話題のDX、病院で取り組めることとは?

少子高齢化社会、医療費の逼迫、慢性的な人手不足と、医療現場をめぐる課題は山積しています。そんな中で、課題解決の一助となると期待されているのが、病院のDXです。昨今、よく耳にするDXですが、病院で取り組めるDXについて解説していきます。

目次



DXとは

DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)を指す言葉です。2004年にスウェーデンの大学教授によって提唱された概念だといわれていますが、日本では経済産業省が2018年に「DXレポート」を発表し、以降、各業界でのDXを積極的に推進しています。経済産業省による「DX推進指標」では、DXを下記のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

引用:「DX 推進指標」とそのガイダンス(経済産業省)

つまり、DXは単純にデジタル技術を活用したIT化ではなく、「IT化を利用したビジネスモデルの変革」を指しています。
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病院を取り巻くDXの現状

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、オンライン診療、オンライン服薬指導が可能になるなど、感染拡大前に比べ、医療機関におけるデジタル技術活用のニーズが高まっています。日本経済団体連合会も2022年に行った提言「Society 5.0時代のヘルスケアⅢ」の中で、「患者が、初診・再診を問わず、また疾患の種類を問わず、医師と相談のうえ、自身の生活スタイルや疾病の状況に応じて、対面診療とオンライン診療を適切に選択できる仕組みと環境が整備されている」ことを目指す姿としていることからも、経済界も日本の医療機関のDX化に大きな関心を寄せていることがわかります。

また、常に人手不足が叫ばれている医療業界ですが、その現状を示すデータを見てみましょう。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の人口1,000人あたりの医師数は2.5人(2018年時点)でした。オーストリアの5.4人(2020年時点)の半分以下という結果が出ています。医師だけではなく、看護師や介護職など、医療やヘルスケアに関わる人材が不足する中で、マンパワーに依存する病院経営には限界があります。そこで、デジタル技術を活用したDXが喫緊の課題となっていますが、病院におけるDXの代表ともいえる電子カルテですら、一般病院が57%、一般診療所が50%の導入率に留まっているのが現状です。

参考:
OECD Data(Doctors)
電子カルテシステム等の普及状況の推移(厚生労働省)
Society 5.0時代のヘルスケアⅢ(一般社団法人日本経済団体連合会)

病院で取り組める具体的なDX

病院が取り組むことができるDXにはどのようなことが挙げられるのか、具体的に説明します。

電子カルテ

パソコンやタブレットを用いて診察内容や処方薬など、患者の情報を正確に記載し、電子データとして保存するものです。CTやMRIなどの画像データと併せてハードディスクやクラウドに保存されるので、紙のカルテのように保存場所が必要ないのが大きなメリットといえるでしょう。

また、手書きではない分、文字が読めない、読み間違えるといったトラブルを防止でき、伝達ミスの減少が期待できます。また、電子カルテには、外部の医療機関との情報共有が簡単になったり、事務作業の効率化によって待ち時間が短くなったりと、患者にとってのメリットもあります。患者の満足度が高ければ、次に受診が必要になった場合に、選んでもらえる可能性が高くなるでしょう。

キャッシュレス決済

厚生労働省が2018年に全国の病院を対象に行った調査では、クレジットカードやデビットカードなどのキャッシュレス決済を導入しているのは49%と半数に届く勢いでしたが、電子マネーなどの非接触決済の導入は2.2%、QRコードに至っては0.2%とかなり低い水準であることが明らかになりました。

一方で、民間会社が行った決済動向調査によると、消費者が「利用している」と回答したキャッシュレス決済のうち、クレジットカードは77%、電子マネーは56%、そしてQRコードは57%という結果が出ています。また、別の民間企業の調査では「今後キャッシュレス払いができるようになってほしい場所」の質問に「病院・調剤薬局」と答えた人は44%で、圧倒的1位となっていました。多くの人たちがキャッシュレス決済を利用する時代に合わせ、病院でもキャッシュレス決済の導入はぜひ検討すべき項目といえるでしょう。導入時には、クレジットカード、電子マネー、QRコードのすべてを一つの手続きで導入できる決済代行会社を利用すれば、導入の手間が削減されます。

参考:
医療機関における外国人患者の 受入に係る実態調査結果報告書(厚生労働省)
決済動向2022年4月調査(株式会社インフォキュリオン)
コロナ禍だからこそ「病院はキャッシュレスに対応してほしい!」と44%の人が回答|キャッシュレス調査アンケートで85%の人が前年よりキャッシュレス決済が増加(株式会社アイコム総研)

予約システム

新型コロナウイルスの感染拡大以降、待合室を利用する人数を制限するために、飛び込みでも受診できるシステムから予約制へと移行した病院やクリニックも多いのではないでしょうか。インターネットを利用した予約システムを採用すれば、予約内容が自動的にシステム上に反映されるので、予約管理にまつわる業務の効率化を図れます。また、予約システムを使ってあらかじめ受診患者の枠を決めておくことで、待合室や駐車場を利用する人数を絞ることができます。電子カルテとの連携ができる予約システムもあり、予約時に入力した氏名や住所、電話番号などの情報が電子カルテに自動で反映されます。スタッフはカルテに転記する手間が省け、さらなる業務効率化が期待できます。
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オンライン問診票

診察前に患者がネット上で問診票を入力できるツールです。紙の問診票と違って、カルテへの転載が必要なくなるため、スタッフの負担が軽減できます。また、患者にとっても院内に滞在する時間を短縮することができ、感染のリスクを軽減できるのもメリットの一つといえるでしょう。

オンライン診療・服薬指導

ビデオ通話アプリなどを利用して、患者を診察するものです。ただし、オンライン診療を行う医師は厚生労働省が定める「オンライン診療研修」を受講する必要があります。また、オンライン服薬指導では、ビデオ通話を利用して薬剤師からの服薬指導を受けることもできます。医療機関への交通アクセスがよくない地域に暮らしている人や、年齢や病気などの理由から移動が困難な人、子育てや仕事の事情で時間を取れないような人でも、オンライン診療やオンライン服薬指導であれば、適切な診療を受けることができ、患者にとっては大きなメリットとなります。

2022年2月の診療報酬改定によってオンライン診療の初診料が引き上げられたことからも、今後取り入れていく病院・クリニックは、ますます増えるのではないでしょうか。

参考:令和4年度診療報酬改定の概要 個別改定事項Ⅱ (厚生労働省保険局医療課)

医療情報の共有

全国各地の自治体では医療・介護の質向上を目指して、病院、クリニック、薬局、介護事業者などが患者の医療や介護情報を共有できる仕組みを導入しています。2022年6月に発表された政府の「経済財政運営と改革の基本方針2022」内にも全国医療情報プラットフォームの創設が盛り込まれるなど、医療の情報共有は今後ますます進んでいくでしょう。患者の検査結果や治療経過がスムーズに病院間で共有されるだけでなく、集約したビッグデータの活用が、再生・予防医療、製薬分野に大きな貢献を果たすのではないかとも期待されています。

人手不足や患者の利便性の向上などの課題から、病院においてDXは可及的速やかに取り組むべき課題であることをこの記事で解説しました。一方で、DXの導入によって医師や看護師など、現場で働くスタッフの負担が増えてしまうのは本末転倒です。できれば操作が簡単で、一つのシステムで多くの機能が利用できるものを検討するとよいでしょう。

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※ 対面でのキャッシュレス決済には決済端末が必要です。Squareが提供している決済端末について詳しくはこちらをご確認ください。

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執筆は2022年7月4日時点の情報を参照しています。
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