従業員が、健康に、安心して、会社への愛着と仕事への意欲を保ちながら長く働けるように、本人やその家族向けに福利厚生制度を取り入れている企業(事業主)は多くあります。
福利厚生とは、企業が労働力の確保・定着、そして従業員の勤労意欲を向上させるために提供する賃金支給以外の諸施策です。企業によって内容が異なり、雇い入れる従業員へのアピールポイントとしても重要な要素です。
日本経済団体連合会による第60回 福利厚生費調査結果報告を見ると、2015年度の企業の福利厚生費は、全産業平均で従業員1人1ヶ月当たり110,627 円、前年に比べると2.1%の増加で過去最高額を記録しています。総額が増加しているということは従業員が福利厚生から受ける恩恵も増えているように思われがちですが、そう単純ではありません。
福利厚生費の内訳や動向を正しく理解し、福利厚生費を無理なく負担しつつ、いかに従業員のモチベーション維持・向上に繋がる施策や制度を打ち出していけるかを考えてみましょう。
福利厚生費の使い道
福利厚生費は、法定福利費と法定外福利費に分けられます。
法定福利費とは、法律によって経営者が負担を義務付けられている福利厚生にかかる費用を指します。いわゆる社会保険料のことです。具体的には、雇用保険、健康保険、介護保険、労災保険、厚生年金保険などが挙げられます。子どもがいる・いないに関わらず、児童手当の財源の一部として納められる児童手当拠出金も事業者が負担する法定福利費に含まれます。
経団連は、福利厚生費の総額が増加傾向にある背景は、福利厚生費全体の8割近くを占める法定福利費の増大があるとしています。法定福利費は、企業(事業主)と従業員が折半して支払うので、従業員が負担する社会保険料が増加すると、当然企業が負担する保険料も増えることになります。社会保険料の増加の要因である社会全体の少子高齢化に伴い、法定福利費は今後も企業にとって重い負担となるのではないでしょうか。
法定外福利費とは、企業が独自に決めることができる福利厚生にかかる費用のことです。住宅手当、交通費、食事手当、健康診断補助などが法定外福利に該当します。被雇用者が企業を選ぶときに重視する「入社後受けられる待遇」が、この法定外福利に当たります。企業の特色が反映されやすいため、法定外福利を提供する雇用者(企業や事業者)には独自性が求められます。
しかし、経団連の報告では、法定外福利費は2015年度に増加傾向に転じたものの、実に9年ぶりの増加で、コスト削減の風潮もある中、法定外福利費を抑制する傾向から完全に脱却できたかどうかはまだ分かりません。限りある予算をいかに従業員にとってメリットとなる福利厚生に当てていくかは各企業の課題ともいえます。
スマホやタブレットでカード決済を受け付ける
Squareでカード決済法定外福利の工夫
代表的な法定外福利の一つに、住宅手当や家賃補助など従業員の住まいに関する補助があります。経団連の報告からも、法定外福利費の49.1%は「住宅関連」が占めており、また、従業員1人に当てられる住宅関連の法定外福利費は、企業規模が大きくなればなるほど額が増える傾向にあることが分かります。
社内にカフェテリアを併設して朝食を無料で提供している企業もあります。一人暮らしや朝が忙しく朝食を抜いてしまいがちの従業員に対する健康面への配慮から、企業が朝食代を負担するという福利厚生制度です。毎日の朝食代にかける出費がゼロになるだけでも従業員にとっては大きな負担軽減ですし、朝ごはんをしっかり食べてその日の業務に健康に取り組んでもらいたいという企業側の意図もあります。
住宅手当や従業員の朝食代を会社が全て負担するには相当の予算が必要と感じるかもしれません。たしかに、企業の規模が大きいほど福利厚生制度が手厚くなるのは自然のことですが、中小企業や個人事業主でも、ユニークな福利厚生を提供して従業員に健康と幸福をもたらすことはもちろん可能です。
例えば、一日の水分補給や小腹が空いた時につまめるお菓子などの軽食も、毎日の出費が重なれば従業員にとっては大きな負担になってしまいます。そこで、飲み物やお菓子など少ない予算で準備できるものを共有スペースなどに置いてみましょう。ちょっとしたおやつが会社から支給されるだけでも、何もない場合と比べて嬉しい福利厚生になるのではないでしょうか。同じ予算でも、定期的にお菓子のバリエーションを変えたりと従業員が楽しみにできる工夫をしてみるのもいいでしょう。
毎日の就労時間内に15分程度のお昼寝タイムを許可している企業もあります。体を横にしてしっかり寝られるスペースをオフィス内に設け、昼食後など業務効率が低下しがちな時間帯の睡眠を勧めることで、午後の業務効率を向上させるという狙いがあります。従業員には直接的な金銭面の負担軽減にならないかもしれませんが、企業が従業員の健康状態や体調に配慮するという意味では、安心して働くことができる職場環境を提供する福利厚生といえます。企業にとっても、従業員が眠たい目をこすりながら仕事をするよりも、メリハリをつけて業務に取り組んでもらう方が明らかなメリットになるのではないでしょうか。
他にも、チームワーク向上を目的とした従業員同士の交流を促すために飲み会の経費を会社が負担するという福利厚生や、恋人にフラれて傷ついた心を癒すための失恋休暇、オリンピックやワールドカップなど世界的に盛り上がるイベント時に休暇が取れるなどユニークな福利厚生は沢山あります。
福利厚生の対象を従業員のみならず、配偶者や家族まで含めている企業もあります。例えば、従業員の誕生日は家族や大切な人と過ごす時間に当てられるよう、誕生日の前後4日間を有給休暇申請することを条件に10万円付与している企業もあるそうです。企業にとっては従業員の計画的な有給休暇の取得を促すことにもなり、また、従業員の家族などに対しても企業の好感度アップに繋がります。
しかし、すべての従業員が企業から受ける福利厚生をメリットと感じるとは限りません。飲み会や社員旅行など都合が合わず参加できなかったり、家族手当が充実していても独身で無関係だったりと、従業員によって福利厚生から受ける恩恵の度合いに差が出てしまうこともあります。近年では、従業員に自由に使えるポイントを付与して、企業が提供するさまざまな福利厚生の中から好きなものをポイント消費形式で選ぶカフェテリアプランを導入している企業が増えているようです。従業員が魅力的だと感じられる制度を揃えられるよう、従業員一人ひとりに配慮したますますユニークな施策を打ち出していくことが企業には求められています。
アウトソーシングする方法も
近年では、社内の福利厚生制度の制定や運営をアウトソーシングする企業も多いようです。
福利厚生を取り入れるには、従業員の満足度を最大限に引き上げつつも、財政を圧迫しないようにコストを最小限に抑えることも考えなければなりません。しかし方法が分からなかったり、他業務に追われて福利厚生の施策作りになかなか時間が割けないこともあると思います。こんな時は、プロの代行業者に、自社に適した福利厚生の提案、整備、運営を依頼できるアウトソーシングを利用してみるのもいいかもしれません。例えば、お菓子やコーヒーマシンの定期的な補充を業者に依頼したり、社員旅行の企画・決行を委託することで、従業員に幸福と利益をもたらしながら、経営者は事業拡大に向けた戦略立てなどに集中することができます。
福利厚生アウトソーシングを提供している主な会社:
RELO CLUB
Benefit One
イーウェル
JTBベネフィット
執筆は2017年5月30日時点の情報を参照しています。
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