「町おこし」に必要な取り組みとは?地域の課題と地方創生の成功事例

地域を活性化する「町おこし」のため、現在、日本各地でさまざまな趣向を凝らした取り組みが展開されています。町おこしで人や仕事、お金などを呼び込む取り組みが求められる背景には、日本社会が抱える三つの課題が存在します。課題解決に臨むべく、町おこしの取り組みのアイデアや成功事例を基に、地方創生の進め方を考えてみましょう。町おこしの取り組みの一部として欠かせない、地域ビジネスのDXのコツも紹介します。

目次



町おこしとは

地域に活気をもたらすための取り組みを、町おこしと呼びます。行政だけでなく企業や個人も参画・連携した取り組みが町おこしの成功の鍵です。

たとえば、過疎化が進行中の地域などでは町おこしの取り組みが必要といえます。もし人口急減に対して町おこしの取り組みを行わなければ、小売店や交通サービスの撤退のほか、地域コミュニティーや生活インフラの機能低下の可能性があり、地域住民の生活に著しく影響します。

町おこしは、地域おこしや地域活性化などと呼ばれることもあり、町単位に限定しない取り組みも必要です。

町おこしの狙い

町おこしの狙いは地域の課題により異なりますが、代表的なものは以下の通りです。

- 地域人口の増加
- 来訪者の増加
- 地場産業の活性化
- 雇用の創出
- 地域コミュニティーの活性化
- 生活インフラの維持・向上
- 教育・医療サービスの維持・向上

町おこしの取り組みを行うことで地域に定住者や来訪者が増えれば、地域ビジネスを通じて住民の所得が増え、自治体の税収増加は上下水道やごみ処理などのインフラの充実につながります。つまり、町おこしの要は「人」であることが理解できます。

町おこしの背景にある課題

地方部を中心に町おこしのニーズが高まっている背景には、共通する三つの課題が横たわっています。社会構造に起因する課題に向き合い、状況を打開する町おこしの取り組みのヒントを探ってみましょう。

人口減少と高齢化

日本全体の人口の自然減少が始まる以前から、地方部では人口の減少が大きな課題となっていました。人口が減れば、農業や漁業、林業など地方部の産業の担い手も減るため、後継者不足による廃業なども深刻です。

加えて、子どもの出生率低下による「少子化」と、人口対比での高齢者の割合が高い「高齢化」が加速し、少ない生産年齢人口で多くの老齢人口を支えるという逆ピラミッド型の社会構造へと日本全体が向かっています。内閣府の統計によると、各都道府県の2021年の高齢化率は約23%から38%ですが、2045年までに一部の都道府県では高齢化率が50%を超える見通しです。

特に、総人口の少ない過疎地域で極端な高齢化が進んだ場合、空き家や耕作放棄地の増加、商店の閉店などに始まり、住民の社会生活が困難な限界集落となり、やがてコミュニティーそのものが消滅する恐れもあるのです。

早い段階で町おこしの取り組みに着手することで、こうしたリスクを回避できる可能性が高まります。

参考:令和4年版高齢社会白書(全体版) 地域別に見た高齢化(内閣府)

都市部への人口集中

コロナ禍の影響で一時的に都市部からの人口流出が起きたものの、都会に人口が集中する傾向は依然として続いています。企業や大学の多い都市圏への人口集中と、地方部での深刻な人口流出は表裏一体の課題です。

職を求める若者の都市部への移住は、地方部の人手不足や事業継続の困難を生み出します。総人口が減った地域では、経済規模の縮小やインフラ品質の低下が起き、空き家の増加による倒壊リスクや治安の問題も無視できません。

ここから分かるように、町おこしによっていかに定住人口を増やすかは、取り組みの一つのポイントです。

参考:住民基本台帳人口移動報告 2022年(令和4年)結果(総務省統計局)

地域の魅力不足

地方部では観光業を重要な収益源とするケースもあり、地域活性化の重要な一手です。ただ、観光資源が少ない、あるいは観光資源はあっても有効活用できていない例も散見します。来訪者増加のためには、外部の人に地域の魅力を十分に伝える取り組みが不可欠です。

移住者や企業の誘致を目指す場合も、地域の魅力をしっかりアピールすることは町おこしのポイントとなり得ます。自然や歴史、立地、風土といった元々備わった資産だけでなく、行政のサポート体制、アート、エンターテインメントなどの新たな魅力を加えていくことで、地域の魅力不足を補う取り組みも可能です。

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町おこしに必要な五つの取り組み

地域ごとの課題や特性に応じて、町おこしで求められる取り組みは異なります。以下の代表的な五つの取り組みのうち地域に必要なものは何か、優先順位を付けて検討してみましょう。

1. 地域の特産品や観光資源の活用

その地域ならではの食品や伝統工芸・芸能、カルチャー、景勝地などは、有効な観光資源になり得ます。他の地域と差別化するポイントを客観的に探してみることが、町おこしの取り組みの起点になるでしょう。

地元の住民には見慣れた海岸線も、海のないエリアからの来訪者には特別な景色です。酪農や山菜採りをビギナー向けの体験プログラムとしてパッケージ化すれば、収益性のある教育コンテンツとして成立するうえ、地域のプロモーションにもつながります。

市場リサーチを行ったうえで地域ブランドを作って特産品を商品化すれば、店頭だけでなくカタログやオンラインでの通信販売も可能です。人口の多い都市部や海外に向けて売り出す取り組みも、決して不可能ではありません。

2. 地域の歴史・文化の保護、活性化

有名な城郭や遺跡だけでなく、珍しい建築、希少な動植物、知られざる文化功労者の逸話、民話や口承伝といった歴史や文化は至るところに眠っています。ただそこにあるだけでは経済価値を生まない歴史や文化も、名物としてマーケティング施策を打つことで価値を創造できます。

古くから伝わるものに限らず、歴史や文化は今この瞬間にも作られています。ソーシャルメディアなどから新たなトレンドや地元のアーティストを発掘する取り組みも、町おこしに役立つ可能性があります。

たとえば、地域住民にとって通い慣れた山道がバイクのツーリングや自転車レースの練習用に人気が高まっているなら、そのカルチャーを町おこしの取り組みに活用することも可能です。休憩場所を作り、宣伝してさらに人を呼び込む、バイクや自転車に関わるインフルエンサーをプロモーション企画に起用する、イベントを開催するなど、さまざまな取り組みが考えられます。

3. 地域資源の活用による産業振興

地域にある資源をもとに、産業を活性化させることも町おこしの取り組みとして重要です。手持ちの資源を認識し、用途を考え、企業やビジネスを誘致することもできます。

地形や天候を活用する再生可能エネルギーの発電所、都会から離れた静かな立地を生かしたリゾート施設、廃工場や採掘跡地を使った映画などの撮影ロケなど、需要と供給の一致がポイントです。

地域そのものだけでなく、周辺の環境も資源となり得ます。近隣に中規模以上の都市があればそこからの通勤者を想定し、低コストを目玉に工場やコールセンターを誘致するといった町おこしの方法もあります。

4. 人材の育成と定着

地域の活性化を進める人材なくしては、町おこしの取り組みを継続することはできません。地域への理解と愛着を持って行政や住民と連携する町おこしの適任者が地域内で不足している場合、「地域おこし協力隊」という総務省の取り組みを活用することも可能です。

地域おこし協力隊員は、都市部などから住民票を異動したうえで、自治体の委託で任期の1年から3年間、町おこしのための地域協力活動に取り組みます。任務の内容や待遇は自治体により異なりますが、具体的には以下のような例があります。

  • 地域ブランドや特産品の開発、販売、プロモーションの支援
  • 農林水産業への従事
  • 住民支援など

地域おこし協力隊員の活動費については、総務省から一定の財政支援が自治体に対して行われます。

地域おこし協力隊員は、町おこしのサポート人材でありながら住民でもあり、外部から移住し定着を図る間に町おこしに関わることで地域を深く知ってもらえるのもメリットです。

参考:地域力の創造・地方の再生 地域おこし協力隊(総務省)

5. 地域コミュニティーの形成と参加促進

町おこしの推進に伴って外部から移住希望者がやって来たら、地域コミュニティーへの参加を促す取り組みが必要です。まずはその準備として、地域コミュニティーの形成を目指しましょう。

一般的な地域コミュニティーとしては自治会(町内会)や子ども会、老人会などが挙げられます。この他にも、子どもを持つ家庭同士が交流できる育児相談グループ、消防団、地域イベントの実行委員会、スポーツや趣味のサークルなどが地域コミュニティーとして有効です。

地域コミュニティーには、目的のための集まりという側面に加えて、人と人がつながることで地域への愛着や安心感を形成する役割もあります。移住者がコミュニティーに参加しやすくなるようトライアルやオリエンテーションなどの取り組みや、対面だけでなくオンラインでの交流の仕組みなどを、町おこしの一環として導入してみましょう。

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町おこしの成功事例3選

現在までに国内各地で進んでいる町おこしの取り組みの中には、既に結果を出している成功事例も少なくありません。以下の事例の地域特性や取り組みの方向性を比較しつつ、優れたアイデアを参考にしてみてください。

事例1. インバウンドで町おこし/高山市(岐阜県)

「飛騨の小京都」として知られる古い町並や、世界遺産の合掌造りが立ち並ぶ白川郷、雄大な北アルプス(飛騨山脈)など、高山市は観光資源に恵まれた土地といえます。しかし、東京・大阪からともに4時間前後と日帰り観光には向かず、冬は雪に閉ざされる立地という弱みもあります。

そんな高山市は、30年以上前からインバウンド需要に目を向けた町おこしの取り組みを進めてきました。専門部署を設け、地域に精通した通訳ガイド「地域通訳案内士」の育成にも力を入れ、観光案内の公式サイトは日本語以外に11言語に対応するという徹底した取り組みが目立ちます。高山市長自らが海外の旅行会社や航空会社に「飛騨高山ブランド」を売り込むトップセールスのスタイルも奏功し、欧米やオセアニアからの外国人旅行者に人気の旅行先として成長しました。

コロナ禍の影響でインバウンド需要は落ち込んだものの、その間も高山市はソーシャルメディアで海外向けにメッセージを発信するなど、国際観光都市としての町おこしに積極的に取り組み続けています。

参考
飛騨高山((一社)飛騨・高山観光コンベンション協会)
海外戦略(高山市
アフターコロナを見据えた新たなインバウンドプロモーション戦略 ~ 多文化共生の視点とともに(高山市)

事例2. 移住促進で町おこし/津和野町(島根県)

島根県の西側、山口県との県境に位置する津和野町は「山陰の小京都」として知られる町です。歴史や城下町の趣きを生かした観光はもちろん、町おこしの一環としてUターンやIターンの移住者の受け入れについても積極的な取り組みが行われています。

移住を検討する人向けの「お試し暮らし住宅」は、1泊2日から1年の期間内に自治体が貸し出す定住体験用の家屋で風土や地域の暮らしを経験できる仕組みです。移住者が町内の空き家に入居する場合に利用できる改修補助金などの制度もあります。

仕事については無料の職業紹介所、就農支援、自分で開業する人のための補助金制度など、充実のバックアップ体制です。子育て世帯には、保育料無料、子どもの医療費の助成、妊産婦の通院交通費のサポートなど、安心して暮らせる制度が整っています。

地方ならではの豊かな自然やのびのびとした環境に加え、自治体の仕組みの整備によって地域の魅力アップに成功している好例といえます。津和野町の町おこしの取り組みは外部からの移住希望者を着実に惹きつけています。

参考:
つわの暮らし(津和野町)
くらしまねっと しまね移住情報ポータルサイト((公財)ふるさと島根定住財団)

事例3. 起業サポートで町おこし/富士吉田市(山梨県)

都心部から車で1時間半の山梨県富士吉田市は、「創業するなら富士吉田で!」をキャッチコピーとして町おこしの取り組みを進めています。市や県、商工会議所などが一丸となり新規ビジネスの創業から長期にわたって伴走して支援する仕組みが、富士吉田市の取り組みのキーポイントです。

起業したい人が登録免許税の軽減、信用保証、融資制度などを利用でき、市内の空き店舗を活用する場合は改装費や家賃の一部に対して助成金の利用も可能です。加えて、創業に関するワンストップ相談窓口の設置や、事業運営に必要な知識を学べるセミナーの開催など、手厚いサポートがあることが窺えます。

富士吉田市には移住支援金や定住促進奨励金の制度もあり、開店・開業を考える人にとって大きなチャンスとメリットがあります。際に、地場の織物業のリブランディング事業、空き家を生かした宿泊施設事業など、新たな取り組みやビジネスが誕生しています。観光資源や既存の産業に頼らない現実的な町おこしの取り組みとして、参考になる事例です。

参考:
富士吉田市は創業者を全力でバックアップします!
富士吉田市 転居・転入​​
【地域×起業】地域おこし協力隊出身者が語る『“富士吉田流” 地域での事業の起こし方』イベントを開催します(2019年2月5日、株式会社WHERE)

町おこしを支える地域の店舗のDX

町おこしの取り組みを進め、移住者や観光客を呼び込むうえで欠かせないものの一つに、店舗のDXがあります。旅行者が利用する店舗や宿泊施設、移住者を雇用する会社や公共施設、起業でスタートする新たなビジネスなど、人が働くシーンでのDXによる業務効率化は、人の定着にも大きく寄与します。

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地域に人を集め、地方創生を実現するためには、町おこしという積極的な取り組みが不可欠です。同時に、既存の地域住民にとって町おこしがプラスとなるよう、取り組みの内容や方向性について丁寧なコミュニケーションも必要です。

地域の魅力の発見と創造、発信を充実させ、日本国内のみならず海外からの旅行者や移住者にアピールし、町おこしの取り組みを成功させましょう。

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執筆は2023年6月13日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash