たず、お客さまの注文を受けてから仕入れを行う業種もあります。また、部品の仕入れから完成品の納品までに時間を要する製造業の在庫回転率は全体的に低いといえるでしょう。

したがって、在庫回転率の比較は、同業間で行う必要があります。

在庫回転率でわかること

在庫回転率の良し悪しは、事業の好調・不調に直結します。

小売業であれば、在庫回転率が高ければ高いほど、仕入れた商品が売り上げに変わるまでの間隔が短く、市場でよく売れる、売れ筋商品であるととらえることができます。製造業の場合は、高い頻度で原料・資材・部品といった在庫が回り、出荷が好調であるといえるでしょう。在庫が頻繁に入れ替わるということは、効率的な経営がなされている証拠です。

逆に、在庫回転率が低いと、仕入れた商品や原材料が売り上げに変わるまでの期間が長い、つまり市場に出ている商品がなかなか売れない死に筋商品であるということがわかります。

在庫回転率を算出する対象商品や期間をその都度設定することで、よく売れている商品とそうでない商品を見分けることができ、需要に合った仕入れができているかどうかの判断基準にもなるのです。

在庫回転率を把握する3つのメリット

経営戦略を見直す判断材料としても活用できる在庫回転率ですが、具体的にどのような効果があるのかを、在庫管理、顧客のニーズ把握、リスク管理の3点からみていきましょう。

メリット1. 在庫の動きを可視化できる

在庫回転率は、特定の期間の在庫がどのように出入りしているかを把握するものです。仕入れと売り上げについては毎日のようにその動きを追いかけている場合でも、仕入れたものがいつ売り上げに変わっているかを全体的に把握する機会はそれほど多くないでしょう。

在庫回転率を活用した在庫の動きの可視化により、自社の売れ筋などの全体的な販売動向を把握できるようになります。

メリット2. 顧客ニーズをリアルタイムに把握できる

在庫回転率が高いという状態は、商品が「仕入れる側から売れていく」と言い換えることもできます。つまり、顧客の求めるものをタイミングよく仕入れて売るサイクルができているわけです。

このため、在庫回転率が低い商品の在庫を減らし、空いたスペースを回転率が高くなりつつある商品の在庫に充てていけば、これから伸びる顧客ニーズにいち早く応える体制を構築することも可能です。

このように、毎日の在庫の動向を、回転率とともにリアルタイムで把握することにより、商品ごとのきめ細かな顧客ニーズに対応していくことができるのです。

メリット3. 過剰在庫や在庫不足のリスクを防止できる

在庫回転率が下がり始めた商品は、売れ行きが鈍りだしたと判断することができます。通年での傾向として、季節や行事などの特殊事情を加味してもなお大きく回転率を下げたものは、顧客ニーズから離れた商品と考えることもできるでしょう。

在庫回転率が下がる傾向が続いているにもかかわらず仕入れのペースを変えなかった場合、過剰在庫の状態になります。在庫の保管スペースも必要になりますし、長期にわたると品質も劣化し、不良在庫になって廃棄のリスクも出てしまいます。

日頃から在庫回転率の傾向を押さえておき、回転率が下がり始めたらいち早く仕入れを制限して過剰在庫や不良在庫のダメージを回避する調整が重要です。

在庫回転率アップの方法5選

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では、具体的に在庫回転率を高めるにはどのような点に気をつければよいのでしょうか。ここからは、在庫回転率を向上させるポイントを見ていきましょう。

1. 在庫回転率の目標値を設定する

在庫回転率は、業種や業態、季節などの販売状況によって、適切な回転率が異なります。このため、自社にとって最も効果的な回転率がどの程度なのかを把握し、具体的な数値目標で設定しておくことが重要です。

在庫回転率の動向は日々の仕入れと売り上げの動きとに密接に関わっているため、具体的な数値目標を従業員に示すことで、社内全体が同じ方針のもと協力しあえる体制をつくることにもつながります。

在庫回転率の適正は、年間を通じた自社の売り上げと仕入れ、利益などの数値から割り出していくとよいでしょう。その際、同業他社の動向を探り、同種の商品の在庫回転率をリサーチするのも有効です。

2. 在庫状況を可視化する

在庫回転率は、仕入れてから売り上げるまでの在庫の動きを示します。このため、在庫が現在どのような状態になっているのかを可視化し、データでリアルタイムに追いかけるシステムが必須といえます。

いつ、何が、どのくらい在庫として入ってきたのか、また、いつ、何が、どのくらい出ていったのか、出庫と入庫の管理を徹底させる必要があります。倉庫などの保管場所が複数にわたるときは、場所別の管理も必要になります。

このように、在庫の量や保管場所、出入りの頻度だけでなく、搬入・搬出の動線も含めた在庫管理をデータ化などで可視化することで、無駄な動きが減って効率化が進み、回転率も向上していきます。

3. リードタイムを短縮する

リードタイムは、着手から完了までにかかる時間を指します。製造業であれば、顧客からの発注が届いて生産に着手してから商品が顧客に納品されるまでの期間をいい、小売業であれば、注文完了から商品が顧客の手元に届くまでの期間をいいます。

