有機JASと改正JAS法、食に関わる事業者が知っておきたいポイント

植物と太陽、雲をイメージした緑色のイラストに「JAS」の文字が記された「有機JAS」のマークを野菜売り場で目にしたことがあるかもしれません。有機野菜などの農産物に付けられるマークというイメージがありますが、その範囲は加工食品や畜産物、飼料にまでおよびます。

有機JASが制定された背景や、有機JAS規格の基準、JASマークとの違い、時代とともに変化するJASの制度など、食に関わる事業者が知っておきたいポイントを紹介します。

有機JASとJAS規格の違い

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農薬や化学肥料を用いずに、自然の恵みからのみで生産された農産物や、その農産物からできた加工品や家畜動物に与える飼料などに付けられるマークです。また、有機JASマークの付いた飼料によって自由に育った家畜の卵や乳、肉も対象となります。

農産物の商品名に「有機」と付けられるのは、有機JASを取得しているものだけです。有機JASは、1999年に改定されたJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)に基づく「有機農産物等に係る検査認証制度」(2001年4月1日施行)による表示規制として機能しています。

有機JASのベースになるJAS(Japan Agricultural Standard)は、日本農林規格のことです。JAS法の前身は「農林物資規格法」で、1950年に制定されました。その内容と名称は時代とともに変化し、飲食料品などの品質改善や消費者が食品を選ぶ際の一助としての役割を担ってきました。

農林物資規格法が制定されたときの日本は、戦後の混乱もあり、粗悪な食品が出回っていました。それゆえ制定当初は、一定の品質水準を超え、消費者が食品を購入するときの目安をあたえることが目的でした。

参考:近頃、よく耳にするJAS法って、なぁに?(名古屋市消費生活センター)

有機JAS誕生の背景

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1992年に有機農産物に対する表示ガイドラインが制定されました。背景に「有機」や「減農薬」などと表示された農産物が売り場などに氾濫して、消費者が商品を選ぶときに混乱するという事情があります。ガイドラインには強制力がないため、有機農産物に不適切な表示があったり、生産基準の不統一があったりと、混乱は収束しませんでした。

同時期に海外では、コーデックス委員会で有機食品に係るガイドライン作成の検討が始まりました。コーデックス委員会(Codex Alimentarius Commission)は、国際連合食糧農業機関と世界保健機関が1963年に設立した、食品の国際基準(コーデックス基準)を作る政府間組織です。消費者の健康を保護するとともに、食品の公正な貿易を促進することを目的に、180カ国以上が加盟しています。コーデックス委員会において、1999年に「有機生産食品の生産、加工、表示及び販売に係るガイドライン」が採択されました。

国内、海外の状況を受け、海外と同じ1999年にJAS法改正によって「有機農産物やその加工食品に関する日本農林規格」を制定。さらに2001年には「有機JAS」表示がなければ、「有機」や「オーガニック」など紛らわしい表示は不可と規制されるようになりました。

有機JASの特徴として挙げられるのは、有機食品に関する日本農林規格が「コーデックスガイドライン」に準拠して定められている点です。アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなどの諸外国も「コーデックスガイドライン」に準拠していることから、日本の有機JASは世界基準として評価できるといえます。

参考:有機食品の検査認証制度について(農林水産省)

有機JAS規格の基準

有機JASのマークを付けるためには、以下のさまざまな基準をクリアする必要があります。

有機農産物ではまず、農薬や化学肥料を使用しないことが原則となっています。種播きまたは植え付けの時点からさかのぼって2年以上、禁止されている農薬・化学肥料を使用していない田畑で栽培しなければなりません。遺伝子組換え由来の種苗は使用できず、生産から出荷までの工程管理と格付数量などの記録の作成が求められます。

有機農産物加工食品の場合は、水や食塩を除いた原材料の重さのうち95%以上が有機農産物あるいは有機農産物加工食品であること。製造工場は、農薬や洗浄剤で汚染されないように管理されている必要があります。また、製造にあたっては、原則として化学的に合成された食品添加物や薬剤が使用できません。

2005年からは有機畜産物についても基準が設けられました。 飼料は主に有機飼料を与え、野外への放牧などを行なってストレスを与えない、病気の予防目的で抗生物質などを使用しない、遺伝子組換え技術を使用しないことが定められています。

有機JASが意味すること

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基準のベースにあるのは、有機農業の理念です。農薬や化学肥料を原則として使用せずに、田畑が本来持っている生産力を引き出し、地球環境への負担を小さくするような栽培方法によって、工夫と手間をかけた生産農家を評価するシステムです。

したがって、有機JASは農産物の味を保証するものではなく、農薬や化学肥料を使う農産物が有機農産物に劣る、ということも意味しません。

この基準からいえることは、有機JASのマークは世界的に認められた地球環境にやさしい農法で作られた農作物の印だということです。実際の味は食べた消費者が決めるのですが、「地球にやさしい」ことは良いイメージにつながるでしょう。

特色JASマーク

JASマークには、有機JASマークのほかに、特定JASマーク、生産情報公表JASマーク、定温管理流通JASマークがありましたが、これらのJASマークは特色JASマークに統合されました。今後、該当する製品は2023年3月31までに新たなJASマークに移行することになっています。

参考:新たなJASマーク(特色JASマーク)について(農林水産省)

広く知られている丸くて赤いJASマークは食品を平準化するため、一方の有機JASマークと特色JASマークは、特色のある食品の規格として分類されます。新たな特色JASマークは、日本の象徴「富士山」と、日の丸をイメージする「太陽」を組み合わせたデザインによって、日本の独自色を表現しています。

対象となるJASには、熟成ハム類、熟成ソーセージ類、熟成ベーコン類、地鶏肉、手延べ干しめん、りんごストレートピュアジュース、生産情報公表牛肉などがあります。これからますます食品のブランド化が進むと予想できます。

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JASを取得する利点

JAS規格は、飲食料品のカテゴリーだけで1番の「農産物缶詰及び農産物瓶詰」から、46番の「人工種苗生産技術による水産養殖産品」まで数多くの品目が定められています。たとえば即席めんの場合は、主原料、調味料、一般状態、食味、水分量などが細かく規定されています。この中から特徴のある食品が特色JASに移行します。ほかに、非食用の農産物として畳表や切り花もあります。

参考:JAS一覧(農林水産省)

有機JASは、「有機」「オーガニック」など特別に農産物や加工品に商品名として表記できる利点があります。環境や食品の安全性に対して強い関心を持っている消費者は、「有機」という表示に安心感を抱くでしょう。加えて、諸外国の多くが「有機」の認証制度を有していますが、輸出入において相手国で「有機」の認定が求められ、それぞれの国との間で有機認証制度の同等性が必要になる場合があります。つまり、自国の制度と同等であれば、わざわざ相手国の認定を受けなくても「有機」として海外で販売できることになります。

日本の有機JASはEU、アメリカ、スイスなどの国から同等の水準であると認められています。

参考:JAS制度と同等の制度を有する国(農林水産省)

これからはますます海外からの観光客も増えてくると予想されます。食への関心が高い観光客も一定数いると考えられるため、「有機」やブランド化された特別な食品にはインバウンド需要も期待できるでしょう。

改正JAS法とこれから

2017年6月に公布された改正JAS法では、農林物資などの輸出力の強化を目指しています。JAS規格が生まれたときと時代も変わり、国内で粗悪な食品を消費者が手にすることはほとんどなくなりました。これからは日本の食品の「強み」を国内だけでなく海外にアピールする時代だといえます。

参考:⾃社の魅⼒をJASでアピール 〜新たなJASの活⽤⽅法〜(農林水産省)

改正JAS法の特色は、「生産方法」「取扱方法」「試験方法」についてもJAS規格として制定できるようになったことです。たとえば、抹茶は公的な基準がないため普通の茶葉を粉末にしただけの類似品が売られている場合があります。従来の「品質」の規格では補えなかった面がカバーされることとなりました。

特定の産地による独特な名産品などは、日本国内での需要も見込まれます。特色JASを取得して、特徴を商品名として表記できるのは、大きなビジネスチャンスにつながる可能性があります。時代とともに変遷を遂げてきたJASは、時代の要請に応えて、これからも変わり続けていくと期待できます。食品の輸出入や飲食業を営む事業者としては、JASの動向にはいつも目を向けて、チャンスを逃さないようにしたいものです。

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執筆は2019年3月24日時点の情報を参照しています。
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