クレジット取引などを対象に、事業者が守るべきルールを定めた法律として割賦販売法(かっぷはんばいほう)があります。その一部を改正した改正割賦販売法が2016年12月に公布され、2017年11月の閣議決定を経て2018年6月1日に施行されます。
改正割賦販売法の施行にあたって、日本におけるクレジットカードの現状や法改正の背景、クレジットカードを扱う事業者が知っておきたい改正項目について説明します。
クレジットカードの現状と法改正の背景
店舗での支払いからオンラインショッピングまで、さまざまなシーンでクレジットカードで支払う人が増えてきました。一般社団法人日本クレジット協会が行った調査によると、2017年3月末時点のクレジットカードの発行枚数は約2億7千万枚で、前年比2.3%増となりました。
参考:クレジットカード発行枚数調査結果(一般社団法人日本クレジット協会)
また、民間支出における利用額や決済方法に占める比率も年々増加し、政府も2020年までにクレジットカードを含むキャッシュレス決済のさらなる普及を目指しています。
クレジットカードの利用が増えるのと併せて、偽造カードやカード番号の盗用といったクレジットカードの不正使用被害も増加しています。一般社団法人日本クレジット協会が2018年3月に公表した調査結果「クレジットカード不正使用被害の発生状況 」によると、クレジットカードの不正使用による被害額は2016年の142億円から2017年には236億円にまで増加しました。
参考:クレジットカード不正使用被害の発生状況(一般社団法人日本クレジット協会)
このような状況で、改正割賦販売法が2016年12月に公布され、2018年6月1日から施行されます。経済産業省はこの改正法について閣議決定時のニュースリリースの中で概要を説明しています。
改正法において、安全・安心なクレジットカード利用環境を実現するため、クレジットカード加盟店にクレジットカード番号等の取扱いを認める契約を締結する事業者(加盟店契約会社)について登録制度を創設し、加盟店への調査を義務付けるとともに、加盟店などに対してもクレジットカード番号等の適切な管理や不正使用対策を義務付けました。
参考:「割賦販売法施行令の一部を改正する政令」及び「割賦販売法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」が閣議決定されました
(経済産業省)
続いて割賦販売法からの改正項目について詳しく見てみましょう。
改正割賦販売法の改正項目
クレジットカード決済を導入している事業者(加盟店)と関連のある以下4点の改正項目について説明します。
・加盟店におけるセキュリティ対策の義務化
・クレジットカード番号等取扱契約締結事業者の登録制および加盟店調査義務
・フィンテック企業の決済代行業への参入を見据えた環境整備
・特定商取引法の改正に対応した措置
加盟店におけるセキュリティ対策の義務化
クレジットカード決済を導入している、または導入予定の事業者にとって、改正割賦販売法施行にともない、どのようなセキュリティ対策をすればよいのか気になるところです。
セキュリティ対策のポイントは、「カード情報の漏えい対策」「偽造カードによる不正使⽤対策」「ネット取引における不正使⽤対策」の3点です。
カード情報の漏えい対策:加盟店側ではカード情報を保持しないようにします。カード情報を保持する加盟店はクレジットカード業界の国際的なセキリティ基準PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)に準拠することが求められます。「PCI DSSとは:事業者が知っておくべき安全なカード情報の取り扱いのはなし」の記事もぜひ参考にしてみてください。
偽造カードによる不正使⽤対策:対面取引では決済端末をICチップカードに対応したものにすることが求められます。SquareならICカードの国際標準規格であるEMVに準拠した専用のIC カードリーダー(Square Reader)を、7,980円(税込)でお求めいただけます。オンラインで申し込み後、審査に通過すれば、最短で即日から利用できるようになります。ぜひ導入を検討してみてください。
ネット取引における不正使⽤対策:ネット上の取引ではパスワードによる本人認証に加え、セキュリティコードを利用するといった多面的で重層的な不正使用対策が求められます。
クレジットカード番号等取扱契約締結事業者の登録制および加盟店調査義務
今回の法改正ではアクワイアラーと呼ばれる加盟店業務を行う会社が、クレジットカード番号等取扱契約締結事業者としての登録が必要になりました。アクワイアラーと同等の機能を有する加盟店管理や決済代行を行う業者についても、取り扱う業務によっては登録が必要です。
また、加盟店に対して、契約時の初期調査と契約締結後の定期調査、随時調査も義務化されます。
詳しい内容に関しては、経済産業省の情報をご確認ください。
クレジットカードでの決済を受けつける加盟店はこのような調査が入る可能性があることを知っておくとよいでしょう。
フィンテック企業の決済代行業への参入を見据えた環境整備
改正法では、フィンテックと呼ばれるITと金融を組み合わせたサービスの決済分野への参入も見据えて、アクワイアラーと同様にクレジットカード番号等取扱契約締結事業者として登録が可能になります。
また、これまで加盟店はお客様がクレジットカードを利用した際に書面を交付する義務がありましたが、改正法では電子メールなどでの情報提供が可能となりました。ただし、お客様から書面を求められた場合は応じなければならないので注意が必要です。
特定商取引法の改正に対応した措置
2017年12月に施行された改正特定商取引法では、訪問販売に加えて、電話による過量販売(通常必要とする以上の量の商品やサービスの販売)に対しても購入契約を取り消すことができるようになりました。
これに対応する形で改正割賦販売法では購入契約とともに結ばれた個別クレジット契約(購入のたびに結ぶクレジット契約)についても同様にクーリング・オフできるようになります。
法律の文面は用語が独特なこともあり、どのような法改正なのか、改正にともないどのような対策が必要か把握するのは容易でないかもしれません。本記事を参考にクレジットカード決済のセキュリティが万全かチェックするところからはじめてみてはいかがでしょうか。
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執筆は2018年5月29日時点の情報を参照しています。2019年3月27日に記事の一部情報を更新しました。
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