経過措置終了間近!食品表示法には小規模事業者こそ敏感になろう

食品表示法に定められた新ルールに基づく食品表示の経過措置期間が2020年3月末で終了し、4月から完全施行されます。今後はあらゆる食品と事業者を対象に新しいルールが適用され、違反した場合の影響によっては事業継続が困難になるなどの大きな問題に発展しかねません。

今のうちに食品表示の基準や記載のポイントを把握して対策をたてることが大切です。この機会に、食品表示を戦略的に活用してみるのも手です。

今回は、スモールビジネスの経営者やオンラインで食品販売を扱う方を対象に知っておくべき食品表示法の基本要素として「法の概要と制定の背景」「食品表示法遵守のメリットとデメリット」「新ルールでの表示のポイント」をまとめました。

食品表示法の概要と制定の背景

まずは食品表示法とはどういうものなのか、制定された背景と概要を解説します。

食品表示法とは

食品表示法は比較的新しい法です。食品の表示方法や用語を統一し、食品の表示に関する制度を包括的また一元的に管理するため作られました。

食品衛生法(衛生上の危害発生防止)、JAS法(品質に関する適正な表示)、健康増進法(国民の健康の増進)の三つの法で規定していた食品表示に関する法令が統合されたものです。2013年に制定、2015年4月に施行されましたが、経過措置期間として、加工食品および添加物の表示に関しては2020年3月31日までの猶予を設けられています。

参考:食品表示法の概要(消費者庁)

食品表示法の対象者と遵守について

食品表示法の対象は製造業者に限りません。小売販売も対象なので、大手のメーカーだけでなく、ネットショップなどを運営する小規模事業者にも関係があります。対象となる事業者と、対象となる食品、食品表示法を遵守しない場合のデメリットや積極的に活用するメリットを紹介します。

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食品表示法の対象となる事業者

食品表示法第五条では、「食品関連事業者等」は、食品表示基準に従った表示がなされていない食品を販売してはならない(不特定または多数のものに対する販売以外の譲渡を含む)とされています。

食品関連事業者等には、食品の製造・加工、輸入、販売を行う事業者が含まれます。食品の所有権の移転をともなわない、運送業者、倉庫業者、委託元から供給された材料を単に調理する業者など以外は、幅広い事業者が対象となります。

参考:表示責任を有する者等の整理について(消費者庁)

食品表示法の対象となる食品

食品表示法においては、消費者向けに販売されるすべての食品が対象とされます。生鮮食品、加工食品だけでなく、特定保健用食品、機能性表示食品も含まれています。また、不特定多数の人へ譲渡する場合も含みます。具体的な表示事項に関しては、消費者庁の事業者向けパンフレットに詳細が記載されています。

食品表示基準を守らなかったときのデメリット

食品表示の基準を守らなかった場合、国による指示や命令が出され、命令を受けた事実が公表されます。命令違反の場合など、最大で3年以下の懲役や300万円以下の罰金(法人は3億円以下の罰金)が科せられるなど、法的に罰せられます。

また、法的な罰則以外にもさまざまなデメリットが想定されます。食品の回収や謝罪広告などに膨大なコストがかかる上、社会的な信用を失い、購買拒否にあったり取引先を失ったりするなど、最悪の場合では事業継続が困難となることも考えられます。

食品表示基準の遵守の姿勢を積極的に活用するメリット

食品表示をむしろ積極的にコンプライアンスの姿勢をアピールする機会だと考えてみてはいかがでしょうか。早くから新ルールでの情報開示を積極的に行い、消費者の購買意識に寄り添ったわかりやすい表示にすることで、食品に対する品質へのこだわりや意識の高さ、誠実さなどを訴求する「戦略的ツール」として食品表示を活用することも可能です。

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食品表示法 新ルールでの表示のポイント

ここでは、一般の食品に関する表示の新ルールについて、気をつけておくべきポイントを解説します(業務用食品はまた別のルールになります)。

アレルギー関連の表示:アレルゲンの表示の義務付け
これまでの表示方法だった特定加工食品とその拡大表記が廃止され、食品に含まれる原材料と添加物について、アレルゲンを含む旨の表示が義務付けられました。たとえば、これまでは小麦粉を含むことが推測できるパンやクッキー、麺は特定加工食品として、小麦粉を含んでいる旨の表記を省略できましたが、今後は省略できなくなります。この変更には、小麦粉を含まないパンや麺、卵を含まないマヨネーズ、乳を含まないヨーグルトなどの食品が広く流通してきていることが背景にあるようです。

アレルゲンの表示は個別表記を原則としますが、例外的に一括表示も可能です。一括表記の場合は、一括表示欄にその食品に含まれるすべてのアレルゲンを表示する必要があります。表示の対象となるアレルゲン(義務・推奨)は以下の27品目です。

義務(特定原材料7品目):えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生
推奨(特定原材料に準ずる20品目):あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

なお、アレルゲンを含む原材料は使用していないが他の製造ラインで扱うため混入される可能性が否定できないなど、コンタミネーションの危険性がある場合は、製造ラインの洗浄や製造工程管理を徹底することはもちろんですが、食品表示に注意喚起を促す旨の記載を行うことも、消費者への情報提供ポイントとなります。

参考:アレルゲン~新しい食品表示制度の変更点~

栄養成分表示の義務化
食品に含まれる栄養成分に関する情報を明らかにし、消費者が適切な食生活を実践できるよう、すべての加工食品と添加物について、栄養成分表示が義務付けられました。

義務:熱量(カロリー)、タンパク質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量で表示)
推奨:飽和脂肪酸、食物繊維
任意:糖類、糖質、コレステロール、ビタミン・ミネラル類

原材料、添加物の明確化(表示レイアウトの改善)
食品表示は、原材料と添加物の区分を明確に表示することが求められます。このため、原則としては原材料欄と添加物欄を別にして記載する必要があります。食品の表示可能面積が少ない場合など、必要な事項を一つの表にまとめる一括表示も可能ですが、その場合でも、原材料と添加物の区別が明確になるよう、改行やスラッシュ、中線による区分などが必要です。

製造元・販売元の表示
一般の加工食品を販売する場合は、表示責任者として販売者の氏名または名称と住所の記載が必要です。また、公衆衛生上の危害発生・拡大防止の観点から、表示責任者(販売者)の近くに製造所の所在地と製造者の氏名または名称を表示する必要があります。

食品表示については、最新の公式情報が掲載されている消費者庁の食品表示に関するサイトを時々チェックしておくことをおすすめします。

また、食品表示の適用範囲や義務の範囲、業務用食品の場合の表示など、食品表示の基本に関するガイドとしては、事業者向けのパンフレットにわかりやすくまとまっています。パンフレットの後半には、迷いやすい項目に関するQ&Aも用意されています。

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執筆は2019年6月28日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash