はじめよう、スマート農業。農業にITを取り入れるメリットとは

日本の農業では担い手の減少や高齢化、後継者不足が深刻な問題になっています。農林水産省は、情報通信技術やロボット、AI技術などの先端技術を取り入れることで、少ない人手で効率よく生産性をあげる新たな農業「スマート農業」を提案し推進しています。政府は、2019年をスマート農業の「社会実装元年」とし、全国50カ所で最新の農業機械を導入して実証実験を実施する方針です。

参考:スマート農業「実用化元年」 ロボットやIT、AIで省力・高収益化(2019年2月19日 、毎日新聞)

今回は、スマート農業とは何か、スマート農業を導入するメリット、導入の具体例そして課題について解説します。

スマート農業とは

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農林水産省はスマート農業を「ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用して、省力化・精密化や高品質生産を実現する等を推進している新たな農業のこと」と定義しています。

参考:スマート農業とは、どのような内容のものですか。活用によって期待される効果を教えて下さい。(農林水産省)

日本でスマート農業が必要になった背景として、農業に携わる人口の減少と高齢化があげられます。農林水産省の調査によると、2018年の基幹的農業従事者(※)は145万人で、前年度と比べると3.8%減、2008年の197万人と比べると10年で50万人以上減っていることがわかりました。また、10年前は65.2歳だった平均年齢が、平成30年では66.6歳に上昇していることも明らかになりました。

農業従事者の負担を減らし、新たに農業に参入する人を増やすためにも、農業における先端技術の活用に期待が寄せられています。

※基幹的農業従事者:主に農業に従事した世帯員(農業就業人口)のうち、ふだんの主な状態が「主に仕事(農業)」である者

参考:
農業構造動態調査結果 平成30年 調査結果の概要(農林水産省)
農業構造動態調査結果 平成20年 調査結果の概要(農林水産省)
平成30年農業構造動態調査報告書 2-1-2農業従事者等の平均年齢(農林水産省)
平成20年農業構造動態調査報告書 2-2農業従事者等の平均年齢(農林水産省)

スマート農業導入のメリット

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スマート農業を導入することによる主なメリットには以下の点が挙げられます。

1, 肉体的な負担を軽減できる
ロボット技術など農業に取り入れることで、農薬散布や重いものの上げ下ろし、収穫作業や運搬作業など、肉体的に負担が大きい作業や危険な作業から解放されます。重労働による負担が軽減されることで、女性や高齢者が農作業に参加しやすくなるかもしれません。

2, データの活用により新規参入がしやすくなる
作物の生育状況や気候による影響など、熟練者の勘や経験に頼る場面が農業では多く見られます。しかし作物の生育過程に関する情報やデータを蓄積し、分析を行うことで、これまで感覚的に判断して行っていた作業をデータから判断できるようになります。経験の浅い農家でも熟練した農家と同じような判断ができるようになれば、新しく農業に参入する人や若い世代の取り込みを期待できるでしょう。

3, 生産量の増加を見込める
人間に代わってロボットを作業に導入することで、長時間・悪天候下での作業が可能になり、生産量の増加を期待できます。また、これまで労働力不足などで実現できなかった農地の拡大をはかることもできるかもしれません。

スマート農業の具体例

スマート農業の具体例を見てみましょう。アプリからロボットまで、さまざまな方法で先端技術を農業に活用することができます。

アプリを使って効率化
スマートフォンなどで使える農業用アプリの中には、天気を予測したり、農作物の状態や作業を記録したり、撮影した農作物の病気や栄養状態を判別したりできる便利なものがあります。

たとえば、iOSとAndroidで利用できる無料のアプリ「畑らく日記」を使えば、スマートフォン一つで簡単に栽培記録を付けられます。いつ、どこで、だれが、何を、どのように作業したかなど、スマートフォンで撮影した写真やメモなどを作業の合間や休憩時間などに詳しく記録できます。作業で手が汚れているときには音声入力機能が活躍します。

保存した記録から作業内容と時間を分析することで、作業の見える化をはかることができます。作業の問題点を洗い出したり、人的資源や時間の配分を見直したりすることも可能になるため、経営面での改善にも役立つでしょう。

アシストスーツで負担軽減
コンテナなど積荷の上げ降ろし作業、腕を上げた状態や中腰の状態で行う収穫や雑草除去作業など、農業では肉体的に負担が大きい作業が多くあります。身体に装着することで腰や脚、腕などにかかる身体的な負担を軽減するアシストスーツを使えば、無理な姿勢を長時間続けなければならない作業でも体への負担を減らすことができます。

ドローンで農薬散布
ドローンを使うことで、作業を効率化したりコストを抑えたりすることができます。たとえば、農薬の散布があげられます。これまでは重い農薬のタンクを抱えて手作業で散布するか、一台1,000万円を超えるような無人ヘリコプターを使うといった方法しかありませんでした。ドローンなら一台100万円から200万円程度で購入でき、無人ヘリコプターと比べると小回りがきくため山間にある耕作地などでも散布が可能です。

ロボット導入で省力化
自動で芝を刈るロボット芝刈り機、無人で田畑を耕すロボットトラクター、収穫に適した果実や野菜を選んで収穫するロボット、家畜のための授乳、えさやりロボットなど、人間の代わりに作業を行うロボットを導入すれば複数の作業を同時に進められるため、人手不足を補うこともできます。

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スマート農業の導入にあたっての課題

スマート農業を導入するにあたっての課題として、コストとサポート体制があげられます。

導入コストがかかる
アシストスーツやドローンなどは数十万円から数百万円、ロボットトラクターは一千万円を超えるなど、スマート農業で活躍を期待される製品は高価な場合が多く、実際に購入できるのが大規模農家や法人などに限られてしまうという課題があります。最近では、製品の低価格化や、レンタルやリースの活用拡大などメーカーによる普及のための取り組みが進んでいます。

参考:スマート農業、サービス続々 ドローン貸し出しなど 猛暑で(2018年8月25日、日本経済新聞)

サポート体制の構築が必要
パソコンやモバイル端末などをあまり使ったことがない人や高齢の農業従事者にとっては、パソコンやスマートフォン、タブレットを使って日々のデータを入力し分析したり、ドローンやロボットを導入してすぐに現場で活用したりすることは難しいかもしれません。スマート農業の普及には、情報通信技術についての知識を伝えたり機器の操作方法を教えたりする人材の育成を含めたサポート体制の構築が必要といえます。

農業はこれまでも機械化を進めることで時間や労力を大幅に削減してきました。スマート農業も新しい技術を取り入れることで労働力不足や生産量の拡大といった問題を解決しようとする試みの一つです。まずはアプリを使って記録をつけてみるなど、簡単にできるところから始めてみるのはいかがでしょうか。

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執筆は2019年4月9日時点の情報を参照しています。
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