つなぐ加盟店 vol. 34 OBROS COFFEE 荻野夢紘さん
人生の進路を決定づける出来事は、しばしば突然訪れる。
自分自身の人生を振り返ってみると、予期せぬ出会いがターニングポイントになっていることはないだろうか。
今回取材した、福島県郡山市でコーヒーショップ「OBROS COFFEE」を営む荻野夢紘(ゆめひろ)さんもそんな経験をもつ一人。高校3年生のときに近所のカフェでラテアートに出会ったことがきっかけで、コーヒーの道で生きていくことを決意した。
夢紘さんがコーヒーショップを開くまでには、どのような道のりがあったのだろうか。
後編はこちら
進路を決めたラテアートとの出会い
夢紘さんがコーヒーの道に進むことを決意したきっかけは、高校3年生のときに実家近くのカフェで出されたコーヒー。“ラテアート”との出会いだった。
「当時の僕にとっては、コーヒーは“飲んで楽しむもの”というのが常識でした。でも、たしかあれはうさぎの絵だったかな…描かれたラテアートを見て『コーヒーって、目で見ても楽しめるんだ!』と、すっかり魅了されてしまったんです。」
高校卒業を間近に控えたタイミングでの、ラテアートとの運命的な出会い。夢紘さんは、“コーヒーの道で生きていきたい”という思いを抱くようになった。当時そのカフェでは人材募集をしていなかったため、ラテアートをしているチェーン店でアルバイトとして働き始めた。
カフェ店員は思った以上に大変だった
▲OBROS COFFEEが提供するコーヒーは、フルーティーな味わいが特徴。#####
「カフェはくつろぐ場所なので、店員さんもゆったりとしているのかと思っていたのですが……。月に1万5千人も来るようなお店だったので、1日中立ちっぱなしで仕事をしていました。思った以上に大変だったというのが、正直な感想ですね(笑)。」
苦笑しつつも当時を懐かしむような表情で語る夢紘さん。高校を卒業してから約3年間アルバイトとして経験を積んだ後、正社員になった。そしてまもなくして店長に昇進。スタッフの育成をはじめとした店舗全体の運営を任せられた。
「店長を経験したことで、お店は1人では回らないことを実感しました。スタッフ全員の意識をお店の目標に向けさせるのって、とても難しいことなんですよね。ラテアートを学ぶだけでなく、お店の運営についても考える機会をもらえて僕はラッキーだったと思います。」
正社員として約2年間勤務した後、夢紘さんはコーヒーショップを開くために次のステップへと歩みを進めた。
転職先は家具屋。自分の店を持つための戦略的なキャリア選択
アルバイトとして約3年間、正社員として約2年間カフェで働いた夢紘さんは、地元・郡山市の家具屋に転職。一見するとコーヒーと関係のない仕事のようにも見えるが、夢紘さんには家具屋で働く明確な目的があった。
「店長としてカフェで働いていたときに『コーヒーのことは分かるようになってきたけど、“空間を提供する”という視点がまだ足りないな』と思ったんです。だから家具屋で働いて、インテリアの素材や空間の勉強することにしました。」
家具屋で働いたことによる1番の学びは、“余白の大切さ”を知ったことだという。
カウンターの周りにはなるべく無駄なものを置かない。そうすることによって、自然とコーヒー器具に目が行くようにしていると夢紘さんは語る。洗練された雰囲気が漂う店作りの裏側には、家具屋仕込みの“余白の美学”が隠されていたのだ。
家具屋で約1年間働いた後、夢紘さんはコーヒー器具のメンテナンス会社へと転職。コーヒー器具についての知識を深めるとともに、社内異動によりカフェ立ち上げの手伝いも経験した。仕事の傍ら週末にはバリスタのトレーニングに通い、夢紘さんは着実に力をつけていった。
「“自分の店を開きたい”とはっきり思うようになったのは、カフェで働いているときです。だからその後のキャリアは、夢を実現するために自分に足りない要素を補うことを目的に選びました。コーヒーの知識に加えて、インテリアの知識や空間の使い方、価格や席数設定などの経営スキルも学ぶことができたのは大きかったし、今の仕事にも役立っています。」
2016年5月、夢紘さんは満を持して郡山市にOBROS COFFEEをオープン。若い人が経営するカフェは他にも見られるが、夢紘さんのケースはかなり珍しい。なぜなら、弟と共に兄弟で運営しているからだ。
兄弟で商いをすることを決心した理由とは。後編では、OBROS COFFEEに込めた夢紘さんの思いについて伺います。(つづく)
後編はこちら
OBROS COFFEE
963-8015
福島県郡山市細沼町1-30
OBROS COFFEE 駅前店
963-8002
福島県郡山市駅前1-7-10 MARUCO EKIMAE BUILDING 1F
(つなぐ編集部)
写真:小沼祐介