GAP認証について農業関係者が知っておきたいポイント

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

農業に関係する事業者なら、GAPについて知っている人も多いでしょう。GAP認証を取得した食材を仕入れているという飲食店経営者もいるかもしれません。GAPは「農業生産工程管理」のことです。知ってはいるけれど、詳しくないという人のために、GAP認証制度、GAP認証取得のメリット、JGAPなどのポイントを紹介します。

GAPとは

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GAPは「Good Agricultural Practice」の略称で、農業生産工程管理のことを指しています。農産物の安全を確保して、より良い農業経営を実現する取り組みです。従来より、収穫された農産物については厚生労働省では農薬などの残留基準を制定し検査を進めてきました。

残留農薬検査に加えて、1996年に起きたO157による集団食中毒をきっかけに、HACCPやGAPなど、食品の安全性確保に向けてさまざまな取り組みがなされるようになりました。

HACCP(ハサップ)は「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略で、「危害分析重要管理点」と訳されます。食品の安全を確保するための衛生管理手法のことで、主に食品の加工を行なう工場に適用されます。

参考:HACCPが義務化?飲食店における導入のメリット

一方で、GAPの目的は食品安全や環境保全、農業に携わる人の労働安全などを持続可能にすることです。多くの農業者や全国の産地が取り入れることで競争力を強化し、作物の品質を向上させ、農業経営の改善や効率化が進むことが期待できます。

参考:食品安全のためのGAPに関するQ&A(農林水産省)

「GAPをする」と「GAP認証」の違い

「GAPをする」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。農業関係者がGAP(活動や取り組み)を自ら実施することを意味し、認証取得の有無は関係ありません。

一方「GAP認証」は、第三者機関の審査によってGAPを正しく実施していることが確認され、証明されることを指します。「GAP認証をとる」はGAP認証を受け、GAPの実施を客観的に証明されることです。

したがって「GAP」への取組・実施が、認証を意味しないことは理解しなければならないでしょう。「GAPをする」だけでも品質向上や不要な在庫の減少 、農作業事故の減少 、従業員の責任感や自主性の向上の実現などにつながることが期待されます。

「GAPをする」には包装資材の側に灯油など汚染の原因となるものを置かないことや、廃棄物を農場に放置しない、農薬の容器は分別して廃棄するなどの基本的なことも含まれます。農林水産省では、すべての農業従事者に対して「GAPをする」ことを推奨しています。実際にGAP実施によって、品質の向上や販売先への信頼性確保などの経営改善効果がみられた、という調査結果があります。

参考:GAP 導入による経営改善効果に 関するアンケート調査結果(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構)

民間団体による第三者認証を備えた「GAP認証」には、3種類あります。一般財団法人日本GAP協会によるJGAPおよびASIAGAPと、FoodPLUSGmbHによるGLOBALG.A.P.(グローバルGAP)です。それぞれに、認証するための基準が設けられています。

JGAP、ASIAGAP、グローバルGAP

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JGAPは、環境保全や食の安全に対して取り組んでいる農場に与えられる日本発の国際水準の認証です。2007年11月から第三者認証制度がスタートしました。JAなどの生産者団体が使用する農場や団体管理についての基準および認証の制度で、農林水産省が導入を推奨しています。

JGAPでは生産者にとってのメリットを下記のように説明しています。

適切な農場管理が実現し、①食の安全、②環境保全、③労働安全が向上します。
・農場の仕事が効率化し、経営改善や品質向上、技術の継承にも役立ちます。
・専門の審査機関の審査・認証を受けることでバイヤーに「信頼できる農場」で あることを客観的にアピールできます。
・農業経営体の大規模化、強い産地ブランドづくりの両方で内部の仕組み作りに役立ちます。

参考:3分で分かるGAP(一般財団法人 日本GAP協会)

ASIAGAPは、JGAP Advanceの改定版として2017年7月に発表され、8月からアジア共通のGAPのプラットフォームを目指してスタートした新しい制度です。対象となる農産物は、青果物、穀物、茶、家畜、畜産物となっています。播種から収穫、農産物の取り扱いにいたるまで、多くのチェックポイントについて専門の機関が審査を行なうのが特徴です。認証は2年更新で、中間で維持審査が実施されます。

グローバルGAP認証は、世界120カ国以上に普及しており、事実上の国際標準となっています。欧米をはじめ、日本の大手小売でもグローバルGAP認証の取得を調達の基準にしています。

参考:GCAPとは(GAP普及推進機構/GLOBALG.A.P.協議会)

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GAP認証を取得するメリット

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「GAP認証をとる」と第三者による審査、認定がなされたことを意味します。取引先や消費者が直接確認できない生産工程において、食品安全・環境保全・労働安全などに対して第三者の目による審査を通過したことで、信頼性が増し、取引における差別化につながると考えられます。

実際に取引先からの要請に基づいて取得する場合もあり、「GAP認証をとる」ことで売り上げの確保や消費者に安心してもらえることにつながります。たとえば、2010年の東京大会では農産物の調達基準の一つにJGAPが含まれています。

参考:東京2020組織委員会が認める認証スキーム(持続可能性に配慮した農・畜・水産物の調達基準関係)(公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会)

JGAP認証取得までの流れ

JGAPは農場管理および団体管理の基準であり、GAPの認証制度です。したがってJGAPの審査や認証を受けられるのは、個人農家(個人事業主)や農業生産法人など、一つの農業経営体か、JAなどの生産者団体、つまり複数の農業経営体が集まった団体だけです。ここでは、個人農家(個人事業主)や農業生産法人が認証取得する場合の「個別認証」の流れについて紹介します。

1, 「JGAPの基準書」を入手し、どこができているかを把握します。基準書は青果物、穀物、茶、家畜・畜産物にわかれています。
2, 「JGAP 農場用 管理点と適合基準」に基づいて農場を運営します。
3, 自己点検を行ない、改善点に取り組みます。
4, JGAP審査・認証機関に審査を申請します。
5, 審査で指摘された不適合項目を是正します。是正報告書を審査・認証機関へ送付します。
6, 審査・認証機関の判定審議の結果、合格基準を満たした農場にJGAP認証が与えられます。認証取得のためには、必須項目は100%適合、重要項目は95%以上適合する必要があります。

JGAPの現状

JGAPの認証農場は増加し続け、日本GAP協会によれば、2008年に236農場でしたが、2018年3月末には4,213農場が認証を取得しています。

参考:JGAP/ASIAGAP認証数および認証農場数の推移(日本GAP協会)

安全安心な農作物を生産する農業者にとって第三者に評価認証されることで、海外への販路も広がります。自身が生産する農産物に、新たな可能性を開くのがGAP認証取得だといえるでしょう。認証取得に向けて、積極的な取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。

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執筆は2019年4月18日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash