2020年を境に教育システムが大きく変わり、「2020年教育改革」と呼ばれています。今回は、今までの教育システムからどのような点が変わるのか、2020年の教育改革に備えて教育に関連する事業を行う経営者はどのような対策をできるのか説明します。
2020年の教育改革で変わること
「2020年教育改革」と呼ばれる教育システムの変更には、押さえておきたい大きな二つのポイントがあります。一つ目は新しい学習指導要領が導入されること、二つ目は大学入試が変わることです。それぞれについて詳しく見てみましょう。
新しい学習指導要領の導入
学習指導要領は全国で一定の教育水準を保つための基準で、文部科学省が約10年に一度改訂を行なっています。改訂にともない教科や教科書の内容が変更されます。小学校では2019年は移行期間とされていて、全面実施は2020年4月からです。小学校に続いて中学校では2021年4月から、高校では2022年4月からの全面実施となります。幼稚園ではすでに2019年から全面実施されています。
参考:2020年度、子供の学びが進化します!新しい学習指導要領、スタート!(政府広報オンライン)
文部科学省は新しい学習指導要領のキャッチフレーズを「生きる力 学びの、その先へ」とし、「社会に開かれた教育課程」の実現を目指しています。これまでの試験に強い教育とは一線を画し、グローバル化に加えてIT化も進む世界で子どもたちが生きていく術を身につけられるような教育の方向性がうかがえます。新学習要領の概要は保護者向けのリーフレットにわかりやすく説明されています。
また、文部省ウェブサイトには、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校ごとの学習指導要領全文および解説も掲載されています。
参考:平成29・30年改訂 学習指導要領、解説等(文部科学省)
学習指導要領にともなう教科の変更として注目されているのが、小学校中学年(3年生と4年生)で外国語活動が導入され、小学校高学年(5年生と6年生)で外国語が教科となることです。学習指導要領では「外国語」とされていますが、多くの学校で英語が教えられることが考えられます。詳しくは文部省が公開しているガイドブックが参考になります。
参考:小学校外国語活動・外国語研修ガイドブック(文部科学省)
ほかにも小学校では2020年からプログラミング教育が全面実施されます。全面実施に先駆けてプログラミング教育を開始している学校もあります。プログラミングは多くの先生にとって新しい分野であることからも、文部科学省では手引きを公開しています。
小学校ほどすぐに学習指導要領が実施されるものではありませんが、高校生の教育に関連する事業を営む経営者は「歴史総合」「地理総合」「公共」「理数」といった科目が新設されることも覚えておきましょう。
大学入試が変わる
現在、毎年1月に大学入試の前に実施されているセンター試験が2020年に廃止され、2021年(2020年度)から新たに大学入学共通テストが始まります。センター試験ではマークシート式だったところを、大学入学共通テストでは記述式問題も導入され、暗記した知識に加えて思考力や表現力が問われるようになるといわれています。
また、英語については、大学入試センターによる試験と合わせて民間の資格・検定試験も併用されるようになります。2021年1月の大学入学共通テストで利用されるのは実用英語技能検定(英検)やTOEFL、TOEICなどの結果が利用されます。新しい制度で議論や検討が進んでいる最中でもあります。大学入試センターや文部科学省のページで最新情報をチェックするようにしましょう。
参考:
大学入学共通テスト(大学入試センター)
「大学入学共通テスト実施方針(追加分)ガイドライン」の策定について(文部科学省)
2020年の教育改革に備えて事業者ができること
前述のように、すでに新しい学習指導要領が全面実施となっている幼稚園を除くと、まず最初に教育改革が始まるのが小学校で、2020年4月から新しい学習指導要領が全面実施となります。小学生や小学校入学前の子ども、その保護者を対象とした事業を営んでいる経営者は対策を急ぐ必要があります。
どのような方向性で2020年の教育改革に備えたらよいか、新しい学習指導要領の3本の柱から見えてきます。
・学んだことを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性など」
・実際の社会や生活で生きて働く「知識及び技能」
・未知の状況にも対応できる「思考力、判断力、表現力など」
新しい学習指導要領のもとでは、子どもたちは知識を学びつつ、さらにそれを社会の中、未知の状況で生かす力を身につけることが求められます。教育関連の事業者は、グループワークやディスカッションの機会を提供する、学んだ知識から独自の解決策を考えることを促す教材を提供するなど、新しい学習指導要領の方針に沿った形で子どもたちの学びを助ける商品やサービスを提供したいところです。
学習塾の経営者は、新しい学習指導要領に合わせて、英語教育やプログラミング教育に対応した授業を提供していくことを検討しなければなりません。グローバル化が進んで久しいとはいえ大人でも英語が苦手という人は多く、学習塾の経営者や教師の中にも英語に抵抗がある人は少なくないでしょう。ましてやプログラミングは多くの人にとって未知の分野です。これらの科目に対応した授業を提供する場合、既存の人員で対処することにこだわらず、英語については英語のネイティブを新しく雇い入れたり、プログラミング教育に関しては地域のIT企業に助けを求めたりしてもよいかもしれません。2020年4月まで1年もなく、柔軟に対処する必要があります。
また、これまで子どもの教育とは無関係だったという事業者にとっては、2020年の教育改革は新たなビジネスチャンスになる可能性があります。外国語教育がより低学年で始まることから、特に英語を学習するためのサービスの需要が高まることが予想されます。人材派遣業では外国語教師の需要を満たすチャンスになるかもしれません。プログラミング教育の全面実施を前に、IT業界から子どもの教育に事業の幅を広げる動きはすでに始まっています。
中学生や高校生については、2020年に入ってすぐに日々の学習が大きくかわるわけではありませんが、中学生や高校生、その保護者を対象に商品やサービスを提供する事業者も最新情報をチェックして今から準備を進めておくにこしたことはありません。特に2021年1月からセンター試験に変わって始まる大学入学共通テストについては今から対策を始めても早すぎることはないでしょう。
2020年というとまだ先のことのようにも聞こえますが、新しい学習要領が小学校で全面実施となる2020年4月まで1年もありません。本記事では2020年の教育改革の全容とあわせて事業者としてとれる対策をお伝えしました。時間的な制約や、外国語やプログラミングといった教科は専門性が求められることからも外部人材の活用も含めた柔軟な対策が鍵となります。本記事をきっかけに2020年の教育改革に備えて万全の対策をとってください。
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執筆は2019年4月11日時点の情報を参照しています。
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