顧客にしてみれば、商品が必要と思ったときから手に入れるまでの時間が短ければ、それだけ満足度が高まります。このため、いかにリードタイムを短縮して顧客満足度を上げるかが重要になります。業務プロセスを見直し、少しでもリードタイムを短くできるよう、工夫しましょう。

顧客満足度が上がっていけば、繰り返し商品を手に入れようとするリピーターも増加し、企業やブランドへの愛着も深まる可能性が高まります。結果的に、在庫回転率を向上させることにもつながります。

4. 在庫管理を最適化する

在庫回転率を高く維持するためには、入庫後すぐに出庫されるというベストの状態を保っていく必要があります。一時的な在庫保管ではなく継続的に在庫管理するには、いわゆる5W1Hの視点を活用し、在庫管理の最適化を図る必要があります。

たとえば、入出庫のタイミング、保管場所や環境維持、搬入先、使用目的、品番、数量、保管方法など、在庫ごとの特質に合わせて管理方法を整備していきましょう。

この際、在庫の動きだけでなく、生産工程や販売工程などの業務プロセスも併せて見直すと、より効率的な在庫管理につながって回転率も改善されるでしょう。

5. 販売管理システムを導入する

在庫管理は商品の動きの管理です。小売業でも製造業でも、仕入れと売り上げの管理と在庫管理は密接に関連しています。このため、売り上げの管理はデータ化しているが在庫は把握していないという状況では、デジタル管理の意味がありません。

特に小売業の場合、生産管理、在庫管理、店舗販売と異なる場所で業務が進み、仕入れも売り上げも在庫も独自のしくみで管理しているため連携できていない例が多く見られます。

毎日の売り上げに紐づいてリアルタイムに在庫管理できるシステムを導入しましょう。人の手に頼るとミスも増えますし、繁忙期になると従業員は売り上げることに手一杯で管理にまで手が回らなくなる可能性もあります。経験の少ない従業員でも安心して扱え、毎日データを更新できるため、時宜を得た在庫管理で回転率の向上を図ることが可能となります。

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在庫が多いとどうなる?

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まず、在庫を多く持つことが経営にどのような影響を及ぼすかを理解する必要があります。

品切れが原因でお客さまに即座に商品を提供できないと、購買意欲を下げることになり、売り上げの機会を逃す機会ロスを招くことになります。

また、予測していた数を大きく上回る注文があった場合に備えて、品薄や品切れにならないように十分な在庫を持っておきたいと思うのは、販売部門や営業部門の立場からすると自然のことでしょう。

しかし、どんなに在庫を多く持っていても、売り上げにならない限り、在庫は倉庫で眠っている会社の資産に過ぎません。資産は増えているように見えますが、経営に利益をもたらす売り上げにはつながらないのです。

在庫を持つということは、管理することでもあります。仕入れた商品を保管する場所が必要です。商品の状態を良好に保つためには管理費もかかってきます。在庫の量が増えれば増えるほど管理費用も膨らみます。

食料品であれば、賞味期限の問題があります。賞味期限が近い、または賞味期限切れの商品は、売り上げに貢献する前に処分しなければなりません。処分するためのコストも発生します。

家電製品など、毎年のようにモデルチェンジや新機能の追加がある製品は、売れ残ってしまうと、翌年には商品価値が低下します。これを陳腐化といいます。

商品は、お客さまに売れて初めて収益になります。いつまでも売れずに倉庫に眠った状態が続くと、仕入れにかかったコストの回収さえできず、出費がかさむばかりです。

こうして在庫が増えるにつれ、経営が圧迫されます。このような事態を事前に防ぐためにも、無駄のない在庫管理を行う必要があります。そこで重要になるのが在庫回転率なのです。

在庫管理は大前提

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在庫回転率とは、商品の売れ行きを把握して効率的な在庫管理に役立てるための指標であるということがわかりました。

しかし、在庫管理の方法そのものも、資金繰りに大きく影響するということも忘れてはいけません。商品が仕入れられてから倉庫で保管され、出庫に至るまで、実際の在庫と帳簿上のデータを一致させるなど、ミスのない効率的な管理方法が求められます。

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売れ筋は変動する

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在庫回転率と商品の売れ筋の関係についてお伝えしてきましたが、商品が売れるのも、売れ残るのも、全てはお客さまの購買行動に起因しています。在庫の数値だけを見つめるだけでなく、市場の状況を常に意識しておかなければいけません。

瞬間的に売り上げが増えた商品を即座に追加で仕入れたとしても、一過性のものに過ぎず、在庫が残ってしまうこともあります。

お客さまのニーズも、市場のトレンドも、様々な要因で常に変動しています。情報に敏感になり、変化に対して柔軟な価格改定や仕入れの判断を行うことができる能力が経営者には求められます。

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執筆は2017年2月15日時点の情報を参照しています。2024年1月16日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash