この記事は2021年11月22日時点の情報を参照しています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況、感染予防に関する最新情報は厚生労働省のウェブサイトも合わせてご確認ください。
個人事業主の中には、新型コロナウイルス感染症の影響で休業や業務の縮小を余儀なくされているという人も少なくないでしょう。収入が減少した世帯や中小事業者向けの給付金や支援金の他に、個人事業主が利用できる可能性のある制度として「緊急小口資金等の特例貸付」があります。
本記事では、2020年3月25日に対象が拡大された緊急小口資金等の特例貸付について、制度の内容や申請方法、制度利用にあたっての注意点を説明します。
目次
緊急小口資金等の特例貸付とは
緊急小口資金とは「緊急かつ一時的に生計を維持するための少額の資金」を表します。これまで各都道府県の社会福祉協議会は、低所得者世帯や障害者世帯、高齢者世帯を対象に生活福祉資金貸付制度を実施してきましたが、2020年に入って深刻化している新型コロナウイルス感染症の社会的・経済的な影響を踏まえ、生活福祉資金貸付制度の対象や金額、返済期間を拡大し、2020年3月25日から「緊急小口資金等の特例貸付」の実施を始めました。
この制度を利用すると、最大20万円を無利子かつ保証人不要で借り入れることができます。日本国籍を持つ人だけでなく、外国人も一定の要件を満たせば貸付を受けられます。
参考:新型コロナウイルス感染症の影響による休業や失業で、生活資金でお悩みの皆さまへ 一時的な資金の緊急貸付に関するご案内(厚生労働省)
個人事業主の場合、会社に所属して月々一定の給与を受け取る会社員よりも、収入は不安定になりがちです。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響で、子どもの学校や保育サービスが休みになり業務量を減らしている人、取引先の業務量減少に伴い受注量が減ってしまった人、客足が遠のいたことから休業している人の中には、収入の減少から生計を維持するのが難しくなっている人も少なくないでしょう。このような場合、緊急小口資金等の特例貸付の対象となる可能性があります。
実際、厚生労働省の「生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金等の特例貸付の運用に関する問答集 vol.3」の中で制度の適用例の一つとして「世帯員の中に個人事業主等がいること等のため、収入減少により生活に要する費用」を挙げ、個人事業主に言及しています。
参考:生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金等の特例貸付の運用に関する問答集(vol.3)について(厚生労働省 社会・援護局地域福祉課 生活困窮者自立支援室)
個人事業主の場合、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少したことを証明しにくい人もいるかもしれません。たとえば、新型コロナウイルス感染症が広がる前後で独立し、事業を始めてしまった場合や、大きな契約の見込みがあったものの契約書がない場合などです。事情によっては貸付を受けられる可能性があるので、できるだけの書類をそろえて、緊急小口資金等の特例貸付を申請できるか、次項で説明する申請手順で社会福祉協議会に相談してみてください。
また、緊急小口資金等の特例貸付は、貸付であることから制度の利用を迷う人もいるかもしれません。無利子かつ保証人が不要で、さらに据置期間や返済期間が従来よりも延長されています。急を要する場合は制度の利用を検討してみてください。
緊急小口資金等の特例貸付の種類
緊急小口資金等の特例貸付には2種類あります。
【緊急小口資金】
対象:新型コロナウイルスの影響を受けて収入が減少した人
※新型コロナウイルスの影響を受けていることが証明できれば、休業をしていなくても申請が可能です。
上限額:20万円以内の一括交付
利子・保証人:不要
【総合支援資金】
対象:失業などで収入が減少した人
上限額:20万円(二人以上)、15万円(単身)を三カ月以内(※)
利子・保証人:不要
※厚生労働省の2020年7月2日の発表では、3カ月の貸付期間を終えたあとも生活が困窮している世帯に対しては、貸付を一回限りで延長するとしています。再貸付の申請期限は2021年12月末です。
いずれも初回貸付の申請の受付期間が2022年3月末まで延長されています。詳しくは厚生労働省の生活福祉資金の特例貸付のページもご参考ください。
申込方法
緊急小口資金等の特例貸付に申し込むと決めたら、まず、現在住んでいる市区町村の社会福祉協議会に電話で連絡をしましょう。市区町村の社会福祉協議会の連絡先がわからない場合は、都道府県の社会福祉協議会に問い合わせてみるとよいでしょう。全国社会福祉協議会のウェブサイトに各都道府県の社会福祉協議会のホームページのリンク集があります。
市区町村の社会福祉協議会に問い合わせをしたら、指示に従って申し込みに必要な書類を用意します。本人確認ができる運転免許証や健康保険証、住民票の写し、減収を示すための預金通帳や労働記録などの提出が求められるようですが、必要になる書類は、すでにある借り入れや世帯の状況によって異なるため、社会福祉協議会の指示に従うのが賢明です。
また、厚生労働省から各都道府県に宛てた「生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金等の特例貸付の運用に関する問答集 vol.2」の中で、「確認に当たっては、確認書類の提出を求める必要はないので、相談者が貸付の申込を行うに当たって、負担が生じないよう、配慮いただきたい」としています。地域によっては外出制限などが出ている、持病があり外出は極力控えたいといった場合には、書類を取得するのが難しいことも考えられます。そのような場合は事後提出など、担当者に相談してみるとよいでしょう。
参考:生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金等の特例貸付の運用に関する問答集(vol.2)について(厚生労働省 社会・援護局地域福祉課 生活困窮者自立支援室)
必要書類がそろったら、市区町村社会協議会に提出します。提出した書類は市区町村社会協議会から都道府県社会協議会に送られ、審査ののち貸付の可否が決定します。東京都社会福祉協議会は、緊急小口資金の場合は申請から資金交付まで一週間程度としています。地域や混雑状況によって資金交付までの期間は異なる可能性があります。正確な期間を知りたい人は申請時に担当者に確認するとよいでしょう。資金の交付が決まると、申し込みをした本人の金融機関の口座に資金が振り込まれます。
緊急小口資金等の特例貸付を受ける上での注意点
緊急小口資金等の特例貸付はあくまで貸付なので返済する必要があります。緊急小口資金等の特例貸付の返済では、「据置期間」「返済期間」という二つの重要な期間があります。
まず、据置期間は、資金交付直後から始まる期間で、一般に利息のみを返済し、元金の返済を行いません。緊急小口資金等の特例貸付は無利子のため、資金交付後に始まる据置期間は事実上返済のない期間です。据置期間の長さは1年です。
据置期間に続く返済期間では、毎月借り入れた資金を返済していきます。返済期間は、主に休業者を対象とした緊急小口資金では2年以内ですが、失業者を対象とした総合支援金では10年以内です。申し込み時にどちらの貸付を受けたのかしっかり確認しておきましょう。希望すれば据置期間から返済を開始することもできます。また、返済が難しくなりそうなとき、申し込み時の情報に変更があったときは、すぐに市区町村の社会福祉協議会に連絡してください。以下の条件に当てはまる人は、償還免除(返済免除)になる可能性があります。
【緊急小口資金】
・2021年度または2022年度のいずれかで住民税が非課税である
【総合支援資金】
・初回貸付分:2021年度または2022年度のいずれかで住民税が非課税である
・延長貸付分:2023年度の住民税が非課税である
・再貸付分 :2024年度の住民税が非課税である
虚偽の申請、不正な手段での借り入れ、利用目的以外で借り入れた資金を使用することはもちろん許されません。違反があった場合は、即時一括返済を求められます。新型コロナウイルス感染症の広がりはこれまでにない危機的な事態で、事業を継続させ、生計を立てていくには難しい時期ではありますが、ルールに従って制度を利用するよう心がけてください。
これまで融資を受けたことのない人、福祉制度を利用したことのない人の中には緊急小口資金等の特例貸付の利用を迷う人もいるかもしれません。支出を切り詰めて生活することも大事ですが、切り詰めすぎて健康を損なってしまってしまったら本末転倒です。お金が手元にないことによる不安も心身に影響をきたすでしょう。このような時期だからこそ、まずは生活を安定させ、健康第一で経済が回復するときに備えることが重要です。
緊急小口資金等の特例貸付は税金でまかなわれる公的な制度です。必要に応じて緊急小口資金等の特例貸付の利用を検討してみてください。
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執筆は2020年4月8日時点の情報を参照しています。2021年11月22日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash
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