【商いのコト】兄弟でつくる“透明性”のあるコーヒー屋さん ー OBROS COFFEE

成功も失敗も、すべては学びにつながる。ビジネスオーナーが日々の体験から語る生の声をお届けする「商いのコト」。

つなぐ加盟店 vol. 34 OBROS COFFEE 荻野夢紘さん

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▲弟の荻野稚季さん(左)と兄の荻野夢紘さん(右)

高校3年生のときにラテアートと出会い、コーヒーの道で生きていくことを決意した荻野夢紘(ゆめひろ)さん。

“自分の店を開きたい”という目標を持つようになった夢紘さんは、カフェ・家具屋・コーヒー器具のメンテナンス会社と、一歩一歩必要なスキルを身につけ、弟の稚季(わかき)さんと共に夢を実現させた。

前編で紹介したのは、夢紘さんがOBROS COFFEEをオープンするまでの道のり。後編では、兄弟で商いをすることに対する夢紘さんの考えや、OBROS COFFEEのコンセプト、そして今後の展望について伺った。

前編はこちら

兄弟で商いをすることは必然だった

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「言うと引かれちゃうかもしれないですが、“いつか弟と一緒に何かやりたい”と昔から思っていたんです(笑)。コーヒーはあくまでそのツールだったのかもしれません。」

弟と一緒にビジネスをすることを昔から考えていたと語る夢紘さん。たとえ兄弟仲が良くても一緒に店を開くことはめったにないだろう。夢紘さんは、弟・稚季さんとの関係についてどのように考えているのだろうか。

「もちろん幼いころは喧嘩をすることもありました。ただ、弟とは親や友達には話さないこともたくさん話してきたんです。進路の話もそうだし、恋人の話もそう(笑)。弟は自分にとって唯一無二の存在なので、“一緒に何かやる”のはいわば必然のことだったんですよね。」

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兄弟で商いをすることを“必然”だと語る夢紘さんの言葉からは、長年かけて築き上げてきた兄弟の絆が感じられた。

「僕は見切り発車タイプで、弟は吟味タイプ。僕が先へ先へ進もうとするときに、冷静な視点で見ている弟からストップがかかることがよくあります(笑)。お店を経営する上でもいいバランスになっていると思いますね。」

お互いの性格の違いが店の経営にも役立っていると語る夢紘さん。店名が、“OGINO”の“O“と“BROS.(「兄弟」の意)”を組み合わせてつけられていることからも、“兄弟で共に作っていく”という意識が強いことが伺える。そんな同店は、一体どのようなコンセプトを持って生まれたのだろうか。

“透明性”にこだわる

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「“透明性”です。」

同店のコンセプトについて聞かれた夢紘さんは、一言そう答えた。外壁を三面ガラス張りにして外から店内が見えるようにすることで物理的な透明性を、カウンターからコーヒーが出来上がるまでの過程をすべてお客様に見せることで情報の透明性を出そうとしているのだそうだ。

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▲Square POSレジを使ったレシートには、コーヒー豆についての詳細な説明が。“透明性”をコンセプトにした同店のこだわりが表れている。######

「どこの農園で豆を栽培して、どんな方法で収穫をして、どういう過程を経てコーヒーが出来上がるのかまで、すべてお客様に見せる努力をしています。僕たちは“コーヒーという飲み物の提供者”というより、“素材の良さを伝えるプレゼンター”という意識が強いんです。僕たちがコーヒーを美味しくしているわけではなくて、素材がコーヒーを美味しくしているんですよね。」

OBROS COFFEEが素材の良さを伝えようとしている背景には、週末に通っていたバリスタのトレーニングの影響が大きいという。

「素材と向き合う時間が長かったので、一つ一つの素材を大切にしたいと思うようになりました。カフェの経営者にとって、オリジナルメニューとしてブレンドコーヒーを作るのは当たり前だと思うのですが、うちではやりません。コーヒー豆そのものの味を活かすために、すべてシングルで提供しています。」

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2016年5月に同店をオープンしてから約1年8ヶ月。夢紘さんが商いをしていて1番印象的だったのは、“小さなお客様”の来店だったという。

「近所の小学生20人くらいが町探検の一貫でうちに来てくれたんですけど、後日その中の1人の男の子がお母さんを連れて店に来たんです。驚いてお母さんに話を聞くと『コーヒーを自分のお小遣いでプレゼントしたい!』と男の子が言ったそうで。嬉しそうにコーヒーを飲むお母さんの姿を見て感動したんですよね。僕たちは美味しいコーヒーを出すのは当たり前で、その上でお客様に“体験“を提供していかなくてはならないと思わされました。」

“小さなお客様”の来店によって、“体験”を提供することの大切さを改めて実感したという夢紘さん。この出来事は、OBROS COFFEEが目指すべき理想の姿をきっと明確にしてくれたに違いない。

“街のコーヒー屋さん”になるために

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今後の目標は、コーヒーをより身近なものにすることだと夢紘さんは語る。

「“街のコーヒー屋さん”になりたいと思っています。まだまだうちが提供するフルーティーなコーヒーは地域に根づいていないので。若い子たちにもっと飲んでほしくて、テイクアウト限定で学生価格というものを用意しています。図書館や公園など、外でうちのコーヒーを飲んでくれるシーンが増えてくれると嬉しいですね。」

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コーヒーをより身近なものにするために、夢紘さんはOBROS COFFEEの店舗以外にも接触点を持とうとしている。

「例えばイタリアンやフレンチのお店でワインを飲もうと思ったら、赤ワインや白ワイン、さらに細分化したワインの銘柄など、バリエーションが豊富ですよね。でもコーヒーは1種類だけのところが多い。『この料理にはフルーティーなコーヒーが合うよね』とか『デザートには苦めのコーヒーを一緒に飲むと美味しいよね」というように、料理に合わせてコーヒーを選べる状態を作っていきたいです。」

将来的には、レストランでいろいろな種類のコーヒーが飲めるようしたいと語る夢紘さん。既に提案しているものもあるということなので、郡山市のレストランのメニューにOBROS COFFEEの名前が載る日も近いかもしれない。

最後に、商いは楽しいかと問うと、
「辛いこともたまにはあるけど、コーヒーに関われるだけで僕は幸せです。」
と夢紘さんは笑顔で答えてくれた。

高校3年生のときに夢紘さんがラテアートに出会っていなければ、おそらく兄弟でコーヒーの道に進むことはなかっただろう。人生というものは、それだけ小さな偶然によって左右される、可能性に満ちたものだということを夢紘さんの生き方は教えてくれた。

前編はこちら
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(つなぐ編集部)
写真:小沼祐介