電子契約書とは?導入のメリットや作成する上での注意点

ビジネスのデジタル化とペーパーレス化が進む中で、電子契約書を使ってみたいという事業者も多いかもしれません。本記事では、電子契約書とは何かからはじめ、従来の書面での契約書との違い、導入のメリット・デメリット、導入の流れ、利用事例について説明し、電子契約に関するよくある質問に答えます。

目次


電子契約書とは?

電子契約書は、デジタル形式で作成・管理する契約書のことです。こういうと難しく感じられるかもしれませんが、電子契約サービスなどを使って、紙を使わずに作成された契約書に、コンピューターやタブレットといったデバイスからサインし合意する契約書と考えるとよいでしょう。

デジタル庁が公開している文書「電子契約の有効性」では、電子契約について、一般的な法的定義はないとされ、電子契約とは「書面ではなく、電磁的記録のみによって締結される契約」としています。

参考:第2回トラストを確保したDX推進SWGプレゼン資料 電子契約の有効性について(デジタル庁)

従来の紙の契約書に比べて、電子契約書はデジタルで作成・管理されるため、郵送や手渡しの手間を省略してビジネスを効率化できるだけでなく、紛失のリスクを抑えられるといった効果もあります。

民間のビジネスだけでなく、2020年代に入って内閣府や各省庁といった公的な機関でも電子契約書の利用が進められています。

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書面契約と電子契約の違い

電子契約と書面契約でも、最終的に契約が締結されるという点では違いはありませんが、形式や作成方法などに違いがあります。ここでは両方式の形式や作成方法、その他の違いについて個別に見てみましょう。

形式

書面契約では、紙に書かれた契約書がとりかわされますが、電子契約では契約書は電子データとして作成・保存されます。電子契約書の形式は、PDFやWord形式が一般的です。

作成方法

書面契約では、紙に印刷された契約書を作成し、関係者が署名または捺印し、契約ができあがります。一方、電子契約では、電子契約サービスなどを利用して契約書を作成し、関係者はコンピューターやタブレットデバイスなどから電子的に署名や承認手続きを行います。

その他の違い

電子契約を利用する上で気になるのが法的な効力です。電子契約は適切に利用すれば、書面契約相当の効力を持ち、裁判での証拠にもなります。電子契約には有効性のレベルがあり、詳しくは前出のデジタル庁の文書が参考になります。手軽に法的な有効性のある電子契約を導入したいという人は、電子契約サービスを利用するとよいでしょう。

契約を締結したあとの契約書の保存と管理という点でも、書面契約と電子契約には違いがあります。書面契約では、紙の契約書を物理的に保管する必要がありますが、電子契約では契約書はデジタル形式で保存され、クラウド上や専用のシステムで管理されます。

また、環境への配慮が広がる中、書面契約で利用する紙や輸送にかかるエネルギーは、一通であれば小さいものの、世界全体では環境に無視できない影響をおよぼしかねません。電子契約でも、電子契約サービスのサーバーによる環境負荷などは考慮する必要はありますが、紙の使用量や物流のコストを削減できます。

電子契約を導入するメリット

電子契約を導入すると、事業者は以下のような恩恵を受けられます。

情報漏えい、紛失の防止

従来の紙の契約書は、契約書の紛失リスクがありました。また、うっかり人の目につくところに置くなどすると情報が漏えいしてしまいます。この点、アクセス権の制御や暗号化といったセキュリティー対策を徹底すれば、電子契約書はデジタル環境で作成・管理されるため、紙の契約書と比べて情報漏えいや紛失のリスクが低くなります。

業務の効率化

電子契約を活用することで、契約書の作成と取り交わし、保管・管理のプロセスが効率化されます。電子契約サービスの中には、契約書のテンプレートを提供し、契約書に関わるワークフローを自動化するものもあります。人手が介在する業務を減らすことで、契約にかかる時間を短縮し、人手の作業によるミスを減らせます。

リモートでの対応が容易

コロナ禍を経てリモートワークが浸透する中、契約もリモートで交わせるようにしたいところです。書面契約でも郵送などの方法で契約を交わせますが、契約書を作成して送付し、署名をして返送するとなると、時間がかかる上、紛失などのリスクもあります。クラウド上で管理するタイプの電子契約作成サービスであれば、リモートから、オフィスから、どこからでも契約書を作成したり、署名したりできます。また、契約書は電子データとして管理されているため、参照するのも容易で、保管するための物理的なスペースも必要ありません。

