従業員のモチベーションにつながる?賞与の算出方法と手続き

従業員の意欲を高め、優秀な人材を集める方策として、賞与制度の導入があります。

賞与制度の導入を検討しているビジネスオーナー向けに、賞与の概念と平均賞与額、賞与の支給に必要な就業規則の詳細、賞与額の算出方法、社会保険料や源泉所得税の計算方法などについて解説します。

目次



賞与とは

従業員が毎月もらえる給与とは別に、年に3回以下の頻度で(健康保険法第3条6)、支給される賃金が賞与です。ボーナスとも呼ばれます。

給与とは異なり、賞与については必ず支給しなければならないといった法的義務はありません。支給するかしないか、支給額や時期などを企業が自由に決めることができます。

中小企業における平均賞与額は、厚生労働省「毎月勤労統計調査」(令和元年9月分速報)によると、次のような数値が出ています。

従業員数500人以上:653,688円
100人から499人:431,227円
30人から99人:331,267円
5人から29人:261,268円

賞与の支給には就業規則の規程が必要

賞与を支給するには、就業規則のなかで賞与についての規程を設ける必要があります。

就業規則は、従業員を常に10人以上使用する場合に、作成して管轄の労働基準監督署に提出することが義務づけられており、労働条件や従業員が働くうえでのルールを定めたものです。

就業規則に賞与規程を設けるうえでの注意点

賞与を支給する法的義務はありませんが、就業規則で賞与に関する規程を設けると、その通りに支給する義務が生じます。

就業規則はテンプレートなどを参考にしながら自社で作成することもできますが、不安がある場合には社会保険労務士など専門家に依頼するのも一つの手です。

【賞与の対象となる従業員の範囲】
たとえば、正社員のみに賞与を支給したい場合は、パートタイム従業員や契約社員には適用されない旨を記す必要があります。ただ、2020年に施行された「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・有期雇用労働法)、通称「同一労働同一賃金」により、非正規従業員であっても、正規と同じ業務をしている場合は、待遇の差が禁じられました。もし、パートタイム従業員や契約社員には賞与を支給しない場合は、合理的な根拠が求められます。

また、入社後すぐに退職したり、支給日前に退職したりする従業員とのトラブルを避けるために、賞与の支給日に在籍していることを条件として記載しておくとよいでしょう。

参考:同一労働同一賃金4月から 手当や賞与の決め方合理的?(2020年3月8日、日本経済新聞)

【賞与の査定期間や方法、時期】
たとえば、賞与の支給を年2回(夏季・冬季)に設定しているなら、夏季賞与の査定期間はいつからいつまでと設定します。査定方法については、役職や人事考課、出社率など根拠となる事項を記載します。また、ローンの支払いなどの都合で支給する時期が気になる従業員も多いでしょう。7月1日など具体的な日付を明記する場合もありますが、「7月と12月に支給」などでも問題はありません。

【業績が悪化した場合】
業績悪化や、天災などやむを得ない事態の場合には、支給時期を変更または支給しないという旨を記載しておいた方がよいでしょう。この記載がないと、どんな状況でも賞与を支払う義務が生じてしまいます。経営状態の悪化などにも柔軟に対応できるような規程を設けておきましょう。

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賞与額の算出方法と注意点

厚生労働省は、賞与については支給額が前もって確定されていないものであると定義しています。そのため、毎回の支給ごとに支給額を決めることが必要です。

定期又は臨時に労働者の勤務成績、経営状態等に応じて支給され、その額があらかじめ確定されていないものをいう。

引用:主な用語の定義(厚生労働省)

各従業員の賞与額を算出する際に、一般的に使われている計算式は次になります。

賞与額(額面)=基本給×支給月数×評価係数

支給月数の決め方

支給月数をどのように算出するかですが、主には次の二つの方法があります。

  • 給与連動型:基本給2カ月分と一律で支給月数を決めておく
  • 業績連動型:業績に応じてその都度支給月数を決める

給与連動型は昔ながらの方法で、あらかじめ支給月数が決まっているため賞与額の算出がしやすいというメリットがあります。これに対して、業績連動型は最近主流となってきている方法で、会社全体または部門の業績に応じて支給額を調整できる点と、業績が上がれば賞与も上がるのがわかりやすく従業員がやる気を出せる点が特徴です。

評価係数の決め方

上記の計算式では、支給月数のほかにも評価係数を乗じていました。評価係数は、人事評価など賞与査定に基づいた係数です。たとえば、人事評価がSSからCまでと3段階なら、SSの評価係数を1.5、Aが1.0、Cが0.75など、企業によって自由に設定します。

賞与を算出するうえでの注意点

実際に各従業員に支給する賞与額を算出するには、先ほどの計算式で求めた金額から社会保険料と源泉所得税を引く必要があります。

賞与額(手取り)=賞与額(額面)−(社会保険料+源泉所得税)

このとき注意したいのは、給与とちがって、賞与からは住民税を引かない点です。住民税は去年の所得に応じて確定済みの納税額を12で割った金額を、毎月の給与にて納めており、後払いです。そのため、賞与から払う必要はありません。

これに対して所得税は、今年の所得が確定する前に予想される金額を前払いするため、賞与から引く必要があります。

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社会保険料と源泉所得税の計算方法

賞与額から差し引く社会保険料は、具体的には次の3点となります。

  • 健康保険料(40歳以上65歳未満は介護保険料)
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料

健康保険料と厚生年金保険は、次の計算式で求めます。

各保険料=(標準賞与額×保険料率)÷ 2

標準賞与額とは、賞与額(額面)から1,000円未満を切り捨てた金額です。保険料率は毎年変わるため、その都度確認するようにしましょう。健康保険料の場合は、健康保険組合・協会けんぽのいずれに属しているかに応じて料率は変わってきます。

実際の計算例

では実際に、次のケースにおける計算をしてみましょう。

  • 45歳
  • 扶養家族1人
  • 神奈川県・協会けんぽ・建設業
  • 賞与額(額面):400,000円
  • 前月分の給与:200,000円

※保険料率は2020年度3月分の数字で計算

A)賞与にかかる社会保険料を求める

健康保険料+介護保険料=(400,000×11.72%)÷ 2=23,440円
厚生年金保険料=(400,000×18.3%)÷ 2=36,600円
雇用保険料=400,000×0.4(建設業)=1,600円

社会保険料=23,440+36,600+1,600=61,640円

B)賞与にかかる源泉所得税を求める

1)「賞与の源泉徴収税率」を求めるため、控除後の前月分の給与(手取り)を算出

前月分の給与(手取り)=前月分の給与−社会保険料 
=200,000−(11,720+18,300+800)=169,180円

2)扶養家族1人かつ前月分の給与が94,000円から243,000円内の場合、賞与の源泉徴収税率は2.042%

3)賞与にかかる源泉所得税

(賞与額(額面)−賞与にかかる社会保険料)×賞与の源泉徴収税率 
=(400,000−61,640)×2.042%=6,909円

C)賞与額(手取り)を求める

賞与額(額面)−(社会保険料+源泉所得税) 
=400,000−(61,640+6,909)=331,451円

参考:賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(平成31年(2019年)分)(国税庁)

賞与を支給するには、まず就業規則において賞与に関する規程を設ける必要があります。加えて、賞与額を算出するには、会社の業績や個人評価に応じて支給月数や評価係数の算定が必要です。従業員のモチベーションアップにつなげるためには、公平で客観性のある評価制度を打ち出すことが求められます。


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執筆は2020年4月6日時点の情報を参照しています。
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