調達プロセスを競争優位性として活用するには

「調達」と聞いておそらく最初にイメージするのは、商品の購買でしょうか。購買は事業の中心的な役割を担っていますが、調達もまた、サプライヤーを管理し、信頼関係を確保することで、コストの削減や製品の品質を高めることができる重要な役割を果たしています。

調達を競争優位性として活用することで、時間、費用、リソースを節約できます。昨今の事業者は、サプライヤーからより大きな価値を引き出し、急速に変化する市場を先取りして、これまで以上に戦略的でなければいけません。テクノロジーとリアルタイムのデータは、事業者が業界の変化に迅速に適応するうえで鍵となります。

調達プロセスとは

調達プロセスとは、事業に必要な物品を仕入れる一連のプロセス全般のことです。具体的には、事業にどのような物品や材料が必要なのかを把握し、サプライヤーの選定と評価をし、契約通りに物品や材料が納品されているかどうかを管理するといった業務が含まれます。調達するのは物品に限らず、サービスや人材も含まれます。

調達プロセスの重要性

製造小売業を例に考えてみましょう。商品の製造には原材料や製造機器、生産管理ソフトなどが必要です。商品をお客さまに販売する過程では、商品を届けるための車両や人材、販売数量や顧客情報を管理するソフトウェアなどが必要になるでしょう。

「原材料はあるのに、製造機器がない」「商品はできているのに、届ける方法がない」といった事態に陥らないために、事業活動に必要なモノやサービスを適切な価格で仕入れ、適切なタイミングで現場に届けるのが、調達の役割です。調達は事業に欠かせないプロセスであり、ビジネスの利益をも左右する存在です。

調達プロセスの5ステップ

調達のライフサイクルの主なステップと、テクノロジーの活用方法を見てみましょう。ステップは大きく5段階に分類されます。各ステップは、利益率とお客さま満足度を高める役割を果たします。

1.事業のニーズを具体的に把握

調達の管理は、事業の成功に不可欠です。効果的な営業活動を行い、販売需要を満たす必要な商品を確保することができます。このプロセスに苦労している事業は、遅延、在庫不足、売り上げの低下に陥りがちです。まず、調達する物品のニーズをできるだけ具体的に確立します。ソーシング段階においては、ついつい物品の供給元に関心が向かいがちですが、まずは物品自体に焦点を当ててください。そのためには、サプライヤーに依頼する原材料やサービスの詳細な説明を作成します。また、サプライヤーから必要なものを正確に入手できるように、期待値を記載します。

原材料の仕様には、寸法や色などの正確な指示を記載しましょう。また、納期や倫理基準などの標準的な要件についても説明します。仕様はできる限り詳細に記載し、間違いがないようにしてください。

どの物品を調達するかは、さまざまな要因に基づいて決定されます。なかでも現在の在庫数と予測される消費者需要は、特に重要な要因です。履歴データを使用した需要計画は、どの商品を補充し、どこに新しい商品を投入するかを予測するために重要な鍵となります。

自動化は特に調達部門で役立ちます。過去および現在の売上データ、市場動向、休日や天候などの外部要因を把握して、より正確な需要予測を作成できます。

自動化はまた、注文書の処理など、日常的で手作業が多いプロセスの合理化にも役立ちます。Square リテールPOSレジでは、一連の高度で自動化された在庫管理ツールを利用できます。事業者は在庫管理、サプライヤー管理、在庫の追跡を一つの場所で行うことができます。

2.業者に入札を依頼する

仕様を確定したら、入札プロセスを開始する準備は完了です。入札とは、物品を納入する業者が価格を指定して提案を行うプロセスです。このプロセスは、特に業者の選択肢が限られている事業や、新しいサプライヤーを探している事業に役立ちます。また、どのような業者から何が調達できるか、調達するにどれくらい費用がかかるかを把握できます。

公正な入札を確実に行うには、事前の計画が必要です。サプライヤーを選ぶ際は、技術力、過去の実績、サステナビリティへの取り組みなどを考慮します。留意すべき点をいくつか紹介します。

