経営に​必要な​知識、​減価償却を​おさらい

以前、​会社の​経営に​必要な​会計知識を​紹介しましたが、​今回は​決算書を​読み解くのには​欠かせない​減価償却に​ついて​説明します。

減価償却の​対象に​なるのは

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国税庁では​減価償却の​ことを、

“事業などの​業務の​ために​用いられる​建物、​建物附属設備、​機械装置、​器具備品、​車両運搬具などの​資産は、​一般的には​時の​経過等に​よって​その​価値が​減っていきます。​このような​資産を​減価償却資産と​いいます。​他方、​土地や​骨とう品などのように​時の​経過に​より​価値が​減少しない​資産は、​減価償却資産では​ありません。​”

と​説明しています。

減価償却に​ついて​詳しく​お話する​前に、​まず​固定資産に​ついて​少し​説明が​必要です。​固定資産とは​企業が​長期​(一年以上)に​渡って​使用を​目的に​所有している​資産を​指します。​固定資産の​中には​建物や​機械のような​有形固定資産と、​特許権や​漁獲権のような​無形固定資産が​あります。​有形・無形に​関わらず、​取得してから​経年に​伴い、​価値が​減る​固定資産は​減価償却の​対象に​なります。

国税庁の​説明にも​あるように、​土地や​骨とう品は​価値が​減少しないと​考えられ、​減価償却の​対象に​なりません。​「骨とう品」に​関しては、​美術品や​骨とう品の​価値が​時代に​よって​評価が​変わる、​なんて​テレビで​見た​ことが​あるかもしれません。​市場や​愛好家に​とっての​価値と、​税制上・会計上の​価値は​考え方が​異なります。

税制上、​減価償却の​対象とならない​美術品や​骨とう品は​以下の​2点に​該当する​ものです。

(1)​ 古美術品、​古文書、​出土品、​遺物等のように​歴史的価値又は​希少価値を​有し、​代替性のない​もの

(2)​ ​(1)​以外の​美術品等で、​取得価額が​1点100万円以上である​もの​(時の​経過に​より​その​価値が​減少する​ことが​明らかな​ものを​除く)

時の​経過に​より​その​価値が​減少する​ことが​明らかな​ものには、​例えば、​会館の​ロビーや​葬祭場の​ホールのような​不特定多数の​者が​利用する​場所の​装飾用や​展示用​(有料で​公開する​ものを​除く)と​して​個人が​取得する​もののうち、​移設する​ことが​困難で​当該用途にのみ使用される​ことが​明らかな​ものであり、​かつ、​他の​用途に​転用すると​仮定した​場合に​その設置状況や​使用状況から​見て​美術品等と​しての​市場価値が​見込まれない​ものが​含まれる。

取得価額が​1点100万円未満である​もの​(時の​経過に​より​その​価値が​減少しない​ことが​明らかな​ものを​除く)は​減価償却資産と​取り扱う。

参考:減価償却資産​(第19号関係​)

また、​取得金額が​10万円未満で、​使用可能期間が​一年​未満の​ものは​損金の​額に​算入されます。

参考:少額の​減価償却資産に​なるかどうかの​判定の​例示

耐用年数とは

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詳細に​ついては​国税庁の​ホームページの​情報を​確認したり、​税理士などの​専門家と​相談したりした上で​計上する​必要が​ありますが、​おおよその​考え方と​して​金額が​10万円以上で、​一年以上​使用する​もの、​土地や​100万円以上の​美術品ではない​ものを​事業の​ために​購入した​場合は、​有形・無形に​関わらず​経年に​よって​価値が​減る​資産で​あり、​減価償却の​対象になると​覚えておくと​いいかもしれません。

減価償却の​費用は​法律に​よって​定められた​耐用年数に​基づいて​計算します。​ここでは​喫茶店を​例に​耐用年数を​見てみましょう。​喫茶店を​オープンするに​際し、​木造平屋の​建物を​建て、​ランチなどを​提供する​ために​厨房設備を​揃え、​また​ケータリングに​対応する​ために​車を​購入したとします。​木造の​建物の​耐用年数は​20年​(飲食用)、​厨房設備は​8年、​車は​4年に​なります。

これらは​あくまでも​会計上の​考え方であって、​もちろん​この​耐用年数を​過ぎても​建物や​設備を​使用し続ける​ことは​可能です。

耐用年数は​資産の​種類ごとに​細かく​定められています。​以下に​その​一部を​載せています。​詳細は​耐用年数表を​ご確認ください。

 構造・用途   細目  耐用年数
木造・合成樹脂造のもの 飲食店用のもの 20
鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造のもの
事務所用のもの 50
木造・合成樹脂造のもの 飲食店用のもの 20
  3
茶樹   34
一般用のもの 自動車(2輪・3輪自動車を除く)
小型車(総排気量が0.66リットル以下)
貨物自動車
4
家具、電気機器、ガス機器
家庭用品
(他に揚げてあるものを除く)
事務机、事務いす
キャビネット主として金属製のもの
15
事務機器、通信機器 電子計算機
パーソナルコンピュータ
(サーバー用のものを除く)
4
宿泊業用設備   10
パルプ
紙又は紙加工品製造業用設備
  12
ソフトウエア 「複写して販売するための原本」
又は「研究開発用のもの」
3
漁業権   10
ダム使用権   55

定額法、​もしくは​定率法

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減価償却の​計算には​定額法​定率法、​二種類の​方法が​あります。

定額法では、​毎年​同じ​額を​償却します。​計算方法は、​取得価額×定額法の​償却率です。​
例えば、​上記の​例で​挙げた​喫茶店の​ために​100万円で​車を​購入したとします。​耐用年数4年で、​定額法の​償却率は​0.25の​ため、​会計時に​計上する​償却費用は

1年目:1,000,000円 × 0.25 = 250,000円
2年目:1,000,000円 × 0.25 = 250,000円
3年目:1,000,000円 × 0.25 = 250,000円
4年目:(1,000,000円 × 0.25) − 1円 = 249,999円
と​なります。

定率法では、​償却額は​初めの​年ほど​多く​年とともに​減少します。​計算方法は​定額法より​複雑に​なり、​未償却残高×定率法の​償却率が​償却額ですが、​償却額が​償却保証額​(取得価額×保証率)を​満たさなくなった​年以後は​毎年​同額に​なります。

同様に​100万円の​車を​例に​考えると、​定率法の​償却率は​0.625、​保証率は​0.05274、​改定償却率は​1.0です。​償却保証額は​1,000,000円×0.05274=52,740円です。

1年目:1,000,000円 × 0.625 = 625,000円
2年目:​(1,000,000円 − 625,000円)​× 0.625 = 234,375円
3年目:​(1,000,000円−625,000円-234,3750円)​ × 0.625=87,890円
4年目:​(1,000,000円−625,000円-234,3750円−87,890円)​×0.625=32,959円
ただし、​4年目になると​償却額が​償却保証額の​52,740円を​満たしていないので、​3年目の​償却額×改定が​4年目の​償却額になる​ため、​
正しくは、​(87,890円×1.0)-1=87,889円、となります。

定額法、​定率法の​どちらで​計算しても​耐用年数の​最終年数までには​全額を​償却する​計算と​なります。​最終年の​4年目だけは​帳簿に​備忘価額と​して​1円残して​おきます。

建物附属設備及び構築物は​定額法と​決まっていますが、​他の​資産は​定額法、​定率法の​どちらで​計算するかを​選択する​ことができます。​どちらが​税制上有利に​なるのか、​専門家などに​相談しながら​決める​ことを​おすすめします。​ただ、​定率法を​選んだ​場合は​事前に​届出が​必要です。​この​届出を​しないと、​自動的に​法定の​計算方法である​定額法で​計算する​ことに​なります。

また、​青色申告者の​場合、​30万円未満の​固定資産を​その年の​必要経費と​して​計上できます。

詳細は​国税庁の​情報を​ご確認ください。

執筆は​2017年7月18日​時点の​情報を​参照しています。
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