印紙税が不要

電子契約は、印紙税法で定められた「(書面の)課税文書」に当たらないため、課税対象とはならず、収入印紙を貼り付ける必要がありません。つまり、印紙税を払う必要がありません。印紙税は契約書に記載された契約金額によって異なり、小さな契約では数百円ですが、契約数が多くなったり、契約金額が大きくなったりすると無視できない金額になります。電子契約を利用して、かしこくビジネスにかかる費用を節約しましょう。

コスト削減

紙で契約書を作成しないことで紙代の節約、郵送しないことで郵送費用の節約につながります。契約プロセスを効率化することで、人件費の削減につながる可能性もあります。コスト削減効果は、電子契約サービスの利用料を検討するときの基準になるので、どのくらいコスト削減効果があるか見積もっておくとよいでしょう。

電子契約を導入するデメリット

電子契約にはさまざまなメリットがありますが、デメリットについても知っておきたいところです。

書類での契約締結が必要な場合がある

農地法に記載のある農地や採草放牧地の賃貸借契約など、法律で定められている場合には、電子契約ではなく書面契約が必要になります。また、取引先の希望で書面契約となる場合もあり、必ずしもすべてを電子契約にできるわけではありません。契約書を作成する場合には、法律で書面契約が義務付けられているものでないか、取引先がどのような契約形態を好むのか踏まえた上で、契約書を作成する必要があります。

取引先が対応できない可能性がある

電子契約を交わすには、取引先が電子契約に対応できなければなりません。小規模事業者であれば柔軟な対応が可能かもしれませんが、取引先の組織の大きさや、システムの整備状況、企業文化などによっては、電子契約を交わせない可能性もあります。

電子契約サービスは、複雑なものではなく、契約相手はサービスに登録せずに契約書に署名できるものも少なくありません。少々手間はかかりますが、電子契約の締結に難色を示されたら、電子契約のメリットを説明して、利用を促すのも一つの手です。

電子契約導入を決めても、しばらくの間は電子契約と書面契約を併用することを想定して、どちらにも対応できるようにしておくことをおすすめします。

すぐの業務効率向上・費用削減効果は期待しないこと

電子契約の導入には、業務プロセスの変更や取引先との調整などが必要です。導入直後は、従来の書面契約から新しいデジタルプロセスへの移行に時間がかかる場合があります。これは、従業員や取引先の習慣やシステムの適応に時間がかかるためです。

新しい電子契約サービスの使い方を学び、関係者が適切に操作できるようにするためには、トレーニングや周知活動が欠かせません。費用削減効果もすぐに得られるわけではありません。導入には一定の初期費用がかかる場合があり、サービスによっては月額の利用料もかかるでしょう。しかし、長期的な視点で見ると、電子契約は業務プロセスの効率化や作業時間の短縮による生産性向上をもたらし、結果的に費用削減につながる可能性があります。

インターネットが必須

電子契約はインターネットを介して行われるため、インターネットにアクセスできない環境では利用できません。現在ではスマートフォンの普及により、多くの人が常にインターネットに接続できる状況にあります。また、オフィスや自宅では個人のスマートフォンの回線と合わせて、通信環境が二重になることも多く、まったくインターネットにつながらない状況は稀でしょう。

それでもネットワークに障害が発生する可能性はゼロではありません。このような状況では電子契約の作成や署名の遅延が起こる可能性があります。特に多くの契約書を処理している、緊急を要する契約が多いといった場合には、ネットワーク構成の見直しや、クラウドとの連携に加えて、ローカルなバックアップシステムを導入するといった対策が必要です。これにより、一つのネットワークに障害が発生しても契約プロセスをスムーズに進めることができるでしょう。

また、セキュリティーの観点からも、電子契約の導入には注意が必要です。データの漏えいや改ざんを防ぐには、適切なセキュリティー対策やデータの暗号化、アクセス制御などを実施する必要があります。

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電子契約書の保存期間と保存方法

書面契約と同様に、電子契約でも適切な契約書の管理が欠かせません。2022年1月1日に施行された改正電子帳簿保存法では、電子保存が義務化され、電子契約に関する情報は、電子帳簿保存法に定められた真実性と可視性を確保した方法で保存する必要があります。真実性と可視性については国税庁のウェブサイトに説明があります。

電子契約を含む電子取引データ保存義務化に関しては2023年12月31日までの猶予期間が設けられていますが、まだ対応していないという事業者は、なるべく早めに対応したいところです。

契約書の保存期間は会社法では10年、法人税法では7年と定められています。10年という期間は短くないため、電子契約作成サービスを選ぶときには、すぐにサービスをたたんでしまう可能性が少なそうな実績のあるサービスを選ぶとよいでしょう。

電子契約導入の流れ

電子契約を導入することを決めたら、以下のステップで進めていくと、スムーズに導入できます。

導入目的を明確化

まず、電子契約の導入目的を明確にすることから始めましょう。現在どのような頻度で誰とどのような契約を結んでいるのか、契約にはどのくらいの時間的・金銭的コストがかかっているのか見直してみましょう。業務プロセスの効率化やコスト削減、情報管理の強化など、具体的な目標が見えてくるはずです。

電子契約サービスの検討

デジタル化やリモート化が進む中、さまざまな電子契約サービスが提供されています。電子契約サービスを利用すると、法改正など制度の変更があってもサービス側の対応で、スムーズに新しい制度に準拠できます。

セキュリティー、機能、使いやすさ、リモートからの利用ができるかなど、各種サービスを比較検討し、事業に合ったサービスを選びましょう。電子契約書の保存期間は長いため、長期にわたってサービスを提供する確率の高いサービスを選ぶのも重要です。

導入スケジュールと業務フローの作成

電子契約の導入スケジュールと、電子契約サービス導入後の業務フローを作成しましょう。導入時のステップや担当者の役割、契約書の作成・承認フローを明確にすることで、導入から運用までのプロセスをスムーズに進めることができます。

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関係者にアナウンスする

電子契約を導入することを関係者にアナウンスします。電子契約に関わる人に対して導入の意義や利点を説明し、必要であればトレーニングの機会を設けます。取引先との調整や、協力の依頼も忘れずに。

エステサロンや美容院、英会話教室、フリーランスのカメラマンなど、個人事業主や小規模事業者で電子契約書を検討している場合、おすすめなのが「Square 契約書」です。Squareの無料アカウントを作成すれば、すぐに導入でき、電子契約書を簡単に作成できます。月額費用・追加費用は一切かからず、契約書のテンプレートは使い放題です。Squareには見積書や請求書を発行する機能もあるため、見積もりの提示から、契約の締結、請求までの一連のフローを一つの管理画面上で行うことができます。

電子契約サービスの利用事例

業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進む中で、国の機関や自治体、民間のビジネスが積極的に電子契約を取り入れています。たとえば、内閣府は電子契約や電子調達システムを利用するメリットをウェブサイトで説明しています。また、奄美市では導入から7カ月で契約全体の5割以上が電子契約になるなど、地方自治体での導入も進んでいるようです。

参考:
電子契約の推進について:調達情報(内閣府)
なぜ奄美大島で進んだ電子契約50%超 脱ハンコ・印紙がもたらすメリット(2023年2月23日、産経新聞)

電子契約書についてよくある質問

Q:電子契約の目的は?

デジタル化やリモートワークの普及にともない、今後いっそう電子契約が利用されるようになることが予想されます。このような中で、いち早く電子契約に対応しておくことで、円滑にビジネスを行なえるだけでなく、業務の効率化や費用削減にもつながります。また、対外的には、紙の利用量の削減、物理的な輸送手段を使わないことで、環境に配慮した姿勢を打ち出せ、事業者としてのイメージアップにもつながることでしょう。

Q:電子契約と書面契約の違いは?

電子契約は書面契約をデジタル化したものと考えるとよいでしょう。電子契約では書面契約のように紙の契約書を使用することはなく、契約書の作成から署名、契約の締結、保管・管理まですべてが電子的に行われます。クラウドベースの電子契約サービスを利用すれば、どこからでも契約処理が行えるようになり、業務が効率化され、費用の削減につながる可能性もあります。ただし、契約の種類によっては法的に書面での契約が必要な契約もあるので注意が必要です。

利用が広がる電子契約書について、電子契約書とは何か、書面契約との違い、電子契約のメリット・デメリット、導入の流れ、利用事例について説明しました。

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電子契約というと、「導入には手間がかかりそう」「使うのは難しそう」というイメージを持っている人もいるかもしれません。契約書の作成や署名といった処理をするシステムの仕組みは複雑なものですが、電子契約サービスの導入や利用は誰にでもできます。さらにSquare 契約書は無料で利用可能です。本記事をきっかけに電子契約を試してみてはいかがでしょうか。業務の効率化を実感できるはずです。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2023年7月18日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash