インターネットやスマートフォンが普及した現代で、自社のビジネスを多くの人に知ってもらう上で欠かせないのがウェブサイトです。伝えたい情報が一つのプラットフォームにまとまった便利なツールではあるものの、見た目や使い勝手によっては情報が伝わりづらく、ユーザー獲得につながりにくいウェブサイトも少なくありません。そこでウェブサイトを訪れた人に伝えるべき情報が届くよう、押さえておきたいのがUIとUXデザインです。
今回は意外と知られていないUI/UXの特徴から、最適なUI/UXデザインを設計する上でビジネスオーナーが準備しておきたい点を解説します。
UI/UXについて
パソコンやスマートフォン上でアプリやウェブサイトを利用する際に、「使いにくい」「見にくい」と感じたことはありませんか。こういった弱点をカバーし、ユーザーにとって魅力的かつ使いやすいウェブサイトやアプリケーションをデザインするのがUI/UXの役割です。UI/UXとは、主にウェブサイトやモバイルプラットフォームのデザインに用いられる概念ですが、今回はウェブサイトに焦点を絞って説明をします。
UIとは?
UIとはユーザーインターフェース(User Interface)の略語であり、ウェブサイトや製品の「見た目」を意味する用語です。インターフェースは「接点、接触面」という意味を持つため、ユーザーの目に触れる部分と解釈することもできます。つまり、ユーザーが目にするフォントやそのサイズ、ボタンの色や形、もっと細かいところでいえば行間や配置など、見た目のデザインに関わる全ての要素がUIに当てはまります。
UXとは?
UXはユーザーエクスペリエンス(User Experience)の略で、製品やサービスを通してユーザーが得る「体験」を意味します。優れているUXデザインを持つウェブサイトは、ユーザーに使いやすいと感じてもらえるものです。具体的には「ユーザーが迷いなく目的を達成できる」「ウェブサイトを操作するうえでユーザーへのストレスが少ない」といった点がウェブサイトの使いやすさを表します。
UXデザインを設計するうえで多くのデザイナーが参考とするのは、情報アーキテクチャの先駆者、Peter Morvilleの「UXハニカム」です。ここには以下の七つの要素が含まれます。
1, Useful(役立つものである)
2, Usable(使いやすいものである)
3, Desirable(望ましいものである)
4, Findable(情報が探しやすいものである)
5, Accessible(情報にアクセスできる)
6, Credible(信頼できる)
7, Valuable(価値のあるものである)
たとえばECサイト上で欲しい商品がすぐに検索できれば、ユーザビリティー(2)とアクセサビリティ(5)の両方に優れており、ユーザーにとって望ましい(3)とみなされるでしょう。一方で導入に費用がかかるサービスを提供するウェブサイトの場合、会社情報はユーザーにとって気になる点かもしれません。あまり時間をかけず、この情報を見つけることができれば、ユーザーはアクセサビリティ(5)に優れていると判断し、信頼できるサイトである(6)と感じ取ります。このように、UXを向上させるためには、ユーザーの満足度を高める「UXハニカム」を軸にするといいかもしれません。
参考:User Experience Design(Semantic Studios)
UIとUXの関係性
一見似ている印象を受けやすいUIとUXですが、デザイン部分を指すUIは、ウェブサイトがユーザーにもたらす体験を統括するUXの一部であると考えられています。この二つは相互関係にあり、わかりやすく説明をすると、
見た目はいいけれど、使いにくいサイト=UIデザインには優れているけれど、UXデザインに劣っている
使いやすいけれど、見た目がよくないサイト=UXデザインには優れているけれど、UIデザインに劣っている
つまり片方に優れているだけでは、ユーザーは求めている情報にたどり着けず、ビジネスオーナーは適切な情報をユーザーに届けられず、と両者にとって満足度の低いサイトとなってしまいます。そのため、ウェブサイトの利用率を上げるためには、「離脱を促さないデザイン(UI)」と「ユーザーが目的を達成できる機能性(UX)」の両方を最大限に生かす必要があると考えられます。
ユーザー満足度の高いウェブサイトを生み出す、UI/UXの設計方法
UI/UXのデザイン設計には、自社でデザイナーを雇う、もしくはアウトソースでデザイナーに依頼をする、の二つが選択肢として考えられます。いずれにしても、ユーザーに刺さるウェブサイトを作るには、ユーザー心理を掘り下げ、どのようなターゲットに向けてウェブサイトを設計していきたいかをデザイナーと共有することが大切です。極端な例ではありますが、「かっこいいデザイン」、「やわらかめの印象」など漠然としたイメージは、UI/UXのデザイン設計において不十分とみなされてしまうでしょう。
ユーザーを迷わせないUI/UXデザインを自社サイトに組み込むためにも、以下3点を明確にしておきましょう。
1, ターゲット層とそのニーズ
ブランドアイデンティティを構築する上でターゲット層を明確にすることは欠かせませんが、UI/UXデザインにおいてもターゲット層は常に念頭に置いておくべき要素の一つです。
ターゲット層の性別や年齢を考慮するだけでも、適切なUI/UXデザインは大きく変わってきます。たとえば若者は個性あるクリエイティブに惹かれるかもしれませんが、パソコンにあまり慣れていない年代は、わかりやすい設計を好むでしょう。このようにターゲット層を見極めることは、適切なUI/UXデザインを導く上で欠かせない工程です。
