※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
薬局を開業するためには、調剤薬局の役割、資格や許可申請などについて正しい基礎知識が必要です。開業までのフロー、必要資金とその内訳、そして収益モデルや薬剤師の年収の目安も併せて理解しておきましょう。さらに、薬局の収益アップに貢献する業務効率化のポイントと便利なツールも紹介します。
【この記事のポイント】
-薬局のビジネスモデルは調剤報酬を中心に、在宅医療やOTC販売で収益を多角化できる
-初期投資は大きいが、安定需要と地域密着で長期的な収益が見込める
-保険制度の改定や競合の増加がリスクであり、継続的な経営判断が求められる
-地域のニーズに合わせたサービス展開とマーケティングが差別化のカギ
-SquareのようなITツール導入でコスト削減と業務改善が図れる
目次
- 薬局開業を目指す人が知っておきたい基礎知識
・調剤薬局・ドラッグストアの違い
・薬局開業のメリットとリスク - 調剤薬局の開業に必要な資格・許可・申請
・必須資格:薬剤師免許
・許可と申請 - 調剤薬局の開業手続きと流れ
・開業スケジュールの一例 - 調剤薬局の開業資金と費用内訳
・主な費用項目
・資金調達方法 - 開業後の収益モデルと年収の目安
・調剤報酬
・OTC医薬品・健康食品・日用品の販売
・在宅医療・訪問サービス - Squareで薬局経営を効率的に始めよう
・薬局でも導入できるキャッシュレスソリューション
・在庫・売上の「見える化」で無駄を削減
・スモールスタートにも最適な料金体系 - まとめ
薬局開業を目指す人が知っておきたい基礎知識
薬局の開業を検討する前にまず正しく把握しておきたいのが、調剤薬局とドラッグストアの違いです。加えて、薬局開業に伴うメリットやリスクについても考えてみましょう。
調剤薬局・ドラッグストアの違い
調剤薬局は病院でもらった処方せんに基づいて薬を提供してくれる場所というイメージがある一方、ドラッグストアは薬も売っている日用品店といった印象が一般的です。より具体的には、次のような違いがあります。
調剤薬局 | ドラッグストア | |
主な役割 | 薬剤師が調剤を行い、販売・授与する1 | 市販薬の他、健康・美容関連商品などを販売する |
特徴 | ・薬剤師が必ず常駐し、調剤の他、市販薬も扱える ・薬剤師に健康相談、薬の飲み方の相談などができる ・医療関連の商品や医薬部外品も販売できる |
・薬剤師が常駐していないと、第一類医薬品の販売は不可 ・調剤薬局を併設したドラッグストアも多い |
医薬品医療機器等法の区分 | 薬局(薬局開設者) | 医薬品販売業(店舗販売業)2 |
店名に「薬局」と付けて良いのは調剤薬局だけと法律で定められているため、「薬局」といえばイコール「調剤薬局」と考えて差し支えありません。
調剤・市販薬を問わず、薬を扱うためには薬剤師の常駐が必須です。ただし調剤薬局でもドラッグストアでも、第一類医薬品を除く市販薬(第二類医薬品と第三類医薬品)については、有資格の登録販売者も販売することができます3。
薬局開業のメリットとリスク
景気に左右されにくいといわれる調剤薬局は、いつの時代も安定したニーズのある仕事です。薬局を独立開業するメリットの代表的なものとしては、次の四つが挙げられます。
①地域のかかりつけ薬局として安定した需要がある
②経営次第で高収益も期待できる
③独立して自分の裁量で運営できる
④地域社会や人びとの健康に貢献するやりがいが得られる
複数の医療機関からの処方せんを受け付け、患者の服薬状況を総合的に把握して対応できる「かかりつけ薬局」としてリピーターを増やすなどして、収益を着実に高めていくこともできます。デジタルツールの導入やマーケティング施策など、独立開業ならではの自由度の高い経営も収益アップの一助となるでしょう。そして、メリットと同時に考えておきたいのが、薬局開業のリスクの側面です。次の三つは特に熟考すべき点といえます。
①初期投資が大きい
②法制度・報酬改定による収益変動リスクがある
③他薬局・ドラッグストアとの競合
薬局を開業するには、定められた調剤室の広さや設備、衛生環境などのためにまとまった初期投資が必要です。開業する立地・規模にもよりますが、最低1,500万円ほどは必要だといわれています。
また、薬局の開業・経営には医薬品医療機器等法(薬機法)などさまざまなルールが影響します。法改正や薬価の改定など、世の中の動き次第で収益に影響が出ることを常に意識しておく必要があります。
加えて、他の調剤薬局との差別化も開業前から気を使いたいポイントです。2024年時点で日本全国に6万軒4を超える数の調剤薬局が存在し、これはコンビニエンスストアを上回る軒数です。
競合の多さは薬剤師の採用難にも影響するため、薬剤師の雇用を考える場合は開業する地域と併せて周辺の競合環境もしっかり検討する必要があります。なお、薬局の数には地域差もあり、人口10万人対比で薬局が多い上位の都道府県は佐賀県、高知県、山形県、少ないのは沖縄県、千葉県、埼玉県となっています。
調剤薬局の開業に必要な資格・許可・申請
薬局を開業するためには資金の準備だけでなく、資格や許可申請も必要です。要件などを前もってチェックしておきましょう。
必須資格:薬剤師免許
調剤薬局には薬剤師の常駐が必須ですが、そのうちの1人は「管理薬剤師」でなくてはなりません5。管理薬剤師とは、通常の薬剤師が行う調剤業務や服薬指導などに加え、薬局の従業員の指導・監督、設備や医薬品の管理の責任者となる人です。薬剤師の資格を持ち、基本的に5年以上の実務経験がある人が対象です。
薬局を開業する経営者が必ずしも薬剤師である必要はありませんが、管理薬剤師は副業・兼業などができないといったルールもあるため、雇用する場合はしっかり確認しましょう。
また、保険調剤業務を行うためには薬剤師が「保険薬剤師」として地方厚生局に登録申請をする必要もあります。
許可と申請
保険調剤業務を行う薬局として開業するには、「薬局開設許可申請」と「保険薬局指定申請」という2点の行政手続きが求められます。
薬局開設許可申請 | 保険薬局指定申請 | |
申請先 | 管轄の保健所 | 厚生局(管轄の保健局) |
目的 | 薬局を開業する許可を取得する | 公的医療保険適用の調剤業務を行う薬局としての指定を受ける |
申請時期 | 開業の約2カ月前まで ※都道府県により異なる |
営業開始月の前月上旬まで ※都道府県により異なる |
提出物 | 薬局開設許可申請書、平面図、業務体制の概要、登記事項証明書、資格証明書など | 保険薬局指定申請書など |
手数料 | 東京都:34,100円(2025年時点)6 ※都道府県により異なる |
なし |
いずれも、調剤薬局開業のための必須の手続きです。これらの許可申請では、適切な設備や資格、人員体制が備わった薬局であるかといった観点から審査が行われます。
調剤薬局の開業手続きと流れ
薬局を開業するまでに、まず何から始めるべきか、どんなステップがあるのか、事前にイメージをつかんでおきましょう。
開業スケジュールの一例
あくまで一例ですが、調剤薬局を開業する場合は次のようなスケジュールが考えられます。
- 開業する場所(物件)探し・契約
- 事業計画書の作成
- 内装・外装工事、ウェブサイト作成
- 薬局開設許可申請
- 保健所の検査
- 広告・マーケティングの準備
- 保険指定申請
- 地方社会保険医療協議会への諮問を経ての指定
- 開業
このステップ以外に、開業資金として融資や補助金などを利用する場合は、事業計画書の作成後に手続きをすることになります。そのため、物件探しと並行して2番目の事業計画書を作成し始めておくと、資金調達のプロセスがスムーズです。
保険指定申請後に行われる地方社会保険医療協議会への諮問は、申請月の下旬に実施され、実際の保険指定は翌月1日に受けられることがほとんどだといわれています。そのため、保険指定のタイミングを考慮した上で開業日を設定するのがおすすめです。
調剤薬局の開業資金と費用内訳
調剤薬局の開業のためには、どんな費用がいくらほどかかるのでしょうか。そのために必要な資金調達の方法も考えてみましょう。
主な費用項目
開業にかかるコストは持ち物件か賃貸物件かによっても異なりますが、今回は賃貸物件を想定し、開業資金の内訳の例を挙げてみます。
項目 | 内容 | 金額(目安) |
物件取得 | 敷金・礼金など | 150万〜250万円 |
内装・設備 | 工事、什器、保冷庫など | 500万〜700万円 |
広告・宣伝 | ウェブサイト、チラシなど | 10万〜30万円 |
調剤機器類 | 分包機、レセプトシステムなど | 400万〜600万円 |
備品 | パソコン、POSレジ、コピー機など | 30万〜200万円 |
初期仕入れ | 調剤用資材、医薬品 | 300万円 |
人件費・運転資金 | 開業前後にかかる人件費、事業が軌道に乗るまでの3〜6カ月の賃料など | 300〜700万円 |
開業の初期費用を低く抑えるためには、什器や保冷庫、複合コピー機などの設備は中古やリースを利用するという方法もあります。開業する立地や薬局の規模によって物件取得費用や人件費も変動するため一概にはいえませんが、合計して1,500万〜3,000万円ほどの開業資金が必要と考えておくと良いでしょう。
資金調達方法
薬局の開業資金の調達方法として、預貯金などの自己資金だけでまかないきれない場合は、融資や補助金・助成金という選択肢もあります。以下は、薬局の開業・経営持続に活用できる融資と補助金・助成金の一例です。
公的融資:
- 日本政策金融公庫による「新規開業・スタートアップ支援資金」
- 各都道府県による創業融資
- 各市区町村による創業融資
民間融資:
- 銀行・信用金庫などの融資
補助金・助成金:
- 小規模事業者持続化補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)
- サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金(通称:IT導入補助金)
返済が必要な貸付である融資も、返済不要の補助金・助成金も、申請したら必ず審査に通るとは限りません。審査に時間がかかることも想定し、申請資格などをしっかり確かめたうえで早めに手続きを始めましょう。
開業後の収益モデルと年収の目安
厚生労働省の調査7によると、2022年度の個人経営の薬局の利益(税引前)は平均「約792.3万円」で、収益の94%を保険調剤報酬が占めていました。開業薬剤師の年収は運営店舗数によっても異なり、1店舗を開業している管理薬剤師の平均年収は約933万円となっています。
薬局の収益源は調剤報酬の他にも、一般用医薬品の販売や、在宅医療向けの訪問サービスなどもあります。調剤薬局の収益モデルの可能性について考えてみましょう。
調剤報酬
処方薬は主に公的医療保険でカバーされているため、調剤報酬は薬局にとって安定した収入源です。
調剤報酬の売り上げは「処方せんの枚数 ✕ 処方せんの単価」で決まります。つまり、多くの処方せんを受け付ける薬局は高収益の可能性が高くなるということです。処方せんの受け付け枚数は、病院など医療機関の近くにある薬局や、医療を利用する高齢者が来局しやすい薬局など、開業の立地に影響されるところも多分にあります。
ただし、薬剤師1人が1日に処理できる処方せんは最大40枚までと定められていることから、処方せん1枚あたりの単価や業務効率も重要です。調剤技術料のうち未加算の項目がないかを見直す、新規患者の処方せんより手間が少ない既存患者の再来局を促進するといった努力も欠かせません。
なお、2020年時点で、薬局1店舗あたりで1日に勤務する薬剤師の人数は「1.1~2人」の薬局の割合が最も多く、1カ月あたりの処方せん受け付け数は「501~1000回」の割合が最も多いことがわかっています8。
OTC医薬品・健康食品・日用品の販売
薬局では保険調剤以外に次のようなものを販売し、収益を得ることができます。
- 一般用医薬品(OTC薬)
- サプリメント・健康食品
- 衛生用品(マスク・消毒液など)
- スキンケア用品
訪れる患者の層やニーズに合わせて販売ラインアップをそろえることで、患者により幅広いソリューションや快適さを提供できることがメリットです。たとえば、小児患者が多いエリアなら子ども向けのビタミン剤や保湿剤、季節に応じて花粉症対策のアイテムを扱うといった工夫が考えられます。
在宅医療・訪問サービス
患者が持ち込む外来の処方せんだけでなく、在宅医療や介護施設などでも調剤のニーズがあります。調剤報酬が高い訪問薬剤管理指導などのサービスを上手に取り入れながら開業することで、薬局の収益源を増やすことが可能です。
個人在宅医療向けサービスの例:
- 医療的ケア児の自宅への薬剤の配達、副作用の確認など
- 在宅療養患者への服薬管理など
施設向けサービスの例:
- 有料老人ホームで担当医の訪問診療への同行など
- グループホームでの服薬指導、残薬管理など
通院が難しい患者やその家族をサポートする地域包括ケアシステムの一環として、在宅医療向けの薬局のサービスは今後も需要があると考えられます。在宅医療向けのサービスには薬局の時間・人員の課題があることも事実なので、効率的な業務の進め方と併せて開業前に検討すると良いでしょう。
Squareで薬局経営を効率的に始めよう
処理する処方せんの数と薬剤師の人数のバランス、かかりつけ薬局としての地域社会への認知度向上施策、在宅医療向けサービスの充実など、薬局の開業に伴って取り組むべきテーマは少なくありません。そのため開業時点から、業務のデジタル化などによって人の手を省ける部分は省く、という体制を作っておくこととが効率的な収益アップには不可欠です。
そこで、クリニックなどでも導入されている決済サービスSquareを活用することで、会計や在庫管理といった業務の効率化を図ってみましょう。
薬局でも導入できるキャッシュレスソリューション
最近はクレジットカードをはじめ、QRコード決済、交通系ICカード決済などのキャッシュレス決済の利用率の高まりから、薬局などの医療関連施設でも対応が求められています。
Squareは、決済端末と無料アカウントを用意するだけで導入できるキャッシュレスソリューションです。Squareを利用することで会計にかかる時間が短縮されるだけでなく、現金の数え間違いによる損失の可能性も低くなります。従業員が現金に直接触れる機会が減るため衛生面のメリットもあり、薬局における感染症の拡大などを防ぐ効果も期待できます。
在庫・売上の「見える化」で無駄を削減
Squareを通して受け付けた決済情報はリアルタイムで蓄積され、常時、確認できます。
曜日別・時間帯別の売上レポートも自動で生成されるため、混み合う曜日や時間帯が見える化され、人員配置や業務負荷の改善に役立ちます。決済情報を商品在庫のデータと連動させておくことで、売れた数量から在庫数が自動でアップデートされ、在庫管理や商品発注も効率化が可能です。こうしたデータはパソコン、タブレット、スマートフォンなどからチェックでき、薬局内だけでなく在宅医療向けサービスなどの出先でも手軽に扱えます。
Squareのアカウントを一つ作成するだけで、決済の周辺機能を無料で利用でき、薬局業務の時間・コストの無駄を削減する役割を担ってくれます。
スモールスタートにも最適な料金体系
Squareの対面決済サービスは、端末代と決済ごとの2.5〜3.25%の手数料で利用できる明快な料金体系が魅力です。初期費用や月額利用料がかからないため、個人で開業する薬局のスモールスタートにも適したシステムといえます。
さらに、売上金をSquareから口座に入金する際の手数料もゼロ円です。サービスの中途解約にかかる手数料もなく、初めて使うキャッシュレス決済サービスにも適しています。
まとめ
薬局の開業のためには、資格や許可、資金繰り、収益モデルといった、事前に検討しておくべきポイントがあります。他の個人薬局や大手チェーンとの差別化を図り、業務の無駄を省いて着実に収益を上げる開業計画を立てれば、薬局としての成功に一歩ずつ近づくことができそうです。Squareなどの業務効率化ツールを上手に取り入れて開業し、地域社会に持続的に貢献する薬局を目指してみてはいかがでしょうか。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2025年7月2日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash