アカウントベースドマーケティングで深くお客様と関わり、ビジネスを効率化する方法とは?

アカウントベースドマーケティングは、アプローチするお客様をあらかじめ絞ってマーケティングを進める戦略です。広範囲のお客様にアプローチするのではなく、ある条件に沿って限定したお客様を対象とすることで、企業や店舗、そしてお客様側も満足度の高い結果が得られるのがアカウントベースドマーケティングの特徴です。アカウントベースドマーケティングの概要からメリット、そして中小企業や店舗、個人事業主がアカウントベースドマーケティングを取り入れる方法を解説します。

アカウントベースドマーケティングとは?

アカウントベースドマーケティング(ABM)のアカウントとは、個別のお客様、クライアントを指します。つまり、個々のお客様をベースとしてマーケティングを進めていく戦略を、アカウントベースドマーケティングといいます。特に大口のお客様など、確実な利益につながりやすい既存クライアントや見込み客をターゲットとし、そのお客様ごとに戦略を立てていきます。

アカウントベースドマーケティングの最大の特徴は、マーケット(市場)の捉え方にあります。一般的には複数のお客様がいるマーケットを想定してマーケティング戦略を立て、見込み客を育てて購入につなげていくのに対し、アカウントベースドマーケティングではターゲットとなる個々のお客様を一つのマーケットと捉えます。

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店舗とお客様のアカウントベースドマーケティングの例

たとえば、美容院とお客様の関係を例にアカウントベースドマーケティングを考えてみましょう。リピーターとして何回も訪れているお客様Aさんと、今回初めて利用したお客様Bさんがいる場合、この両者に対して同じマーケティング戦略を立てるのは不正解です。Bさんにはまず2回目も足を運んでもらえるように努める接客やリワード、店舗やサービスの魅力をもっと伝える情報が必要ですが、Aさんに全く同じことをしても効果的ではありません。

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Aさんには、変わらぬサービスとさらなる品質の向上、これまでの利用への感謝が必要です。美容院側はAさんの好みや髪の特徴、性格、利用頻度などを把握しているため、それらに合わせたマーケティング活動が可能です。具体的には、Aさんがいつも利用するサービスが2カ月に一度のカットと白髪染めであれば、訪れやすいタイミングで使えるクーポン券の発行、担当美容師のスケジュールの調整や連絡などが重要になります。さらに、髪型のカウンセリングなどを通してハイグレードの白髪染めやパーマのサービスをおすすめしてみるといった営業も、適切なタイミングで行うことで効果を発揮します。

このように、アカウントベースドマーケティングのターゲットとなるお客様は既存クライアントや常連客などで、既に自社ビジネスとつながりができているため、新規顧客の開拓とは異なる収益拡大のアプローチが必要です。

別の例として、居酒屋とリピーターの団体客の場合も、団体ごとに異なるアプローチが効果的です。お酒や食事の好みをしっかり聞き取り、既存の宴会プランにないメニューや時間を特別にアレンジすることなどによって、大口の常連顧客を逃さず、継続的な利益につなげていくことができます。

もし好みを把握したリピーターのお客様に対しても頑なに新規顧客と同じマーケティング方法を採っていれば、お客様はもっと融通の利く他店へ流れていってしまうことも考えられます。アカウントベースドマーケティングでは、お客様とのコミュニケーションが取りやすい関係にあることを最大限に活用し、個々のニーズのヒアリングをしっかりすることも重要です。

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アカウントベースドマーケティングのメリット

アカウントベースドマーケティングは、漁業を比喩として説明されることがあります。広い市場を対象としてターゲットにアプローチし見込み客を育てていくデマンドジェネレーションという戦略が狙った場所に網を仕掛けて大量の魚を捕獲する漁だとしたら、アカウントベースドマーケティングは1本の銛(もり)で1匹の魚を狙い打ちにするスタイルです。網を仕掛けることで魚の数は獲れても、値打ちのある魚が掛かるとは限りません。アカウントベースドマーケティングは、ターゲットを大口顧客や利益率の高いお客様に絞ることで、確実に利益を出していくことが可能な方法です。

また、お客様サイドから見てもアカウントベースドマーケティングは満足度の高い結果につながりやすいというメリットがあります。個々のお客様のニーズを店側が把握し、応えてくれるとなれば、お客様にとってはその店をひいきにしない理由はありません。高い顧客満足度は店の利益を生み、リピーターになることで継続的な収益効果や、お客様が良い評判を広めてくれる口コミの効果も見込めます。その過程で、ターゲットとなったお客様への理解がますます深まり、より良い関係を構築していくこともできます。

さらに、アカウントベースドマーケティングから生まれた商品やサービスを他のお客様にも拡大して提供することができれば、商品企画や開発という面でもメリットになります。アカウントベースドマーケティングは、ビジネスが特定のお客様と共に成長していく手段の一つともいえるでしょう。

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アカウントベースドマーケティングの実践方法

アカウントベースドマーケティングを実際に導入する際は、以下のようなプロセスで行います。

・対象アカウント(ターゲット)の決定
・マーケティング戦略方針の検討
・具体的なアプローチの計画
・アプローチの実践
・結果と計画の見直し、改善

まず重要となるのが「対象アカウント(ターゲット)の決定」のステップです。アカウントベースドマーケティングに適したお客様であるかをしっかり見極めます。アカウントベースドマーケティングは広いマーケット向けの戦略より、いちクライアントあたりの手間や時間が多くかかることになるため、その手間や時間を使うことで適正な価値(利益)が見込まれるかどうかが最大の焦点となります。

続いて、「マーケティング戦略方針の検討」では、戦略の大筋を考えます。ターゲットの特性を踏まえ、満たしきれていないニーズは何か、どの程度の売上増加を目指すかなどを、これまでのターゲットの購買履歴やコミュニケーションの内容から推し量ります。

「具体的なアプローチの計画」では、アプローチの時期と内容をスケジュール化します。事業内容などにより半年や1年などの中長期スパンの計画の場合もあれば、直近のアプローチだけを計画することも考えられます。たとえば服飾ブランドが小売店をターゲットにアカウントベースドマーケティングを行う場合、昨シーズンや昨年同時期のターゲットの動向を踏まえ、個別に新アイテムのラインナップを知らせる、特別なセールを実施するなど、具体的な計画を立てます。どのタイミングで個別のダイレクトメールや優待券、挨拶状などを送るかといったタイミングは、競合がいる場合は、競合のマーケティング施策やスケジュールも予測しながら計画し、「アプローチの実践」のステップへと進みます。

最後に、「結果と計画の見直し、改善」を行います。立てた戦略と計画を結果と比較し、目標の達成度やターゲットの反応はどうだったかと確認し、改善点があれば見出して次回以降の施策に役立てます。

アカウントベースドマーケティングのポイント

ターゲットが企業や店舗であるBtoBのビジネスの場合は、ターゲットとの間でミーティングを行うなど密なコミュニケーションが取りやすい場合もあります。個人のお客様であってもコミュニケーションの機会を逃さず、ニーズを探りソリューションを提供できるチャンスを確実なものとしていきましょう。

アカウントベースドマーケティングの重要なポイントは、お客様のニーズに確実に応えることで、確実な利益が生まれるという点です。両者が納得し、満足のいくマーケティングになるよう心がけることで、さらなるビジネスの成長へとつながっていきます。

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執筆は2019年7月2日時点の情報を参照しています。
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