ターゲット層におけるニーズも、深掘りが必要な要素です。自社のウェブサイトを訪れるユーザーの顕在ニーズに合わせて、サービスを知ることから生まれる潜在ニーズまで掘り下げておくと、よりユーザー満足度の高いUI/UXデザインを設計することができます。
たとえば、業務効率化に役立つ月額制サービスを提供しているとしましょう。ユーザーがウェブサイトを訪れるうえでの顕在ニーズは、おそらく「業務を効率的に行いたい」でしょう。潜在ニーズには、「使ってみないと判断できないから、一定の期間はサービスを無料で試してみたい」「トレーニングに時間を避けないので、使い方は動画で学習したい」などが挙げられます。このようにユーザーのあらゆるニーズを仮定しておくと、ウェブサイトに組み込むコンテンツ案も出しやすくなります。
2, 顧客に起こしてほしいアクション
来店してほしいのか、商品を購入してほしいのか、サービスを利用してほしいのか、会員登録をしてほしいのか……最初に絞り出したターゲット層に第一に起こしてほしいアクションを想定することで、思わずクリックしたくなるボタンのデザイン(UI)や、スクロールせずにアクションを起こせる機能性(UX)など、UI/UXデザインが設計しやすくなります。
3, 顧客に伝えたい情報
あなたのターゲットユーザーは、何を求めてウェブサイトを訪れるでしょうか。たとえばレストランのウェブサイトの場合、店内の雰囲気や提供されるメニューを知りたいのかもしれません。ユーザーによっては、読みやすい文字やイラストで商品の価格やサービスを説明してほしいと感じることもあるでしょう。
情報の最適な見せ方を見い出すためにも、自社のサービスや商品において、ユーザーが必要としているであろう情報を掘り出すのはもちろんのこと、優先順位をつける、という工程も踏みましょう。そうすることで、デザイナーは情報に対する強弱のつけ方(文字の大きさや配置など)をより判断しやすくなるでしょう。
UI/UXデザインを設計するためには、上記3点を明確にしたうえで、デザイナーに発注をすることで、よりユーザーに使いやすいウェブサイトが作れるでしょう。
UI/UXデザインを改善させる方法
UI/UXデザイン改善には膨大なリソースがかかってしまいそう……という懸念から、ウェブサイトの最適化に手をつけられていないビジネスオーナーも少なくないのではないでしょうか。ところが、最近では中小企業やスモールビジネスでもリーズナブルな価格で改善を試みることができます。その方法の一つとして挙げられるのが、ユーザビリティテストの実施です。
第三者にインターフェースを触ってもらい、どれだけスムーズに目的地に到達できるか、目的を達成する上でどのような課題点があるか、などが探れる調査方法です。実際にサイトを訪れるユーザーの心理を探ることで、より的確な改善方法が見い出せることから、導入する事業が増えているようです。
ユーザビリティテストと聞くと、大企業が取り入れている印象を受けるかもしれませんが、最近では中小企業向けのクラウド型テストサービスも出てきました。その他にも、自社サイトでのユーザー行動を確認したり、定性分析をしたりし、どれだけユーザーにとって最適化されているかを教えてくれるツールも増えてきているようです。ユーザーにより満足してもらえるウェブサイトを提供できるよう、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
参考:
スマートフォンアプリ・Webサイトを“ユーザー視点”で品質向上!クラウド型テストサービスを提供開始(2017年6月5日、PR TIMES)
【プレスリリース】アイスリーデザイン、ウェブサイトのUI/UX改善ツール 「flamingo(フラミンゴ)」をメジャーバージョンアップ Google モバイル ファースト インデックス対応でSEO向上(2018年8月1日、株式会社アイスリーデザイン)
UI/UXデザインの改善がもたらす効果
ユーザーに伝わりやすいサイトづくりに欠かせない要素としてUI/UXデザインを紹介してきましたが、実際にはどのような効果が見られるのでしょうか。2017年に経済産業省が行なった第4次産業革命におけるクリエイティブの重要性にまつわる調査によると、デザインの定義を広めることで営業利益が上がることがわかっています。
この調査では、デザインの定義が広いビジネスと狭いビジネスを比較したところ、デザインの定義が広い企業の方が他社との差別化において達成度合いが高い傾向にあり、新たなサービスの設計において、顧客との接点に一貫性を見い出すことに焦点を置く傾向にありました。一方でデザインの定義が狭い事業は、傾向として他社との差別化における達成度も低く、低価格でサービスを提供することに重きを置いていました。
ウェブサイトのUI/UXを含めて、顧客満足度が高く、他社よりも優位な製品やサービスをデザインするためには、サービスの価値を掘り下げて、ユーザーのニーズに寄り添った体験を提供することになり、価格競争をしなくても商品の価値をよりユーザーに理解してもらえ、営業利益につなげられるようです。
参考:第4次産業革命におけるデザイン等のクリエイティブの 重要性及び具体的な施策検討に係る調査研究報告書(経済産業省))
全てのユーザーが満足するウェブサイトを作るのは難しいかもしれませんが、デザインを見直すことで、伝えるべき情報がユーザーによりよく届くウェブサイトに改良することはできます。ユーザーに迷いやストレスを感じさせないためにも、UI/UXデザインという概念をもとに自社サイトを分析してみてはいかがでしょうか。
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執筆は2019年7月2日時点の情報を参照しています。
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