  • 必要な数量の物品を確保できるか、品質を満たせるか
  • 予算と納期を厳守してきた実績はあるか
  • 事業がサステナビリティを重視する場合、製造または配送に伴う炭素排出量

3.評価とサプライヤーの選定

お客さまが望む商品を適切なタイミングで提供できれば、ブランドの評判アップやリピーターの確保につながります。その出発点となるのが、サプライヤーの選定です。

調達プロセスの重要な部分であるソーシングでは、予算と品質基準を満たす業者を評価し、サプライヤーに選びます。

調達プロセスにおいてサプライヤーを吟味し、関係を構築することで、購買がスムーズに進みます。慎重にソーシングを行うことで、効率的なサプライチェーンの構築や管理が可能になり、手頃な価格で高品質な商品を安定的に供給できます。

調達チームは、最適なサプライヤーを見極めるためにソーシングを行う一方で、既存の取引先も評価し続けなければなりません。継続的なモニタリングにより社内外のリスクを管理しながら、事業に必要なものを確実に得られるようにします。

消費者はこれまで以上にサプライチェーンに対する透明性を求めています。メーカーから購入する商品が、倫理的で持続可能な方法で調達されているという確証を得たいと考えているためです。コストを低く抑えることは調達部門の主要な検討事項です。ただし、非倫理的なサプライチェーンの業務慣行がもたらすリスクの管理についても、真剣に取り組むべきです。

サプライヤーの候補を絞り込んだら、次は情報提供依頼書や提案依頼書を送ります。より良い決定を下すために、複数の見積もりを収集します。他の選択肢も用意し、交渉で取引が成立しなかった場合の代替案にしましょう。

4.契約と納品管理

サプライヤーとの契約交渉は、効果的な調達の管理において重要な役割を果たします。交渉プロセスでは、価格設定、支払い、納期など、すべての契約条件を定めます。サプライヤーに求める要件をすべて伝え、関係構築を成功させるために期待値を設定します。交渉が完了したら、正式に契約書を交わします。契約書には、両者が合意したすべての条件の概要を記載し、両者が自信を持って協力できるようにします。

契約が確定したら、注文する準備は完了です。調達プロセスのこの部分は従来、手作業で時間がかかるものでした。テクノロジーの進歩で、注文書や請求書の作成、記録の管理、検査の管理、取引先との関係維持を自動的に行うソフトウェアや組み込み機能が登場し、プロセスが合理化されています。

5.調達プロセスの改善

調達管理の目標は、コスト削減だけではありません。品質、企業の社会的責任(CSR)、業務効率は調達部門における特に重要な目標です。現在、これらの事業目標の達成は、主にデータと主要業績評価指標(KPI)によって大きく裏付けられ、評価されています。

KPIは、事業の調達プロセスの成功を測定するために使用されます。また、事業の目標をモニタリングし、支出を最適化できます。サプライチェーンのKPIを定義して追跡することは、既存の手順を効果的なものにするために不可欠です。KPIにより、取引先や事業関係者が共通認識を持ち、改善すべき点を明らかにし、競合他社との比較を確認できます。

サプライチェーンのKPIは、個々の事業目標に基づいて選択します。ただし、調達に関して、すべての事業者が考慮すべき一般的なKPIがいくつかあります。

  • 不良率
  • 原価低減率
  • 納期遵守率
  • リードタイムの短縮率
  • 価格競争力
  • 注文書と請求書の正確性
  • サプライヤーの対応能力

テクノロジーの活用

調達は複雑で、時間がかかり、かつてはヒューマンエラーが起きやすい業務でした。しかし、サプライチェーンの中でも最も変化が見込める領域でもあります。テクノロジーの助けを借りて調達管理のアプローチを再考することで、業界のリーダーとして、また、消費者に信頼されるブランドとして、地位を確立しましょう。

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執筆は2024年2月13日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash