ビジネスを立ち上げるプロ、シリアルアントレプレナーとは?

「シリアルアントレプレナー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「起業家」を意味する「アントレプレナー」に「連続的な」という意味の「シリアル(serial)」を組み合わせたもので、「連続的に事業を立ち上げる人」のことを指し、「連続起業家」などとも呼ばれます。

今回はこのビジネス立ち上げのプロフェッショナルともいえる「シリアルアントレプレナー」について、経営者として知っておきたい基礎知識や、国内外の例を紹介します。

シリアルアントレプレナーの特徴

シリアルアントレプレナーと一般的な起業家の違い

シリアルアントレプレナーは、一般的な起業家(アントレプレナー)と比べると、事業を連続して立ち上げる点に大きな違いがあります。

一般的な起業家の場合は、立ち上げてから継続的にその事業の経営に関わっていくケースが多くみられますが、多くのシリアルアントレプレナーは、ベンチャー企業を立ち上げて経営を軌道に乗せると間もなく売却し、売却などで得た資本を元手に新たなベンチャー企業を立ち上げ、また売却するといったことを繰り替えしていくスタイルをとります。

シリアルアントレプレナーが活躍する背景

一つの事業を立ち上げて、軌道に乗せるだけでも大きな労力が求められるなかで、次々と起業を繰り返せるのは、優れたビジネスアイデアを生み出す能力を持ち、それを実現する手腕に長けている証拠だといえるでしょう。

そのような事業立ち上げのスキルに特化した「起業のプロ」ともいうべきシリアルアントレプレナーが活躍できるようになってきた背景には、ベンチャー企業が育った後の方向として、「上場」のほかに「売却」もあるという土壌が醸成されてきたことがあると考えられます。

多くのシリアルアントレプレナーには、「事業を成長させ、永続させる」という視点ではなく、「事業として成り立たせて価値を持たせ、売却する」という視点で起業する姿勢がうかがえます。

国内外の有名なシリアルアントレプレナー

海外の有名なシリアルアントレプレナー

イーロン・マスク(Elon Musk)
南アフリカ共和国出身、アメリカ合衆国在住。1995年、ベンチャー企業「Zip2」社を設立し、1999年にコンパック社に売却。同年、オンライン決済サービスを提供する「X.com」社を共同で設立。コンフィニティ社との合併を経て「PayPal」社となる。2002年、「PayPal」社をイーベイに15億ドルで売却。同年、宇宙ロケットの開発を行う「スペースX」社を立ち上げ。2004年、電気自動車を開発する「Tesla」社に出資し、会長兼CEOに就任。2006年には、共同で太陽光発電会社の「ソーラーシティ」社を設立。分野を問わない連続的企業で成功を収めている。

ジャック・ドーシー(Jack Dorsey)
アメリカ合衆国セントルイス生まれ。2000年、24歳でウェブを使って宅配便やタクシー、緊急サービスを派遣するサービスの会社を設立。のちに立ち上げるTwitterの仕組みは、このときのアイデアをもとにしたものともいわれている。2006年に共同で現在の「Twitter」社となる「Obvious」社を設立。2009年、「Square」社を立ち上げ、独自のデバイスを用いてスマートフォンやタブレット端末などをクレジットカード決済の端末にするサービスを提供開始。TwitterとSquareという異分野のサービスをともに成功に導いている。

ショーン・パーカー(Sean Parker)
アメリカ合衆国バージニア州ハーンドン出身。1999年、19歳で音楽ファイルの共有サービス「ナップスター」を共同で創業。画期的なサービスとして普及したものの、著作権侵害にあたるとされ2001年に操業停止。2002年、ソーシャルネットワーキングサービスを行う「Plaxo」を立ち上げるも、株主とのトラブルにより脱退。2004年、学生同士のコミュニケーションツールであった「Facebook」をサポート。法人化の際、初代CEOに就任する。2005年に「Facebook」を去ったのち、2009年には音楽ストリーミングサービスの「Spotify」に出資。企業と投資を交えた活動でその名を馳せている。

日本の有名なシリアルアントレプレナー

家入 一真
2001年に合資会社マダメ企画を設立し、レンタルサーバービジネス「ロリポップ!レンタルサーバー」をスタート。2003年に有限会社paperboy&co.(現GMOペパボ)を設立し、2004年に株式会社化。2008年にはJASDAQに史上最年少で上場。以降、カフェなどを運営する「パーティカンパニー」、クラウドファンディングサイトを運営する「ハイパーインターネッツ」、インターネットサービス・アプリケーションを運営する「XIMERA」など、数々の企業を設立している。

木村 新司
2007年に無料の広告配信システムやアドネットワークを運営する「株式会社アトランティス」を設立し、2011年にグリー株式会社に売却。その売却益を元手に投資活動を始め、これまで約40社のスタートアップをサポート。2013年、共同で「Gunosy」を立ち上げ、東証マザーズに上場。2016年に割り勘アプリ「paymo」などを提供する「AnyPay株式会社」を設立。シリアルアントレプレナーとして得た利益を用いて積極的に投資活動を行う点に特色がある。

井口 尊仁
1999年に「株式会社デジタオ」を設立し、ブログによるパブリッシングの事業化に成功。2008年、現実空間のソーシャル化を目指した「頓智ドット株式会社」を立ち上げ、翌年にAR(拡張現実)スマーフォンアプリ「セカイカメラ」をローンチし、世界的に脚光を浴びる。2013年、ソーシャルコミュニケーションデバイス「Telepathy One」を開発し、Telepathy Inc.を創業。現在はアメリカのシリコンバレーを拠点として国際的に活動中。

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シリアルアントレプレナーになるには

シリアルアントレプレナーに求められるもの

シリアルアントレプレナーに求められるものとして、おもに以下のようなものが挙げられます。

・オリジナリティの高いアイデアが出せる発想力
連続的に事業を立ち上げるには、その分のビジネスアイデアが必要となります。世の中の需要を察知、分析し、柔軟な発想でこれまでにないサービスのアイデアを次々とアウトプットできる発想力は、シリアルアントレプレナーとして活躍するための要件だといえます。

・実行力
プランを描くだけでなく、実際に行動に移す能力も欠かせません。特にベンチャー企業の起業はタイミングが重要となってくるケースが多々あります。実直に計画を守るだけでなく、機敏に動けるフットワークの軽さと思い切りの良さも兼ね備えておきましょう。

・人脈と人望
短期間で事業を軌道に乗せるには、有能な協力者が多い方が成功する見込みは高くなります。進めようとしている事業にかかわる分野だけでなく、金融、法務、流通など、さまざまな分野に信頼できるスキルを備えた人脈を持ち、彼らを巻き込んでいけるような人望も持ち合わせておきたいものです。

・途切れないモチベーション
一つの事業を立ち上げる場合でさえ、成功させようとする強い思いがないと、どこかで息切れしてしまいかねません。連続的に事業を立ち上げる場合には、なおのことモチベーションを維持し続けなくてはならないでしょう。ビジネスが心底好きであるという気持ちや、簡単にあきらめることのない強い信念があるからこそ、連続的な起業が実現できるのだといえます。

失敗を糧にする姿勢も大切

実際問題、事業を立ち上げるたびにすべて成功させることは極めて困難であり、多くのシリアルアントレプレナーたちは失敗を経験しています。そのなかで成功するシリアルアントレプレナーに共通している点は、失敗の経験を次のチャレンジに生かしているという点です。同じ失敗を繰り返さないよう、事業がうまくいかなかった場合の損失をできる限り抑える工夫や、予定通り進まなかった場合に切り替える代替案を用意しておくなど、十分な対策を練り、次の成功を目指すようにしましょう。

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執筆は2020年3月24日時点の情報を参照しています。
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