職場のメンタルヘルスを強化するには?課題点と対策法

人手不足が叫ばれるなか、メンタルヘルス不調で休職する従業員などを少なくするために、職場でのメンタルヘルス対策を検討している経営者もいるでしょう。

今回は、メンタルヘルス不調が起きる原因、職場でメンタルヘルスケアに取り組む理由、ストレスフリーな職場をつくるうえでの課題点と対策法などについて解説します。

メンタルヘルスとは

メンタルヘルス(Mental health)とは、直訳すると「心の健康」となります。世界保健機関では、メンタルヘルスを「自らの能力を認識し、日常生活で生じるストレスに対処でき、効率的に、実り多い仕事ができ、コミュニティへの貢献を可能とする健康状態」と定義しています。

参考:Promoting Mental Health (World Health Organization)

また、厚生労働省ではメンタルヘルス不調を「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの」と幅広く定義しています。

参考:専門家向けお役立ちトピックス~メンタルヘルス不調関連~(厚生労働省)

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メンタルヘルス不調が起きる理由とは

メンタルヘルス不調を引き起こす原因はさまざまです。たとえば、ハラスメントなど職場の人間関係や、仕事に質や量が求められるなどキャパシティを超えた業務負荷、異動などに伴う環境の変化などが挙げられます。仕事に関わる「職場要因」だけでなく、家庭の問題などの「私的要因」が不調を引き起こすことや、複数の出来事が重なって不調につながることもあります。

労働者の2人に1人が仕事に強いストレスを感じている
厚生労働省の調査によると、仕事で強いストレスを引き起こす事柄がある、と回答した労働者は58.0%と、2人に1人が仕事関連で強いストレスを感じている、という結果が出ています。ストレスを引き起こす事柄は次の通りです。

仕事の質・量:59.4%
仕事の失敗・責任の発生など:34.0%
対人関係(ハラスメントを含む):31.3%
役割・地位の変化など:22.9%
会社の将来性:22.2%
など

引用:平成30年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況(厚生労働省)

この調査からは、仕事に質や量を求められたり、失敗や責任などのプレッシャーがかかったりすることにストレスを感じる人が多いことが判明しています。

メンタルヘルスケアに取り組むメリット

後述しますが、現時点で従業員が50名未満の事業所においては、従業員のメンタルヘルス対策である「ストレスチェック」は義務化されていません。しかし、小規模のビジネスにおいても、メンタルヘルスケアへの取り組みには大きなメリットがあります。

従業員の健康を保つことで生産性向上などを目指し、企業が率先して従業員の健康管理に取り組む考え方を「健康経営」と呼びます。

人手不足が課題に挙げられることも多いスモールビジネスでは、従業員の不調の原因が職場にあるにも関わらず放置した場合、生産性が落ちるというデメリットを招いてしまうかもしれません。

経済産業省が2017年に発表した資料によれば、実際にメンタルヘルス不調による休職者の比率が上がった企業は、そうでない企業と比べて、売上高利益率における下落が大きいという調査データも出ています。

参考:「健康経営銘柄2018」及び 「健康経営優良法人(大規模法人)2018」 に向けて(経済産業省ヘルスケア産業課)

一方で同資料によると、健康経営に取り組めば、従業員の生産性向上、医療コストの削減、企業のイメージアップなどのメリットにつながるとされています。企業に対して好印象を抱いてもらえれば、人材の確保や人材の定着においてもプラスな効果が期待できるかもしれません。

ストレスフリーな職場をつくるには?課題点と対策法

実際にストレスフリーな職場をつくるには、何から始めればよいのでしょうか。

4種類のメンタルヘルスケアを導入・推進
厚生労働省の指針では、職場のメンタルヘルスケアを強化するには、次の4種類のケアを継続して実施することが大切とされています。

(1)従業員本人によるセルフケア
(2)管理監督者が率いるラインによるケア
(3)企業内の産業保健スタッフなどによるケア
(4)企業外の専門家や機関などによるケア

これら4種類のケアが適切に実施されるよう、各担当者が連携をとりながら次の取り組みを推進することが大切です。

・メンタルヘルスケアに関する研修の実施・情報の提供
・職場環境についての把握・改善
・メンタルヘルス不調者の早期発見・対処
・メンタルヘルス不調者の職場復帰を支援

参考:職場における心の健康づくり(厚生労働省、独立行政法人労働者健康安全機構)

現状把握が困難という課題にはストレスチェックが有効

4種類のケアを実施するうえで、企業によっては職場環境についての把握・改善が困難という課題が上がるかもしれません。そこで役立つのが「ストレスチェック」です。

労働安全衛生法の改正により、50名以上の従業員(派遣労働者含む)を抱える事業所は、2015年12月より全従業員に対して年1度のストレスチェック実施が義務化されています。

実施は面倒のようにも思えますが、ストレスチェックで入手できる集団分析データは、職場全体におけるメンタルヘルス不調者の状況把握に役立ちます。データを分析し、4種類のケアにおいて足りない点は優先順位をつけて補強できるよう、セルフケアやラインケアについての研修を行うなどの対策をしましょう。

ストレスチェック実施促進のための助成金について

現時点では、労働者が50人未満の事業所ではストレスチェックの実施は努力義務となっていますが、小規模の事業所でも実施しやすいように助成金制度が設けられています。

助成金をもらうためには、次の条件を全部満たす必要があります。

・労働保険が適用されている
・従業員が50名未満である(派遣労働者を含む)
・ストレスチェックを行う実施者が決定されている
・ストレスチェックに関する医師の活動の全てまたは一部を実施させると、事業者が医師と契約している
・ストレスチェックの実施者ならびに面接などの指導者は、自社の従業員ではない

条件を満たせば、次にかかる費用の助成が受けられます。

・ストレスチェック:従業員1人あたり500円×人数分
・ストレスチェックに関する医師の活動費用:事業所1社において活動1回あたり21,500円(3回が上限)

労働者の2人に1人が、仕事に対して強いストレスを感じているという調査データもあることから、企業全体のパフォーマンスを上げ、長く働ける職場であるためには、企業の規模に関係なく、従業員のメンタルヘルスケアへの取り組みは欠かせないといえるでしょう。ストレスチェックや助成金などを上手に活用して、健康経営に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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執筆は2019年12月3日時点の情報を参照しています。
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